藍色と太子 誤解は敵だ
今日の小町はなかなかに機嫌がよろしい。理由は意外と簡単なのだが、複雑でもある。
「やっぱりこれが一番だねぇ」
「やっと見知った小町が帰ってきたわね」
「これで居眠りしてたら完璧だね!」
「勘弁しとくれよ」
死神の時に使っていた鎌を再現したのだ。大きさ、形、重さ。ピンからキリまでの一切を。おかげで物品としては新品なのに、小町にとっては使い慣れているという不思議な状況になっている。
唯一残念な事は、魂や霊魂を導いたりする力が無い事だ。こればかりは死神の特権なので小町も諦めた。が、ここで藍色がまさかの屁理屈を発動した。
「魂を導くのが駄目でも、その上位である『操る』なら該当しない」
「…………凄い屁理屈だね」
これには思わず小傘も苦笑い。しかし、藍色がそれを自重するはずが無かった。事態は更に悪化したと言って構わないだろう。
「まあ、死神の鎌がちょっと魔剣とかの類になっただけよね」
「ちょっと?」
「霊を自在に操り従わせ、挙げ句に生き物の幽体をも抜き出して従わせる事すら出来る悪魔の鎌をちょっと?」
フランちゃん解説ありがとさん。まあ簡単に言うと、現在小町の鎌には本人の能力と別に『幽、霊を従える程度の能力』があると考えてもらいたい。丁度緋想の剣と似た感じだ。
更に詳しい内容としては、幽か霊の字が付く存在を操れる。悪霊神霊亡霊皆どんとこい。ちなみに、『幽』香は論外。
また、幽体離脱を誘発させる事も可能。更に能力名が『従える』なので、幽体状態の生物は小町に反論する事を許されない。自白もどんとこい。それと、『霊』夢は論外。
幽霊の消滅、悪霊化などすら命令可能で、なんと、中妖怪クラスの幽体までなら操れる。幽霊という限定付きだが生死の管理までしてしまう恐ろしい能力である。あ、幽々子は大妖怪クラスなので通じません。
ただ、代償としてこの能力の使用後に極限まで疲労が蓄積し、小町本人の力が著しく落ちる。丸一日で両方回復するが、それまで一般人と大差ないのが致命的である。
……長い? まあ、幽霊限定で相手を操り人形に出来てしまうと考えてくれ。
「やりすぎ感は拭えないけど、助かったよ。ありがとう」
「あなたの戦力上昇はこちらにとっても有益」
「はは、じゃあ一石二鳥って事…………いや待ちなよ! あんたまさかあたいを死合いに引きずり込むつもりかい!?
一行の返事は無かった。
「嫌だよ!? あたいはやらないからね!?」
「そうよ。せめて本人の同意が無いと」
「それ、逆に言えば何らかの形で同意が得られたら遠慮無く引きずり込むつもりって事だよねルーミアさん」
「私は別に良いよ〜? 楽しくなるもん」
「フランもルーミアさんも……」
とまあ、こんな形で片は付いた。
鎌を作った際の性能テストなどで小町がぶっ倒れてしまい、出発が伸びた事を除けばまあ問題も無かった。
「行くよ」
「レッツゴー!」
「ゴーゴー」
皆が黒鳥に乗り込み、適当な場所に待機。黒鳥に乗り込む理由は、仙界に到着した時にどこに出るか分からないからだ。入った瞬間に何らかの要因でバラバラになるとか勘弁してほしい。
まあ乗り込むだけで対処が完了するわけがない。小町が黒鳥と一行の距離をゼロにし、万一にも皆が離れないようにし、終わった所で藍色が能力を使用した。仙界突入である。
「……うおっ」
「わ〜お」
「む」
一瞬ぐらついたが、小町の能力故に皆が振り落とされる事は無かった。結構皆呑気だったな。
景色はペンキを塗るように変化し、青々とした空と大きな屋敷が現れた。ちなみに、現在位置はやや高い場所なので、下手すると藍色は落ちていたかもしれない。
「到着したと見て間違い無いわ。そうでなくても知らない場所よ」
「あいよ。能力解除するよ」
能力を解除し、皆を解放する。小傘が試しにジャンプしてみたが、問題は無かった。
「じゃあ突撃だ〜!」
「うん」
藍色を先頭に、黒鳥から飛び降りる。小傘とフランは今日は別々に飛び降り、トリはルーミアが頂いた。
「さて、変な事にならなきゃ良いけど」
多分無理だぞ。
とにかく着地。皆よろめいたりとかそんな事は無かったが、藍色の着地点の目の前には人が居たので……
「ぬわああああっ!? ななななななっなんじゃお主らは!?」
「あちゃ、ごめんなさい」
やっちまった。
「ま、まさか太子様の命を狙う者じゃな!? そうは行かんよ!?」
一行全員が手を横に振った。違う違う、という意味で。
「……む? 違うのか?」
「襲撃よろしく降りてきた事については謝るけど、そんなんじゃないよ」
そう聞き、全体的に白と黒で統一された烏帽子の少女は疑惑の目を向けつつも考え込む。導き出された答えは……
「では、太子様を慕う者か!? うむ、熱心な心構えじゃ!」
ちゃうちゃう。再び全員が否定した。
「また見当違いな事言われる前に言っとくよ? 私達は旅人。旅の目的地として仙界に来たの」
「へ、旅人?」
「うん、旅人。藍色一行とか言われてるけど知らない?」
五秒程間を置き……
「たたたたた太子様ぁぁぁ! 例の一行が来ましたぞぉぉっ!」
…………屋敷の中に走り去ってしまった。
「……変な奴」
「旅の共には是非とも遠慮したいタイプ」
数分すれば、屋敷の中から先程の白いのと、濃い緑の目立つ服の少女と…………獣の耳か? と一瞬疑う程に尖った髪をしたヘッドフォン娘が出て来た。
「お初お目にかかります、藍色さん御一行。私は豊聡耳神子、かつては聖徳太子と呼ばれていた者です。此方は蘇我屠自古と物部布都です」
屠自古と呼ばれた緑の少女がお辞儀をした。よく見れば足が無く、彼女がそれなりに位の高い霊である事を理解させた。あまり率先して喋ろうとしないのだが、理由は後で聞いてみよう。
対して布都と呼ばれた少女は、何故か胸をはってどや顔をしていた。自らが仕えている人物……神子を誇っているらしい事はこの時点で理解した。それにしても物凄いどや顔だな。
それはさておき、聖徳太子と聞いてしまうとついやりたくなる事があったりする。皆さんは分かってくれるだろうか?
「藍色」
「初めまして太子。私はルーミア、宵闇の妖怪とか言われてるわ」
「多々良小傘だよ。唐傘の付喪神で、こっちの人は私のご主人様なの」
「フランドール・スカーレット! 長いからフランでいいよ」
「小野塚小町だよ。かつては三途の川の渡し守をやってた元死神さ」
同時です。
「はい。藍色さんと、ルーミアさんと、小傘さんと、フランさんと、小町さんですね。噂には聞いていましたが、凄い面子ですね」
「「「おぉ〜」」」
小傘、フラン、小町が感嘆の声を上げた。
「ガセじゃなかったようで何よりよ」
「ふぅん」
ルーミアと藍色。こちらはある意味予想通りの発言だ。
「どうじゃ! 儂の自慢の太子様じゃぞ? 恐れ入ったか!」
「別に」
藍色が即答。ガーンとかいう擬音が聞こえた。
「すみません、布都は何かと私を過大評価するので」
「別に良いんじゃないかな? 主を慕う従者は大体そうみたいだよ?」
咲夜という従者がすぐ近くにいたフランは、布都を見ながらそう言った。
「さて、立ち話も疲れますので屋敷にどうぞ。庭も好きに見て頂いて結構ですよ」
「なら、神子との話は私が応じるわ。あとの四人は適当にしてなさい」
「……お、良いのかい? ならあたいは屠自古とやらと話そうか」
小町が後ろの屠自古に絡み、腕を掴んでグイグイ引っ張っていった。屠自古は困っていたが反抗したりはせずに大人しくついていった。
それを横目に確認したルーミアも、神子と一緒に奥に行く。布都も神子に犬のようについていったが、尻尾が見えたのは気のせいだろうか?
残った三人だが、屋敷の中に入っていく。また命蓮寺のように迷わないようにしてくれよ……
「広いね」
「うん、広い」
「こりゃまた迷いそうかな〜」
大人コンビの居なくなった三人。適当に部屋を覗いたり、おーいとか叫んでみるが、驚く程に人の気配が無い。位の高い人妖は何故広い家に住みたがるのか、藍色には分からない。
藍色からしてみれば、博麗神社くらいの広さが今の身内で住むには丁度良いと考えていたりする。狭いほうが顔がよく合わせられるし、賑やかで良いだろう。
「誰も居なさそう?」
「誰一人居ないとは言わない。ただこの周辺には居ないと思う」
「じゃ、外に出てみない? 適当に歩くよりは良いかも」
「さんせ〜」
とにかくこの場はフランの提案を受け入れ、藍色達は踵を返して歩き出す。歩くだけも退屈なので、三人で連想ゲームとかもやっている。
ちなみに順番はフラン、小傘、藍色。フランの答えは比較的理解しやすく、小傘の答えはたまに予想外の物が出る。藍色は即答だ。
「じゃあ慧音かな。先生って言われたらすぐに思い浮かぶよ?」
だが、慧音ほど子供の先生に向かない人も珍しいと思う。
「ん〜……食べる、かな? 慧音の能力があれだからな〜」
歴史を食べて隠すんだからな。
「食事」
食べるといえばねぇ。
「えっと……それなら料理かな」
美味しいよ。
「じゃあ板前さん!」
日本料理の料理人といえばこの人達だな。
「妖夢」
えっ?
「え、妖夢?」
「妖夢の料理は人里の板前に勝るとも劣らない」
「……食べてみたいな。あ、刀ね」
実際、和食なら並ぶもの無しとかその業界では言われている。洋食なら咲夜がトップになる。
「斬れる、かな?」
ざっくりと。
「頭」
えっ!?
「え?」
「頭が切れる」
……成る程。あ〜びっくりした。
「じゃあルーミア」
ルーミアなら仕方ない。
「強い、だね」
そりゃあね。
「八雲メンバー」
あ、一応強いとは認めてたのか。
「八雲メンバーね。じゃあ紫」
筆頭だし。
「なら冬眠」
……うぉう、痛い所を。紫が聞いたらなんと反応するやら。
こんな楽しいゲームの途中で、藍色が歩みを止めた。
「どうしたの?」
「……む」
一番近くの部屋に急に侵入した。しかもいきなり。
「ん?」
またか〜、と呆れ顔の二人はさておき、中に居た全身青の女性が疑問の声を上げた。
「さっきは居なかった」
「ああ、確かに先程来た所ですし、居なくて当然でしょう」
藍色の一瞬返答に困りそうな質問にちゃんと答えた女性。しかし……
「何だかな〜」
妙に機械的な対応をされている気がする小傘。しかし、藍色は全く気にしない。
「申し遅れました、私は霍青娥と申します。お好きな名でお呼び下さい」
「じゃあ青色」
「まさかの呼び方だ!?」
確かに全身青色だけどさ! 藍色だって全身藍色だけどさぁ!?
「冗談ですよね?」
「割と本気」
えっ……これには青娥さんちょっと怒ったらしい。
「その理屈ならあなたは藍色ですね。文句は言わせません」
「青娥だっけ、それこの人の名前」
「え?」
「私は藍色」
「えぇ……私の反抗は一体何だったのですか……」
小傘がどこか申し訳無さそうな顔をした。
「言う前に名前を当てられたのは久し振り」
「不思議な名前だから今の今まで……ねぇ」
「……そうなのですか」
不思議と笑顔を誘われた青娥。この短時間で、何故だろうか。
「変な人」
「よく言われる」
……機械的な対応は変わらないが、表情は緩くなった。本当に藍色は分からん奴だな……
「何で返事が単調というか、感情がこもってないのか聞いて良いかな」
「あ? はい。実は少々体調が優れないので、いつものように羽目を外す事はせずに大人しくしているだけです」
口調もそれに合わせているらしい。器用だなあ。
「……ご主人様?」
「勿論」
それならやる事はただ一つ。
「病気が治る確率を上げる」
「れっつご〜!」
「え?」
さて、視点を変えよう。屠自古と小町である。部屋の一室で向かい合って座り、片方は無表情、片方ははにかんでいる。
屠自古はまだ一度も口を開いていないが、小町の鎌を目に見えて警戒しているようにも見える。気付いた小町がやや離れた場所に置いたので、一応警戒は解かれた。
「さて、そろそろ口を開いてもらいたいね。何でさっきから黙ってるんだい?」
その言葉を聞き、少し思案した後にやっと口を開いた。
「では、その言葉に甘えよう。黙っていた理由だな?」
「そうだよ。その様子なら、何か理由があるんだね?」
その通り、と屠自古は言う。
「恥ずかしい事だが、私は自他共に認める程に喧嘩腰で怒りやすい。自分が口を開いた事で結果的に戦いに発展する事は日常茶飯事でな」
「つまり、少しでもそうなる確率を減らしたって事か」
「察してもらって助かる。常識外れの進入方法をしてきたとはいえ、普段有り得ない客人を私のせいで喧嘩に発展させる気など無い。だから黙っていた、というわけだ」
口を開いた屠自古は、なかなかどうして流暢に話す。口下手とかそんなのは無いらしい。
「……お前さんも苦労してたって事だね」
「少なくとも、日夜サボリに励んでいた死神よりは苦労しているな」
「あ、成る程。こりゃあ喧嘩になるわけだ」
小町も少しイラッと来たらしい。どうも、例えや表現に少々難があるようだ。
「まあそれなら仕方無いかな。ありがとうね、もう聞きたい事は無いよ」
「じゃあ、また口を閉じさせて頂くよ」
そうしてまた口を一文字に。小町は二回ほど言葉を伝えた後、鎌を持って行ってしまった。
部屋に残された屠自古は、別段何か言葉を出す事も無くその場を立ち去った。
「へ〜、幻想郷のアカシックレコードねぇ」
「そうです。集まってくる小神霊の過去や未来の情報を読み取る事が出来るので、今も幻想郷の情報は集まっています」
「どうじゃ? 太子様はこのよ」
「先に言うけど、私にとっては『へ〜』よ」
ガーン。布都は自慢したがりだなぁ。
「いや、それを『へ〜』で済ませるあなたは凄い人ですよ」
「あらそう?」
「……しかし、私は一つ気になる事があります」
神子がルーミアに聞きたい事があるらしい。ルーミアに断る理由は無いので、布都の様子をニヤニヤ見ながら聞く。
「藍色さんの情報が非常に少ないんです。神霊の発生や、神霊への影響に何かあるんだとは考えていますが……何か知りません?」
「ん〜、藍色の能力が能力だから、その辺りに妙な影響があっても今更驚きはしないわよ」
というわけで、神子の知らない藍色の情報を所々ぼかしながら教える。ぼかしてはいるが、充分とんでもない情報なので聞いている二人は目が点になっている。
「では、最近幻想郷で密かに流行している死合いや、およそ考えつかない人物達がチーム等を組んだりしているのは……」
「全部藍色が原因ね。考えてみれば、藍色が現れてから大妖怪とか力を隠していた奴とかが遠慮無く力を発揮してるのよね〜。かくいう私もそうだけど」
ルーミアが二人にどや顔を返した。
「これは私の勝ちで良いかしら?」
「む……ぐぐぐぅ〜……」
しばらく唸っていたが、結局「でも太子様の方が……」と意地でも認めなかった。しかし、布都には悪いが神子は認めたようですよ。
ちなみに、これ以降布都が口を開く事は無かった。
「さて、じゃあ次は私が質問しましょうかね」
「何を聞きたいのですか?」
「ズバリ、異変の話よ。藍色に教えてあげたら喜びそうだし。それと……」
写真を数枚出した。
「この二人について、詳しくね」
「はい、情報に検索をかけますね」
先に異変について教えてくれた。小傘が違う所に若干絡んでいた事には少々びっくりした。小傘の腹が満たされた。
「……あら、話題に出た宮古芳香はどうしたの? この屋敷には居ないようだけど」
「芳香については青娥に聞かないと分かりませんが、基本的に幻想郷の墓場に居ると聞いていますよ」
「ま、小傘にとっちゃ因縁の相手だろうし会いには行かないわ」
「そうですか、では写真の方に移りましょう」
では、写真の詳細だ。やっと詳しい説明が聞ける……かな?
「まず、こちらの標識から。こちらは地底の奥深くに住んでいる赤河童、河城みとりの物です。名前が似ているので何となく分かるでしょうが、河城にとりの義姉です。種族は河童と人間のハーフで、あらゆるものを禁止する程度の能力を持っています。実力は能力無しでも、星熊勇儀が杯を置いて尚負けると言えば分かるでしょう。また極めて排他的で、自ら誰かに会いたがる事はありません」
「あらら、寂しい子。今度無理矢理妹と会わせてみましょう」
ヒドーイ。とにかく、行き先の選択肢が増えたと考えて良いだろう。
「で、こちらの鬼ですが……コンガラという名です。残念ながら、この方は極めて強力な霊なので小神霊は近付けないのです。故に情報は恐ろしく少ない……ですが、先代博麗の巫女と戦った事があるのと、幻月と真正面から戦える力を持っている事は分かります。特定の居場所はありません」
「幻月もかなり強いし……相当ね。腕が鳴るわ」
止めて下さい。幻想郷に危機が……
「分かりましたか?」
「そうね、せっかくだから最後に一つ」
ルーミアがいつかのフランのような凶悪な笑みを浮かべる。急な変化に、二人も対応を変える事を考える。
「あなたは強い?」
冗談なのか、本気なのか。狩人すら生温い猛獣を思い浮かばせる。どちらであろうとも、ここで選択肢を間違えたらどうなる事やら……
「……そうですね」
言葉をまとめた神子が返答を出した。布都はそっとスペルカードに手を伸ばしているが、今すぐ動く事はしない。
「確かに私は強いでしょう。大妖怪と呼ばれる中の下位の実力が相手なら負けは少ないと思います……が、それは弾幕決闘。あなた達の考え方なら表の戦いです。死合いで私の実力を捉えるとかなり弱い部類になると思っています」
ここまで喋った後に一度間を置き、再び語り出す。
「ただ、情報を力と考えるのであれば、私はあなたを楽しませる程の力はあると考えています。そういう考え方なら、私は確かに強いです」
「……成る程ね」
ルーミアは一度笑みを引っ込め、少しだけ考える素振りを見せた。ただ、本当に少しだけだった。
「知っている、という事に限れば最強と捉えて良いのね?」
「断言は出来ませんが、ここは肯定しておきましょう」
「あら、上手く逃げるじゃない。逃げ方も知っていたのね」
断言出来ないと言っておけば、無茶な事を言われても『それは知らない』と言えば矛盾は無い。
「ここで馬鹿正直にイエスと答えてたら意地悪しようと思ってたのに」
「恐ろしい人。どうやっても私を死合いに持ち込むつもりだったのですか?」
「別に? のらくらと避けられたらちゃんと引き下がるつもりだったわよ」
怖い笑みをやっと引っ込め、最初のような笑みに戻した。布都はやっと重苦しい空気から解放され、だらしなく倒れた。
「布都、だらしないですよ」
「別に良いわよ。そこまで酷な命令はやめてあげなさい」
クスクス笑うルーミアだが、一番疲れているのは神子だったりする。休憩がてらお茶にしようとルーミアが決め、藍色を探しに行った辺りでこの場は閉めさせて頂くとしよう。
「客人にお茶を淹れさせるというのも変な話ですね」
「良いんじゃないか? その客人が嬉々としてやりたがってるんだから……ってあたいも客人か」
藍色一行身内組は全員居らず、せっせと茶の用意をしている。神子側も、何故か青娥だけが居ない。
何故青娥が? とは神子達も思っていたが、彼女がフランと一緒に盆と湯飲みを持ってきた時に納得していた。手伝いか、と。
後ろから藍色達もやってきたので、これで全員揃った。
「とりあえず人数分持ってきたけど、少し熱めだから適度に冷ましてね。あとゆっくり飲むのを強く進めるよ」
小傘が話している間に藍色とルーミアがせっせと並べていた。
「嬉しいね、丁度喉が渇いていたんだよ」
「儂もじゃ。うむ、良い温度じゃ」
熱いのが好みだったらしい布都と小町が最初に手をつけた。爺臭いと言ったら怒るだろうか。
まあ、フリーズしたけど。
「……布都? 布都〜?」
「…………おい、死神?」
思わず屠自古が口を開く程綺麗に静止している。一行は屠自古の肉声に驚くより、二人への呆れが先に顔に出た。
「これは一体どういう事ですか?」
「知りたいならゆっくり飲みなさい。ゆっくりと」
何故か驚いた素振りを見せない青娥がかなりのローペースで口を付けているのを確認し、神子も恐る恐る手を伸ばした。屠自古は飲まない。
「…………これは!?」
「私が能力使った結果がその茶。現時点で最高の『美味』を一気に流し込んだ結果がその二人」
藍色が解説してあげた。それを聞いて安心したのか、屠自古もゆっくりと飲み始めた。
やがて復活した布都の勘違いに少々呆れさせられたが軽くあしらい、神子がどうしても礼をしたいと言うのでその言葉に甘えて泊まる事になった。
それ以上のイベントは、青娥がフランと小傘のペアと一緒に壁抜けをしたりして遊んでいたくらいなので……今日はここで終わるとしよう。
「……こりゃ甘美な毒さね」
小町の感想で、今回はサヨナラだ。
ちなみに……
「…………ん〜……」
「どう、かしら?」
「よし、乗ってやるよ。私も黒いのにはぶっ飛ばされた覚えがあるからね、リベンジには丁度良いや」
「良し! 五人目ゲットよ! 藍、皆を集めなさい!」
「はぁい……」
藍色を探して幻想郷一周の旅。紫は人材の確保に成功していた。
皆の現在地!
紫、藍、新メンバー……情報公開無し
星、夢子……妖怪の山中腹
写真の答え合わせと、二次創作臭のビンビンする神霊廟面子の登場。そしてルーミアの怖い一面と、久々のお茶。今回は長くなりましたねぇ……ともかく、天色の空椿です。これをフルネームにしようかな?
神霊廟キャラ書くと決めた時、ほぼ全員の性格をすぐに決めました。神子は優しくも賢く鋭いキャラに。布都は兎に角アホの子を目指し、屠自古は言い回しに定評のあるボーイッシュ。青娥は自身の状況に合わせられる人にしました。
今回は青娥の真の性格を出せませんでしたが、次回は出ます。ヒントは既に出ていますので、探してもらって構いませんよ。
写真の人物、名前がついに出せました。これ以降、二次創作キャラや一部旧作キャラ等、やたらとカオスな面々がどっさり出て来ます。空椿は既に自重しないと宣言していますので、これからもじゃんじゃん出て来ます。
最悪の場合MUGENキャラが出ますので、「よせやめろ」か「構わん、やれ」のどちらかの意見は何らかの方法で、出来れば迅速に回答を下さい。藍蓮花は何故か番外編にすべきクロス話も本編に組み込むので、そのMUGENキャラも本編に絡む可能性は大いにあります。本当にお願いします。
ちなみに、回答一切無しはO.K.と捉え………………期限は次の更新までとします。不定期なのでどうなるやら。
ちなみに、メリーと蓮子と夢美教授とちゆりもどこかで出そうかなと思っています……が、紫のスキマが制限されているのでお手軽幻想入り方法は使えません。夢美とちゆりも立場上そんなに簡単に幻想入りするはずもありません。うわぁどうすっかな~……
さてさて、次の行き先は赤河童さんです。コンガラさんは居場所不定なので今は保留にします。藍色一行は情報さえあれば行き先に困りませんねぇ本当に。
今の所行き先候補は、写真の二人と地霊殿に異変の話を聞きに。あと、一応墓場に芳香に会いに行くという選択肢もあります。しばらく忙しくなりそうですね~
では、最後にもう一度。
MUGENキャラの藍蓮花入りについては、今すぐ意見を受け取ります。「構わん、やれ」か「よせやめろ」か。メッセージ、感想、藍蓮神社のお賽銭。にて急募します。なるべく早めにお願いしますね。
では、これにてノシ