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東方藍蓮花  作者: 空椿
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藍色と夜空 渇望は敵だ

 酒という物は、古くから人妖達を酔わせてきた飲み物である。比較的身近な物ではあるので、今も昔も宴の席にはこれが振る舞われている。

 鬼という種族は、この酒に関しては並々ならぬこだわりがあるらしい。酒に関する不思議な器具を持っている時もあるし、月見酒のように風流な場所で景色に酔う事も珍しくはない。


 では、鬼だけが酒にこだわるのか? いやいや、別にそんな事は無い。天狗もまた酒を好む種族であり、鬼と肩を並べる蟒蛇である。

 日常的に酒を飲むような印象は無いが、宴のような無礼講であれば遠慮無く大酒飲みっぷりを発揮するだろう。酒樽の中身がみるみる無くなるのではないだろうか?


 だからだろうか、宴の目的を忘れて酒ばかり飲むのは。射命丸文の復活を祝う為では無かったのだろうか。


「まぁ、メインが偽物だと気付かないんじゃあ駄目でしょうね……」


 酔いどれの大天狗に絡まれながら、文の代わりをする天魔は呟いたのだった。彼女は今、数人の天狗達の酒の相手をしながら適当にあしらっている。病み上がりの相手に対する行動では無いそれを、溜め息混じりに対応している感じか。


「どうした? 勢いが無いぞ、もっとグイッとだな」


「はいはい、申し訳ありませんっと」


 酒はあまり強く無いんですが、と言いながらも杯を一気。その飲みっぷりに、周りの輩も負けじと酒器を口につける。

 濃厚な酒の香りに包まれながら、天魔は一人呟く。


「私、面倒を押し付けられただけなのでしょうか」


 そうかもしれない。







 さて、では文本人はどうしてるのか? それは場所をかなり変える必要がある。


「今晩は。良い月ね」


「生憎と満月では無いのだけど」


「綺麗な物は綺麗だよ」


 丘のような高い場所で、赤い布を敷いて文は客人を待っていた。重箱を用意してはいるが、そこに酒の類は一滴たりとも無い。


「どうも」


「はいどうも」


 と、言うわけで藍色一行が文の元にやってきた。


「急だったのに来てもらって悪かったわね」


「私達はいつも暇だし、呼ばれたら行くよ?」


「なら良かった。まぁ、座って頂戴」


 では遠慮無く。と言うように、藍色達は各々適当な場所に座る。ルーミアは勝手に重箱をつついているが、良いのだろうか……


「酒は良いのかい?」


「一人なら月見酒でもしてるけど、お酒苦手な子居るでしょう」


「あはは……」


「ん〜……美味しいわ〜」


「勝手に食べてるし……」


「良いわよ、どうせ私はもう食べてきたし。全部食べても」


「じゃあ私も〜!」


「……ルーミア、そのお箸どこにあったの?」


「これ自分の箸よ」


 まさかのマイ箸、何故持ってるし。


「あ、お箸はここに」


「ありがと〜」


 蛇足だが、この重箱の中身を作ったのは天魔だ。一行を招待したいと相談を受けてから作ったようだが、それでも美味い。


「……で、招待した理由は?」


「そうね、さっさと言っちゃいましょう」


 隣に来た藍色を自然に膝に乗せ、ニコニコしながら話し出した。藍色は複雑な気持ちだろう。


「目的地に困ってるとは風の噂で聞いたけど、実はアテが一つあるのよ」


「アテ」


「ただ、言うべきか否かを迷ってたのよね」


「……ふぅん」


 何故とは聞かないのか?


「過去、八雲紫は月を手に入れる為に妖怪を集め、月を侵攻した事があったのよ」


「あぁ、あったわねぇ」


 ルーミア、何故知ってる。


「ただ、結果は惨敗。月の科学力は地上の妖怪なんか紙屑のように消し飛ばしたのよ」


「……月に文明があるの?」


「あるのよ。それも、外の世界よりも更に発展した物がね」


 藍色は知らなかったらしい。


「それから長い時間が経って、幻想郷の人間や妖怪を引き連れて二回目の侵攻が成されたわ。参加したのは紅魔館の面々とか、巫女と魔法使いとか」


「結果は?」


「そうね、戦闘という面では負けたでしょうけど、結果としては痛み分けかしら」


 痛み分け?


「紫が色々計画していたのよ。まぁ、月の支社を出し抜けられたなら紫は満足でしょうね」


「へぇ」


「……話を戻しましょうか。それで、月を目的地にするのも良いとは思うのだけど……」


 文は頬を掻きながら言った。


「月の民は地上の民に対して非常に厳しいから、気持ち良く旅は出来ないと思うわよ〜……」


「忠告は嬉しいけど、行った事の無い場所には行くよ」


「言うと思ったわよ、もう。詳しい事は霊夢やらレミリアやらに聞きなさいな」


「八雲も行ったならなら、八雲に聞く」


「呼んだかしら?」


「ワオ」


 スキマからこんにちは、八雲紫です。


「いきなりなんだい?」


「呼ばれた気がしたから。一緒して良いかしら?」


「まあ良いけども……」


 藍や橙は留守番のようで居らず、代わりにに萃香の角がスキマから見え


「あ、酒気厳禁よ」


「なら帰るよ」


 引っ込んだ。何故居たし……?

 ともかく、紫は小傘とルーミアの間辺りで座り、既に残り少ない重箱をつつく。


「……で、月だったかしら?」


「うん、何か知らない?」


「強いて要点を挙げるなら三つ、といった所かしら」


 思い出すように思考を巡らせながら、一つ一つ答える。


「まず、幻想郷とはかなり違う世界が広がってるわね。海があるとか」


「海」

「海?」


 海って何? みたいな疑問はひとまずスルー。


「で、高度な技術によって繁栄している」


「どの程度?」


「森を一瞬で素粒子レベルで浄化する風を起こす扇子……とか?」


「高度すぎてなんとも言えないね」


 驚いてないように見えるが、凄すぎてわけが分からないだけである。


「最後に、幻想郷側の実力者を簡単にあしらう程度の化け物が居るわね」


「へぇ」


 ルーミアはスッと立ち上がる。


「座りなさいよ」


 すぐに座った。


「一度目はともかく、二度目は戦う事が目的では無かったから真正面から潰しにかかったりはしなかったけど……まぁ、本気で行っても勝てるかどうか」


「聞きたいんだけど、どこがどう強いの? どのみちルーミアさん辺りが対処出来そうだけど」


「そうでもないのよ」


「え?」


 まるで懐かしむかのように、紫は語り出す。


「相手は八百万の神をその身に下ろし、その力を使いこなせるの。つまり、相手にはそれだけの多彩な能力があるわけ」


「状況に応じて適切な物を使えるわけね」


「万が一そこに圧倒的な力の差があっても、同時に多数の現象を起こせない私達では勝ちを奪うのは難しい。そういう事よ」


「まぁ、そんなに応用力があれば『何かされる前に倒せ』なんて作戦すら無意味でしょうし」


「常に守護神を下ろしているのじゃないかしらね」


 守護神にも色々居るがな。


「……と言うか貴女達、アレに勝つ気で居るの?」


「別に」


「え、戦わないの?」


「あれ、戦うの?」


「え?」

「え?」


 ルーミアと他の皆で意見が食い違う。冗談だと良いな〜……


「強者にそそられるのは分かる。でもあくまでも旅、無闇にやる気は無い」


「そう言う貴女は何かあれば殴りかかる子じゃないの」


「む」


 否定はしないようだ。


「そんなんだから毘沙門天代理が怒るんじゃないかしら……」


「それは藍色も星も頑固だからじゃないかな?」


「フランは賢いねぇ」


「子供扱いはしないでよ」


「495歳児って所かい?」


「子供扱いするならね」


 頬を膨らます仕草がやはり子供に見えてしまうのだが、どうだろう。


「……話題、ズレたわねぇ」


「毎度の事じゃないかしら? 幻想郷の会話なんてこんな物でしょ」


「皆が皆ではないけど……」


 会話が一方通行だったりするしな。


「で? 結局月に行くのは決定なのね」


「そだね〜。でもどうやって行くの?」


「紫のスキマにお邪魔しましょう」


「勝手に人の所有物を旅の計画に組み込まないで頂戴な」


「良いんじゃない? 減る物じゃないでしょ」


「新聞記者には分からない事があるのよ、もう」


 こちらも少し頬を膨らませ不満を示す。普段が普段なので、素直に可愛いと思えないという。


「じゃあ何、私の自慢のスピードで月までひとっ飛びしろと?」


「計算上可能だと思うけど」


「マジ?」


 ルーミア驚きの一言。


「天魔と戦った時のあのスペル。あれなら身体が凍るより早く月面に届くわよ」


「そんなに早いのね……」


「出来るとしても嫌よ、五人も担いで飛ぶなんて。それにアレ、作ったは良いけど意識飛ぶから微調整効かないのよ」


「そう。まあ、私の発言も嘘っぱちなんだから気にしない」


「ルーミア」


「……何よ、皆して」


 全員の視線が集まり、流石のルーミアも心地の良い気分にはなれなかった。


「……でも、単純にご主人様の能力使うのは駄目なの?」


「駄目ではないけど、月という土地を踏んだ事すら無い藍色に能力を使わせるのもね、と。まさか変な場所に出たりするのも困るでしょう?」


「あ〜」


「仕方ない、私がスキマで送りましょう。今すぐ?」


「夜が明けたら行く」


 紫は快く了承してくれた。


「じゃあお開きにしちゃいましょ。流石に疲れたわね」


「病み上がりが無茶するからだよ」


「私だって宴会したいの」


「じゃ、私達はどこに行こうかしら」


「蓮華畑に行く」


「「は〜い」」


 まぁ、この後何事も無く解散。文は紫が送り、一行は割と久々に蓮華畑に向かった。

 余談だが、本来の宴会場では潰れた天狗達に代わって、天魔が一人で片付けをしていた。酒は一滴も無かったそうな。







「あら、貴女達ね」


「幽香」


 目的地に到着した藍色一行を風見幽香がお出迎え。相も変わらず満月になる不思議な花畑だが、皆はもう特に気にしない。


「レティは居ないの?」


「あの子は奥の方よ。今から行く所だけど、どうする?」


「行く」


「そ」


 案外素っ気ない返事をされたのはさておき、花畑の中心の方に皆で移動する。


「次はどこに行くの?」


「聞いて驚け、なんと月だよ!」


「月ねぇ……」


 驚かなかった。


「アレー」


「驚かす気も無かった癖に」


「月に行くのは本当だからね?」


「へぇ。月には何があるのかしら」


「高度な文明と、海と、とても強い人物」


「最後の詳しく聞かせて」


 幽香も釣られたか。聞いた情報を伝えてみると……


「それは是非殺り合いたいわねぇ……」


「そうね、とっても楽しみだわ」


「こら、そこの戦闘狂二人」


 やる気満々の二人である。


「幽香も行く気なの?」


「そんなわけじゃ無いけどね」


 おや、以外


「太陽の畑と蒼天の花園の花々の世話が出来るのは私だけよ。幻想郷内ならまだしも、月なんて行ってられないわ」


「……蒼天の花園?」


「あら、知らないの? レティが名前つけてたわよ」


「知らなかったなぁ」


「意味はあるのかしら」


「そうねぇ」


 会話を思い出しながら幽香が言葉を紡ぐ。


「藍の字を使うとそのままな気がするから『蒼』を使って、まるで『天』のように視界たっぷりに広がる花々を蒼天としたらしいわね。あとは、管理者が居るから花畑ではなく『花園』ね。お分かり?」


「何で主人に告げずに名付けたのさ……」


「名無しの花畑が寂しかったらしいわよ」


「寂しさの象徴が何を言ってるのか」


 冬の妖怪だもんね。


「まあ良いんじゃない? これで周りに認知されてくるでしょう」


「太陽の畑と同様の認知かも……」


「どういう意味かしら小傘ちゃん?」


「う、梅干しはやめて〜!」


 こう、こめかみの当たりをグリグリとね。傍目からは分からないが、妖怪同士なので常人には危険なレベルの力が入っています。


「遊んでないで行くわよ〜」


 お前は常に遊んでるじゃないか。

 と小町が言おうとして、身の危険を感じて引っ込んだ。その心中を読まれていたと気付いているのか……







 さて、ホームと言う名の花畑に帰ってきたわけだが。ルーミアとフラン、小町は早速くつろぎ出したので一旦藍色と離れる事に。とりあえず藍色と小傘は幽香の先導の元、レティにあげた家の所に向かう。

 道中何も無かったのでそこはバッサリカットして、いつか皆で建てたチート一軒家の前に到着。笑い声が聞こえてきたので、中にはレティ以外にも客人が居るようだ。

 相変わらずレティの活動場所には雪が積もるようだな、と花園に咲く蓮華達の特異さを再確認した所で家に入ろう。まぁ、まずはノックから。


「今晩は。今日も良い月ね」


「いつも満月でしょう?」


「それもまた良い物よ」


「この毎度の符帳……幽香ね」


「私だけじゃないわよ?」


「どっちでも良いわよ。まぁ上がりなさいな」


 では遠慮無く。ズカズカと上がり込んでみると、巫女その一と巫女その二と魔女がそこに居た。


「お? 藍色か。小傘も居るが、他はどうした?」


 魔女、魔理沙は紅茶を飲みながら言う。いつもの帽子は端に置き、テーブルに座ってのんびりしている。箒は自分の隣に立てかけているが、なんか木の枝が伸びている気がする。もしかして、まだ生きてる木なのか?


「途中で別れた」


「へぇ」


「皆さんが個人で活動してるのは珍しいですよね」


 巫女その一、早苗は魔理沙と対面する場所に座ってのんびりしていた。菓子を自作したらしく、皆に振る舞っていた最中だ。


「最初は藍色だけだったんだけどね」


「ですね〜。いつの間にか皆さんが集まったのか」


 巫女その二の霊夢は机に突っ伏しグーたれているが、会話には普通に参加している。三者三様と言うべきかだろうが、


「ルーミアとは魔法の森で知り合った」


「私は命蓮寺付近だね」


「私はどこだったかしらねぇ」


 レティは幽香にお茶を出しつつ、小さな会話に混ざる。


「まあ良いわ。どうしたの?」


「次のお出掛けの行き先が決まったから、それに備えてゆっくりするようよ」


「ほお〜ぉ、次はどこに行くんだ?」


「月だよ」


 霊夢と魔理沙が反応する。


「月にある都を見学して、気が済んだら帰る。それだけ」


「何でもスッゴく強い奴が居るみたいなんだけど、戦わないらしいのよ。勿体無い」


「命あっての物種。無理に戦うつもりは無い」


「じゃあ、藍色は戦わないんだな?」


「ん」


 魔理沙が顔だけを此方に向ける。


「それなら、私が挑戦しても良いか?」


「魔理沙さん?」


「偶然にも知り合いだ。私はそいつに一度負けているし、リベンジマッチがしたいのさ」


 ……そう言えば、紫がそんな感じの事を漏らしていたな。


「駄目か?」


「別に」


「良し、決まりだな!」


「私は行かないわよ」


 霊夢がバッサリ。


「つれないこと言うなよ〜」


「嫌よ。あんな説教臭いの相手にしたくないわ」


「説教臭い? リベンジマッチ?」


「あ、早苗さんはこっちに来て。教えるから」


「お願いします……」


 小傘が早苗と奥に移動したので、とりあえず話を再開。


「そもそもリベンジって、勝つ自信はあるの?」


「無いぜ」


 キッパリ言った。


「ただ、一矢報いたいわけだよ。前はボロボロだったからな」


「貴女がボロボロにされるのは想像がつかないわね〜」


「異変の時は私がボロボロにした方だもんなぁ」


「たまたま通りかかった私とかをね」


「冬の妖怪だから疑ったのよ」


「異変解決組の二人が酷いわ」


「紛らわしいから悪いのよ」


 レティがいじけだしてしまったのだが。しかし誰も相手にしないので、レティは諦めて一人で紅茶を堪能し始めた。


「兎に角、私は行かないわよ。あんなおっかない奴に会うなんて二度とゴメンだからね」


「ちぇ、つまらん奴だ」


「褒めても何も出さないわよ」


「出さないの?」


「……まぁ、藍色にならお茶位は」


「その差は何だ」


「衣食住の食の提供」


「世間は冷たいな」


 仕方ないだろう、生きなければ何も残らん。


「私は霊夢も行くべきと思うけど?」


「幽香?」


 どこか残念そうな笑みを浮かべながら、幽香が割り込んできた。


「相手が神々を扱えるのなら、巫女である貴女が不可能なわけじゃないのでしょう?」


「……まぁ、それなりにはね」


「なら、どんな神が居るか。それが何の神なのか。藍色一行やそこの白黒よりは知識があるでしょう」


「そのご一行に知識バカが二人居るんだけど?」


「あ、それならな」


 魔理沙が告げる。


「フランが屋敷の図書館の本から知識を得たなら、そこに神に関する本はほとんど無いハズだぜ。あったとしても西洋に集中するし、少なくとも日本の神の知識は無いと思う。ルーミアは……知らんが」


「本人が興味無さ気ではある」


「だそうだけど、どうかしら?」


「むむむ……」


 少し考え込む霊夢はさて置き、話すだけ話した小傘と早苗が奥から戻ってきた。


「話は理解しました。そう言う事であれば、私も行って良いですかね?」


「構わない」


「ああ、早苗が行くなら私は」

「勿論霊夢さんと一緒に」

「うえぇ!?」


 霊夢包囲網?


「相手が神様の知識を沢山持つなら、二人掛かりで向かえば対応出来るハズです! 行きましょう、霊夢さん!」


「嫌よ!」


「遠慮なさらず」


「こっちが言いたいわよ、その台詞」


 早苗の説得が始まったが、霊夢は難色を示す。


「……そういや、幽香はどうするんだ?」


「留守番よ。私が居なくなったら、誰が向日葵や蓮華の世話をするのかしら」


「そうか。じゃあ決定又は行く気がある奴で七人なわけだな、今は」


 一応確認すると、藍色一行が五人で魔理沙と早苗をプラス。霊夢も入る事になるかもしれない。


「レティの奴も結局は留守番だしな」


「……そのレティだけど、なんで寂しそうなの?」


「冬の象徴だからさ」


 それは偏見だよ。とは誰一人言い出さないのであった。


「ああもう分かった! 行けば良いんでしょもう!」


「さっすが! 霊夢は話が分かる奴だな〜」


「怒るわよ」


 どうやら、早苗に押し切られてしまったらしい。結局、これで八人となった。


「話はまとまったの?」


「まとめられたのよ」


 クエスチョンマークの発生した小傘を放置し、霊夢は家の出口に移動する。


「お? どした霊夢」


「帰るのよ〜。あの馬鹿姉妹に晩御飯作ってやんないと」


 霊夢の料理は二人より美味いので。


「む、それなら私も帰らないとな。アイツに餌やらないと」


「アイツ?」


「ツチノコ」


「居るんだ」


「ツチノコですって!?」


 現代っ子まさかの反応。危機感知に成功したらしい魔理沙は、急ぎ箒を掴んで飛び去った。


「待って下さい魔理沙さん! ツチノコ、ツチノコってあのツチノコですか〜!?」


 目が爛々と輝いている早苗。やっぱり、珍しい物には好奇心が打ち勝つらしい。


「……じゃ、ね」


「また明日ね〜」


 霊夢も帰ったので、藍色もそろそろ戻る事に。ただ、最後に一つ。


「レティ」


「何?」


「蒼天の花園って」


「気に入らない?」


「特には」

「私は好きかも?」


「なら良いじゃない」


 そうですね。







 今日の幻想郷、場所は紅魔館の大図書館。


「パチュリー様、それは?」


「魔法の試作。完成図としては簡易的な未来予知、或いは千里眼の魔法の予定」


「手伝います?」


「待機」


「はぁい」





「ひとまず完成かしら」


「どうなるんですかね?」


「発動してみる。下がってなさい」


「分かりました」


「……掃除、行き届いてないのね。風で埃が舞うなんて」


「ゴメンナサイ」





「どうでした?」


「キーワードが幾つか頭に浮かんだだけよ。未来予知と言うより占いに近いかもね」


「キーワードですか。どんな?」


「『不思議な世界』『見知った人物』『初めての再会』」


「は?」


「以上よ」


「つ……つまり?」


「知らないわよ。『見知った人物』が『不思議な世界』で『初めての再会』をする。とかじゃないかしら」


「……初めてなのに再会って何ですか」


「占いに聞いて頂戴。ただ、ね」





「明日から忙しくなるかもしれないわ」


 今日も幻想郷は平和です。


 更新が亀なのは私はもう諦めました。ただ、更新を止めるのだけはしない気持ちではあります。一年かかろうが、更新だけは……な、空椿です。


 先日、同時更新していた一次を停止しました。二作並行するのは流石に脳内の容量に大ダメージだったようで、やはり未熟者である事を痛感しました。

 一次は藍蓮花が完結したら、また書き始めて行きます。一作品がエターナるという痛い授業料ですが、一人前に一方進んだと出来る限り前向きにとりたいです。


 さて、更新は遅くなったのですが、その間に心境の変化か何なのか、自分の文を見直す事になりました。

 どうも私、イベントの無い日常的描写なら筆が進むようです。起伏の無いのんびりとした状態を得意とし、逆に何らかの伏線を張ったり、大きな出来事の描写をする事が苦手なようです。

 大きなイベントは大抵危なげの無い方へと進み、伏線の回収に手間取り作中の時間だけが過ぎる。私の作品は皆こうなのです。


 で、何が言いたいのかというと。

 次回から『大きなイベント』『伏線の回収』『知らない分野の勉強』を一挙に行います。つまり、高確率でグダります。

 最悪次の私の誕生日が更新日時ですが、流石にそんな事にはならないようにしたいです……





 そんな訳で、今回はこれにて。ではノシ


『知らない分野の勉強』ですが、これをしないと書きたい所が書けないので必要なのです……

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