藍色と九尾 呑気は敵だ
クロスオーバーです。
作品名:東方流犬録~Run like wind!~
時系列:流犬録40話付近
お借りしたキャラ:東雲久羅
ではどうぞ。
幻想郷で九尾の狐と言うと、八雲藍の名前が真っ先に出てくる。
元々九尾の狐が珍しいのもあって、幻想郷では彼女しか九尾の狐が居ないのが理由だろう。
だが、最近の幻想郷にはもう一人九尾の狐が居る。その名も……
「ふ、ふわ…………止まってしもうた」
東雲久羅。紛れもない九尾の狐であり、それに見合う力をちゃんと持っている。
のだが、最近そんな力を振るった覚えは無いようで、ゆったりした日々を過ごしている。
人里に行って油揚げ貰ったり、魔法の森でオバケキノコが狩りをしているのを目撃したり……
「……あのキノコはなんじゃったのかのう?」
知るかんなもん。
そんな久羅は現在、魔法の森をぶ〜らぶらしている。一応キノコは避けている。
「この辺りはキノコしか……無いみたいじゃな」
無いです。
「仕方ない、人里に戻るとするかの」
……実は久羅、最初は妖怪の山に行くつもりだったのだが、何故か人里と魔法の森を行ったり来たりしている。
理由は単純で、行き方がよく分からないだけだが……誰かに聞こうよ。
「……お?」
回れ右をして後ろを見たら、数名の話し声が聞こえてきた。
「…………え〜っと、こういう時は善は急げ、じゃったかな」
何が善なのかは分からないが、行くらしい。
「四人組か……」
全身藍色の妖怪と、金髪紅眼の美女と、紫色の唐傘を日傘にするオッドアイの少女と、その日傘に一緒に入っている歪な羽の少女。
また随分と変わったメンバーだ。今は見ているだけだが、話してみたら尚面白いと久羅は思う。
「次はどこに行くの?」
「幽香の所」
「あら、何故?」
「別に」
理由無しか。気ままな旅をしていると何となくだが察した。
「……ねぇ、誰かそこに居るよ?」
オッドアイの少女がこっちを指差してくる。間違い無くこっちだ。
「どうする?」
「別に」
何もしてこない。そのまま二〜三回言葉を交わして行ってしまった。
「……面白い面子じゃな」
好奇心に火がついたらしい久羅は、後を追う事に決めた。
藍色の少女を戦闘に森をずんずん進む団体。普通団体で旅をする場合はあのような少女を中心にするのだが……
「幻想郷は変わってるのう……」
やはり現代の常識は軒並み通じないようだ。
何故かどや顔の緑髪の腋出し巫女が見えたが、本当に気のせいのようなので考える事は無かった。
今度は気配を消しながら一定の距離を保ち、バレないように身を隠している。
いや別に隠れる理由は皆無だが、その場のノリで
「ちょっと、まだ居るの?」
バレてる。
「……みたい」
「観念して出て来なさ〜い!」
「フラン、それ悪役みたいだよ?」
しかし、出ないと微妙な空気になるのも時間の問題だろう。無駄に隠れるのは止めだ。
「すまんのう、つい興味が出て」
「そう」
中断させられた。なんだこいつ……
「む、人の話は最後まで」
「必要は無い」
またも中断させられた。
「半分聞けば分かる」
会話の流れと台詞の一部で概ね理解出来るので中断させるらしい。しかし……
「最後まで聞かぬと嫌われるぞ?」
「ああ、それね。もう一人には嫌われてるわよ?」
「……一人?」
たった一人?
「大半は理解してくれてるし、残りはそういう者だと諦めてるわ」
「私は諦めに含まれるかな〜……」
唐傘少女がついでに答える。
「ふむ、興味深い奴よのう」
「そう」
普通はそんな奴は嫌われるのだが……この藍色少女が特殊なのか、それとも幻想郷が変わってるのか?
「……あなた誰?」
「おお、自己紹介を忘れていたの。すまんすまん」
忘れてたのかよ!
「儂は東雲久羅、九尾の狐じゃ」
そういえば、久羅の背に揺れる九尾に一切突っ込まなかったなコイツラ……
「私はルーミアよ。こっちの二人はフランと小傘」
「多々良小傘だよ!」
「フランドール・スカーレット! 長いからフランでいいよ!」
「ふむふむ、よろしく頼むぞ。で……」
おそらく一行のリーダーであろう少女を見る。
「藍色」
「……名前?」
「うん」
まさか、さっきから考えていた『藍色少女』が名前に近かったとは……
「さ、自己紹介も済ませたから行きましょうか」
「うん」
「面白そうじゃのう……ついて行っても構わんかの?」
全員が頷いた。
そういえば、以前魔理沙とアリスが言っていた『風とルーミア』という単語があった。偶然にも目の前の美女もルーミアと言うらしいので、ついでに聞いてみよう。
「のう藍色よ」
「何?」
「お主、魔理沙やアリスとは知り合いか?」
「うん」
やはり噂の人物だった。気になっていた話題が解決されて胸のつかえが取れた気がした。
「あ、この辺りは広いね」
フランの言うとおり、少し開けた場所に出る。十数メートルはあるか?
「ほう、風が通る良い場所だ」
「じゃあ」
藍色がルーミアにアイコンタクト。
「はいはい。乗り込む準備しなさいな」
「む? 乗り込むじゃと?」
気になったが、すぐに疑問が解消されてしまった。
「闇夜「ダークネスレイヴン」」
強烈な驚きで。
広い場所を一気に暗くする巨大な鳥が出現した。
「な、ななな……なんじゃとぉ!?」
「お、九尾の狐の驚き頂きました〜」
ケラケラ笑いながら、フランと息を合わせて黒鳥に乗り込む。藍色とルーミアも乗り……
「置いてくよ」
「お、おぉ」
驚きは消えないが、言われた通りに乗り込む。五人乗っても余裕の広さだ。
「「レッツゴー!」」
小傘とフランの元気な声を合図に、文と良い勝負なスピードで飛ぶ。久羅は文を知らないので十分過ぎるがな!
「ぬわああああぁぁぁぁぁ…………」
うむ、ご愁傷様。
「成る程。で、あの九尾は倒れてるのね」
「うん」
幽香と仲良く話す藍色。ルーミアは地面に降り立ったレイヴンの下に座って影の中に落ち着き、フランと小傘はひまわりを見つめている。
久羅は日当たりの良い所で干され……寝かせられている。
「それにしても、そのスピードには興味があるわね。今度乗せて?」
「良いよ」
「ありがと」
太陽のような笑顔を見せる幽香。これを人里の者が見たらどうなるか。
「……そういえば藍色、あなた新しい場所があると言えば」
「どこ?」
「だろうと思ったわ。今度教えてあげるわ」
「うん」
藍色の瞳も眩しい気がします。
「むぅ……」
晴れ渡る空を見つめ、何となく思い出に浸る。自分の友人は今何をしているのか……
トラブルに好かれるあの犬神は大丈夫だろうか……?
「その前に、妖怪の山とやらに行かんとのう」
「あら、何故行くのかしら」
「む、ルーミアは人の心を読めるのか?」
「概ね読めるけど、今回は口に出てたわよ」
迂闊でした。
「しかし犬神ねぇ。心当たりがあるのだけど」
「なんじゃと?」
なんだ、あれと知り合いか?
「名前は知っておるか?」
「え〜っと、何だったかしら?」
藍色に聞いてみ
「わんこ」
おいっ
「わんこじゃねえええェェェェ!」
随分遠くから響いてきた叫び声。いやあ耳
「わんこじゃねえええェェェェ!」
……どこぞの山彦さんのお返しが響く。二連続とか洒落にならんぜ?
「……うむ、間違い無く代じゃな」
「あっちは妖怪の山ね」
「妖怪の山? ……すまんが、連れて行ってくれぬか?」
「別に良いわよ? 藍色、一分だけ出掛けてくるわ」
「うん」
一分とは凄いスピードだな。久羅を掴んで黒鳥に乗り込み、風を切って飛んでいった。
「じゃ、待ってる間にお茶の準備しましょうか」
「うん。二人とも」
「聞いてたよ!」
「やっるぞ〜!」
自ら進んで作業する子は良い嫁になるぞ〜
「はい到着」
「む、むう……」
「ちょっと! 急に入ってきて……あれ? ルーミアさんじゃないですか。藍色さんは?」
「ちょっとね。それより、あの犬神居る?」
「あ、はい。偶然にもあそこに」
天狗の住居か何かか? 間抜けな顔をした犬神が呆然とこちらを見ていた。
「そ。じゃあ、この九尾を彼に会わせてあげなさいな。知り合いらしいし」
「むぅ……」
「……ちょっとグロッキーだけど」
「了解しました」
椛が久羅を背負い、飛んでいった。
「さて、お茶でも貰いに行きますか」
一度代を見つめ、唇だけを動かす。
じゃあね、子犬ちゃん。
伝わったかどうかは知らない。
一方のこちら。
「……な、何? 今の叫び声」
「知らない声ですねぇ……」
天子一行友達百人の旅。一行は森の中を歩いていた。
いかがだったでしょうか?
藍色達の手に掛かれば、九尾のペースも……おっと、パクリいくない。
クロスオーバー済ませて来ました、空椿です。クロス先は藍蓮花の常連、風心剣トコです。毎度毎度ありがとう御座います。
さてさて、本格的に旧作のターンです。今現在、幻月の扱いに悩んでます。
一行の誰かと死闘か、気に入られて仲良くなるか、シスコンか……
ま、あまり悩みませんが。
実は、東方流犬録のメンバーから、また一人前後クロスの予定がある人物が居ます。お楽しみに。
ではでは、今日はこれでノシ