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転生少女は傍観できない  作者: 月月月
一章「巻き込まれた少女」
16/21

少女、絡まれる

0.




 今朝のじとっとした空気が嘘みたいに午後の日差しが暖かい。ちょっと盛った。ただ、暖かいのは本当で、満腹なこともあって授業になかなか集中できない。定食、少なめにすればよかったとちょっと後悔。

 私は窓際半ばの席だけど、ここからでも結構な人数が船を漕いでいた。おじいちゃん先生なので、注意も優しい。それを考慮して寝ている子も居るんだろう。でも、私は知っている。このおじいちゃん先生、優しい顔してちゃーんと減点してるのだ。たまに、教科書を見てなにか書き込んで授業を続けて行くけど、そこに書いてあるのは減点と加点のお話だ。世の中はなかなか甘くない……。


「えー、この解き方に意見はありますか」


 先生が声を掛けるが、まばらに手が上がるだけだった。この先生、意見が少ないと担任にちくりと刺すようなので、巡り巡って私(や、クラスメイト)に被害がこないとも限らない。しょうがないので私も手を上げる。目があった。当てられなかった。くそ。

 普段からこんなことを考えているせいか、卒ない態度に先生受けはなかなかにいいのだが、その分頼まれごともされやすくなってしまった。しくったなー、と思ったが時すでに遅し。このクラスの雑事担当は真面目に仕事をこなす委員長とクラス委員でもなんでもない私だ。委員長とは選択授業も結構被っているので、2人揃って結構な頻度でお使いされたりデリバリーされて掃除をさせられたりいろいろする。一年時は先生方も遠慮があったと言うか、そう頼まれることもなく私も傍観生活を満喫していたのだが、二年になるともう慣れたようで朝や休み時間なんかはお手伝いに駆り出されることが多い。権力者にもノーと言える日本人になりたいです。

 なんて取り留めのないことを考えていたら、授業も終わりに近くなった。


「えーじゃあここらへんで終わりましょうかね」


 いや聞かれても。

 後は選択授業になるので、20分休憩でHRを終わらせる。私は別棟に移るのですぐ帰れるように荷物もまとめた。言い忘れてたけど、うちのクラスの担任は水嶋というかったるそうな先生だ。隣の真奈美ちゃんのクラスは武内先生が担当してる。


「あー連絡はー……あ、環境委員と文化祭実行委員は七限目の後、国際理解室集合。七限目まで入ってなくても帰るなよー」


 環境委員って私じゃないか。七限目まで入ってるから待ち時間がないだけマシだが、でもだるい。講義の意味でじっと先生を見ていると、目があったが逸らされた。


「んじゃー解散」


 はいはい。……ってか国際理解室って選択と反対側の棟じゃん。授業終わってから行くのめんどくさいなぁ。

 思い腰を上げて、深く息を吐いた。


1.




 その後は平和に滞りなく授業は進んだ。そう、平和に、だ。HRの後石井君からもしかしたら何かあるかもしれないと思っていたが、特になにもなかった。光明寺先生からの変な呼び出しもなかった。そして、全ての授業が終わった。声をかけてくる有名人はいない、美形によって胃が痛くなることもない、平和だ。

 ……あれ、おかしいな。いや、これがいつも通りか。半日足らずなのに感覚が狂うとは、小宮遊、不覚を取った。いやぁ、行動が派手な人が居ないと、胃が元気だな。

 なんて、七限目終了時点までは考えてたんです。はい、今までの、振りね。


 国際理解室に入って、一息ついているとコトは起きた。さて、ここで説明させて欲しいのが、委員会のオブザーバー制度。生徒会と委員会のつながりを強くするために、各委員会に生徒会役員が一人ずつ就く。役員は普段委員会に参加しながら話し合った事を生徒会に持って行ったり、生徒会から下った案件を下ろしたりする。委員会は図書、環境、風紀、文化祭実行、体育祭実行、選挙管理の六つで、選挙管理にオブザーバーはつかない。実質五つの委員会に一人ずつ生徒会役員が派遣されてくるわけだ。他の委員会は大体分かるだろうけど、私が所属している環境委員は言うならば雑用だと思ってくれればいい。因みに今期の委員会には、図書にあの冷酷無常副会長、環境に議長、風紀に副議長の石井君、文化祭実行に双子の書記(2人で一つ)、体育祭実行委員に真奈美(ヒロイン)ちゃんと付き合ってる方の副会長だ。……私、誰に説明してたんだろう。

 ま、まあ、ということで、委員会が始まる前に双子書記と議長が入って来たのだ。双子書記は入ってくるなりぐるりと周りを見渡し始めた。奇妙な行動は日常茶飯事なのか、近くにいる議長は特に気にも留めてない。私は真奈美ちゃんでも探しているのかな、と視線を彷徨わせていた所だった。まだ真奈美ちゃんは来て居ないようだ。ふと、ぐるぐるしていた双子書記と視線が交わって……


「あー!君が君が君が!」

「かいちょの幼馴染ちゃんでしょ!ねぇ!」

「ひっ」


 思いっきり指さされた。

 ”かいちょ”って生徒会長か!何故それを!?ひぃぃぃ、やめてくれ。大声だけはやめてくれ、周りの人が見てる。目がこわい。皆えっ、って顔してるし、一部にはあ?ってもうガンつけてきてる人もいるから。あ、あれ議長だ。


「おい、双子。とりあえずお前ら黙っとけ。委員会が始められねーだろが」

「はーい」

「議長のイケズ」

「……と、いうことで今日は、あんたらも分かってると思うが文化祭においての大まかな説明だ。一年はちゃんとメモしとかないと当日死ぬぞ」

「す、すいません遅れました!」


 たっぷり脅しを効かせた議長のせいで、一年は震え上がっている。私も双子書記のせいで肝が縮んでいる。そんな、ちょっと気まずい雰囲気漂う国際理解室の扉をぶちあけて入って来たのは、まぁ、なんというか真奈美ちゃんである。毎回毎回、ほんとあんたすげーよ。


「いい。席につけ。説明を始める」


 そして気を取り直す様子さえ見せず動じない議長はホント大物だと思います。


2.




「小宮遊ちゃん、であってるよね?」

「はぁ」

「なるほど、なるほど。確かに副会長が言ったとおりの押し殺した感じグッジョブ!」

「はぁ?」

「いやー、委員会名簿見た時にまさかって思ったんだけど合ってたね」

「運命だねこれは!」


 どうしようテンションについていけない。分かるのは、私と一くんの関係がバレている。あの冷酷無常と噂の副会長から漏れ流れた、のかな、と推測はできるけど。口止めしときゃ良かった。でも、したらしたで、ゲーム中の副会長からするに喜々として触れ回ってくれただろうから、まぁ、バレるのは時間の問題だったのかもしれない。そっか、失念してたけど真奈美ちゃん繋がりじゃなくて一くん繋がりでこっちにお鉢が回ってくることもあるわけか。……あれ、副会長経由で書記が知ってるってことは議長も、副議長の石井君も知っていた……?そういやさっき睨まれた時、思いっきり議長さんこっち見てたけど、驚いてたりとか不審な様子はなかった。あの時は慣れからのことだと思ってたけどただ単に既知だったから故の行動だとしたら。


「嘘だろ」


 生徒会全員に知れ渡っている可能性なきにしもあらず。むしろ可能性高め。あの副会長のせいで。そしてそれによって変に絡まれることが多くなる。例えば、今みたいに。うわぁ、一くんの幼馴染やめたい。

 呆然。めんどくさい、学園で孤立化、変なことに巻き込まれる、そんな考えが一瞬で頭を巡って、体が動かなくなった。


「おい、馬鹿双子。小宮が困ってるからやめてやれ」

「うへー」

「議長細かすぎー」

「うるさい、さっさと行くぞ」

「はーい、またねー」

「またねー」


 厳つい議長が今は天使、いや神のように思える。オブザーバーされてる時から思ってましたが、貴方は出来たお方です!あ、ただ興味ないだけなのはわかってます。ええ。

 嵐が去った後のように、彼らは私に大打撃を与えてくれた。またねって、なんだ。

 委員会後で人が少なかったのは良かったけど、あの中におしゃべりな人がいたらこんな簡単な事実尾びれ背びれついて出回るだろう。そのうち、小中一緒だってことがバレたりしてね。ふふふ、どうしてくれよう、と薄笑いをしていると、肩をぽん、と叩かれる。


「?!」

「遊ちゃん、大丈夫?」

「あ、真奈美ちゃん。うん、大丈夫だよ」

「由紀先輩も亜紀先輩も悪い人じゃないんだよ。遊ちゃんならわかってると思うけど、来栖さんだって外見がこわーいだけなんだから。あんまり気にしない方がいいと思うな!」

「う、うん」

「ふふっ、じゃあ私今から用事があるから。またね」


 フォローなんだかなんなんだかわからないものを残して、真奈美ちゃんも足取り軽く去って行った。窓からさす夕日が眩しい。

 由紀先輩亜紀先輩って言うのは新島由紀、新島亜紀っていうご推察通り双子書記のことだ。もう一人が議長の来栖賢(くるすけん)のこと。


「一体、なんだっていうんだ」


 最近、世界が私に優しくない気がする。


Twitter始めました→@moon3___

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