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東方藍蓮花  作者: 空椿
75/114

藍色と禁止 拒絶は敵だ

「とっつげーき!」


「はいはーい。勢い余って壁に穴を空けちゃだめよ〜? 私が空けるなら良いけ」


 ドッカーンであります!


「あ」


 フランの突撃タイミングにピッタリ息を合わせ、簪で切って空けた穴に飛び込ませる。つもりだったが対応が遅れてしまった。しかしその壁を乗り越えて行ってしまう青娥。あれ、この人騒ぎたがり?


「青娥遅い!」


「はいはい行くわよ〜」


 ……行っちゃった。館に新たな通路が追加されたのだが、神子はため息だけで終わらせた。ある程度予測していたらしい。


「青娥ってあんなだっけ」


「あの人は話し相手によって対応を変えるのじゃ。故に敵が居らんと聞いてる」


「ふーん」


 誰にでも合わせられる人、と。不思議な人だ。


「……私としては、そんな青娥に一晩で馴染む皆さんのほうが不思議です」


「不思議はほめ言葉にしかならないよ」


 ですよね。


「で、数人の姿が見えないのですが、知りません?」


 藍色、ルーミア、小町が居ない。どこいった?


「異変の話してたよ」


「異変ですか」


「地霊殿とやらの話もしたのぅ」


「あ、じゃあ長くなるかな。昼までに終われば良いけど……」


 ……言い忘れたが、今は朝である。朝から元気な吸血鬼って……







 再び皆が揃ったのは昼だった。朝を抜いた藍色とルーミアがやっと帰ってきたので、屠自古と布都が作った手料理を揃って頂いた。ちなみに、小町は一人気楽に二度寝していたとか。おい……


「布都、今日も美味しいわよ」


「うむ、今日は少し張り切ったぞ!」


 少し? 目の前の豪勢な料理を少し?

 藍色が一応青娥辺りに聞いてみたが、本当に少しだった。大体いつも品数豊富らしいが、今日は少し多めだそうだ。

 ちなみに、フランとルーミアの前は皆より品数が多く、小傘は少ない。理由は、前者二人は妖怪としての食料を追加した為。小傘も似た理由だが、食べ物ではないので逆に品数を抜いたわけだ。普通に食べてもあまりお腹は膨れないらしいし。

 とにかく他愛もない話をして飯食って……


「もう出発ですか?」


「一泊するだけでも私達は充分すぎるのよ」


「これでも充分持ちこたえた方らしいよ。悪いけど次に寄るまで勘弁してやんな」


「もう行く」


 ああ、流石にもう限界か……

 しかしまあ、早いだとかせっかちだとか言う奴がこの場に居ないので、良いだろう。


「じゃあもう行くよ。またね」


「少々お待ちを。小町さんに一つ申し上げたい事が」


「え、あたい?」


 神子は、かなり申し訳無さそうに言った。


「すみませんが、私達はこの住人だけで満たされています。仕事のお話はまた今度という事に……」


「グハァッ!?」


「小町が倒れた!?」


「すぐに復活するわよ」


 ……おいおい。とにかく、藍色が能力で幻想郷に帰った。神子達が笑顔で手を振ってくれていたので、また来ようと決めない理由は無かったのだった。







 ……っと、長々言うのもアレなのでいい加減に話題を旅に戻そう。幻想郷に帰ってきたは良いものの、幻想郷の妖怪の出入りには過敏に反応する八雲だ、一発で場所が割れた可能性が高い。

 そんな理由があるので、八雲のメンバーとエンカウントする前に退散する事に。行き先は地底と決まっていたので、レイヴンを使って素早く移動する。

 普段ならゆっくり周りを見ていたいのだが……今回は仕方ないという事で。


「いやぁ、景色が光のようだねぇ」


「黒鳥は幻想郷でもかなり速い。トップスピードは文と一部能力者以外には抜けない」


「って、この速度は文より速いような……」


「あら、最近の文はやたら速いわよ?」


「いかなる状況でも三秒あれば幻想郷のどこからでも来るよね〜」


 噂なんてするから……


「はい! 毎度お馴染み射命丸文です!」


 来たよ文。本当に速い……


「文、こんにちは〜」


「どうも。こちら最新の物です」


 毎度の如く新聞をくれた。見出しは『紅魔館と白玉楼、謎の会合!?』とある。一体何なんだろう……


「ありがと。じゃ、もう帰っていいわよ」


「面白くありませんねぇ……まあ良いでしょう」


 追い返すの早すぎと言いたいがそんな間も無く、文が離れた瞬間景色が縦穴へと変わり、同時にかかる重力も変化した。この間一秒以下というのがまた凄い。

 そんな事に皆は慣れているわけじゃないので、ルーミアと藍色以外は頭がぐらぐらしたり酔ったりと大惨事だった。


「うぐぐ、目が回る……」


「ルーミアさん自重して〜……」


「仕方ないのよ。仙界から帰還した時に紫に場所は割れただろうし、遭遇しない為に素早く移動する必要があったのだから」


 黒鳥がまた進行方向を変えた。酷いジェットコースターに乗っているようで、慣れない皆は……


「わ〜い!」


 ってフラン慣れるの早すぎだぁ!?


「さて、藍色。行き先は分かってるでしょう?」


「能力は問題無く発動した。このまま言って」


「はいはい!」


 そんな会話をしながらも、黒い風が地底を突っ切っていった。一人の釣瓶落としが発生した風に巻かれて目を回し、墜落して橋姫の頭頂部に打撃を与えたとかそんな噂が流れたが…………どうでも良いな、うん。

 さてさて。藍色の能力の導くままに進んで行くと……


「……近いわね」


 ルーミアが呟いた。


「そりゃあ良いや。さっさと会いに行って……」


「目的地じゃないわよ」


 え?


「……八雲達が近いのよ」


 ヤバいじゃねぇか!?


「え、じゃあなんで目的地をここにしたの?」


「ただの事故。八雲がこちらの位置を特定出来ない代わりに、ルーミアも八雲を特定出来ない。こういう事故も有り得る」


 精々妖力を感じるくらいだそうだ。藍色や小傘が能力を使ったら楽に特定出来そうだが……


「いつ見つかるか分からないから楽しいの」


「追いかけられるのも旅の内よ」


「成る程な〜」


 何でも簡単にしてしまっては面白く無い。少しは不便に、時々は騒動に。これが無いと、旅の面白味は無くなると藍色は言う。

 それはともかく……


「で、どうする? このまま行くと激突するけど……」


「直進」


 突っ込むの!?


「気になる妖力が八雲と行動している。確認の為に一撃離脱する」


「「は〜い!」」


「おいおい、一体何を」


「作戦会議だ〜!」


 何をする気だろうか、不安でならない……







 すこ〜しだけ時間を戻して、八雲メンバーである。八雲紫、藍、そして……


「で、星ってのと夢子ってのにはいつ会えるんだい?」


「まず地底から出ないと話にならないでしょうが……」


 …………星熊勇儀。以前ルーミアにぶっ飛ばされた経験があり、何気にリベンジの機会を狙っていたらしい。苦手なスペルカードルールよりもいくらか得意な死合いの為にスペルカードの組み直しまでして、準備もやる気も万端なようだ。


「そういや紫、話を聞いてから疑問に思っていた事があるんだ。聞いてくれないかい?」


「どうぞ。大体は答えるけど」


 勇儀は何か疑問に思った事があるらしい。


「お前の能力が十全に活用出来ないとは聞いたが、それでも大抵の事は成せるじゃないか。そこの式のスペルカードを使ったり、お前の能力を使えば藍色達は見つけられるんじゃないか?」


 確かにそうだが……?


「そうねぇ。私の能力が封じられているのは『藍色一行を中心とした広範囲にスキマを開けない』という事だけ。ちょっと頭を捻れば藍色一行を発見するのは簡単だし、私の目的も達成されるでしょう。ただ……」


「ただ?」


「『つまらない』のよ、そんなに簡単だと」


 勇儀が少し拍子抜けした顔をする。


「相手を容赦なく叩き潰すのと、出来る限り対等に戦うの。どちらが良いかと紫様は言いたいらしいぞ」


「ああん、勝手に言わないでよ」


「あぁ、成る程。それなら対等が良いね。やっぱり喧嘩は対等が一番だ」


 ……どうやら、紫達と藍色達は変な所で似ているらしい。まあそれはさておき、このタイミングで藍の耳が何かを聞き取った。


「……鳥の羽ばたく音? それに速い……」

「地底で鳥の妖怪と言えば……地霊殿のあいつか?」


「藍、間違い無く鳥なのね?」


「はい。恐らく巨大な鳥です」


 巨大と断言した時点でお空は選択肢から外れた。代わりに……


「ルーミアのレイヴンね。藍、叩き落とすわよ!」


「はい」


「おぉ、なら私がやろうじゃないか」


「……ですね。お手並み拝見としましょう」


 軽く準備運動をした勇儀、暗い洞穴の先を見据え、少し構える。


「……通過じゃなくて突っ込んでくるつもりじゃないの」


 紫も一行の妖力を確認出来たようで、冷静に進行方向などを計算していた。確認出来る範囲で言えば藍の耳は超優秀という事が分かった。


「藍、至急星と夢子に連絡取りなさい。戦闘になりかねな」


「どきな! あんた達ごと吹き飛ばすよ?」

「げっ!? 紫様!」


 スタンバイ完了、紫と藍が飛び退くと同時に腕を振りかぶる勇儀。やることはただ一つ……


「らぁッ!」


 こちらを狙うように突っ込んできた黒鳥に、スペルカードも能力も無いただの拳をお見舞いするだけだ。

 ただ、黒鳥はそれで一気に霧散するのだが。


「あぁもう! 助っ人はアンタなの!?」


「わ、鬼だ〜!」


 紫達の上から聞こえる声、どうやら寸前に跳んだらしい。


「やっぱりあんた達!?」


「うん」


 ストトンと紫達の隣に着地する五人。藍色なんかは紫の目の前だ。


「きゃぁ!?」


「じゃ」


 藍の手や勇儀の視線をするりと抜け、暗闇の奥に走っていく。


「ちょ、待ちなさい!」


「待てと言われて待つ奴はこの中には居ないのだ〜! 心底驚いてから腰を抜かしてろぉぅ!」


 小傘の台詞を最後に行ってしまう。


「〜〜〜〜ッ! 藍!」


「はいはい。勇儀さんは紫様についていって下さいね」


「あ、ああ」


「……式神「妖獣百式」」


 不意に暗闇から溢れるように現れた百の狐。地底の外や藍色達の方向に進軍し、気がつけば藍も居なくなっていた。


「行くわよ!」


「応!」


 こちらも並んで走る。距離的に殿を務めるルーミアを目印にしたいが、黒い霧が闇に紛れるおかげで非常に見辛い。次に距離の近い小傘を見失わない事が重要である。


「初戦闘も近いか。腕が鳴るねぇ……」


「……さあどうなる事やら」


 知らんよ……







「うん、やっぱり追ってきたみたい」


「流石に夜の妖怪が集まってるだけあるねぇ。あたいにゃ暗すぎて明かり無しじゃ分からんよ」


「意外にご主人様も暗い所見えるんだよね。私は見えないけど」


 小町と小傘は暗視に関係する事が出来ない。宵闇の妖怪のルーミアと、夜の王とも言える吸血鬼のフランは出来て当然。しかし、藍色は何故だろうか……

 小町が何となく推測してみた所、藍色は最初何かしら暗い所で誕生したのかもしれないとの事だ。幻想郷に来る前の藍色は妙に謎が多いので、詳細は不明だ。藍色が知ろうとしないから何も分からないんだよ。

 おかげでルーミアがあらぬ方向に考えを伸ばしていたりするのだが、果たして正解には辿り着くのだろうか? 一応映姫が浄玻璃の鏡で調べた情報はあるので、ある程度まとまってはいるようだが……

 ……閑話休題。


「だそうだから藍色、もうちょっと近付いてあげなさい」


「うん」


 最近ルーミアがただの保護者に見えてきた。藍色が子供っぽいから仕方ないが……


「小傘、はぐれてない?」


「いちお〜」


「フランは前見て走りなさい。こけて八雲に追い付かれてもしらないわよ」


「はぁ〜い」


 何も子供っぽいのは藍色だけじゃなかったりする。フランは本当に子供なんだが、小傘も精神面はまだまだだったりする。今後の成長に期待したい。が……


「……同行してから、お前さんは苦労人だなと何回思ったか」


「思う位ならフランの世話くらいしなさい。私は自由人の藍色と手間のかかる小傘で精一杯よ」


「何気に最も扱い悩む子を任せないでくれよ。あたいはまだあんた達の一行に入る気は無いんだから」


 ルーミアの為にも、フランや小傘には一刻も早く大人になってもらいたい。藍色はむしろ変わらないままが良いが。


「……まだ?」


「気が変わったらにしておくよ。仕事が見つからなかったら世話になろうかね?」


「あら、歓迎の準備をしないとね」


「気が早いなぁ!?」


 ルーミアには未来が見えているのだろうか。それにしても、一応追われてるのにこの緊張感の無さは何だろうか。


「ねぇねぇ藍色、まだ着かないの?」


「知らない」


「ご主人様の能力に発動のタイミングとかを求めてもねぇ」


 あるいは既に発動しているのだろうか? そこの所が分からないのが厳しい。なんて悶々考えている内にゴールに到着する事になるが。


「そこの全員、移動を禁止する」


 最悪のゴールだが。

 小傘や小町、追ってきていた紫や知識人ルーミアも例外なく足が止まる。

 ……藍色? 『とりあえずは大人しく止まっている』と言っておく。何らかの力の影響下にあるかは不明だ。


「人の生活圏にズカズカ入り込むとは良い度胸をしている。どうやって来たかはあえて聞かないが、回れ右して帰ると誓うなら足を動かすのは許可しよう」


「……誰?」


「人妖両方に見放された奴、とだけ記憶していなさい。これ以上詮索するのは禁止するわ」


 何気に目視出来ない場所を選んでいるようで、姿を確認は出来ない。だからといって分からないわけじゃない。


「……だそうよ。八雲、今回は休戦にして帰りましょう」


「私は構わないけど、この鬼は引き下がらな」


「会話も禁止する。黙って帰れ」


 瞬時に全員の口が閉じられ、開かなくなる。成る程厄介だ……

 このままではうんともすんとも言えない為、諦めて帰るとしよう。いつの間にか歩けるようになっているので、踵を返して帰


「肯定証明「偶然確率」」


 るわけないですよねこの子はーッ!

 藍色が足を踏み鳴らし、地震や地割れを発生させる。ある程度予測出来ていたらしい一行は慣れてない小町を掴んで集まり、何気に八雲はルーミアが吹き飛ばした。


「っち、能力か!?」


「む」


 藍色が両手を合わせる。空間か何かに干渉したらしく、少し周りの風景が歪んで結界に覆われた。


「流石藍色だね、運さえあれば何でも……ってありゃ、喋れるね」


「……なら良いわ。出来る限り穏便に済ませたいから、話だけはしてくれないかしら?」


「必要無い。帰れ」


「あ、能力はもう通用しないようにしちゃったみたいだからやめとけば?」


「…………せいっ!」


 かけ声と共に皆がバックステップ。ほぼ同時に目の前の瓦礫が宙を舞うが、辺りはしなかった。

 姿を現したのはピンクの髪と赤い服。目立つのが手に持っている規制標識。背中にも亀の甲良のように大きな標識を背負っている。

 神子の言っていた情報と一致するので、河城みとりに間違い無いだろう。成る程、にとりと結構似ている。


「お前達と話したいとは思わない。だから力ずくでお帰り願おうか? 能力が封じられようが、鬼を退ける力は飾りじゃないんだ」


 規制標識を薙刀のように振り回す。鈍器なのか刃物なのか、イマイチ分からないのがやや厄介か。


「妖怪といい人間といい、私の住処や心に土足で踏み込もうとする奴が多すぎるんだよ。お前達には悪いが、スペルカードルールなんて無しの全力で行くぞ」


「そっちの方が嬉しいけど話がしにくくなるね…………ちょっと手荒になるかな?」


「確かに、実力は結構互角みたいだけど、誰か行く?」


「うん、じゃあ私が行こうかな〜」


 小傘が一歩前に出、それを確認した残りが下がる。


「……私が勝ったら、ちょっとくらいこっちに付き合ってね?」


「私が勝ったら真っ直ぐ帰れ。これでも私はいつもより有情なんだが?」


「いつもは?」


「能力でそもそも出会わんようにしている。もし来たならスペルカードルールで叩き潰して帰らせる」


 うひー、容赦も何も無いな。


「もう話す事は無い。行くぞ」


「良いよ。死合い専門の妖怪に楽に勝てるなんて思わないよ〜に!」







「いったたたた……」


 こっちは紫達。結局藍色達を捕らえる事は叶わず、何故か諦めた表情だった勇儀と一緒に吹き飛ばされていた。

 改めて結界を確認する。藍色らしく藍色の結界で、半透明の為少々中も見える。ただし、暗い事、結界が発光しているわけではない事、何より結界の色のせいで中の藍色が同化してしまっている事などが問題だ。特に三番目。


「……そういや、この辺はアイツの住処だね」


「アイツ? 誰よ」


「知らないかい? 人と妖の間に産まれ、その両方から迫害されて塞ぎ込んだ河童をさ」

「……悪いけど、知らないわ」


 どうも記憶してないようだ。紫が忘れるとは思いがたいが……?


「ともあれ、まずは藍達と合流しないと。藍色が張った結界なんて迂闊に割れないから、全員で出待ちよ……っと、来た来た」


 二人分の足音が聞こえてきた。暗闇から出てきたのは星と夢子で、藍は居ない。


「お待たせしました! あれは一行の張った結界ですか?」


「そうよ。先に言うけど突撃しないようにね、せめて結界の解析が終わってからにしないとまた逃げられるわ……ってあら、藍は?」


「ちょっと遅れるそうですよ。なんでも、マヨヒガに行くとか」


「……何でかしらね? まあ良いわ」


 結界に手を触れ、以降紫は一度会話を止めた。メンバーも空気を読んで静かになり、この場は結界内から聞こえる爆発音だけしか聞こえなくなった。

 静かにはしつつも、全員スペルカードの準備やウォーミングアップをしている。頃合いになったら全員突っ込むだろうし、


「……向こうも黙ってるわけじゃあないようだねぇ」


 結界内の様子だが、戦闘中の小傘と視認不能の藍色を除けば此方に反応しているのが分かる。

 フランは此方を凝視しながら右手を開いたり閉じたりを繰り返し、ルーミアは手でスペルカードを回転させながらこちらをチラチラ見ている。

 まだ死合い入りしてい小町は八雲達の方を憂鬱そうな目で見ている。絶対に巻き込まれると分かっているらしい。


「……今小傘と戦闘している人物に協力を求められないでしょうか」


「いんや、そりゃ無理だよ。塞ぎ込んだままで他人と付き合うのは苦手な奴なんだ」


「変に話しかけたら敵対しますね」


 その場合、此方側には厄介過ぎる能力が使われる事になる。一行は藍色の仕業で能力が通じてないだけだからな……

 紫の能力でも一応対処は可能だ。能力で禁止の逆にしてしまえば良いだけだし……だが、相手は言葉一つで何でも禁止出来るが紫は一瞬では操れない。その時間がかなり問題となる。


「……結局、待ちの一手よ」


 藍も静かに戻ってきたので、再び会話を止めて観戦に移った。マヨヒガに行った理由は言わなかったが、何をしていたんだろうか? 分からないままだ……







「う〜、フランに任せれば良かったかなぁ……」


「……ただの付喪神が、こんな力を持てるのか?」


 唐傘と規制標識が鍔迫り合いをしている。どうやら斬打一体の武器らしく、小傘の服の端には斬られた後がある。腹と額には痣があるので、しっかり両方頂いたらしい。頭は軽く出血しているので、フランがお腹を鳴らしている。

 だが負けてはいない。みとりの横腹にもしっかり痣があるし、頭はこちらもまさかの流血沙汰だ。しかも量だけならみとりの方が酷い。どっちもどっちだ……

 しかし、小傘の傷は能力を使っていれば回避出来ていた。使わなかった理由は小傘しか分からないが、白兵戦のつもりなのか?


「ただの付喪神じゃないよ、なんたってご主人様が凄いから。私の頼れるご主人様だよ!」


 忘れ癖があるけど……とは呟くが、藍色を誇っている事には違い無い。藍色自慢の後、みとりを少し悲しい目で見る。


「…………あなたは寂しいね。頼れる人も誰も居ないから」


「寂しくはない」


「理由は答えてくれないんだっけ」


「そうだよ。分かったらさっさと倒れてくれ」


 右膝で標識ごと唐傘を弾き、そのまま足を伸ばして顎を打ち抜く。モロに入って宙に飛ばされるが、唐傘は意地でも離さない。追撃の振り下ろしをなんとか防ぐが、力でそのまま地面に叩きつけられた。


「むぐっ!」


 唐傘を開いて目眩まし、すぐさまバックステップして距離を取り、間髪入れずに助走を付け、閉じた唐傘で突く。残念だが標識で突き返され、先端同士がぶつかり火花を散らす。


「こ……っの!」


 無理矢理更なる一歩を追加し、唐傘を押しながら前進。が、力を入れすぎて……


「ひゃあぁぁ!?」


「ぐあっ!?」


 ……仲良くぶっ飛んだ。比較的大きな瓦礫の影に転がりこみ、しばらく何の音もしなかった。


「…………あ」


 標識と唐傘が、こちらも仲良く並んで落ちていた。いやまあこっちはあんまり重要じゃないんだが……

 


「あちゃ、何か面倒な予感……」


 心配になった藍色が瓦礫を除けてみると……


「……きゅ〜……」


「……おい、こいつを除けろ……」


 瓦礫の山に小傘、更にその下にみとり。見事なサンドイッチだなおい。


「お願いなら聞く」


「……………………除けて、くれ」


「よろしい」


 瓦礫をのけながら確認したが、小傘の頭に結構大きなコブがある事に気付く。多分、みとりと一緒に吹き飛んだ後に仕切り直そうとして瓦礫にクリーンヒットしたとか結構間抜けな理由だろう。


「……そういえば、負けてる」


 あ、そういえば。


「……別に帰らなくて構わん。もう追い返すのすら馬鹿らしく思えてきたよ」


「ありがとう」


 ……なんか、もう……締まらないなぁ……






「いや、まさかあそこで瓦礫にやられるとは想定外だったな〜」


「マジで瓦礫の不意打ちにやられたのかアンタは……」


 ああほら、みとりが溜め息吐いてるよもう。


「あれで完全に白けたよ。何のために戦ってたか考える事すら馬鹿らしい」


「ごめんなさいね、こんなんで」


「こんなんって言うな〜!」


「そうだよ! 小傘は頑張ったんだよ!」


「瓦礫が悪いんだよ瓦礫が……」


 空気を読まない瓦礫だ。しかし、みとりが話に付き合ってくれると言うので、悪い事ばかりではなかった。

 とりあえず、最近の幻想郷の事を伝えてみよう。


「……へぇ、死合いか」


「えぇ。楽しいわよ?」


「悪いが私は戦いが嫌いなんだ。むしろ、誰かと居るだけでイライラしたりするな」


「今は?」


「そこの唐傘のせいでイライラする気も起きない」


「あれ、わちき許されない?」


 とぼけつつも言う小傘。絶対許早苗とか言えば良いのか? やっぱりあの瓦礫の辺りで全てが狂ったんだな、うん。

 次に、遅れた自己紹介。


「私の名前は河城みとり。人からも妖怪からも受け入れられなかった赤河童さ」


「それが昔の話だったなら、今日から顔出してみなよ。今の奴らは案外肝っ玉だから」


「……考えておくよ」


 検討してくれるだけ良し。


「あ、質問。河城にとりって知らないかな?」


「義妹だよ。よく似てはいるがね」


 ほう?


「地上に置いてきてしまったのだが、妹は元気にしているのか?」


「今日も元気に機会弄りしてると思う。少なくとも、暗くなったりした様子は無い」


「……そうか」


「あら、お強い河童も妹には弱かったりするのかしら?」


「認めるよ。私は妹に甘いんだ」


 変に意地っ張りじゃないし、案外優しいらしい。最初ほど攻撃的でもないし、何があったんだ? 思い切って聞いてみたら……


「瓦礫のせいだよ」


 やはり瓦礫か。


「ま、お前達が案外良い奴という事や、面白い奴という事。色々分かったからかね」


「察するのが早い気がするけど……」


「分かりやすいんだよ」


 キッパリ言うなおい。


「……もう充分」


「あ、じゃあ帰ろっか」


「帰る前に、お前達に頼もう。正しい拒否は禁止する」


 何故!? 能力聞かないから良いけどなんなんだ!?


「私を妹の所に連れていけ。地底の住処を潰したお前達にはその責任がある」


「否定しないし、断らない」


「そうしてくれ。良い機会だ、久し振りに地上に顔を出してみるよ」


「じゃ、短い間よろしく頼むよ」


 みとりがついてくる事が決定したので、問題を片付けよう。


「……じゃあ次は……八雲、ね」


「だね」


「……私は何もしないぞ?」


「するとは考えてないから問題ない」


 いい加減、八雲メンバーの相手をしてやろう。小町とみとりは遠くに離れ、四人が八雲メンバーの方に向かった。

 妙な状況になりながらも、今回はこれにて終了とさせて頂く。







 ちなみに……


「……来るわよ、構えなさい」


 藍色を探して幻想郷一周の旅。紫達は戦闘準備を始めていた。







 皆の現在地!


 紫、藍、星、夢子、勇儀……Encounter!


 瓦礫さんのおかげでなぜかまとまってしまいました。ありがとう瓦礫さん、今日から私の信仰はあなたです。嘘です。なにはともあれ空椿です。


 みとりさんは地底にこもらせるのも可哀想なので、半ば無理矢理収集をつけて地上に行きます。藍色が能力を使って収集をつけた感じに酷似していますね、はい。

 にとりと再会はどうなるのか? 次の次くらいになると思いますが、のんびりお茶でも飲みながらお待ち下さい。


 神社がバトンで奥深くに埋まってしまいましたので、改装しました。随分内装が変わったので、目を通しておいて下さい。

 改装に合わせて、霧っぽい空気さん、EastNewSoundさん、風心剣さんからお賽銭を頂きました。ありがとう御座います、どれかは使わせて頂きますね。


 前回の投票ですが、可二票、条件付き可一票、不可零票となりました為、MUGENキャラの登場がOKされました。まあ東方アレンジキャラに絞るつもりなのですが、空椿の知識にはかなり偏りがあるので誰が出るかは不明です。ただ、禍霊夢というリクエストが来ているんですよね……勉強してきます。

 東方系のMUGENキャラを色々見てはいますが、凄い奴が居ますねぇ。天魔、ハーリス、⑨、ザトラツェニェ……自重はしますが、誰を出すか迷います。結構無茶苦茶やってる分面倒に……さあどうする?

 何分携帯なのでMUGENが出来ないので……技とかもうろ覚えとかになります。そこらは勘弁して下さいね~


 さて、最後にお知らせ。藍色と鳳凰にて、ルーミアがポチ(愛称)に渡している薬ですが、都合により緑→青にさせて頂きました。ご了承下さい。



 ではこの辺りにしましょう。次回は最悪新スペル祭ですので、気を引き締めて行きます。ではノシ

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