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東方藍蓮花  作者: 空椿
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藍色と活路 突然は敵だ

「これは?」


「簡単に言えば、幻想郷へのワープ装置です」


 いかにもそれらしい機械の鎮座する大部屋、そこに藍色達は到着した。真ん中のカプセル的な何かが非常に露骨。


「幻想郷から侵攻された時、此方から反撃しようと考える一派が独断で作ったようです。しかし、結局使われぬまま放置されています」


「使えるのでしょうか?」


 玉兎が設備関係をチラチラ見ながら聞いた。どうやら、機械その物には電気が伝わっているらしく、作動自体はするらしい。


「転移先の未調整を始めとした大量の欠陥がそのままなので使えません」


「えっ」


「本来ならば」


 依姫が藍色を見詰める。


「そこで、貴女に手助けをして頂きたい」


「安全に使えるようにしてほしいの?」


「分かったなら良いです」


 相変わらず話が早くて助かる。


「……現状、月の問題を解決出来る人は貴女だけです。しかし、貴女は唯一の方法をしたくないと言う。ならば、コレを解決出来る、貴女の友人達を連れてきて欲しいのです」


 もう分かっているだろうかと思いつつ、依姫は言う。


「これは、貴女が信頼されているという前提で話しています」


 そして、これが賭けであるとも言う。


「また、この転送装置は帰りの保障がありません。帰る方法は向こうで集めて頂きたい」


 しかも、片道切符。自分の足で戻れとも言う。


「…………出来ますか?」


 心配。条件が満たせない場合に起こりうる事への。しかし……


「出来ないなんて事は無い」


「断言しますか、貴女らしい」


 当然のように言うこの妖怪は、変わりはしないようだ。


「では、お願いします」


 その言葉を合図とし、藍色が能力を使う。

 ちょっと待てば、機械達がひとりでにピコピコ言い始めた。それは正確な座標を読み込み、不具合を何も言わずに改善していく。


「相も変わらず、迅速かつ有能な能力ですね」


「……よく知っている、ように聞こえる」


「姉貴分でしたので」


 話すうちに中心のカプセル的な物に光が発生し、入ってこいと言わんばかりに安定する。


「さぁ、急いで下さいな」


 依姫が急かす。その言葉に従い、藍色は中央のカプセル的な物に向かって走る。

 が、だ。


「む」

「わっ!?」


 ギューンと表すのか、耳障りな音と共に部屋の明かりが消える。無論機械も停止し、真っ暗闇が広がるばかりである。


「『天照大神の陽光』」


 と、今度は明かりが広がる。依姫の右手に小さな光の玉が浮いており、それが部屋全体を照らしている様子。行動が素早いな。


「何?」


「で、電力供給が失われたみたいです。規模からして、建物全体かと……」


「しかし、予備の発電機は多数あります。それらに異常が無ければ明かりがつくかと……」


 少し待てど、暗闇が続くばかりである。


「……何かあったのでしょうか」


 疑問符を浮かべていると、不意に声が建物に響く。


《観念して下さい、依姫様、藍色様。豊姫様からあらかじめ作戦は受け取っているので、貴女方の行動は事前に察知していました。その転送装置を使おうとした事も、使う目的も》


 どうやら、建物の至るところに設置してあるスピーカーのような物で声を届けているらしい。機械を通しているとは思えない鮮明な声であるが。


「……この声、レイセン!?」


「鈴仙?」


「正確には『二代目』ですね。少なくとも、姉様のお気に入りではあります」


 お気に入り……つまり、ある意味では玉兎の中でリーダー的存在に祭り上げられている……っぽい。


《貴女方……藍色様を幻想郷に行かせてはならない。と、私達は命令されております。故に、我々はあらゆる手段で貴女方の妨害を続けます》


「面倒」


《鬱陶しいと思われているなら、誉め言葉で御座います》


 良くお分かりで。

 そうこうしている内に、部屋に武装した玉兎達がわんさかとやってきてしまった。


「依姫様! 抵抗しないで下さいね!」

「御覚悟を!」


 月の実力者相手によく言える物だ。


「いやもう本当に、本当にお願いしますよ!?」

「まだ死にたくないです!」

「私たちを守るために抵抗しないで頂きたく……」


 いや、当人は必死なだけのようだ。やはり兎は兎か。


「……手加減しながら戦うと言うのは、全力よりも骨が折れるのですよ」


 剣をすちゃっと構えつつ、睨みを聞かせる依姫。無論本気で殺るつもりは微塵も無く、ただの脅しだ。


「ヒィィィ!?」


 その脅しは効いている様子。今のうちに、藍色は機械を弄くり回す。しかし、その顔が心なしか曇っていっているように見えなくもない。


「電力供給が不可能なら、電気を作る。それは可能」


「可能、ですが駄目なのですか?」


「一度完全に停止した機械を再起動した場合、設定等はし直す必要がある。機械は大抵そう言う物」


 一応、外の世界の機械を見る機会のあった藍色が言う。まぁ外れではない。


「で、では……」


「設定のし直しは私には出来ない。精密な機械の調整には専門的な知識も必要だから」


「そこを能力で何とか!」


「今しがた粗方失敗した」


「わ~っ!?」


 こう言うときに目立つ運の無さ。トラブルと言う名のイベントを運んでくる分には良いのだが、こんな時には恐ろしく邪魔である。


「藍色! 急いで下さい!」


 流石に脅すにも限界は出てくる。周りの一人が一歩勇気を出せば、それだけで回りも力が沸いてくる物。ジリジリと下がらされる。


「よよよ、依姫様ぁ~!」


「む……う……」


 力がありすぎると、弱者に合わせるのは段々と難しくなる。

 依姫には、彼女達を『殺さずに』無力化させる自信が無い……


「あ」


 緊張の一瞬。そんな中に平然と立つ、藍色の鶴の一声。


「藍色?」


 猫があらぬ所を見詰めるように、天井を見詰めるその視線を追えば、


「新月符」

「雨符」


 豆腐のように崩れる、天井が。 


「「クレセント・オブ・ザ・クロス」!」

「「雨垂れ鉄を穿つ」!」


 爆音と共に大穴をぶち開けたのは、見慣れた宵闇と唐傘。降り注ぐ瓦礫は、玉兎をパニックに陥らせるには充分だった。敵も、味方も。


「やっぱり一人で充分じゃなかった!?」


「二人でやれば粉々になるから、皆驚くかなと」


「……あ、本当だ。お腹一杯」


「……お二方は」


「えっと、初めまして、かしら? まあ今はさておきましょう」


 恐らく初対面の依姫への自己紹介を省き、状況の説明を暗に求める。それを察したらしく、すぐさまやるべきことを口にする。


「姉様を止めるのに人手が足りない為、転送装置を使おうとしました。それを止められ、玉兎が突入してきた所に貴女が現れました。以上」


「簡単なご説明ありがとう。移動手段に関しては持ってるわよ」


 驚く依姫をスルーし、藍色の元にツカツカと移動する。何だか藍色の腰にすがり付いて泣いてる玉兎が一匹居るのは、この際無視してしまう。


「何?」


 まだ名前も呼んでないのに、用件を問う。


「これを使いなさいな」


 自分のスペルカードをポイ。受け取った藍色に対して、返事を待たずに言い放つ。


「幻想郷で、一番印象に残ってる場所を思いなさい。強く、強くね。それだけじゃ足りないから、その場所の正確な座標を能力で掴みなさい。以上よ」


「ルーミアは?」


「……そーねー」


 言うだけ言って、背を向ける。


「貴女の義姉でも止めてみるわ」


 私は、お姉さんだと。


「……うん」


「ご主人様ー、早めによろしくー!」


「うん」


「あわ、あわわわわわわわ……」


「行くよ」


「……えっ!?」


 むしろ来い。残して行く方が心配だから。とばかりに掴む。

 そして、宣言してみせた。


「月光符「ムーンライトモーメント」」


 視界が、淡い輝きに包まれて……








 気が付けば、映るのは夜空。

 見慣れた満月。


「……あ」


 藍の蓮華達。


「こ、ここここここどこでふか!?」


「着いてきて」


「えっ!? えええ!?」


 驚きばかりで言葉にならない様子。


「友達、百人を」


「…………は?」


「一緒に連れていく」


 かつて、誰かと約束したそれは、果たしたのだろうか?

 答えを聞きたい。だから、手を引いて走る。ただ走る。


 己が帰る場所を、走る。








「さて、後は勝手に帰って来るでしょう」


「……勝手に?」


「渡したアレは私か紫じゃないと不用意に使えないのよ。だから帰りもアレを使ってくるとは限らない」


 当初の目的も帰りは藍色任せの為、結果的にはあまり変わっていない事になる。むしろ手段が一つ増えた。


「ルーミアさん、次はどうするの?」


 パニック状態の玉兎達を散々突っついたからか、大満足の状態の小傘が歩み寄ってきた。玉兎達は小傘の弾幕を貰って気を失っているようで。


「もうやることは無いわよ。後は紫の護衛だけ」


「……良ければ、お手伝いしましょうか?」


「あら」


 依姫がゆっくり手を上げた。


「てっきり姉のお手伝いかと」


「それでも良いのですが……」


「えっ」


 良いのか?


「それでも、信じて送り出してしまいましたからね」


 先程、藍色が居た辺りを見つめる。


「私が今やる事は、姉の味方では無いのでしょう」


「……そう。なら……」


 行こうか、と言おうとした所で。


「ねぇルーミアさん」


「何かしら」


「実はね……」


 小傘の悪巧み。


「……一枚、噛ませてもらっても?」


「あら? 良いの?」


「実はですね」


 ニコリと笑った。


「姉様と藍色の悪巧みには、よく引っ掛けられていたのよ」


 仕返しは、したいじゃない。そう言った依姫の。


「……貴女、今とっても良い顔してるわぁ~」


 その顔は、何か吹っ切ったような笑顔。


「じゃあ言うよ! これこれこう、こうしてこう……」








「まずは並びます!」


「……左手を腰に当て」


「右手に持つソレのコルクを、親指で抜き取ります!」


「そしてやることはただひと~つ!」


「楽しそうね……」


「少し上を見つめ!」


「貴女も結構ノるのね……」


「「一気に飲み干すべし!」」



「……感想は?」


「「美味しくない……です」」








「……貴女、やってて恥ずかしくない?」


「子供に付き合うのも、大人の役目ですよ」


「こ、子供じゃないもん!」


「はっはっは」


 依姫のこれは案外、いつも張り詰めていた反動なのかもしれない。

 にゅーいやー。空椿です。

 この話が投稿された時点の日付は元日。つまり新年、2014年です。おめでとう御座います。


 次回は藍色パート中心になる……予定です。

 さらにあちこち廻る……予定です。

 一月中に更新する……予定です。


 予定としか言わないのは、相変わらずの未定だからです。いつもの如し。


 環境の変化等があり、中々文章が出てこない事に悩んでおりますが、とりあえず私は元気にやってます。胃腸の具合を除いて。


 そんなわけでこれにて失礼。ではノシ

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