藍色と指示 驚愕は敵だ
「天子」
「あら、覚えてたのね」
取り敢えず座りルーミア達を確認した。合計十一人が暴れ回っている気がする。
「何か用?」
「別に」
か、会話が全然続かない……
「総領娘様、素直に心配になったと言ってはいかがですか」
「衣玖、余計な事言わないで!」
その衣玖が幽香を抱えてきた。どうやら意識はハッキリしてる様子。
「よう藍色! 元気かい? なんかでかいけど」
「微妙」
萃香から酒の臭いを感じたので退避。衣玖の後ろに隠れた。
「お酒は苦手でしたっけ」
「うん」
「ほら萃香、あっち行きなさい」
「へいへい」
萃香が離れたので、漸く会話が出来そうだ。
「さて、あなたはあの天人だったかしら? 何とまあ、どうして地上に居るのかしら」
「そういうあなたは花の妖怪ね? なんか服の中に重たそうなのいつもより入れてるけど」
「そうね」
挑発のような自己紹介だ。なんか空気が重たいからさっさと本題に入ろう。
「何やって」
「察して」
えっ
「無理ですよ」
「じゃあ私が説明するから。横槍は入れないでね? 殴るから」
口をつぐむ皆。
「藍色なら良いけど」
「何でよ!」
口答えした天子の鳩尾に拳が入る。
「じゃ、最初から説明するわね」
「……〜〜…………」
悶絶。
視点を移し、フラン達と八雲。
「上!」
「やあぁ!」
「うぐっ!?」
振り下ろされた剣を回避する藍。避けきれなかった炎が肌を焼く。
「右!」
「むぅ!」
「とりゃあ!」
次は光弾。鼻先をかすり、大きく仰け反る。
今、藍の回避は紫が指示している状態だ。紫も避けているのに大変だね。
「ひだ」
「さっせるかぁ!」
紫が指示する前に、暴力の矢に指示を潰され吹き飛ぶ。直撃は免れているが、頭がガンガンと響く。
「ああもう! 五対二なんてこりご……うわぁ!?」
大量の水が出現し、藍を飲み込まんと襲いかかる。式が剥がれてはまずいので上に逃げる。
「アハハハハハハハッ! 楽シイ、楽シイヨ!」
青の弾幕を撒き散らしながら藍にライダーキックを入れ、勢い余って地面に大穴を開けた。
「ぐああっ!?」
「藍!?」
「ロイヤルフレア!」
意識を逸らすのがまずかった。炎が鞭のように紫を叩いた。
「クッ! 廃線「ぶらり廃駅下車の旅」!」
ご丁寧に火傷を頂いたが、反撃。遠くから走ってきた列車が、フランを二〜三人一度に弾き飛ばした。
「ボーっとしてられないわ! 行くわよ藍!」
「はい!」
更に次を宣言し、状況の挽回をはかる。
「式神「八雲藍」!」
「はあああっ!」
藍が紫の力を得、弾幕を散らしながらフラン達を攻撃する。
「うわっ!? 危ないよ!?」
「なら迎え撃って!」
「私がやるよ!」
全員が発言を繋げ、レーヴァテインを持ったフランが藍に向かう。
「大した連携ね!」
「自分自身だもん!」
「突撃ィ!」
「「お〜う!」」
「……せめて三人にしてほしいわ」
無理な相談です。哀れな八雲に狂気が迫る。
「まだまだ力及ばず、か。せめて情報は持ち帰るわよ。成長してるけど……」
「わったった!」
矛の突きを避け、その状態からの薙ぎを傘で受け止める。
「ち、防御と回避だけは上手い……」
「悪かったね!」
バッと右手を星の目の前に出し、そこで弾幕を弾けさせる。
「くぅ!?」
「私は痛がりなの!」
それに威力はあまりなかったが、驚いた星が飛び退いたのでゆっくり体勢を整える。
「う〜、ルーミアさん。何とかしてよ〜」
「ならまず攻めなさいよ〜」
背後からルーミアの声が聞こえた。意外と近いらしく、ルーミアの姿は意外と大きく見える。
「攻めるって……」
「来ないからこちらから攻めますよ。自身の非礼を詫びなさい」
それがそもそもの原因で、星が紫を手伝う理由。だが、本当の原因は藍色にあります。小傘は一応挨拶する子だよ。
「本当に堅いよね〜」
「八雲にも言われます」
「ちょっとは私のご主人様を見習えば?」
「嫌です。聖なら構いませんが」
矛を大きく振り回し、小傘を切り裂こうとする。その速さは尋常じゃないのだが……
「ちょ! 危ない危ない」
「よ、避けられるんですか!?」
小傘にそれを避けられる。なかなかどうして当たらない……
「……あ、毘沙門天代理の驚き頂きました〜」
ちゃっかりしてるな。
「話には聞いていたけど、相当厄介ですね」
「そりゃどう……もぉう!?」
掠った掠った!
「手加減してよぉ!」
「敵が手加減するわけないでしょ!?」
「ごめんなさい!」
ルーミアに叱られまくり。星が戦意を喪失しかけている。
「勝てば許」
「こちらに集中しなさい!」
「あっと、ごめんなさい」
ルーミアが夢子に集中し、声は来なくなった。
「……気は済みましたか?」
「うん……」
「では、続きを開始しましょう。どうか覚悟を」
しかし、それに返事は無い。
「え〜っと、勝つ、勝つ、勝つ……」
思考をフルに回転させ、勝利の方法を考えているようだ。
「人の目の前で考える余裕が」
「ちょっと黙ってて!」
「んぐっ!?」
突然唐傘を眼前に突きつけられ、怯む星。尚も攻撃しようと足掻くが、唐傘の先は眼前から離れず踏み込めない。
矛を突くと体の軸をずらして避けられる。小傘の真後ろから狙っても結果は変わらず、ただただ驚かされるばかりである。
「よし! これだ!」
悠長に時間を与えてしまった結果、手段を与えてしまった。警戒して離れる星。
「……あれ? 攻撃してこなかったの?」
「しても避けたじゃないですか」
「え? 私避けてたの?」
なんと、無意識だった。どこぞの覚がくしゃみをした。
「まあいいや! 今から攻めるよ!」
良いのかよ。白紙のスペルカードを抜き取り、色を追加した。
「心砕「唐傘達の肝試し」!」
宣言した瞬間、小傘の周辺に唐傘が大量に出現した。二十五くらいあるか?
それらは全て開いており、空中で回転しながら浮遊している。一応言うが長い舌はついてない。
「驚け慄け泣け喚け!」
小傘が合図のように叫んだ瞬間、唐傘達が一斉に消えた。まるで幽霊のようにスーッと……
「何のつもり」
目の前に急に現れ、回転しながら濃い密度の弾幕をバラまいた。
「っあ!?」
何故か必要以上に驚いた気がする。数発被弾した事で冷静さを取り戻し、矛で突いたが当たらず終い。唐傘はまた消えた。
「成る程、そういうスペルカー……ド…………?」
喋る余裕があるのか? 周りには大量の唐傘がくるくる回っていた。
「ふっふ〜ん。驚いたでしょ?」
毘沙門天の驚愕を吸収し、満たされていく小傘。上機嫌だ。
「いっけぇ!」
「うわ、わわわわぁぁぁ!?」
「……楽しそうですね」
「そ〜ね」
何故かのんびり観戦している夢子とルーミア。これには理由がある。ちょっと時を戻そう。
最初こそルーミアを倒さんと攻撃していたが、ルーミアが十字短剣と満月符を使って圧勝。終了後、紫達と一緒にいる理由を聞くと……
「あなたに勝つため、あなたと戦う機会がある八雲紫と同行しました」
「成る程ね」
つまり、ルーミアを追う為に紫と協力しているそうだ。何とまあ……
「相手がハッキリしてるのは良いわよ。あの虎みたいに全員を相手にしようとすると対策も練れないから」
戦闘中に成長した時までは責任持てないけどね〜と、ケタケタ笑いながら星を見る。小傘相手に攻め倦ねているのは滑稽だ。
「私に勝ちたいなら、まず私の戦い方を研究してるなら止めなさい。戦い方は千パターン頭にあるから」
「どうやったらそんなに出てくるんですか……」
「多くは黒鳥と短剣が占めてるわ」
おおう……
「それから、他人の動きを盗む事。ほらほら、いい見学対象が居るわよ」
「ご指導ありがとうございます。次からは勝つために精進します」
「あなた、良い性格してるわね。本当に良い意味で」
「というわけよ。そうよね? 文」
「はい、間違ってませんよ」
天子達への説明を終えた幽香。輪に参加した文と一緒だ。
「成る程、これがその薬ね?」
「うん」
鞄を勝手に開けて薬を指差す天子。衣玖に怒られた。
「面白い薬でしょう?」
「……確かに興味はありますね」
とはいえ、衣玖も気にはなっていたらしい。
「飲むときは気をつけなさいよ。幽香みたいにある一部分がキツくなあやややややっ!?」
「余計な事を言わなくて良いのよ〜」
「……うるさい」
「あ、ごめんなさい」
「いたたたた……」
かの有名な幽香も、藍色の言うことは聞く。天子はそこがかなり気になっていた。
自分も密かに藍色を特別扱いしている事は自覚していない。
「ねぇ花妖怪。あなたは何で藍色と仲が良いの」
「え? そうね……」
理由は悩む必要があるのか、しばらく返事をしなかった。
「噂を気にも止めずに良くしてくれたから……からかしら」
「噂? ……ああ」
USCという不名誉な称号がそれを表している。本当は其処までサディスティックな訳ではないのだがな。虐めるのが好きかと聞かれると頷くけど。
「藍色は基本的に平等だから、嫌われ者だった私にも接してくれた。それが理由ね」
「そうだったのですか。文さんは何故?」
「あやや、私? 別に深い理由は無いわよ」
文に話をふる衣玖。文はすぐに答えた。
「何回か会ってる内に何となく、かしら」
「ハッキリしないわね」
「そうなのよ」
天子にも返事した。
「藍色って不思議よね」
「そうそう、不思議で」
「あ、終わった」
天子のセリフぶった切り。溜め息を吐きながら見ると、皆の戦闘が終了していた。
藍と紫はボロボロ、夢子は無傷、星は泡を吹いて倒れている。戦闘中に何があったかよく分かる。
「八雲はフランにズタズタ、ルーミアは瞬時に勝利、小傘は沢山驚かした」
ええその通りです。さて、最後はお約束のあれをやりましょう。
「あいたたた……完敗した……わ?」
紫が顔を上げると、藍色が立っていた。
「何よ、ズタボロな私をあざ笑いに来たの?」
「違う」
藍色が手に持ってるのは…………あ、式だ。
「!?」
ペタリ。
結局、最後に紫はこき使われて帰らされた。藍色の服も紫のお陰で損害は無しだ。
ちなみに、今回式を剥がす役を得たのは夢子だった。
星ちゃん、驚きすぎて気絶しました。お疲れ様でした。天か色か分からない空の空椿です。
さてさて、小傘のスペルカードはまだまだ増やします。頑張りますよ!
って書く事が今回無いなぁ!?
……とにかく、活動報告の賽銭箱が埋もれてきたので、近々リニューアルします。
お賽銭くれる皆さんありがとう。でもせっかくのお賽銭を使わない私は酷い奴ですかね……?
では失礼します。また今度ノシ