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東方藍蓮花  作者: 空椿
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藍色と竹林 妙薬は敵だ

「迷った……」


 ちょっと突然ではないだろうか…………ちなみに、現在地は竹林である。幻想郷でも有名な迷いの竹林である。肝試しに行きたくない場所ベストスリーに数えられる竹林である。

 ちなみに他には紅魔館、廃洋館が入る。白玉楼は一般人は入れないので除外。行けたら文句無しでNo.1だ。


「……暗い、よ〜」


 別に怖いわけではない。言ってみただけである。本当に謎の雰囲気作りだ。


「…………止めた」


 そして面倒臭くなったので、冗談は止めて普通に進む事にする。迷う確率を充分に下げてから。

 しかし、本当に誰も居ない為に少々寂しい。その寂しさを紛らわす物すら無いのだが。あるとすれば竹だけだ。

 そんな中を黙って進む藍色だが、退屈を紛らわす方法が髪の毛弄りだけでつまらなそうだ。


「ん〜……」


 そのまま五分ほど歩いた時の事である。踏めば沈む道に出会ったのは。まあ、落とし穴なのだが。

 底に激突したが、大して痛くなさそうだ。むしろ退屈が紛れて嬉しそうだ。


「や〜い、引っかかった〜」


 と、穴を覗くウサミミに遭遇した。正確にはウサギだが、耳しか見えない。


「落ちろ」


 の言葉と共にウサギが落ちてくる確率を上げる。するとどうだ、ウサギは足を滑らせて落ちてきたではないか。


「あいたぁっ!」


 黒髪にウサミミをつけた少女。因幡てゐである。


「なんで? なんでいきなり落ち……て土?」


 雨や雪ならまだあるだろうが、土が降るとは何事か。上を見上げてみたら……


「わっせ、わっせ」


 楽しそうに土を穴に入れる藍色の姿があった。いつ穴から出た?


「ちょちょちょちょっと!? いたいけな少女を土に埋めて楽し」


「私を罠にはめてくれた仕返し」


 やりすぎだ。と叫ぶてゐに無視を決め込み、淡々と土を運ぶ藍色。


「ごめんなさいごめんなさい! だから助けて〜〜!」


「最初から謝れば良かったのに」


 相手が宙に浮く確率を上げ、てゐを浮かせる。穴から出た所で元に戻して終了である。穴の脇に同じ位の大きさの岩が置いてあるのを見ててゐはゾッとした。シメにこれを……いや、止めておく。


「それじゃ」


「あ、その先は」


 ズボ。落とし穴だった。


「…………兎さん」


「……悪かったって」





 なんてコントをしていたら、大きな屋敷についてしまった。永遠亭である。

 別に藍色は来たかったわけではないし、隣のてゐも案内する気は無かった。迷う確率を下げたら着いたというだけである


「あら、患者さん? それともお客さんかしら」


 偶然屋敷の入り口付近にいた女性が話しかけてきた。見たところ誰かを探していたようだが。


「多分お客さん」


「あらそう。ならいらっしゃい。てゐは優曇華を探してきて頂戴」


「あいよ〜」


 藍色は女性の脇を通り抜けて屋敷に無断侵入。お邪魔しますだけは言った方が……

 てゐは竹林に戻っていった。





「はじめまして。八意永琳です」


「藍色」


 相変わらずの短い自己紹介を済ませる藍色。


「それで、ここ永遠亭に何の用?」


 自分でお客さんと言ったんだから何かあると思ったらしい。


「なんにもないの」


「あら、そうなの」


 そうなんです。


「偶然立ち寄っただけ」


「なんだ、それなら早く」


「聞かれなかったら言わない」


 藍色の考えはよくわからない。


「もう……ちょっと怒るわよ?」


「怒らせない」


 椛の時と全く同じ事をしている藍色。永琳の頭は既に自分の状態を理解していた。


「凄いわね。あなたの能力?」


「うん」


 興味深そうに藍色を見つめる永琳。やがて藍色に待つように言って部屋を出た。


「む?」


 藍色は言われた通り待機を決め込んだ。

 数分で戻ってきた永琳は手に青色に淡く光る液体の入った試験管を持っている。


「なにそれ」


「私の能力、あらゆる薬を作る程度の能力で作った薬」


 なんとなく永琳の意図を察したらしい藍色は凄まじい速度で後ろに下がった。


「怒りたいのに怒る気が出ないなら、怒っている時と同じ行動をすればいいだけよね?」


「そういう事……なの?」


「せっかくあなたの能力を肌で感じたのだから、私もそれなりのお返しをしなければいけないと思って」


 怒ってない分出ている笑顔が尚更恐ろしく見える。


「いらな」

「遠慮しな」

「貰ったら申し訳無いか」

「ストックは沢山あ」

「私薬を飲むと蕁麻疹が」

「大丈夫、アレルギー反応が出ないように作っ」

「し〜しょ〜お〜」


 相手の発言を遮り続ける会話に、一人の少女が口を出した。


「あら、優曇華。お帰りなさい」


 優曇華と呼ばれた少女はジト目で永琳を見ている。こうかはいまひとつのようだ。


「用事って何ですか?」


 永琳は小さな紙を優曇華に渡す。


「これを集めて頂戴。少なくなってしまって」


「了解しました。なるべく早く戻ってきますね」


 行ってしまった優曇華を見送り、振り返ると……


「……もう居ない」


 藍色は逃走していた。





「……ちょっと興味あったかも」


 逃げて後、あの薬品が何なのか心底気になっている藍色がいた。


「いいけど」


 気持ち的にはあまり良くなかったりする。まあ引きずっても仕方が無いので永遠亭の散策を開始する藍色。

 適当に部屋を開け、ほんのたまに家具の中身を覗き、核のマークのついた部屋をスルーし、広い庭で跳ねる兎を数えて飽き、兎の真似をしてピョンピョン跳ね、そこをたまたま通りかかった人物に見つかった。

 互いに沈黙し、お互いを見つめ合う。藍色の目に映るのは、ゆったりした着物に綺麗な黒髪の少女。相手の少女に映るのは、新品らしい藍のワンピースに身を包む藍色の少女。


「……誰?」


「いや、こっちが聞きたいんだけど……」


 とりあえず自己紹介から入る事に決めた二人。


「私は蓬莱山輝夜よ」


「藍色」


 いつも通り四文字で終わる自己紹介。面白みも何もない。


「で、あなたは何をしてたの?」


「かくかくしかじかなの」


「普通にかくかくしかじかって言われても困るのだけど……」


「そう」


 冗談も程々に……


「本当に何してたのよ……」


 かくかくしかじか。


「って事」


「なるほど」


 今度はちゃんと説明。輝夜は納得したようだ。


「あなた面白そうね」


「うん」


 自分で言ってどうする。


「私も退屈してたし、何か話聞かせてくれない?」


「私でいいなら」


「あなたがいいの」


 そして、半ば拉致するように引っ張られていった藍色だった。





「幻想郷に来てからの事しか聞いてないけど……随分紆余曲折を経てい」


「その紆余曲折に永遠亭も含まれるけど」


「その発言被せてくるのどうにか」


「ならない」


 そんなせっかちな藍色と長い間話した輝夜は少々疲れたらしい。


「ま、随分有意義な時間だったわ」


「そう」


「じゃあ、私の話も聞く?」


「うん」


 と言うわけで、今度は輝夜が話――


「あら、ここにいたのね」


 ――せなかった。先程の藍色の話題に出た永琳がここで登場した。手には先程の薬が。


「永琳、それ何?」


「ああこれですか?」


「うん」


 興味津々の輝夜、一緒にワクワクしている藍色。


「これはですね〜」


 スタスタと輝夜に迫り、


「そぉれ」


 飲ませた。


「!?」


「あ……」


 薬は全て輝夜の腹に収まり、やっと解放された輝夜は永琳を睨む。


「飲ませないでよ!?」


「別に対した害は無いわよ? 肉体の年齢が十歳程追加される薬だけど、三時間で戻るし……」


「なんだ」


 なんだじゃない! と突っ込み不足に頭を悩ませていると、ポンという可愛らしい音が鳴って輝夜が煙に包まれた。


「あ」


 永琳が手で煙を飛ばすと、結構背の伸びた大人びた輝夜が居た。


「……蓬莱人にも効いたのね」


「効くと思ってなかったの?」


 何故かびっくりしている永琳に藍色が呟いた。


「なんだか……面白いわね。いつもより頭が回るわ」


 本人の輝夜は意外と面白がっていた。


「成る程、相応の思考力も得られるのね。力はどうかしら……」


「さあねぇ」


 元々桁違いの美貌に大人っぽさが加わってとんでもない事になっている輝夜。永琳もどこか楽しそうだ。


「……藍色、どうしたの?」


 と、ここで輝夜が目を輝かせている藍色に気付いた。


「永琳」


「何?」


「さっきの頂戴」







 夕方、小さな鞄を持って永遠亭を後にした藍色を兎達が見かけたそうな。



 藍色は面白い物をゲットしたようです。


薬の効果:外見の年齢を増やす。人間を目安に大体十歳程度。効果時間は三時間、その間は相応の思考力を得られる。

副作用は無い。






多分どこかで誤って使うかもしれない。

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