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転生少女は傍観できない  作者: 月月月
一章「巻き込まれた少女」
6/21

少女、見つからない

0.




 昼休みの生徒会室では、僕、真澄、双子会計の計四名がが集まっていた。他のメンバーはクラスの雑用と……あきらめの悪い奴らはまた、真奈美まなみのところにいるんだろう。

 さすがに、副会長がいないのはどうしようもないとしかいえない。真澄は早々に仕事を切り上げてしまって遊んでいるし。彼は仕事が速い上に、先読みして物事をすすめるから周囲がついていけないことが度々ある。優秀な副会長だが、生徒会室を暇つぶしに利用するのはいただけないな。

 確かに生徒会なんて内申上げるくらいしか使い道ないくせに、文化祭とか華々しい運営は実行委員の方に任せきり(あれ強制だから僕らが手伝うことほとんどない)で、休み時間にとことん地味な雑用を押し付けられる一番過酷な委員会だからしょうがないといえばしょうがない。某ゲームのようにいろいろ無茶できたら楽しそうだけど(実際一昨年と去年の生徒会は九蔵先輩が居たから結構無茶やってた)僕に強力なコネがあるわけでもなし、地道に頑張っている。先生方は昨年までの鬱憤を晴らすがごとくこちらに雑用を押し付けてくるのでかなり損した感は否めないのだが。机仕事はまだいいけど、全校生徒分のハチマキを作ってやる気を上げようとか、地域ボランティアとか、かなりひどいと思う。全校生徒はちまきについては、私立なのに経費削減なんてせこい真似とも思うし、1300本のはちまきを生徒会数名に作らせる学校ってどうかと考えるわけだ。

 まさに、労働基準法?何ソレおいしいの?状態だ。働いてる奴が負けって、確かにそうだなと思うよ……。

 

「かいちょー。この学校にぃー幼馴染いるってさあ」

「聞いちゃったんだけどホントー?」

「うん、いるけど? 誰から聞いたのそれ」

「「ますみんからチェンメ!!」」

「ごほっ」


 母親特製の味噌汁を吹くところだった。なんて危ない双子ふたりだろう。真澄は真澄で、何てことしてくれるんだ。チェンメを送ったという当の本人は、涼しいカオで顧問が取っておいたプリンを食べている。ちょっと、それ一個800円だよ。勝手に食べてよかったの?


「あー大丈夫ですよ。冷蔵庫の中に800円入れておきました」

「先生に普通に渡せばいいだろ!?」

「めんどくさかったです」

「幼馴染可愛いー?」

「どのくらいー?」

「やっぱオードリーヘ○プバーンくらいかな」

「いやいやそこは前田○子ちゃんでしょ」

「双子うるさい」


 なぜオー○リーヘップバーンと前○敦子が同列なのかはよくわからないけど、とりあえずそんなに大人の女性というわけでもないし、国民的アイドルのような華がある顔ではない。……と、思う。普段から近くにいるせいか、どうしても贔屓してしまう予感。まぁ、客観的に見るには無理がありそうだ。


「結構普通だったよー。会長と中等部の生徒会長足して、華やかさを押し殺した感じ? 欠点はないし整ってるけどあんま目立たない子いるじゃん、あんな感じ」

「「ほうほう」」


 あ、この話題を止めなくちゃなんか遊に怒られる気がする。ブルっときた。ブルっと。さりげなくを装って、手に持った箸を二人へ向ける。


「ちょっと! 無駄話はそこまでにして、今度の議題まとめるよ」

「噂の幼馴染ちゃん探してくるっ!」

「くるっ」


 いきなり、立ち上がった双子に、眼を丸くして静止をかける。


「え、ちょっと」

「ほら会長、はじめますよー」

「あっ」


 真澄に腕を引っ張られ強制的に座らされる。そうだ、議題。あの二人は何のために弁当持参で生徒会室集合したのかわからないな。行き場のなくなった箸を下して、委員会の近況報告プリントを見る。真澄はもう読んだのか、手持無沙汰にこちらを見つめていた。嫌味なやつだな、ほんと。


 ごめん、遊。止められなかった。光の速さでとりあえずメールを打つ。そんな僕の様子を不思議そうに眺めていた真澄は、飽きたのか猫のように足取り軽く部屋を出て行った。


「っておい、議題!」


 生徒会室に響く僕の言葉のボールがキャッチされることはなく、大きな独り言として虚しさを誘った。


1.




 ところ変わって、話題の本人はというと学園のはじを目指して猛然と歩いていた。

 ふと、足を止める。どうしようなんか今ブルっときた。ブルっと。背中に寒気を感じ取る。あぁ、最近必中率をあげている私の感が、警報を鳴らしている。つまりすごくいやな予感がする。


ゆかり、そこ右」

「こんな奥に道あったんだねー」


(昨日がアレだったから、今日は用心しよう)


 いつもの木の上だと見つかる可能性が大きいので、今日は少しでも目立たないところでお昼を食べようと試行錯誤中だ。はっきり言って紫にはとばっちりだが楽しんでいるようなので許してもらおう。あぁ、ちなみに紫とは私の唯一無二の親友である。中学三年から一緒で、今年でもう三年目のふかーいお付き合いなのだ。……これだと私に友達が全然居ないように聞こえるかもしれないけど、もちろんいる。ただほかの子達はホラーが苦手なのであまり今から行くところに連れて行きたくなかっただけだ。

 対策のために、いつもは教室で食べているところを今日は屋外に。ちなみに屋上は案外人が多い上に、南校舎しか空いてなくていいところは三年生に取られる。人が多いといっても微妙なのでみつかりやすい。つまり何が言いたいかっていうと、推測するに、屋上、あそこは危険だ。


「どうよ」

「おおぉぉぉー」


 目の前には廃れたバラ園。冬のあいだに枯れてしまったらしく、手入れも入っていないようで荒れ放題だ。人を寄せ付けない、排他的な感じがホラー好きの紫にはピッタリだろう。今にもゾンビが出てきそうなこんなところをご飯を食べる場所には選ばないだろうし、私も紫もホラー好きだし。ホラー好きの友達がほかには居ないのが残念なところだけど。あ、でも紫は少し行き過ぎな面もあって、私もついていけないところがたまにある。

 万歳をして到着を喜ぶ紫。八分弱かかってしまったのでいつもよりかなり早く弁当を食べなければいけないが背に腹は代えられない。


 真の傍観とはいかなくても、真の平凡は目指したいもの。私は二度も青春はいらないのだ。


「ここなら見つからないでしょ」


 思わずこぼれたつぶやきに、あ、フラグたった?と自覚したのは数瞬後の話だ。




2.



「見つかんないねぇ」

「クラスも食堂も屋上も」

「見に行ったのにね」

「見落としたのかも?」

「そうかも?」

「やーめた」

「やめたやめた」

「めんどくさー」

「めんどー」


 顔を見合わせると、まったく変わらない顔がこちらを見ている。全く変わらない顔が瞳に映りこんでいる。なんだかそれがおかしくて、二人合わせて同時に嗤った。

 あのますみんが”普通の子”だと絶賛・・した女の子。気にはなるけどどうしても見つからない。上手にかくれんぼしてるようだ。もう、何だかめんどくさい。

 もともと、何か目的を持って探すっていうのは僕らの専門外だし。そんなことするのは九蔵先輩とかねちっこい人がやることだって思ってる。


「もう諦める?」

「諦めようか」

「そうだねもういいや」

「一期一会が大切だしね」

「作られた出会いなんて運命的じゃないし」

「運命だってさ」

「運命ってなんだよ」


 二人で笑い合う。

 好奇心は人一倍。二人合わせて一万倍。ただしにっこり笑えば手に入るものが欲しい。かゆいところにモノは置かない。苦労なんかしたくない。苦労して振られて……あんなのはもう懲り懲りだ。苦い思いをするくらいなら、苦しいことはしたくないって、僕たちは決めたんだ。



 双子の思いなど露知らず、幼馴染のメールに気づいた遊はかなりびくびくとしていた。それを友人の紫は心配そうに見ていた。

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