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東方藍蓮花  作者: 空椿
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藍色と鳳凰 敗北は敵だ

 今日蓮華畑に待機しているのは藍色のみ。小傘とフランは紅魔館に顔を出しに行き、小町はいつもの仕事探し。レティは幽香の所に向かい、ルーミアは鞄を持って永遠亭に。ちょっと寂しい。

 逆に来訪者が二人、蓮華畑に来ていた。竹林の案内人の藤原妹紅と、封獣ぬえだ。お互い何か悩みがあるらしい。


「……でも、私に頼むのはお門違いな気がする」


「そこを何とかお願いだよ」


「お前なら何とか出来ると思って来たんだ、頼む」


「…………むぅ」


 藍色なら解決出来る問題かどうかは、聞いてみないと分からないんだがな……





 ぬえの悩み、自分のどこを伸ばせば良いか分からない。


「……マミゾウはいっつもナズーリン達の相手してるし、聖は強すぎて参考にならないし」


「聖が参考になるわけがない」


「あ、やっぱり?」


 ぬえも少なからず死合いをする身ではあるし、強くなりたいと考える気持ちは強い。

 しかし、どうも身体能力が平たいと言うか、特筆すべき点が無いと言うか。道具と相性の良い能力で補ってはいるが、それが無ければ特徴が少ないのだ。

 と言うわけで、速さだか力だかを重点的に伸ばして個性をつけようとしたいらしい。まあその末路が今の状況なのだが。


「個性が必ず必要なわけじゃ無い。どうしてもと言うなら全部を伸ばすだけでも十分強くなれる」


「……え、あれ。そんな簡単に結論出せるの?」


「その程度の悩みならすぐに結論を出せる」


 藍色にとっては悩む程では無かった問題だったらしい。まあ、解決したなら良いか……?


「じゃあ次は私を頼むよ。良いか?」


 おっけ〜。





 妹紅の悩み、最近輝夜に勝てない。


「私達の殺し合いはお前の死合いと似ているからな、何とかならないかと来てみたんだが……」


「ふぅん」


「違うのは、相手を本気で殺しに行ってる所かな……」


 今までは互角位の力だったので、勝敗は常に抜きつ抜かれつ。五回以上連勝が続く事は無かったそうだが……

 最近輝夜の強さが跳ね上がり、手も足も出ない状態になってしまったとか。主に能力を上手く使われている為だ。

 対処法も分からないおかげで連敗続き。更に差は開く一方……って結構深刻だなぁおい。


「……む」


「うわぁ……」


 ぬえも凄い顔をする。自分の悩みと比べて深刻だからか……?


「どうしても勝ちたいの?」


「むしろ逆に輝夜を連敗続きに出来たら万々歳だが……」


「……む」


 しかし、一朝一夕で出来る問題じゃ……


「三時間知識漬けになる覚悟はある?」


「輝夜に勝てるなら千年かかっても良いさ」


 ……一朝一夕で出来る問題かい。







「はい、約束した物は入れておいたわよ」


「どうも。数が多かったから大変でしょ?」


「解放された宵闇の妖怪の血液サンプルと、例の薬の新しい利用方法なんて提供してもらったら、協力するしか無いでしょう?」


「あなたが根っからの研究者で助かったわね」


 鞄を手渡す永琳と、それを受け取るルーミア。何貰ったの?


「それにしても、渡した鞄が四次元の道具になっているのには驚いたわ」


「藍色に言って頂戴」


「元々何も言う気は無いわよ」


 お互い愛想笑いを浮かべる。何だか腹のさぐり合いに見えてしまうのは何故か……


「……さて、一応内容を確認させてもらうけど」


「はいはい、多分間違ってないでしょうけど聞いておくとするわ」


 ……おっとと、どうやら貰った物を確認するらしい。助かった……


「肉体年齢プラス十……つまり原液を五百本、それのマイナス十を百本。肉体年齢と精神年齢と身体能力プラス十を百本、それのマイナス十を百本。これだけあれば尽きる事は無いでしょうね」


「助かるわ。毎回数を思い出しながら使うのは疲れるもの」


 多いな!?


「あら、四つ目のマイナス効果は私達は見つけた事は無いんだけど」


「材料を見つけてきたてゐと被験者になったうどんげに感謝なさい」


「…………黒歴史になったわね」


 鈴仙ェ……


「一目見ただけなら分からないでしょうし、試験管にテープを巻いておいたわ。原液は赤色にプラスの記号、マイナス効果はマイナスの記号。精神に干渉する方は青色に同じ記号よ」


「どうも……って、なんか緑のテープが巻いてあるんだけど」


「ああ、それ?」


 何となく中身を見ていたルーミアが、よく分からない試験管を取り出した。


「精神年齢だけマイナス十する奴よ。プラスは無いから気を付けて使いなさい。ちなみに五本入ってるわ」


「とりあえず分かったのは、相手の黒歴史を増やす以外に使い道が無いって事だけね」


 でしょうね。


「ま、どうもありがとう。せいぜい面白おかしく使わせてもらうわ」


「そうして頂戴な」


 軽く礼をし、黒鳥に乗って飛び去った。


「……さて、サンプルの解析とか諸々を片づけましょうか」


 ルーミアが飛び去ってしまった後、永琳は軽く伸びをしてから永遠亭に入っていった。







「……ついに全部暗記しましたか」


「読む速度も凄いわね。私だと二文字位しか読めないわ」


 こちら紅魔館の図書館。フランが本の虫となっております。


「ねぇパチェ、新しい本無いの?」


「無いわよ。どうしても読みたいなら魔理沙が持って行った本を読ませてもらいなさい」


「は〜い……」


「ついでに取り返してくれたなら万々歳なんだけど」


 もう何冊犠牲になったのやら。

 そんなフランと違い、小傘は本も読まずに寝ていた。主に退屈すぎて。

 残念だが、小傘が本を読まなくてもフランが全て暗記している為、欲しい知識があるならフランに答えてもらえるのだ。便利だね!


「咲夜、こっちの唐傘に毛布をかけてあげなさい」


「はい」


 ピンク色の毛布をそっと被せてやる。寝心地に影響は無いようだ、というかむしろ……


「……あ、小傘笑ってる」


 寝ている所を起こすのも悪いので、フランも揺すったり大声を出したりはしない。ところで、笑ってるって事はやっぱり夢を見ているのか?


「どんな夢を見てるのかな?」


「それを知る術は無いわね。寝言と表情だけで想像してなさい」


「……ちぇ〜」


 藍色が居たら分かったろうに。と、ここで……


「パチェ〜! 新しい本が」


「レミィ、一人寝てるのよ」


「あ、ごめんなさい……」


 シュンとしたレミリア。いつもは大きく開いた翼も力無く垂れている。

 そんなレミリアは右手に謎の物体を持っている。ナニアレ。


「……で、新しい本って?」


「えぇ、どうも変わった本なんだけど……」


 そう言って、右手の物体をパチュリーの目の前に置いた。本にしては分厚すぎるような……


「……『Wikipedia』?」


 おい!?


「えぇ、香霖堂の店主が意味不明だからってくれたのよ。変に分厚いけど紛れもなく本よ?」


「……本?」


「本」


 すかさずフランが読み始めた。おおはやいはやい。


「私も読んだけど、意味が分からなすぎてリタイアしたわ」


「読本中毒一歩手前のレミィを諦めさせるのは確かに凄いわね」


「それだとパチェは末期じゃない。フランは……どうかしら」


 本らしき物体を目を輝かせながら高速で読み進めてるんだから末期なんじゃないかな。


「……それにしても、フランがこんなに本が好きになったのって何故だったかしら」


「確か、自身が破壊出来る物の範囲を広げる為に知識の量を直接増やそうとしたからよ。今はその世界にハマってこれだけど」


 図書館の知識全部吸収しちゃったならもうとんでもない事になってるよね……


「お嬢様はただの対抗心ですけど」


「咲夜! 変な事を」


「お姉様、小傘が起きちゃうよ……」


「うっ……」


 残念、小傘の目が開いた。


「ん……?」


「お〜ね〜え〜さ〜ま〜?」


「わわわわ、フラン落ち着いて?」


「図書館で暴れないの。全く……」


 図書館から飛び出していった姉妹はさておき、小傘がゆっくり起き上がった。


「あれ……」


「おはよう御座います、小傘様」


「え? あ……うん」


 目を擦りながら既に用意されていたお茶を飲む。寝起きの頭では何故既にお茶があるのかとかを突っ込む程働いてはくれない。


「フランは……?」


「お嬢様が持ってきた本を一心不乱に読んでいましたが、先程飛び出して行かれました」


「咲夜、洒落のつもりなら小傘は理解出来ていないようだけど」


 一心フラン……か。ちなみに咲夜は洒落のつもりではなかったそうだ。


「ふ〜ん……」


「帰るのは遅くなりそうね」


「……そうみたい」


「私は食事の準備でもしてきましょう。妹様と小傘様を含めて」


「構わないならお願いします……」


 今日の紅魔館は賑やかになりそうだ。







 さて、再び蓮華畑だが……ナズーリンが何故か加わっていた。


「……様子を見に来てみたが、君達は何をしているんだ」


 その問いにぬえは……


「妖術の理論を根本から作ってるみたい……」


 ……えっ? なにそれこわい。とふざけていても仕方無いのでとりあえず、経緯を説明させてもらうと……

 妹紅は炎を能力ではなく妖術として使っている。しかし、相手である輝夜がワンパターンな炎の攻撃に慣れてしまったのだ。

 蓬莱人相手だと火傷程度ならすぐに治ってしまうし、消し飛ばすレベルの熱なら肌で感知されてしまうので、所詮目眩まし位にしかならない。そもそも、炎はスピードが出にくいのも時間を味方にしてしまう輝夜を相手にするには少々参る。

 なら炎以外を使えば良いんじゃ……と思ったあなたに残念な事実を教えてあげよう。


『妹紅は炎に関連する物が絡む妖術しか使えない』


 いや、性能が尖りすぎではないだろうか。と、残念ながらこの調子であり、藍色もこれに関してはお手上げだった。能力? この肝心な時に成功すると思った?

 輝夜が炎を攻略してしまい、既存の妖術では妹紅は炎以外を使えない。能力は限定的過ぎて派生させにくい。ならどうする?

 ここで最初のぬえの発言が出てくる。既存の妖術が駄目なら根本から違う新しい妖術を作ってしまえば、妹紅も炎以外の物を扱えるかもしれない。

 勿論得意の炎を蔑ろにするつもりは無い。そこは二つの妖術を上手く合わせて尚強力にしてしまえば問題は消える。

 ……長いからまとめろ? 結局は新しい妖術作るって事さ。


「頭が痛くなってきたんだが、一度まとめさせて」


「二度言うつもりは無いし、時間をかけるつもりも無い」


「……頭がパンクしそうだよ」


「蓬莱人だから治る」


 鬼だ! 鬼が居る!


「……難しいから私はパスしたんだけ」


「興味深い。私も聞いてくるよ」


「難しい話大好きとかなにそれこわい」


 妹紅は確定として、ナズーリンも強化フラグが……


「悪い、一緒に聞かせ」


「好きにして。次にそれぞれに酷似した現象を……」


「おい! 何だか話が突飛し過ぎ」


「黙って聞け」


「ぐっ……こいつムカつく……」


 ……あれ、これまさか妹紅が将来的に藍色に敵対する可能性有り? フラグ立った?


「良いじゃないか。君の為に一から考えてくれているんだから」


「…………まあ、な」


 ナズーリンが折ってくれました。流石だな……


「じゃあこの理論で実験するよ」


「よし来い!」


「お手柔らかに頼むよ」


 ……そんな皆から離れて……


「皆凄いな〜」


 ぬえは一人、蚊帳の外であったりする。







「……はい、間違い無く頂いたわ」


「あいよ」


 例の写真を軽くひょいと受け取るルーミア。手渡したのはわんこでお馴染みの代さんです。結局パシられてるし。

 しかし、来た方向が妖怪の山ではなかったのは何故か? ルーミアは何か感づいてるが……


「毎日毎日大変ね、運命から逃げたいとか思わないの?」


「現に逃げ出した事あるだろ。運命からじゃないけどさぁ」


「あったかしら」


「ほら、俺と藍色の初対面」


「ああ、あの犬生初のわんこ呼ばわりの日ね」


「それを持ってこなくて良いだろ!?」


 ルーミアが楽しそうでなによりです。


「クスクス、面白い奴」


「……いい加減怒るぞ?」


「良いわよ。怒ったあなたの千人や万人捻り潰せる力があるから」


「ぐああああムカつく! 事実だから尚ムカつくッ!」


 これは酷い。


「見てろ! 絶対お前より強くなってやるぞ!?」


「主にどの辺りで?」


「弾幕に決まってるさ」


「え? あ〜……ああ」


 ルーミアの奇怪な反応に首を傾げる代。そんな代にルーミアは……


「確かに弾幕決闘は妖精でも八雲に勝てるし、私チルノより弾幕決闘苦手なのよね」


「え? マジか?」


「マジよ」


「じゃあさっきの千人や万人って何だよ」


「それだけあなたが弱いって事よ」


「チクショー!?」


 完全に馬鹿にしてるよね!?


「どうどう」


「馬じゃねぇよ!」


「はいはい、悪かったわよ」


 手のかかる犬ね~とか呟きながら鞄を開くルーミア。我慢の限界が近い代に何かを渡した……ってさっきの薬(青)じゃないか。


「これお土産よ」


「なんだそれ」


「飲ませたら三時間、気丈な椛でも胡散臭い八雲でも例外無く可愛い子供にしてしまう薬よ。私は使ったわけじゃないけど、まず間違い無く黒歴史を刻めるわね」


「なん……だと!?」


 あれ、目の色が変わった。


「あら、欲しいの」


「無論だ」


「苦労してるのね~」

 とりあえず、ポンと手渡してさっさとバイバイした。使ったかどうかはきっと新聞に出るだろう。


「個人的には使ってもらえると楽しいんだけどね」


 ……ま、そこまでは知った事じゃないが。







「ただいま。何で黒こげになってるの?」


「うむ、少しやんちゃしすぎてな」


「悪かったな」


 ルーミアが戻ってきてみれば、皆黒こげだった。ぬえもちょっと焦げてるし……


「……で、何の話をしているの?」


「異変の話」


「あぁ……」


 しかしもう済んだようで。三人は帰り支度をしていた。


「じゃあな」


「勝てると良いね」


「おう!」


「ぬえ、寺で復習するぞ」


「ひ〜ん、勘弁してよ〜……」


 ……あらら、また皆居なくなっちゃった。


「ルーミア、どこ言ってたの?」


「立派な取引と裏取引、かしらね」


「……む?」


 まあ良いかと藍色は思考を切り替え、藍染の唐傘を回しながら時間を潰した。

 そんな事はあったものの、もう今日は大した出来事は起きず……強いて言うなら、小町が泣きながら帰ってきたり小傘とフランが紅魔館に泊まる事を咲夜が伝えに来たり。逆に幽香が泊まりにきたりした位だ。

 いつもの夜と比べたなら多少変化はあったが、結局は退屈になってしまった……が、特に気にした様子のない藍色は次の来客をのんびり待つ事にした。







 ちなみに……


「ありがと〜!」

「次は遊びに来て下さいね、紫さん」

「またね〜」


「ええ、そうするわ」


 藍色を探して幻想郷一周の旅。紫は地霊殿を出発した。





 皆の現在地!

 紫……地霊殿前

 藍……八雲邸

 星……命蓮寺

 夢子……妖怪の山


 わんこは既に常連です。と風心剣さんにかなり失礼な事を言い始めた空椿です。しかし私は自重しない。


 そんなわんこに末恐ろしい物を渡してみました。このネタが流犬録で拾われるかは分かりませんが渡しました。文が持ってくる新聞に関連した事が載らない場合はネタが拾われなかったか、文が被害にあったかどちらかと考えて下さいな。

 あ、こちらの代と風心剣さんの代はほぼ別人と捉えてしまって構わないですよ。時系列も微妙に合ってないし。なるべく合わせますが。


 とりあえず、薬をどっさり頂きました。これで数える心配が無くなるよ! やったね!

 まあ、このイベントのおかげで前より気軽に薬を使えるようになりました。皆に渡すのも楽チンです。


 さて、輝夜に負けっぱなしの妹紅を救済しました。何故輝夜が勝ちっぱなしだったか? 輝夜は藍色の能力の応用の話を聞いているんですよ。

 地味にナズーリンも混ざってたんですがね。今後のこの二人の成長にご期待下さい。


 レティは幽香との関係を知り合いから友人にランクアップさせています。サディストな面を除けば意外と似た性格だから自然と浮かんだペアだったりします。

 今後は夏の代表と冬の代表とまぁ正反対な二人をもっと仲良くさせて行きますね。


 仲良くと言えば、○○と××を仲良くさせて~とかいう要望はまだ来てないですね、意外と……

 まだやってないけど、恋バナにしてしまう用意は出来ていたりしますよ? まあそうなると高確率でガールズラブ注意が付きますが。

 ボーイズラブ? ごめんパス。


 そんな空椿ですが、まあこれからもお付き合い下さいな。活動報告の神社へのお賽銭もお待ちしてます。ではノシ

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