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東方藍蓮花  作者: 空椿
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藍色と夢幻 凶悪は敵だ

 特徴的なタイルをしている床を歩いている一行。幽香から許しが出た訳ではないが、藍色の独断でその辺りの部屋も覗いたりしている。

 まあ幽香も藍色なら許してくれるだろう。彼女は一行の次くらいに藍色を理解してくれているし、これくらいは多分想定内だ。


 しかし、多数の部屋が倉庫状態になっている。済んでいる人間が少ないのだろうか? 一応隅々まで掃除されているので、埃っぽかったり汚かったりは全くしない。


 これらの掃除を行っているのは、恐らく幽香との会話中に出たエリーという人物ではないかと、フランは推測している。

 話していた時の幽香の表情や、裏に見えた思考を考えると、他に話題に出た夢月、幻月は仲が宜しく無いようだし、他に誰か居るとも言っていなかった。


「あ、本だ!」


 そして本には反応するフラン。確かに箱の上に本がいくつか積んであるし、特に読んでも問題は全くないだろう。

 とか誰かが言う前に既に没頭していたりする。


「手が早いわね」


「読むのも速い」


 フランですから。


「あのペースなら二分で一冊くらいかしら」


「つまりどういう事?」


「そういう事よ」


「……腑に落ちないような……」


 小傘は納得が行かないようだが、ルーミアは何も言う気が無いようだ。


「フランよりも、幻月とやらの方が今は気になるわね」


「幻月」


「そう。藍色と小傘、能力か何かで調べれる?」


 本読みに没頭しているフランは置いておき、藍色と小傘を頼る事にした。


「わ、私? 一体ど」


「幻月は悪魔」


 藍色が能力で成功しました。頭に浮かんだ知識をスラスラと読み上げる。


「幻想郷裏の実力者で、敗北した数は先代博麗の巫女を含め片手で数えるほど。また極度の戦闘狂で、出会った人物を片っ端から潰す事に楽しみを感じている。妹の夢月に若干甘く、幽香は良い好敵手であり玩具であるという認識。総合的な強さは紫を超越するが、もしスペルカードルールを用いた場合は魔理沙に劣る」


「読み上げどうも。要するにヤバいってのが良く分かったわ」


「……ちなみに、ルーミアさんは?」


 いや、別に良いんじゃないか? それは……


「……出たよ」


「成功させる必要なんて無いんじゃ?」


「身内の状態は共用したい」


 ルーミアは反論を止め、フランもいつの間にか本を目から離して聞いている。


「幻想郷表の最強との噂が多く、封印解除後は今の所負け知らず。万が一にも博麗大結界に影響を与えないように全力は常に出さず、その本気は本人も知らない。スペルカードルールは不得意で、身内に甘い。洋菓子より和菓子が好きで、陰で食べて頬を緩ませ」


「ちょっと、余計な事まで言わないでいいわよ」


「ニヤニヤ」

「ルーミアさん可愛い〜」


「ちょっとあなた達……」


 場が緩んだので良しとしておく。


「……洋菓子なら」


「藍色! いい加減にしなさい!」


「顔赤い」


「ちょっ……!」


 皆でケラケラ笑っていると、部屋の扉がゆっくり開いた。


「……どなたですか?」


 逆刃の鎌を肩に担ぐ少女が入ってきた。見回りか何かか?


「……あ、エリーってあなた?」


「いかにも、私はエリーと申しますわ。一体此処で何をしていますの?」


「戯れ、かしら?」


「そうですの? まあ構いませんけども」


 話し方はお嬢様のようだが、上手には出ない。


「それで、一体どうやってここに?」


「幽香の連れ、知り合いよ」


「理解しましたわ」


 早い!


「館の中はご自由になさって結構です。ただし、物は最初にあった場所に戻して下さいな」


「は〜い」


 読書を再開するフラン。


「ところで、ルーミアさんとやらはどなたですか?」


「……私だけど、何?」


 エリーがちょっと笑顔を浮かべる。


「和菓子、お持ちしましょうか?」


 珍しく、ルーミアが顔を赤くした。


「…………ルーミアさん可愛い」


「一丁前に大層な口を聞くようになったしゃないの〜?」


「いたたたたた! ウメボシはやだ〜!」


 ウメボシで通じない方、両拳を側頭部にあててグリグリするあれだと考えて頂ければ……


「助けて〜!」

「あははははは!」

「む」

「この! この〜!」


「……用意してきますね」


 普段より騒がしい一行を残し、エリーは去った。







 そのままの場所だとちょっと微妙なので、ちゃんとした部屋に移動した。


「はぁ、落ち着いたわ」


 用意された饅頭をゆっくり口に運ぶルーミア。口に入れた瞬間だけ笑顔がこぼれる。いつもの大人っぽさより子供っぽさのほうが目立つ不思議な光景だ。


「何分久し振りに作ったので、お気に召して頂けて良かったです」


「おいし〜!」


「……うん」


 これで久し振り? 幻想郷の和菓子職人が泣くぞ?


「材料は常にあるのですけどね」


 曰わく、幽香が気を使って毎日調達してくれてるらしい。古くなった奴はくるみにやれとの伝言付きで。


「なんだが、くるみがいっつも酷い目にあってるみたいだけど大丈夫なの?」


 フランがど〜も気になったらしく、聞いてみる。エリーは諦めの念がこもった顔をした。


「あの子は良いのよ。自業自得だから」


 幽香に口で喧嘩を売る奴だからなぁ。幽香が怒ったのかな?


「どうせ今日も喧嘩腰だったのでしょう?」


「うん」


「あと早口だったわよ」


「聞き取れないくらいにね」


 エリーの眉が引きつった。


「どうせ聞き取れない程早く喋れば、本人の目の前で悪口が吐けるとでも思ったのでは?」


「残念ながら、こちらには小傘が居たので……」


「沈められたと」


 何故ピンポイントでそれを当てられたのか謎です。


「……小傘さんは、そういった能力なのですか?」


「範囲が広いだけよ」


「聞かせて貰えるかしら?」


 皆は黙って頷き、藍色が能力の応用の話をしてから、ルーミアがエリーに説明した。


「相手を驚かす程度の能力、転じて相手を驚かせる程度の能力ないし相手を強制的に驚かせる程度の能力。転じて事実上相手を超える程度の能力となってるわ。本人が使いこなしてないせいで曖昧だけど」


「へぇ、そこまで来れたら後は使いこなすだけね」


「そうそう。でもこの子ったらまだ全然なの」


「あうっ」


 小傘にちょっとダメージ。


「しかし面白い話を聞きましたわ。本に纏めても構わないかしら?」


「お願い」


 進んで本にしてくれるらしいので、有り難く頼る事にした。


「では誠に勝手ながら、今から執筆作業に入らせて頂きますわ」


 エリーはスッと立ち上がり、こちらに一礼してから去った。


「……行こ」


 藍色も立ち上がり、館の見学を再開するつもりのようだ。お菓子も尽きたので異論は無く、また特に変わった物の無い廊下を歩く事になった。









 ……………………あはは……


「…………う」


「んァ」


 いやぁ、まさか……ね。


「お前ら誰だ?」


「まず最初に自分が名乗るべきじゃないかな……?」


 フランが、白い羽の人物に返事をした。若干顔が歪む。


「あーン? 誰が俺の質問に質問を被せていいっつったよ」


 ただの一瞬で一気に増幅された殺気が撒き散らされ、精神的に弱い小傘とフランは怯えてルーミアの後ろに隠れる。


「名前」


 恐らく最悪のタイミングで藍色の強情が発揮されてしまう。ルーミアは頭を抱えた。


「あ゛?」


「だから名前」


「質問を被せんなってんだ。お前の耳は飾りかァ?」


「名前」


「ウゼェな。喧嘩売って」


「な、ま、え」


 コラアーッ!


「…………藍色、ここまで殺気をまき散らされたら誰だか分かるでしょう……」


 ルーミアはもう諦めの境地に至ったらしく、溜め息混じりに声を挟んだ。


「幻月ね? 私はルーミア。こっちが藍色で、後ろの二人は小傘とフランよ」


「チッ……最初からそうしろってンだよ。そうだ、俺が幻月だ」


 しかし張り詰めた殺気は消えるどころか増すばかりである。イライラしてるんだろうな……

 というか、夢月に会う前にいきなりコイツか……


「面倒に発展させて申し訳無いわね。早々に立ち去るから勘弁して頂戴」


 本当の面倒になる前に撤退を試みる。しかし、ルーミアはこれが成功するとは毛頭思っていない。成功すればラッキー的な感覚だ。そして勿論……


「待てよ。俺の機嫌を悪くしておいてハイサヨナラなんて言わせるか?」


「やっぱり……」


 ただで帰してくれないらしい……

 幻月の右手にエネルギーが集まり、こちらに向ける。


「ルーミア」


「分かるわよ!」


 藍色とルーミアがスペルカードを抜き、藍色は天井を見上げる。


「死ね」


 瞬間、不可視のエネルギーが床と壁を綺麗に貫き、粘土にストローを通したような状態になる。遠くで水が流れる音が聞こえた。


「ケッ、呆気ねェな……」


 唾を吐き捨て、背を向けて歩き出す。


「否定証明「絶対確率」」


「あ?」


 不可解な声が耳に入り、思わず振り向く。その頬に藍色の膝蹴りがヒットし、幻月を廊下の向こうに吹き飛ばした。


「んだァ!?」


 しかし、ダメージが少ない。どうやら土壇場でダメージを逃がされたようだ。多分勘に近い物だろうが。


「身内に手を上げたのなら、容赦しないから」


「テンメェ……」


 明らかに怒りを露わにする幻月。珍しく不機嫌がはっきり顔に出ている藍色。ルーミア達はやや遠くから見守る。


「滅される覚悟は出来たのかァ!?」


「そんなつもりは無い」


 幻月の周囲に不可視のエネルギーが集まる。そのエネルギーは幻月の両手に集まり、攻撃のスタンバイをすぐさま完了させた。


「消えやがれェ!」


「む」


 最凶と藍色が戦闘を開始してしまった。


「……ああ、もう」


 ルーミアがそれを遠巻きに見つめていると、後ろのフランが小さな悲鳴を上げた。


「どうしたの?」


「み、水が……」


 小傘が足元を見ると、どこからか水が流れてきている。吸血鬼は流水が苦手である。


「ちょっとマズいかもしれないわね」


 三人はその場に浮遊し、藍色の無事を祈る事にした。







「……水?」


 一方、こちらは幽香。この辺りにも水が流れてきていたようで、幽香が歩く度にちゃぷりと音がする。


「誰かが扉を勝手に開けた? いや、そんな音はしなかったわよね……」


 どうやら、扉が開いたら幽香に伝わるらしい。館の主人なのだから分からないと困るかもしれないが。


「いや、そんな事は無いから……幻月かしら? でも何故……」


 ここまで言った辺りで足を止めた。


「……まさか」


 水浸しのタイルを踏み鳴らし、来た道を戻る。嫌な予感がするし……


「どうかしましたか幽香さん」


「げ」


 振り向いた先に、見たくなかったメイド服。


「夢月じゃないの。あなたこそ何して」


「姉が楽しみを発見したので死守を」


 そりゃあ姉思いで結構な事です。しかしどけ。


「その楽しみとは何かしら?」


「ずばり惨殺」


 ずばりって……


「そう。じゃあどきなさい。私の友人を殺させるつもりは無いわ」


「そうも行かないのが私です」


 夢月は途中で言葉を途切れさせる事を一切せずに話す。声の調子を聞くに、感嘆符や疑問符も無い。


「姉が久し振りに楽しんでいるのを妹である私がわざわざ潰す事はしないでしょう」


「そりゃあ結構な事ね。理解したからどいて頂戴」


「先の会話から理解出来なかったのならはっきり言いますが断ります」


 もう少しゆっくり話そうとはしないのか。早口ではないが……


「仕方ないわね、強行突破するわよ」


「やるなら全力で相手をしますのでかかってきなさい」


 幽香は傘を構える。


「エリー!」


「こちらに」


 床を滑りながらエリーが素早く到着。水が縦に長い波紋を広げた。

 レミリアの所の咲夜は時間を止めて走ってきているが、こちらは単純なスピードだ。なんて奴……


「私が夢月を止めるから、夢月を突っ切って私の友人を逃がしなさい」


「御意」


 鎌の刃をきらめかせ、夢月を睨む。物腰穏やかに感じていた雰囲気は、侍のように鋭く尖る。


「生意気と言うべきか頑固と言うべきか悩みますね」


 悩むな。


「しかし強行突破とは二人がかりとはいえ無謀な事を考えますね」


 夢月もまた、不可視のエネルギーを周囲に集める。


「私とて幻月の妹と恐れられる身ではありますので反撃しましょう」


「あなたに時間はかけてらんないのよ」


「夢月さん、そこを通して頂きますわ」







「チッ、うざってェンだよ!」


「えい」


 藍色お得意の膝が幻月の背中を打つ。白い羽が視界いっぱいに広がるが、それを気にしている暇があったらさっさと離れる。

 藍色が消え去った場所を音速の手刀が通り過ぎる。余波か何かで周辺の壁が消し飛ぶ。


「ハエかテメェ!?」


「妖怪」


 天井を足場にする。真下は幻月だ。


「消えろ!」


 感づいていたか反射的か、藍色の居る場所を何らかの力で削り取る。藍色は既に幻月の背中に移動していた。


「ンォラァ!」


 体勢を崩す程の大振りのラリアットを横腹に叩き込まれ、床を破壊しながら藍色が落ちる。幻月も落ちたが、羽を広げて滞空する。


「はん、打たれれば弱いんだな」


 幻月の隣を水の筒が落ちていく。天井に穴を空けてしまったせいだろう。


「否定はしない」


 負けじとサマーソルトを顎にヒットさせる藍色。幻月は吹き飛んだり弾け飛んだりとリアクションは大きいが、大したダメージになっていない。


「よく吹き飛ぶのに大して効いてないね」


「逆だよフラン。凄く吹き飛ぶからダメージにならないんだよ」


「えぇ!? なんで分かるの!?」


「能力だよ! フランの驚き頂きました!」


 実はルーミアにやれと言われていたりする。


「だがなァ! ハエ遊びもここまでだ!」


「う」


 幻月が両手を合わせ、羽を広げる。


「たたき落とせないなら逃げられなきゃ万事解決だろォ!」


 おいやめろ。全方位必殺攻撃とか不味いだろうが!


「むぐ」


「消え去れカス!」


 幻月が力を解放させ


「驚けコラー!」

「どどんぱぁ!」


「だあぁ!?」


 遠くから子供二人の声に柄にもなく驚き、一瞬だけ調子が狂う。


「残念」


 幻月が合わせている手を蹴り上げ、背の大きな羽を掴む。


「んな、離せ!」


「力があるのに使い方を知らないの」


 そんな声などどこ吹く風、くるりと体を回しながら落ちていく。幻月も掴まれている為に下に下に。


「相手に勝つなら使い方から。それを怠って力を振り回すからこうなるの」


「テ、テメェ! いい加減に――」


 たまった水が迫る。


「最強を名乗りたいならまずそれを覚えてからにして」


 そのままのスピードで、幻月を叩きつけた。


「わぷっ!」


 あまりに水柱が高く上がり、かなり上の小傘にまでかかった。自分だけかかったのは、反射的にフランを唐傘で庇ったせいかもしれない。


「ルーミアさん!」


「あら、エリー?」


 ザザザと床を滑りながらエリーが到着。


「幻月は?」


「今し方藍色に撃墜されたわよ」


「……失礼ですが、藍色さんって強かったんですのね」


「意外に強いわよ」


 皆で下の穴を見下ろしながら言うが、下は水のこぼれる音しかしない。正直フランにとっては地獄のような場所だ。


「どうなったのでしょうか」


「小傘、確認出来る?」


「え〜っと……どうやるの?」


「私達が驚くような行動を状況把握にすればいいじゃない」


 相手を驚かせる行動が出来るならそれくらいチョロいんじゃないかな。


「や、やってみる」


 小傘が少し黙る。


「……あ、水中で戦ってる」


「えぇ〜……何やってるのよ」


 本当にえぇ〜だよ……


「ん〜……ルーミア、手伝わないの?」


「そうね、そろそろ生意気なアレは黙らせるべきね」


「え?」


 エリーが止める前に、ルーミアが飛び降りる。


「私も破壊力を試したい所だったからね!」


 小傘達が急いでルーミアを確認すると、数本の黒い短剣を握って闇に消えるルーミアが確認出来た。


「あれ? いつもの十字剣じゃなくて短剣?」


 真意を聞く事は出来なかったが、代わりに帰ってきたのは……


「うがぁぁぁぁっ!?」

「みゃぁぁぁぁ……」


 水柱と共に吹き飛んできた二人だった。


「……う、嘘……」







「いでででっ! もうちょっと優しくしてくれよ……」


「普段暴力的で狂気的なお姉様から優しいの字が出てくるとは予想してませんでした」


「これに懲りたら少しは自重しなよ〜?」


「う、うるせぇガキ!」


 結局、幻月が大人しくなったので夢月も攻撃をやめ、くるみに館の修理を全て任せる事で解決した。しかし、藍色の服と幻月の怪我は藍色の能力では直らなかったので……


「はい藍色、新しい服は用意してたわよ」


「ありがと」


 幻月は夢月に手当てしてもらい、藍色は幽香から服を貰った。のだが、どうやら今回は服だけでは無いらしい。


「どう?」


「軽い」


 小傘の服を藍色にした感じの服で、軽めに作られている。幽香は器用だなぁ。


「それと、今日はおまけがあるのよ?」


 縦に長い箱を出す幽香。一行全員が首を傾げた。


「きっと喜ぶわ」


 箱をゆっくり開け、中身を出す。


「……唐傘?」


 中身は藍染の唐傘。色からして藍色用だろう。どこか手作り感がするので、これも幽香の作品だろう。


「そ、唐傘。どう?」


「……良い」


 藍色の好感度が上がった。


「悪いわね。服を貰ったり、今回は傘なんて作ってもらって」


「良いわよ。好きでやってるのだから」


 好きでここまでやるのも凄い……あ? まだあるの?


「で、これがフランの。これはルーミアのよ」


 なんと、他の皆の物まで作ってきたらしい。フランとルーミアの傘は、藍色の唐傘よりやや大きく作られている。

 フランの傘はレミリアの物をベースにし、羽の飾りを柄にした洋傘で、ルーミアの物は銀の十字架を少量並べたこうもり傘だ。

 藍色の唐傘は客に飾りは無くシンプルに出来ている。


「……幽香、人里でお店出しなさいよ」


「あら、良いかもしれないわね」


「幽香ありがとう!」


 これでフランの行動の制限が無くなる。これはかなり助かるな!


「でも何で私のまで?」


「最初は藍色の唐傘だけだったのよ? 小傘の服をベースにするなら唐傘は重要だと思ったから」


 しかし……


「で、傘でフランを思い出したの。いつも小傘と一緒で楽しそうだけど、窮屈そうに見えたから……」


「それで?」


「一人だけ何も無しは寂しいから、ついルーミアのも……」


「幽香さんは悪乗りするタイプですものね」


「否定しないわ」


 エリーの割り込みに、皆が笑みをこぼした。


「ああそうそう。本が完成しましたよ」


 エリーが小さな本を渡す。中を見ると、藍色の話が分かりやすく、そして多少掘り下げて書いてある。無駄は見当たらない。


「あら、ありがとう」


「いえいえ、私も悪乗りしてしまった物ですから」


 そして笑った。釣られて皆も笑い、部屋に笑い声が溢れた。


「……幻月」


「……何だよ」


 藍色が幻月に顔を向ける。


「あの力は何なの?」


「あ〜、あれか。俺も気がついたら使ってたンだよ。だから知」


「そう」


「テメッ……」


 牙を剥きつつも、何とも言い難い目で藍色を見つめる幻月が居た。







「じゃあ、失礼するわ」


 湖の外側に、六人の人影がある。一行とエリーと幽香だが。ちなみに湖に水は無く、崩れた館は今くるみが泣きながら修理している。

 エリー以外は傘と言う名の花を咲かせており、少し上機嫌に感じられる。


「今回もありがとう」


「良いわよ。また声をかけてくれたら招待するわ」


「うん」


「また遊びに来て下さいね」


 そういえば、エリーと夢月は一体どんな強さを持っていたのか? 結局分からず終いだ。残念だが諦めよう。


「じゃあもう行くよ」


「幽香、エリー、またね!」


「はいはい」


 二人に手を振り、立ち去る。フランはパタパタと走り回り、ルーミアは手で傘を回している。藍色も唐傘を持ってのんびり歩いている。


「せっかく貰えたけど、壊れたら大変だね」


「壊れないようにした方が良い?」


「……少し考えましょうか」


「そうだね〜」


 カラカラ笑っていると、後ろから風の動きを感じた。


「わ」


 藍色が軽く軸をずらすと、破壊力抜群の跳び蹴りが地面を抉る。


「よォ」


「……幻月?」


 小傘がビビってルーミアの後ろに隠れた。フランは慣れたようだ。


「何しに来たの?」


「別に。お前に負けたままだとムカつくからな。しばらく修行の旅だよ」


 まさかコイツから修行という単語が出るとはなぁ。


「夢月は?」


「置いてきた」


 待ちぼうけですか……


「……で、だな」


「ん?」


「お前に勝つ為に、まずお前を研究する事にした。修行はそれからだよ」


 ……え?


「つまり何よ」


「あァ? お前の頭は理解力足りてねェのか?」


 夢月がニヤリと笑う。


「俺もしばらく旅に同行するってわけだよ。異論は認めねェからな!」


「……え!? ええええ!?」


 小傘の叫びが響き、反論を続けた。が、藍色並みに強情な幻月を追い返す事は出来ず……






「……結局こうなるんだ」


「勘違いするなよ? 俺はお前の味方じゃあねェんだからな?」


「そう」


 一行にしばらく、五人目が追加される事になった。







 一方のこちら。


「……あら? 空気が軽くなりました」


「一体何だったんだろうね」


 天子一行友達百人の旅。一行は日向ぼっこをしていた。


 幻月俺キャラ! 空椿です。天か色かは相変わらず定まってません。今回は連絡事項が意外とあります。



 まず、一行のスタメン前提アイテムとして傘を採用しました。これで一行の中で、スタメンとただの同行キャラを区別します。幽香さんマジ職人。

 藍色は最初は唐傘ではなく番傘でしたが、番傘は畳めないのでよく似た唐傘になりました。服も合わせて小傘風です。


 次に、活動報告の神社がかなり埋まりました。そろそろ改装を考えます。バトンも大概にするべきでしょうかね……?


 次に、そろそろ藍色を探して幻想郷一周の旅が復活し、天子一行友達百人の旅は役目を終えます。紫達が本格的に始動しますよ! もう圧倒的過ぎるなんて言わせない!


 最後に、お賽銭が入りました! 不知火さんありがとう、早速使ってます。





 こんなもんですかね。ではまた今度ノシ

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