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東方藍蓮花  作者: 空椿
54/114

藍色と連戦 不意は敵だ

「秘弾「そして誰もいなくなるか?」!」

「「無双風神」!」


 正規の使用法だと両方耐久スペルだが、今回は両方が違う。前者は密度と速度がグンと上がり、後者は文がダイレクトアタックしてくる。

 結果、お互いがぶつかり合ったり避けあったりする状況になっている。


「派手」


「…………流石に見えないわ」


 さしもの幽香も文を確認出来ないようだ。しかし規格外の集まり、藍色一行はしっかり見えている。

 それでも目で追うのは放棄している辺り、やはり速い事に変わりはないようだ。


「はあっ!」

「でえぃ!」


 吸血鬼の拳と鴉天狗の足が豪快な音を鳴らしてぶつかる。写真として見れば可愛らしいかもしれないが、ただそれだけの行動で空気が揺れている。


「やはり私はハズレを引いたみたいですね!」


「私はアタリだよ!」


 時計の針を天に掲げたフラン。様子を見るために文は攻撃を中断した。


「ロイヤルフレア!」


 魔法だよ!


「あやややや!?」


 迫り来る炎を突き破って突破するが、それでも密度の濃くなる高温は酸素を一気に消す。


「緊急回避!」


 一瞬フラッシュが走り、文の目の前の炎が消えた。カメラか……


「嘘!?」


「そして好きあり!」


 僅かな距離で一気にスピード前回。高下駄の歯がフランの脇腹に突き刺さる。


「ッ! 逃がさない!」


 右手を伸ばして文を捕まえようとするが、文は後ろに下がって距離を取り、葉扇を振りかぶる。


「斬!」


 滅茶苦茶に乱れた暴風が真空を生み、フランを切り裂いた。


「うぁっ!?」


「突撃!」


 自身も限界まで速度を上げ、フランの顎を打ち抜かんと蹴りを放った。

 しかし、パンと何かが弾ける音が響き、文の足は目の前で止まった。


「あや?」


 フランがニヤリと笑う。可愛らしさが消え失せ、狂気が溢れた。


「壊レロォ!」


 成長し、長くなった足が文の右肩を刈り取る。たまらず吹き飛ばされ……ない。


「うぐぁ!?」


「ちゃ〜んす!」


 先の狂気は一瞬で消え、再び見せた笑顔はまた別物。空中で回転し左の踵を右肩に追加。地面に突き落とした。


「大罪「スターボウストライク」!」


 時計の針を上に投げ、追撃の為に素早く発動、矢を一本生み出し発射した。


「あややややっ!?」


 しかし、これは意地でも回避した。あればっかりは当たるとヤバい。


「くっ! やっぱり痛いわね!」


「それはどうもありがとう!」


 弓を真上に投げ、入れ替わるように落ちてきた時計の針を文に向けた。


「マスタースパーク!」


 今度は魔理沙の魔法だ。闇夜を極太の光線が溢れ出し、一つの線で宙と地を繋いだ。


「わったったっ!?」


 しかしこれも危なげに回避。更に追撃のチャンスだが、フランはこの辺りで攻撃を中断した。


「……追撃しないの?」


「追撃しても避ける気でしょ〜」


「当たり前よ」


 あんな必殺技達に当たりたくはありません。


「だから攻め方を変えるよ!」


 手持ちのスペルカードをズラリと出す。フランのスペルカードオールスターで……


「禁忌「フォーオブアカインド」!」


「あ、私終わったわね」


 まだ終わってないよ!? と言いたいが、追加の五人目と、それぞれが別々のスペルカードを発動するという悪夢に、文に同意せざるを得ない。

 弓とレバ剣とカタディと秘弾と時計の針。どうせ最後の時計の針は魔法でしょうね分かります。


「「「「「覚悟〜!」」」」」


 正に数と力の暴力。そこに戦略を加えて……一々説明するのも馬鹿らしい。


「じょ、冗談じゃ……!」


 炸裂。一応直撃は避けたのだが……大丈夫か?


「……ん〜、これはフランの勝利で良いのかしら」


 幽香がポツリと呟く。


「まあ普通に見ればそうね」


「取り敢えずルーミア? 途中の文の緊急回避はルール的には大丈夫なの?」


 ルールには撮影禁止の文字があったが……


「回避目的なら問題は無いわ。念の為、終了時に回収するけど」


「……その言い方、まだ文は動けるって事?」


「正確には動いてる、だけどね」


 そう言いフラン達を見ると、一人がロケットのように地面に落ちていった。


「え」


「ほらね」


 霧散していくフランを踏みつけるように、文が未だに立っていた。


「ああ、今度こそ死んでしまうかと……」


 元気そうだがしっかり被弾していて、ダメージがたまっているようだ。


「まあ別に良いわ。過ぎ去った事だし」


 良いんだ!?


「は、外した?」


「いやいや、見事に当たってるから。全部じゃないけど」


 葉扇を揺らし、風を起こして乱れた髪を整える。


「それでも、窮地は私に知恵を授けてくれた。ならば生かさない手は無いわ」


 足に力を入れ、背の羽は大きく開かれた。


「よ〜く見てなさい、賢者」


 風を切り裂く音を残し、姿だけが消え去った。


「これが本当の最速よ!」





 鴉天狗は全種族最速と名高いが、それでも敵はある。高速で動けば自然とついてくる物で、最大の敵。つまり風、風圧。天狗と言えど、自然界の摂理には勝てない。はずだった。


「……冗談キツいじゃないの」


「紫様、先程の言葉を是非とも撤回して下さい。私には不可能です」


「……一秒たりとも見逃さない、か。既に目視不能だし許可するわ」


 それを文から取り払ってしまったらどうなる? 元々最速の天狗、その中で速さはトップ。動きを邪魔する物は何もない。

 もう分かるだろう。


「そこまで。そんなに速いとフランに対抗手段は無いわ」


 ルーミアが止めた。全身をズタズタにされたフランを抱えて文が降りてくる。


「事前に対策出来たならまだしもね」


「あやややや、まさか勝ててしまうとは」


「勝負は時の運」


「そうね。次はルーミアと小傘よ〜」


 小傘の肩が跳ねる。


「では、フランちゃんは私が手当てするわね」


「よろしく〜」


 幽香が例の薬を小傘とルーミアに差し出す。しかし、受け取った小傘は飲みたがらない。


「……これを飲まないとやらなくて良いんだよね?」


「飲まなくて良いわよ。やるから」


 飲んだ。


「もう諦めたの? 良いのか悪いのか……」


「っぷはぁ! どうせやるなら有利になりたいよ」


「んくっ……やっぱり美味しくないわ」


 ポンと乾いた音が響き、直後の突風が煙を吹き飛ばした。


「ごめんなさい、小傘。絶好調みたいよ」


 黒鳥を背に、大人びた姿のルーミアがのんびりと笑っていた。小傘も成長しているのだが、ルーミアを見るとまだまだ子供に見えてしまう。


「あ、あれ〜……何で勝てる気がしないの?」


「は〜い、サクサク行くわよ〜」


 ルーミアは時間の節約をしたいのか、小傘を引っ張っていった。


「ご愁傷様」


 藍色も酷いことを言った……







「ひ〜ん、やっぱりやるの?」


「ほらほら泣かないの、終わったら慰めてあげるから」


「サディスティックの噂が目立つ幽香が慰めるというのもまた複雑であやややややややや!」


「な、ん、で、す、っ、て、?」


 見てるだけでも痛い痛い。

 それはさておき、準備万端な二人。小傘は一応白紙のカードを懐にしまい、思いついた物をすぐさま記せるようにした。


「ルーミアさんと戦うのは嫌だよ。どこに居ても逃げられないし」


 ルーミアはそれぞれのスペルで、リーチを徹底的に塞いでくるのが特徴だ。つまり多重使用が基本。


「私もあなたの発想が怖いから安心なさい」


「……で」


「弱音はそこまで。用意」


 藍色によって強制終了。救いはないんですか!?


「開始」


 先手はルーミアが頂いた。


「十字架「磔の十文字」、十字架「与奪の十文字」」


 右手に十字の剣、左手には十字の短剣が。左手は即座に振るわれ、数十の十字架が小傘を狙う。


「わひゃあ!?」


 それをなんとか回避している間に、ルーミアが更に宣言をしていた。


「闇夜「ダークネスレイヴン」、満月符「フルムーンライトレイ」」


 短剣を大量にばらまきながら、黒鳥に指示を出し、十字剣で小傘を狙い、思考を巡らせる。その全てが小傘に勝利する作戦の模索だ。


「わわわわっ!?」


 短剣を回避すれば黒鳥が隙を狙い、黒鳥を凌げば光線に撃ち抜かれ、休みを入れようとすればサボテンの刑。

 万が一黒鳥と短剣を凌ぎきろうが、マスパも頭を抱える大きさの光線が夜空に輝く。

 まさしく 規格外。こんな状況では接近なんて不可能だ。


「ちょ、無理無理無理!」


「あら、まだ諦めるには早すぎるわよ」


 耳元からの声。


「え!?」


「新月符「クレセント・オブ・ザ・クロス」」


 確認する暇も無く爆砕。小傘は地面に墜落してしまう。

 この間なんと十七秒。紫が扇を落としたのも無理は無い。


「やっぱり耐えきったわね。無傷な辺りが驚きだけど」


「能力が無かったらおしまいだよ!」


 能力に助けられたな。なんとか防ぎきった小傘。


「は、反撃しないと!」


「そう。早くしないと撃ち落とすわよ」


 黒鳥と短剣が連携攻撃を仕掛ける。こんな状況では反撃どころか防御もままならない。


「うっ……う〜!」


 思い切って足を止め、息を吸う。


「驚けえぇぇ!」


 突然のラウドボイスに黒鳥がのけぞり、ルーミアが肩を跳ねさせる。飛んできた短剣を回避し、やっとこさ回ってきたチャンスに宣言した。


「雨符「涙雨車軸の如し」!」


 回避不能の大雨が降り注ぐ。これは流石にルーミアも避けれないだろう……


「ならこうするわ」


 と思っていたのか? 黒鳥を一匹にして自分の頭上に移動させた。弾幕が弾けるが即座に修復され、傘の変わりをなす。

 更に、短剣を数十本投げる。細かい弾幕に軌道が大きく変わるが、最終的に小傘に迫る。


「えちょ、うそぉん……」


 これが全て計算なのだから末恐ろしい。ルーミアの目線は上に向き、雨の軌道を全て理解仕切っていた。


「これだからルーミアさんは怖いんだ。何手先まで読んでるか分からないよ」


「そうね。今の計算なら二百四十九手目に私が十字剣で王手をかけるわ」


 まずどの辺りが何手目なんだろうか……


「でも、その計算を狂わし得る存在が私の目の前に居るのだけど」


「え?」


 ルーミアはのんびりと呟く。


「ま、自分で考えなさい」


 短剣をバラまき、空中に腰掛けた。


「時間切れまでは付き合うわ」


「時間切れっていつ!?」


「さぁ?」







「…………流石の私もあれは引くわ〜……」


 幽香がげんなりしている。


「ルーミア強いね〜」


「あやややや……敵対してなくて良かったわ」


 別に、ルーミアはただ射撃しているだけだ。ただその量が凄まじいだけで。


「小傘が勿体無い」


 藍色が呆れた感じの口調で呟いた。


「あや?」


「せっかくの能力の使う場面を理解してない」


「……ああ成る程。確かに上手く使えば逆転出来るのにね」


 しかし、小傘はまだそれに気付いた様子は無い。


「しかしルーミアも強いわね」


「多分まだ一割以下」


「…………え?」


 文と幽香が凍る。ここでフランが乱入した。


「ルーミアは強すぎるから、本気が出せないんだって」


「……化け物じゃない」


「勝率はゼロじゃないけど」


「でも限りなく近いわよね」


 その通りで御座います。


「ま、あれを覆すのは能力を使って……あやや? 小傘はいずこに……」


「もう使ったよ」


「残念だね。決定的瞬間を見逃して」


「……あやややや…………どんな状況でした?」


 今の状況は未だに小傘が追いかけ回されている状況だが……


「今と同じ」


「うん、一緒だね……」


 効果としては、手拍子一つで十字架も黒鳥も消すという偉業を成し遂げたのだが……

 ルーミアにはあまり通じなかった。消したは良いものの、早口言葉のように新たに宣言し直され、元に戻る。


「ほら、次来なさい」


「うわ〜ん! ルーミアさんの鬼畜〜!」


 完全にルーミアのペースだ。小傘が逃げ回っている間に目の先で闇の塊を弄んでいる余裕がある。

 しかし、見たところルーミアは完封勝利するつもりは微塵も無いようだ。自分は何も得てないし、小傘はただ虐めてるだけだし。

 しかし残念ながら……


「そこまで、ルーミアの勝ち。これ以上はこっちの心が痛いわ」


 先に外野が音を上げてしまった……


「……小傘、次頑張りなさい」


 胸に飛び込んできた小傘の頭を撫でながら慰めるルーミア。母親だなぁ。


「ルーミア、もう虐めるのは止めてあげなさい」


「あら、本気で虐めるならあと二倍は密度が濃いわよ」


 …………うわぁ。


「しかし、何の収穫も無かったのは残念ね。今度よく話し合ってみるわ」


「そう」


 そんなルーミアと小傘を通り過ぎた藍色。手には例の薬が。


「さて、やっと私達に回ってきたわね」


「うん」


 幽香も藍色の隣に立ち、藍色と一緒に薬を飲み干


「けほっけほっ……」


 藍色がむせてしまった。一応飲んだよ。


「……思えば、藍色が飲むのは初めてね」


「ふぇ? ……あ、ホントだ!」


 一気に泣き止む小傘は切り替えが速いと言うべきか?


「藍色が飲んだの見たこと無いよ?」


「あやや、藍色も未経験だったのね」


「うん」


 ポンと音が鳴り、例の如く煙に包まれた二人。


「煙たいのは嫌い」


 フランが煙を破壊。ドキドキも一気に吹き飛びました!


「……う?」


 まず藍色。着ていた偽天狗服も何故か頭身と共に大きくなり、長い藍の髪を下ろしている。藍の瞳も相変わらず輝いている。

 若干癖っ毛になっており、軽くウェーブがかかっている。それより目立つのが頭のアンテナみたいな毛だろうか……


「あら? 服がキツいわね」


 そして幽香。勿論服は大きくなっているが、不思議な事に体と服の大きさが噛み合っていない。一部分が妙に大きいせいか。

 髪はあまり伸びず、癖っ毛も相変わらずだ。鋭かった目元に落ち着きが見えるので、いつもよりゆったりしたように感じる。


「……ご主人様すっごい綺麗」


「そう」


 しかし性格は変わらないのが特徴のこの薬。藍色の無表情も全く変わらない。


「さて、準備は出来たし行きましょうか」


 いつもの日傘を肩にあて、藍色に合わせて歩く幽香。藍色は体の調子を確認しながら移動中だ。


「あやややや。準備が出来たら構えてね」


 文が言うと、即座に構える幽香。日傘の先端が藍色を狙う。


「良いよ」


「それでは、用意!」


 一度間をおき……


「開始!」


「マスタースパーク!」 


 いきなりかよ!?







「……相手の戦力を見誤ったわね」


「紫様も間違えるんですね」


「仕方ないでしょう。この世に完全など居ないに等しいのですから。完全な善人なら近くに居ますが……」


 もしかしなくても聖じゃないか?


「……あんなに、差があったなんて」


 夢子も愕然としている。思わず剣を落としてしまいかけた。


「あら、あなたも経験を積んだじゃない」


「経験でどうにかなる差ではありません」


「堅いわね〜……」


 しかし正直な所、紫も焦っていた。藍色の一行は予想以上に強く、こちらの戦力を全員ぶつけても一人落とせるかどうかだ。

 藍色を捕まえるには全員に勝つ必要があるのに、だ。


「……ちょっと、ズルい事をするしか無いかしら?」


「ズルい事?」


「まあ、藍色もやってるこ」


「おぉ!? 紫じゃないか!」

「あら、いつかの藍妖怪が居るわ」

「お二方、あまり近付きすぎると巻き込まれますよ」


 空気読んでよ竜宮さん……

 天子一行が太陽の畑に入ってきた。


「……萃香? あなたこんな所に来たの?」


「喧嘩のある所になら私は来るよ?」


「やはり鬼は鬼ですね……」


 星が呆れながら呟いた。


「……おや? 見ない顔だね」


「私ですか? 魔界に在住しています、夢子と申します」


「私は鬼の四天王、伊吹萃香だよ。よろしくね」


 握手をしかけたが、酒の臭いに気を悪くしたのか手を引っ込めた。


「さ〜て、観客席はどこだい?」


「無いんじゃない?」


「じゃあここでいいや」


 適当に座る萃香。後の二人も隣に座った。


「……あいつ、強いわね」







「咲き誇れ!」


 幽香が右の足を強く踏み鳴らすと、様々な花が一気に開花した。急成長した花々は藍色の足に絡みつき、押さえつける。


「む?」


 どうやら頑丈なようで、ちょっと力を入れたくらいでは抜け出せない。


「はあぁ!」


 そこに光線が入る。今のは間違いなく当たるコースだ。


「ハズレ」


 ……藍色じゃなけりゃな。空中に藍の光が舞い、相変わらずの無表情が幽香の後ろに居た。


「くぅ!?」


「変符「命中率と回避率」」


 至近距離で爆発し、ふざけた密度の弾幕が幽香の背を焼いた。幽香を引き離したのを確認してすぐに解除した。


「っまだまだぁ!」


 倒れながら大地に手をつく。花畑を塗り替えるように新たに咲いた花が大量の花粉を撒き散らす。先程最低だ花は瞬時に枯れ、土に還った。


「みぃっ」


 藍色が口を塞ぐが、それはただの隙だった。


「残念ね、ただの花粉よ!」


 大振りの日傘が藍色の腹に入り、空に吹き飛ばす。


「花符「幻想郷の開花」」


 更に弾幕を撒き散らし、それに紛れて姿を消した。


「う」


「ほら、まだまだ序盤よ!」


 藍色の四方八方から拳や傘が飛んでくる。とんでもないスピードだが、やはりあの花粉が原因らしい。


「分かってる」


 負けじと藍色も連打。途中からカウンター合戦になってしまい、鈍い音が何度も何度も響く。


「せぇい!」

「むっ」


 藍色の蹴りと幽香の拳が強く衝突し、弾けるように吹き飛んだお互い。時間はあまり経ってないが、お互い既に傷だらけだ。


「やっぱりやるわね! あなたの蹴りはかなり響くわよ!」


「幽香の日傘の方が痛い……」


 会話は少しで終わり、藍色が転移した事でまた打撃合戦が繰り広げられる。文やルーミアの戦いと比べてみると、この戦闘は互角に見える。

 本当は先の二つもこうなるハズだったのだが、フランと文は思いついた事が原因で途中で圧倒的になってしまい、小傘が始終テンパったせいでルーミアとの戦いはルーミアがずっとペースを握る事となった。


「やっぱり死合いはこうでなくちゃ」


「やっぱり派手ね」


「「凄い凄〜い!」」


 既に慣れた四人は和やか賑やかだが、紫達は難しい顔をしており、天子一行は三者三様だ。少なくとも三人も和やかではない。


「マスタースパーク!」


「変符「命中率と回避率」」


 ズドンと音が響き、二人が墜落してきた。


「開花!」


 そのまま地面に手を当て、更に花畑を塗り替える。色の違う花粉が舞い、二人を包む。


「また…………ふぁ?」


 ピリピリと指先が鳴る。動きが鈍くなり、目が霞む。


「て、撤退」

「させてやんないわよ!」


 幽香の豪快なライダーキック。藍色に直撃し、衝撃波で花粉が全て吹き飛び、花びらが舞う。


「うぐ……」


「避けれないわよね?」


 日傘を目の前に突きつけ、マスタースパークを放つ。しかし転移して回避され、逆に後頭部を蹴り上げられる。


「避けさせない」


 高く上がったままの足を振り下ろし、幽香を地面に突き落とす。


「あがっ……!?」


「てい」


 更に回転し、踵を連続で繰り出す。これはカウンターを入れられ、藍色は上空に投げ出された。


「……くぅ、痛いわ」


 見上げると、藍色が何かを思いついたようでブツブツと呟いている。

 瞬間、藍色がまた消える。


「ん?」


 身構えたが、攻撃は来なかった。思わず見渡すと、遠くに藍色が居た。


「なんであんなに遠く……にっ!?」


 直後に花畑に連続で響き渡る爆破音。視界に藍色が何人も映るような錯覚に襲われる。


「……成る程、地面や空中を攻撃してるわけね?」


 攻撃の対象を幽香から移しただけで、こうも変えられるのか。末恐ろしい。


「ッ!?」


 真後ろから跳び蹴りが入り、ほぼ同時に顎を打ち抜かれる。

 しかし藍色はまだ視界に居るし、攻撃がどこから来たかなんて分かるわけがない。


「や、やってくれるじゃない! 幻想「花鳥風月、嘯風弄月」!」

「肯定証明「偶然確率」」


 反撃のようにスペルを発動したものの、天変地異に全て削り取られてしまった。


「う、あああっ!?」


「む」


 更に、ドスンと腹に入れられた膝蹴り。幽香は宙に投げ出された。


「がっ……はぁ!」


 しかし負けてられるものか。両手で大地に手をつけ、巨大な蔓を有する、巨人と見紛う程の大輪の花を出現させた。

 蔓は意思を持つかのように持ち上がり、藍色を攻撃する。


「む」


 こちらも反撃に出る。地面に強い蹴りを放ち、ロケットのように花の茎……いや、幹に激突、破壊。幽香を狙う。


「良いわね! 終わりにしましょうか!」


「うん」


 両者大きく振りかぶって、蹴りと殴りが激突。


「だあぁっ!」


「むぅっ」


 破壊的な威力に吹き飛ばされ、花畑の中で動かなくなる二人。

 観戦している皆もハラハラしているが、藍色だけが立ち上がる。


「…………疲れた」


 それを確認し、ルーミアは声をあげた。


「そこまで。藍色の勝ちよ」


 言った後、フランと小傘を振り向かせ、文を藍色達の方に向かわせる。


「どうせ休みはくれないんでしょ? 八雲」


「あら、やっぱり分かってたのね。別に構わないけど」


 紫達が近くまで来ていた。どうやら、連戦を強いられるみたいだ。


「フランは八雲二人。小傘は虎。私が夢子。手加減無しで存分に潰しなさい」


 ルーミアが対戦相手を指示。


「うん! 分かった!」

「あら、あなた一人で二人相手?」

「一人じゃないよ?」


「だ、大丈夫かな?」

「安心しなさい、楽にしてれば叩き伏せてあげるから」

「それは嫌!」


「さて、話を聞かせてもらいましょうか?」

「……剣を、交えながらなら」

「やれやれ、休憩くらいさせてよね」


 どうやら、まだまだ傷は増えるようだ。







「衣玖、萃香。アイツの所に行くわよ」

「分かりました」

「合点承知!」



 戦力を見せ、疲労が若干たまった状態で更に連戦! どうなる一行!


 天か色か分からない空の空椿です。今回難産でした。



 まず小傘にごめんなさい、幽香お疲れ様、文とルーミアパネェ。皆とんでもない事になりましたが、小傘が最も哀れです。

 ごめん、星との戦闘では良いとこ見せるよ。



 その時にスペカも増やしましょう。一枚だと限界がありますし……





 では、この辺りでノシ

 次回は藍色の出番少ないかもしれない。

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