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東方藍蓮花  作者: 空椿
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藍色と風祝 常識は敵だ

 天狗との別れにちょっとした騒動があったものの、無事に守矢神社に到着した藍色。相変わらずのマイペースで石段を上がって行く。

 登りきってすぐに見えたのは、鼻歌を歌いながら掃き掃除をする巫女だった。


「おや? 初めまして、妖怪さん」


「初めまして」


 挨拶されたので返事。


「私は東風谷早苗です」


「藍色」


 握手を交わすが、片方は笑顔が暖かい巫女、片方は表情が冷たい藍妖怪。なんだこの温度差は……


「早速ですが……」


 急に雰囲気が変わった早苗から一歩距離を取り、次の言葉を待つ藍色。


 問.ツッコミ所はいくつある?


「あなたは神を信じますね!?」


「全然」


「な、どうしてですか!?」


「気分」


「気分でうちの神様を否定された!?」


 早苗の言葉でグダグダになった空気。


「強制されたら否定したくなった」


「素晴らしい理由ですね……」


「あなたがあんな言葉を言わなければ信じると言ったけど」


「幻想郷で常識にとらわれていたら身の破滅ですからね」


「それこそ凄い理由」


 誰かこの空気をなんとかしてくれないだろうか。と考え始めた頃に救世主が現れた。


「早苗、それ位にしときなよ。お客さんが困ってる」


 藍色とそう変わらない背をした特徴的な帽子……いや、帽子をかぶった少女が現れた。


「洩矢諏訪子、神様だよ〜」


「よろしく」


 軽い自己紹介だけを済ませた。何故か早苗は満足そうだ。


「ほら、神様はあなたの目の前に」


「いない」


「え!? いやだっ」


「諏訪子さん、巫女さん怖い」


「はいはい、奥に行こうか。早苗は掃除頑張ってね〜」


 諏訪子に連れられ、神社の中に入っていった藍色。早苗は置いてけぼり。


「…………藍色さんですか。成る程、強い力を感じました」


 そう呟いた瞬間、目にも止まらぬ早さでガッツポーズをする早苗。その目が燃えているのは錯覚だろうか。


「彼女が守矢神社を信仰して下されば、お二方の神力は跳ね上がるかもしれません……!」


 別にそんな事無いよと言いたいが、近付くのも熱いので断念する。彼女は神力の増減をちゃんと理解出来ているのだろうか?


「東風谷早苗! 我が神社の神の為、必ずやあの妖怪の信仰を!」


 ……きっと、捨ててはいけない常識を捨ててしまったのかもしれない。そのせいでこうなったんだ。そう信じたい。


「ああ! そうと決まれば早く掃除を終わらせなければ!」


 叫ぶやいなや、早苗はとんでもない物を出した。


「大奇跡「八坂の神風」!」


 あろうことかスペカである。全て風で吹き飛ばす、とでも言うつもりか?

 あえて言うが、奇跡の無駄遣いな上に出たのは風ではなく弾幕である。

 が、完全にテンションが頂点な早苗は、掃除していたはずの場所をボロボロにしたのに気付かず、鼻歌を歌いながら神社に入ってしまった。


 あとで神の一柱に怒られるとは思いもせずに……





「災難だったね。家の早苗はたまにたがが外れたりするから……」


「大丈夫」


 一方の二人は奥でのんびりしていた。藍色はお茶を淹れている。


「どうぞ」


「さ〜んきゅ」


 お茶を諏訪子に渡し、藍色は周りを見渡した。


「誰かいる?」


「あら、ばれちゃったかしら」


 障子を開けて現れたのは注連縄……いや、注連縄を背負った女性、八坂神奈子だった。


「強い神力を感じたから」


「勘が良いわね。って諏訪子?」


 話を始めてすぐに、神奈子が静止している諏訪子を発見した。


「諏訪子? お〜い」


 神奈子を叩き始めた神奈子を見、藍色も参加する。


「……お? あ、神奈子」


「何やってんだ。カチンカチンになっちゃってさ」


「ちょっとこれ飲んで」


 藍色が淹れたお茶だが。


「……なんだ、ただのお茶じゃない」


 と呆れた様子で諏訪子を一度見やり、一気に飲み干し、固まった。

 まあ、諏訪子程は固まらず、すぐに復帰した神奈子は感想を述べた。


「神の茶だわ……」


 粥じゃあるまいし。


「あなた、何をしたの?」


「私の能力。完璧なお茶を淹れられる確率を上げた」


 能力をこんな所にも使うのか……


「目上の相手にお茶を淹れるなら、出来る限り最高のおもてなしをするだけ」


「成る程ねぇ……」


「最初、失敗したけど」


 どうやらハズレを引いたらしい。


「だから、二回目に完璧なお茶を淹れられる確率を上げた」


 ハズレを引いてもあまり関係無いようだ。


「面白い能力じゃない。それってさ、人の強さとか考えも変えられるね?」


「やろうと思えば、神様も」


「それは本当ですか!?」


 スパーン。障子の開く綺麗な音と共に早苗が登場した。


「おや早苗」


「話は聞かせて貰いました! 藍色さん、その能力を私に!」


 突然の登場に流石にフリーズした藍色。


「早苗、なんで?」


「だって! 私が強くなれば!」


 足を開き左手を腰に当て、虚空を指差すという見事なポーズを取りながら叫んだ。


「あの憎き紅白貧乏巫女を倒し、博麗神社をわが守矢神社の傘下にする事が出来ます!」

 一般常識帰ってきて、頼むから。諏訪子なんて頭抱えてるよ。

 そして、当初の目的はどこにすっ飛んだのか。もう何がなにやら……


「……ま、ちょっと予想してたけどね」


 軽い頭痛を覚えた神奈子は、巨大な霊力が接近してくるのを感じた。


「……藍色、あんた何かした?」


 ただただなんとなく、答えが帰ってくるとは思ってなかったが聞いた神奈子。

 予想に反して答えが帰ってきたが。


「早苗の声が、話題の人物に届く確率」


 藍色か呟いた瞬間に神奈子は藍色を掴み、諏訪子と共に退避した。

 瞬間――


「だあぁあれが紅白貧乏巫女ですってえええ!?」


 回霊「夢想封印 侘」。ピチューンと小気味の良い音が響いた。





「悪かったね、霊夢」


「別に構わないわよ。貧乏を訂正させるつもりだけだったし」


 お詫びとして貰った料理をなかなかのスピードで腹に入れる霊夢。もう少し味わって食べたほうがいいんじゃないんだろうか……

 ちなみに早苗は隣の部屋に寝かせた。


「そういや藍色、こんな所にいたのね」


「しばらくぶり」


「お? 霊夢と藍色って知り合いだったの?」


「ちょっとね」


 本当にちょっとである。


「スペルカードルールを教えて貰って、料理をご馳走してもらった」


 最後にいい人、と呟いて黙った藍色を見、微妙な顔をする諏訪子。


「あの雑草の味そのままの物を料理と言うか」


「馬鹿じゃない奴にしか本当の味が分からないのよ」


「はいはい馬鹿ですよ〜」


 諏訪子と霊夢による子供の争いを放置し、神奈子は藍色を見る。


「スペルカードルールを教わったんなら、ちょっと私とやってみない?」


 単なる好奇心だが、それを霊夢が止めた。


「止めときなさい。藍色は弾幕ごっこ向きの性格じゃないから」


 続けて理由も説明、納得した神奈子は弾幕ごっこを諦めた。


「確かにそれじゃあ勝負にならないわねぇ」


 しかし、と呟いて考えを巡らせる神奈子。可能性としては低いが、藍色の考えを起点にスペルカードルール全体に綻びが出るかもしれない。

 案外弾幕ごっこを嫌がる妖怪は多いのだ。


「今度八雲と話し合うか……」


「あーうー……」


「グルルルル……」


「そこ、うるさい」


 せっかく考え事してたのに、と不満を露わにする神奈子。注意を受けた二人は止める様子が無かった。


「ああ、忘れてた」


 霊夢が急に諏訪子を放置して藍色に向き直った。


「藍色、うちの賽銭箱に能力使った?」


 言い方からして、何かあったのは確かだな。と神奈子が考える。


「お賽銭が集まる確率を……」





「私、博麗神社捨てて藍色信仰しようかしら……」


「早まっちゃ駄目」


 霊夢の目は本気だった。


「霊夢が居なくなったら大結界はどうするのさ!?」

「先代がやってきたみたいに新しい巫女探すわ……」

「待て待て霊夢! もう少し落ち着いて考えなさい!」

「お茶淹れてくる……」

「私は冷静よ!」

「霊夢さん! 不意打ちは酷いですよ!」

「早苗はちょっと黙ってて!」

「うるさいわね! 夢想封印でぶっ飛ばすわよ?」」

「あわわわわ! 止めて止めて〜」


 藍色は静かに能力を使い、自分の言葉を聞き入れる確率を上げて呟いた。


「眠れ」


 瞬間、全員が瞬時に眠りに落ちた。





 全員が目覚めた時には藍色はおらず、代わりにテーブルに「お邪魔しました」の書き置きと、湯気を揺らす全員分のお茶が残してあった。







 余談だが、後日に八雲紫が霊夢の所に来て必死に考えを改めるように説得したが、効果は薄かったらしい……


早苗さんファンに後ろから刺されそうな回でした。


さて、次はどこに行こうかな……


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