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飴色ゼンマイ  作者: ホンダ アオハル
1/9

この素晴らしき日常

日本は平和だ。今日も平凡で、

いつも通りの一日が始まる。

昨日夜更かししてしまった為か、

まだ眠気が取れない。

リビングで、母が用意してくれた

ホットコーヒーをすする。

寒い。

まだ11月上旬だが、

もう冬と言っても良いだろう。

「いってきまーす!」

小5の妹が元気良く家を

出て行った。まずい。

ぐずぐずしていると遅れて

しまう。ようやく焼けた食パンを

急いでコーヒーで流し込み、

自分も足早に家を出た。


高校1年生の春島 龍也が通うのは、

自宅から自転車でおよそ10分ほどの

距離にある、朝露高校。通学が楽だから、

という理由だけで選んだが、校風は良く、

過ごしやすい。今ではすっかりこの高校に

馴染んでいる。また進学率もそれなりに

良いらしく、龍也はこの高校を選んだ

ことに関しては一切後悔はしていない。

むしろ、大成功だったと思う。


龍也は始業5分前の予鈴と

同時に教室に入った。ギリギリ

間に合ったようだ。

「お~!春島~!今日は

遅かったじゃ~ん。うおっ!

目の下の隈すごっ!…はは~ん、

さては貴様、夜更かししたな~。

この悪ガキめ~。」

席に着こうとした途端、

こちらに話す隙も与えず

ハイテンションで絡んでくるのは

クラスメートの望月 沙奈。

アイドル並みの容姿で、

その上明るく元気な性格から、

男女問わず好かれており、

学年全体でもかなり人気がある。

艶のある黒髪から、

ふわりと良い匂いがした。

「ああ…ちょっと深夜に

サッカー見ててな。」

「あー、フランスとの親善試合の

やつ?あれ私も見たかった

んだけど、放送時間遅いから

諦めたんだよねー。」

にこにこと話す望月を見ている

と、とても心が安らぐ。

「おぉー!来たか龍也!

遅かったじゃねーか!こっちは

お前に見せたいもんがあって

ウズウズしてたんだぞ!」

赤いビニール袋を片手に、

こちらに突進してきたウルフヘアの

元気の良い男は瀬戸川 慎司。

「見せたいもの?」

彼に手渡された赤いビニール袋

の中身を開けると…

「…おい、エロ本かよ。」

まぁ特に期待は

していなかったのだが。

「何だその残念そうな顔はっ!

これを手に入れる為にどれだけ

苦労したか分かっているのか!?

コンビニでレジに並ぶ人の

バランスを見ながら、一瞬の隙を

見逃さずに素早く動き、

男性店員にレジをさせないと

いけないんだぞ!何があっても

女性店員にはレジをさせては

いけないんだぞ!」

かなり早口になっている。

全く、何故こんな朝っぱらから

馬鹿騒ぎ出来るのか。龍也は

苦笑で返すことしか出来ない。

一方望月はわざとらしく

嫌そうな顔をしている。

「あ~、やだやだ。

やっぱり瀬戸っちも男という

下等生物の仲間なんだね…。

瀬戸っち…嫌い♡」

「やめて!俺のハートが崩壊する!

その笑顔が逆に辛いから!

やめて望月さああああぁぁん!」

と、そこで始業の鐘がが鳴った。

会話を打ち切り、3人は

急いでそれぞれの席に戻る。



授業は昨日の夜更かしが祟り、

ほとんど居眠りしてしまった。

ノートは後で望月に書き写させて

もらえたから良かったものの、

当然授業の内容は全く

頭に入っていなかった。


「ふぅ…。」

7限目の終了の鐘がなった。

今日の授業は全て終わりだ。

頭を切り替え、龍也は望月、

瀬戸川と共に校舎5階の部室へ

向かう。扉を開けると、部室には

既に先客がいた。

「うぃっす、たっつん、望月。」

「え!?ちょ、何で俺だけ

いないみたいな扱いに

なってんの!?酷くね!?」

「はいはい、うるさいうるさい。

やかましいんだよお前は…」

露骨に鬱陶しそうな顔する

黒縁メガネに金に染まった

短髪の男の名は、湯村 圭介。

「ちーちゃんがまだ来てないね。

圭君なんか聞いてる?」

「ん?…あー、確か6限目に

気分悪いとか何とかで早退してたな。」

望月の問いに、湯村が答える。

「えっ、そうなんだ…。大丈夫かな、

ちーちゃん…。」

望月の言う「ちーちゃん」とは、

もう1人の部員、寺西 千夏の

ことである。そして、1年A組の

龍也、望月、瀬戸川、1年C組の

湯村、寺西の5人で構成される

のが、朝露高校英会話部。

と言っても、それらしいことは

あまりしておらず、普段は

部室でお茶を飲みながら、

各々好きなことをしている。

まぁそれだけでは部活動として

問題なので、週に一度くらいは、

英会話のCDを聞いたり、実際に

英語で討論会をしたりしている。

今日はその予定ではなかった

ので、4人はそれぞれしたい

ことをして、部活動終了時刻の

18時までを過ごした。

18時になると、それぞれ帰宅する

準備をして、校舎を出る。

電車通学の瀬戸川と湯村とは

駅で別れ、そこからしばらく

望月と2人きりで帰ることに

なる。2人だけで話せるこの

時間は結構好きだ。それが何を

意味するのかは、龍也はあまり

考えないことにしている。

「んじゃ、春島!また明日っ!」

「おう、またな」

分かれ道で、望月とも別れる。

ああ、幸せだ。毎日が楽しい。

ずっとこのままでいれたら

良いのに。こんな毎日が、

こんな日常が、ずっとずっと

続いたらーーーー。


けれどもそれはこの日を境に

少しずつ崩れてゆくことになる。


次の日も、その次の日も、

英会話部のメンバーである

寺西 千夏は、

学校に姿を見せなかった。

まず第1話、読んでくださった方、

ありがとうございます。

初めて作品を投稿したので

やや緊張しています…笑

これからものんびり書けて

いけたらなと思ってます。

お付き合い頂けたら嬉しいです。

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