藍色と相談 難題は敵だ
「霊夢が」
「そう、あなた達をお呼びよ」
文が号外をバラまいていたので聞いてみたが、まさか自分達の話題だったとは藍色達も思わなかったようで。
「会話中でもいきなり立ち上がって移動しちゃうような一行を捕まえたいなんて、巫女も人使いが荒いのよね」
「否定はしないけど、あなたが巫女の手伝い?」
「取引よ。巫女の手伝いの代わりに、起こった話題は記事にしていいとね」
ただし脚色したら殴り込むと釘を刺されたらしい。
「……巫女? アイツか?」
「あなたの言うアイツが誰だかは知らないけど、多分別人よ」
「あっそ」
幻月の話題の人物は誰なのだろうか……?
「ん〜、ご主人様、行く?」
「行こう」
「了解よ。文、また後で」
「はいはい」
黒鳥を出現させ、文を除いた全員が乗り込む。あとは飛ぶだけだ。
あと、これは一行にはあまり関係は無いが……
「……知り合い達にも一応言おうかしら? 多分興味は無いだろうけど」
と考えたそうだが、結局言わなかったそうな。
「ま、この号外を見たなら反応はするかも」
自分から見せるつもりは無いけども。
ビュンと音を鳴らし、神社に降り立つ五人。飛び降りた瞬間に黒鳥は霧散して消え、青空が映る。
幻月もタイミングが少しは分かってきたようで、今回は問題なく着陸した。
「霊夢」
「あ、来たのね。待ってたわよ」
霊夢は定位置でお茶を飲んでいた。もう白湯とはおさらばしている。
「よ、どうかしたのか?」
なんと魔理沙が。どうやらたまたま遊びに来ていたらしい。奥の部屋に上海と蓬莱が見えるし、アリスも居るのだろう。
「霊夢に呼ばれたの!」
「そうかそうか。何か目的でもあるのか?」
「ちょっとね。せっかくだからあんたも混ざりなさい」
「え」
魔理沙強制参加のお知らせです。しかし興味がわいていたのは確かなようで不満はなさげだった。
「入りなさいよ。天子達はもう来てるわよ」
「早いのね」
「たまたま近くに居たって」
なら仕方ない。藍色達も上がらせてもらった。
紫達にはスキマは諦めてもらう。
「「お邪魔しま~す!」」
挨拶をしたのはフランと小傘だけ。藍色は無言で、ルーミアは頭を下げただけなのだが、もう誰も気にはしない。
藍色は紫に似た所があるからなぁ。不法侵入的な意味合いで。
「お先に失礼してますよ」
「しばらくぶりね」
衣玖とアリスが向かい合って座っていた。
「こんにちは~」
「ハローです」
上海と蓬莱も普通に話せるようになり、アリスの家は賑やかになったようだ。
「二人も、もうすっかり話せるようになったの」
「その節では藍色様に本当に感謝してます」
「サンキューです!」
「しっかり性格の違いが出てる……」
面白いし良いではないか。
「私も驚きました。まさかアリスさんにも藍色さんが関わってるとは」
「それは良いけど、天子と萃香は?」
「少々出掛けております」
「そう……って、幻月は?」
神社の中に居ない。まだ外か?
「見てくる」
小傘達をルーミアに任せ、藍色が様子を見に行った。
「喧嘩は控えなさいよ〜?」
「うん」
なんて心配をしていたが問題は無かった。何故か落ち着いた様子で霊夢と話していたので、邪魔するわけにもいかない為盗み聞きの形に。
「……じゃあ、先代は死んだのか?」
「知らないわ。物心ついた頃には居なくなってただけだから生きてるかもしれないし、やっぱり死んでるかもしれない」
「確かめる方法は……無いか」
「あまり幻想郷を舐めないほうが良いわよ。千里先まで見渡せたり、生き物の情報なら全て持ってる閻魔が居るから」
「成る程なァ」
たしか椛がそんな能力だったな。閻魔が生き物の情報を持っているのは当たり前のようだが。
「そうね、アンタが今粘着してる藍色でも行けるかしら」
「粘着って言うなドアホ」
「退治するわよ。博麗の名にかけて」
「……チッ」
……これはやはり、話題的には先代巫女の事だろうか?
「で、どうする? やるの?」
「やらねェよ」
「あっそ」
ヒヤッとさせやがる。
「まあ良いわ。先代博麗を見つけたいなら、それが出来そうな人物を頼る事ね」
「頼るゥ?」
「当たり前よ。あなた一人で見つけられるの? 土地勘も能力も勘も無いのに」
「うぐっ……」
言うな〜……
「霊夢、来てあげたわよ」
「あら紫。歩いてくるなんて珍しいじゃない」
「藍色付近はスキマが開かないのよ。忌々しい事に」
おや、紫が来たようだ。盗み聞きは終わらせて戻る事にした藍色だった。
「スキマが開かない、ねぇ」
「おかげで私本来の動きが出来ないわよ」
「本来、ね。その戦いは楽しくないの?」
「いいえ。これはこれで新鮮味があって楽しいわ。ただ、全力ではないのが残念かしら」
「そう。ま、上がって頂戴。大方揃ってるから」
「はいはい。お邪魔しますわ」
この会話は、藍色には聞こえなかった。
「さて。揃ったわね?」
外に出ていた天子も帰ってきたので、やっと会話が進む。人が集まる部屋の中で霊夢のみが立ち、注目を集めている。
「あなた達を集めた理由は単なる私事になるんだけど、もしかすると大結界に関連するからね。ちゃんと聞きなさ」
「いいから始めて」
藍色が痺れを切らした。
「……分かったけど、次から黙って聞きなさいよ」
「うん」
「じゃあ、聞くわよ?」
霊夢が一息入れる。部屋の外に居る魔理沙とアリスも静かに聞いている。
あれ、文はどこだろう。来てると思ったのに。
「あんた達の普段やってる『死合い』を、私もやりたいの」
「ちょ、れ」
「紫?」
黙ってろ。無言の圧力を頂き、縮こまる。
「確かに、スペルカードルールを作った私が自らスペルカードルールをねじ曲げるのも滑稽な話よ。でもこれは私にとっても幻想郷にとっても重要な話なの。最悪のシナリオを考えちゃうと幻想郷が潰れるくらいにね」
…………これは驚きである。魔理沙も目を白黒させている。魔理沙が元々黒白って言われてるけどさぁ。
「まあ流石にそこまでは高確率で行かないと思ってるけどさあ、まかり間違ったらそうなるわよ。今から説明するわ」
……あれ、藍色が居ない。
「原因は藍色。発端は恐らくフランとの戦闘、それが違うなら洩矢の神様との乱戦。いくら早苗が注意を呼びかけたとしても、噂は尾鰭や背鰭がつく物。私の所にこんな話が流れて来たわよ? 『スペルカードルールで戦わなくても良いんじゃないか』とね」
紫が眉をひそめる。確かに、ちょっと厄介だ。
「おかげでごく少数の妖怪がスペルカードルールを無視して暴れるようになった。今は少数だから問題は無いけど、これが増えてくると人里が危険になるわ」
妖怪と人間が対等に戦う為のルールだからな。元々優位に立っていた一部妖怪の仕業かもしれない。
「万が一人里が潰れてしまえば人妖の均衡は成り立たない。幻想郷は人間を受け入れても人間を許さない世界になるわ。無論私もタダで済むなんて思っちゃい無いわ。私も人間だから」
つまり、紫の目指した『人間も妖怪も居られる』幻想郷では無い、妖怪しか居ない世界となる。果たしてそれは人間にとって理想郷なのか?
「……あとはあんまり想像に難しくはないかもね。創造主八雲紫の幻想郷は壊れ、別物の幻想が出来上がるわ」
「いや、難しいぜ」
「魔理沙、ちょっと黙ってなさい」
睨みを利かせるな睨みを。
「まあ、それは最悪の結果。話を戻すと、スペルカードルールに沿わない戦いが密かに流行し始めてるの」
やっぱり藍色がまずかったかしら? とルーミアが考えを始めた。
「そいつらを懲らしめるのは一筋縄じゃ行かないのよ。正直普通の弾幕なんて効かないし、まさか私が殺傷設定にするわけにもいかないじゃないの。天子や萃香の時の戦いをもっとスリリングにした感じになってるわ」
天子と萃香が自分を指差す。衣玖も理解してくれた。
「だから、いっそこっちが相手に合わせてやろうって思ったわけ。根本的な解決には至らないしむしろ悪化するかもしれないけど、私が藍色のような戦いを学べば対応はより迅速になる。どうかしら?」
……頃合いだろう。ルーミアが一番に沈黙を解いた。
「悪い考えではないと思うわよ? 基本のスペルカードルールを表の戦い、死合いを裏の戦いと上手く分けられればね」
「そう言ってくれたら悩んだ甲斐があったけど」
続いて紫。
「そう上手く行くとは思えないけど、確かにそんな妖怪を鎮める術を霊夢が覚えるのは得策かしら」
「でも、霊夢だけだと対応が遅くならない? かといってあんまり大人数にするとそれこそマズいんじゃ?」
「そこはね小傘。藍色と深く関わりがある人達に限定すれば良いんじゃない?」
小傘とフランが議論に参加した。霊夢も自分のお願いが通ってホッとしたようだ。
「……私達は死合いをした覚えは無いけどね」
天子が呟いたが、多分皆聞いてない。
「なんか面白そうだな。アリス! 私達も行くぞ!」
「……勘弁願いたいわ」
魔法使いも参加。
「文! もう良いわよ!」
……文は今の今まで待機してたのか!
「やっと許しが出ましたか! 取材の封印が解」
「そのネタはアウトよ天狗」
「あやややや?」
賢者のストップを貰った。
「死合いを学ぶメンバーは参道に。フランと小傘も参道にね。藍色が待ってるから。残りのメンバーで死合いをどの程度広めるか考えるわ」
藍色そっちに居たのかよ。
ともかくこの場はルーミアが仕切り、天子一行、霊夢は藍色の元へ。魔理沙はアリスを引っ張って参道に。
「じゃあ始めるわよ。愛する幻想郷の為に」
「非力ながら私もお手伝い致します」
文も話し合い側に参加。ルーミア、紫の知識人を加え、話は進む。
まあその話は大して面白くは無いので視点は移させて頂きます。
幻月はそもそもどちらにも参加していないので、縁側で藍色の観察をしている。
「藍色、居ないと思ったら外だったの?」
「難しい話は嫌い」
「あとでルーミアさんが掻い摘んで説明してくれるでしょ」
そうでしょうね。
「じゃ、簡単に言うわ。ここに居る全員に死合いを教えて頂戴」
「ああ、やっばり私も強制なのね」
アリスも諦めて参加する事になった。魔理沙についてきたのが運の尽きかな……
「ご主人様、元気出して下さいよ」
「ファイトです」
「ああ、ありがとう……」
……不憫よのう。
「別にいいよ。教える事は無いから始めるよ」
「……総領娘様、まさかやる気ですか?」
「当然。八雲紫に一矢報いる日も違いわね」
ここでボソリと鬼が呟く。
「……死に物狂いでやらないと永遠にこないよ」
「ちょっと鬼、今何か言った?」
「頑張れって言ったのさ」
嘘じゃないよ! 本当でもないけどさ!
さて、長々藍色に話させるわけにもいかないので一部を抜き出しましょう。
「ちょ! 藍色、手加減し――」
「とぉ」
……額に拳が入ると痛いようで痛くないよね。でも脳が揺れる感じはする。
「おおおおぉぉ……」
「はい、次」
「休ませて……」
「休みは与えない」
「うひ〜、鬼より鬼だねぇ」
「鬼が言うと洒落にならないよ」
小傘の呟きは、はたして萃香に届いたのか。
「ちょっとくらい優しくしてくれて良いじゃない!」
「良いよ、死にたいな」
「今のままで良いわよ」
霊夢の防御能力が上がった出来事だ。
「ちょっと魔理沙! あんた、そのバ火力は洒落にならないわよ!」
「そうだな! 解放された私の全力をよく見てろォ!」
「わあ! 私も負けてられないな!」
「ちょちょちょ、フランまで混ざろうとしないでぇ!」
……フランは片手に傘を握ってるから威力半減だが、そんな感じには見えない光線が空に輝いた。隣に五倍は大きい光線があるのに何故こちらを挙げたのか私も分からない。
「へっへ〜、見たか私の努力の結晶!」
「本当にバカ正直に派手さとパワーにこだわるわね」
「私だからな。しかし、まだまだ威力は上げられそうだ」
「……ちょっと? まさか」
「いよっし! やってやるぜ!」
魔理沙の向上心に余計な火をつけてしまった出来事だ。
「……ねぇ衣玖、あなたが本気出したらどうなるの?」
「出してみましょうか?」
「うん、興味があるわ」
「分かりました。少し離れて下さいね」
衣玖が参道の中央に立ち、右手を上に上げる。
「竜神様。配下とあろう者が、一瞬のみ力を越える事をお許し下さい」
「……え? ちょ、あなた……」
「い、衣玖!」
「おい待て! それは」
「はあぁ!」
今までに無い強烈な落雷。神社は砕け
「夢符「二重結界」ッ!」
「境符「四重結界」!」
「闇夜「ダークネスレイヴン」」
るまえに防いだ。割と本気で防御したのだが、結界も黒鳥もことごとく突き破った後に敷石を7つ程破壊して止まった。黒鳥も一発で霧散した。
「…………衣玖?」
「私はいつも本気を出すなと言われてまして」
「何よ、まさか異変の時私と戦ったのも?」
「総領娘様にあなた達を会わせるのが第一でしたから」
「……冗談キツい」
藍色も割と本気で焦った出来事だ。
「オイ、俺も混ぜやがれ」
「良いよ。フランと模擬戦から」
「は〜い!」
「……お前かよ。調子狂うな」
「行くよ! 禁忌「そして誰もいなくなるか?」!」
いきなり発動してきたが、フォーオブアカインドを使わない辺りが優しさか。
「消し飛べゴルァ!」
幻月も対抗……
「こら」
とかする前に藍色が幻月を蹴り飛ばす。フランは能力で無理矢理止めた。
「あ〜! 何すんの!」
「そォだ! 何でテメェが混ざってくる!」
「私は模擬戦と言った。殺す攻撃をする戦いを模擬戦とは言わない」
「あ、あれ? 藍色もそんな戦いしてるって聞いたんだけど」
「霊夢、ご主人様の戦いは殺し合いじゃないの。可能性として死ぬ場合がある戦いの事を言うんだよ」
もし本気で相手を殺しに行くなら能力をフル活用するだろう。多少失敗しようが少し結果を変えれば同じような事を何度も出来るという強みを利用して。
「他の奴にも教えてあげたいよ。これは殺し合いじゃありませんよ〜なんてね!」
「……分かったよ、倒すだけにとどめれば良いのか?」
「そう。分かったら続けて」
「じゃあ改めて行くよ!」
「……お〜う」
幻月が殺し合いではなく死合いを覚えた出来事だ。
「……ちょっと藍色、来なさい」
「うん」
霊夢が目立たない所に藍色を連れてくる。
「あんた、自分の事は知ろうとしないの?」
「……う?」
「天狗に調べさせたりしたけども、あんたがそんな素振りを見せた事無いって聞いてるわ」
「うん」
「……知りたくないの?」
「今は」
藍色がスペルカードを見ながら言う。大した理由は無い。
「知れば何か分かるけど、もしかしたら旅を楽しめないから」
「旅を?」
「私はまだ真相を知らないままでいる。私の問題は、重いものとは理解してるつもりだから」
自分の事は一応知ってるつもりだから、とも告げる。
「重いものを持ったまま旅をする事はしないよ」
「そ。邪魔したわね」
「うん」
藍色が行ってしまった後、霊夢は一人で考える。
「あんたは軽すぎるのよ……」
藍色が自分の問題を再確認させられた事だ。
「は〜、終わった終わった」
ルーミア達が続々と神社から出てきた。
「体がカチコチよ。誰か相手して」
「ルーミアみたいな化け物クラスの奴と戦うなんて、生きた心地がしないんじゃないか? 本気の勇儀も負けたんだろ?」
「あ〜あの時ね。私より藍色達への流れ弾が心配だったわよ」
「ちょ、あれ相手に余裕綽々とかどんな化け物よ」
「化け物化け物ってうるさいわね。幻想郷の強者が私に追いついてないだけよ?」
「ルーミアさん、その発言はどうかと思いますが……」
ルーミアの力の片鱗を垣間見た気がする出来事だ。
「……あらららら? 人が沢山増えてるわ」
「いつ宴会になったのかしら」
どうやら、雷やら光線やらが妖怪達を導いてしまったらしい。集まった奴らで宴会が始まってしまう。
「は〜い、藍色はあっちに行きましょうか」
「……うぐぅ」
「既にぐったりしてるじゃない」
「そうね」
……今回は結局、宴会を招いてしまった出来事だった。
「……さて、二日酔いしてるメンバーには悪いけど、決定した事を説明するわ」
結局一夜明けてしまった。藍色も酒の臭いだけで倒れてしまい、一行も神社に泊まるしかなかった。
今は紫が仕切っている。霊夢は二日酔いでそれどころではないからだ。聞いてはいるけど。
「広める範囲だけど、藍色に密接に関係している人物とに頼むわ。具体的には、藍色を恩人と考えていたり、親友と考えてる人が良いわね」
「……妖夢と幽香かな」
「そうね。あとは藍色に大きく影響している人物とか、大体その辺りを手当たり次第に当たっていくわ」
ここで紫が藍色を見る。
「勿論、あなたを探しながらね」
「私も広めるから大人しくしてて」
「ルーミアがひとっ飛びで良いじゃないの……いたたたた」
「史上稀にみる面白くない旅を聞いたわ」
ルーミアが嫌そうな顔をした。
「旅には詳しく無いが、確かにそれはつまらなそうだな」
「道中を楽しむのが旅よ」
景色を見ながら楽しむのが旅だ。寄り道もするし、楽しければとどまる。黒鳥に乗る時はあるが、それもかなり加減した速度だし。
「まあ適当で良いじゃない」
「総領娘様、適当で済む話じゃないです」
ですよね!
なんて言ってる間に藍色が立ち上がってしまう…………もうちょっと待ってよ!
「もう出かけたい」
「だろうと思ったわよ。でももうちょっと待ちなさい」
藍色を掴んで膝に座らせるルーミア。落ち着いたのか動かなくなった。
「ま、しばらく紫達との戦闘は無いと信じたいわね。余計な手間が増えるわ」
「心配しなくても、こちらの力不足も含めて今は探すだけよ。大体の場所が分かればいざって時に楽だから」
「あっそ。天子、次からコイツラ見つけたら潰して良いわよ」
「あら、良いの?」
途端に紫が焦る。
「ちょちょちょ、こっちの負担を」
「あ、負担なの? ラッキーだね」
小傘がニッコリだ。
「んじゃ、そうするかな。紫、覚悟しなよ」
「げ〜……親友が敵に回ったわ」
「お、じゃあ私もそうするかな?」
「あなた店はどうするのよ」
「無期限の閉店だな。どうせ誰も来ないし」
近々幻想郷は旅がブームになると踏む。
「話は済んだ? ならもう行くけど」
「待て」
幻月がルーミアを止める。
「俺はここに残る」
「……そう」
藍色のみならず皆驚いたが、反論なんて無かった。ただ一人を除き。
「何でよ」
「後で話す」
……ともかく、幻月は旅を止めるそうだ。藍色はほっとしたような、名残惜しいような感覚を覚える。
「……もう無いわね? じゃあ行きましょうか」
小傘がスパンと障子を開き、皆一緒に外に飛び出す。
「んなっ!?」
参道の途中で全員跳び、黒鳥が横から飛び出してきて全員さらっていった。
無論、残された全員はポカンとしている。
「は……え? はい?」
うろたえる紫達の目の前に紙が一枚落ちてくる。字が書いてあるが……
『adieu』
「……紫、なんて書いてあるの?」
「アデュー。さらばって意味ね…………藍色達、去り際のタイミング最初から決めてたわね!?」
おかげで呆けた顔を見せてしま……おや?
「ルーミアさん! ご協力ありがとう御座いました〜!」
文がカメラ片手に手を振っている。撮影したのか? したな!?
「……まさか」
「無論、取引しました」
キュピーンなんて効果音が流れそうな文。いつの間にか仕事モードだし。
「では! 失礼しました!」
霊夢は初見の速度で消え去り、紫は怒りを覚えた。
「天子、飛び火する前に行くよ」
「すまん、私達も一緒させてくれ」
天子一行、魔法使い二人もコソコソ抜け出す。
「あ、あ、あ、」
「ちょ、紫?」
「あんのバカラスゥゥゥ!」
紫が叫んだ。そりゃあもう心の底か
「あんのバカラスゥゥゥ!」
山彦すんなぁぁぁぁ!
「「あんのバカラスーッ!」」
真似するな唐傘と吸血鬼ィィィ!
って小傘とフランじゃないか……
三連続、四人の叫び声は幻想郷に満遍なく広がり、耳の良い種族は頭がクラクラしたとなしてないとか。
「そういえばお前ら、始終喋らなかったよな?」
呆れかえった感じの幻月が藍、星、夢月の三人に絡む。そういえば文もあまり喋らなかったが、あれはただ単に会話に混ざるつもりがなかっただけだろう。
「紫様に口を出すなと言われてな」
「私が参加出来ると思いますか?」
「そもそも興味が全くありません」
「あっそ……」
程なくして、紫一行も居なくなってしまう。残ったのは霊夢と幻月だ。
「で、何で残ったのよ」
「利点が多いからなァ。先代の事を詳しく聞ける、住居が確保出来る、丁度良いライバルが居る」
「……まあ構わないけど、まだ何かあるでしょ」
「勘か」
「勘よ」
幻月はため息を吐いた。
「いい加減、俺も丸くなるべきだなと」
「それは藍色が原因?」
「まァな」
ふーんと呟き、霊夢は立ち上がる。
「来なさいよ。あなたは居候にしてあげる」
「……おう」
「じゃあ、二手に別れるわね。私と星、藍と夢月で。藍色達を見つけたら連絡、異論は……藍だけかしら
「紫様、特訓は?」
「道中にお互いでやりましょう。じゃあ、解散」
「「「はい」」」
藍色を探して幻想郷一周の旅。皆は博麗神社を出発した。
jokerさん風心剣さんお賽銭ありがとう。天色の空椿です。略しました。
紫のあんのバカラスゥゥゥ! は凄い響きました。共鳴したい方はお好きにどうぞ。まあ多分居ないか。
しかし、文のパパラッチは流石ですね。藍蓮花の紫はいい餌です。うふふふふ……
幻想郷の話は空椿の勝手な妄想が含まれてます。なんぞこれ……なんて思った方はすみません。
幻月は当初天子一行の所に混ざるつもりでしたが、やめました。霊夢と一緒に成長してもらいますよ、精神面でも。
多分次回登場までには丸くなると思います。根っこの戦闘狂は変えないがな!
最後の退散はフランが密かに案を出し、ルーミアが全部練りました。
その時に文も呼び出しました。プークスクス。
さて、皆も落ち着いてきましたね。頃合いかな……
次回はクロス回になります。
では、失礼します。