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東方藍蓮花  作者: 空椿
43/114

藍色と混戦 驚愕は敵だ

「禁忌「恋の迷路」!」


「むっ!?」


 藍が突っ込んできた瞬間に宣言。しかし、パターンは読まれていたみたいで、安全地帯を走り回られている。


「……密度が薄いなぁ」


 その割に回転が早い。しかし、九尾相手だと関係は無かった。

 さっきの禁忌「カゴメカゴメ」も緑の小弾が少なかった変わりに黄の大玉が多かった。この二つも考える必要があるらしい。


「次!」


 禁忌「恋の迷路」を解除すると同時に、次を宣言した。


「禁弾「スターボウブレイク」!」


 藍が警戒して距離をとると同時に、


「わっ……わわわ!?」


 一際強い雷が発生し、全く違う物が発動した。


「……あれ?」


 無手だったフランの右手にあったのは、なんと大きく歪んだ巨大な弓。矢は無い。

 今までと違う現象に、藍どころかフランすら驚いていた。


「え? え?」


「……うむ?」


 見ていたルーミアまで一瞬思考が吹き飛んだ。流石にこうも変化するとは思いもしなかったろう。


「っ!」


 フランが羽を羽ばたかせて空に浮遊し、弓を素早く構え弦を引く。構え方は本で見た。

 すると、弓と弦の間に紅い光が集まり、一本の矢を発生させた。


「ま、まずい!」


 本能的、衝動的にまずいと感じ、次の一撃の回避に全神経を集中させる。


「せ〜ぇの〜ぉ……」


 弦を更に強く引き絞り、目を細める。


「でやぁぁ!」


 放たれた真紅の矢は、驚異的な速度で藍に迫る。回避すら間に合うか、最早賭けの域だった。


 ズドンと轟音が響き、舞うのは地面の欠片と少量の鮮血。


「っがぁ!?」


 左の頬は紅に染められ、背後に発生した轟音に三半規管を狂わされる。


「な、なんて威力……」


「でぇい!」


「だあぁぁっ!?」


 勘だけでダイブした。一瞬後に真後ろは爆発し、衝撃に乗って藍はかなりの距離を飛んでしまった。


「ぐ、う……」


 更に追撃が来るか? と思ったが、流石に射程外らしく、フランは矢をつがえたまま動かなくなった。


「…………うむ、落ち着いた」


 ゆらりと立ち上がり、頭の中では既に様々な計算を始めていた。矢の速度や距離を割り出すのは得意技だ。


「……情報が足りないな、出来ればあと一発」


 しかし、答えを出すには至らなかった。だから新たな情報を得る為にも、体を傾け追い風を受けて駆ける。


「行くぞ!」


「むっ……」


 接近してきた藍にしっかり狙いを定め、時に先を読んでチャンスを待つフラン。あまりに正確過ぎて恐ろしいが、フランは弓その物を使った事はまだほとんど無い。

 しかし、それを成し得てしまうのは才能か知識か。はたまた両方か?


「早いね……」


 時間が経つ程にフランの精神は落ち着いて行くが、藍は逆に焦りが出て来た。

 目の届く先でずっと狙われていて、気分が良いわけがない。


「くっ!」


 疲労と自由の利かない体が、遂に藍の足を滑らせた。


「隙あり!」


 集中力が高まっていたフランはそれを逃さない。またも真紅が地面を爆破した。


「そっちがなぁ!」


 捨て身の回避をした藍が爆風に乗り、右の爪を突き立てる。カウンターだ。

 基本的に弓使いは近距離の対応手段が無い。近距離の素早い相手を狙うのは難しいのだ。が……


「えいっ!」


 まさか、弓を振りかぶって来たのは計算外だろう。吹き飛ばされたのに気付いたのは地面に落とされた後だった。


「な……え?」


「あ〜あ、やっぱり消えちゃった」


 フランが壊れてない弓を上に投げる。端の方から弾幕となり分解され、弓は消えた。

 長く持った方だが、いい加減にスペルカードその物の時間が来てしまったらしい。


「まあいいや! 楽しかった!」


 別のスペルカードを取り出し、笑顔で構える!


「続行だ!」


「こ、このぉ……!」







 視点は変わり、こちらは賢者と付喪神である。


「紫奥義「弾幕結界」」


 いいいいきなり容赦ねぇなお前さん!?

 紫の姿は消え、広範囲を魔法陣が回転する。


「……耐久スペル?」


「似た感じね」


 何処からか紫の声が聞こえたが、姿は確認出来ない。


「でも正確には、同じ名前であって違う物。あなた達を無力化する為に作り替えたのよ」


 辺りを回っていた魔法陣が弾幕を並べる。その量は尋常ではない。というか、避けさせる気は無い。


「ぴゃあ!?」


 並べられた弾幕が一斉に襲いかかる。成る程、死合いなら避けさせてあげるわけにはいかないな。


「びっくりさせないでよ!」


 回避、回避、回避。たまに傘で弾き飛ばして隙間を作る。

 次は真後ろから来た。それも回避、弾き、受け流す。


「……嘘、全部捌いちゃったの?」


 既に第二波の用意はしているが、まさかあれをどうにかされるとは思ってなかったらしい。


「……これは驚いたわね」


「それはどう……もぉう!?」


 第二波をまたも流し、そのまま何回も何回も捌いてしまう。


「……はぁ」


 いや流石におかしい。いくら体の能力が上がっても、判断力や第六感まで強化されるとは考えにくい。


「まさか……ねぇ」


 遠目に藍色を見る。普段より輝く瞳は小傘を見つめている。勿論こちらは見えないので小傘を見るしか無いだろう。


「……!?」


 そのハズだった。しかし、藍色は横目でこちらを見つめた。短時間だが、確実に。


「まさか、見えてるとでも……」


「よっし!」


 別の場所から声が上がる。思考を中断して見ると、全て捌いてしまった無傷の小傘が居た。


「……頭が痛いわ」


「人に攻撃してなんでそっちが痛くなるの?」


 さあねぇ。


「仕方ないなぁ。次はこっちから行くよ?」


 小傘が傘を振り回す。その度に高密度の弾幕がばらまかれ、紫に回避を強制させる。


「弾幕? 肉弾戦かと思ったのに……」


 藍色達の事だから、と予想の外れた紫。実は理由があるのだが、気付いてはいない。


「どりゃあ!」


 一際大きく振りかぶり、弾幕の波を放つ小傘。色とりどりの弾幕に、小傘の姿が視認出来なくなる。


「豪快ねぇ」


 余裕を持って回避し、気付く。


「あら?」


 居ないのだ。


「逃げた……わけじゃ」

「こんばんはっ!」

「ッ!?」


 真上からいきなり小傘の笑顔が振ってきた。更に密度の高い弾幕が炸裂し、思考を乱された紫は防御を余儀無くされた。


「くっ! やって」

「これまたびっくり小傘ちゃん!」

「きゃっ!?」


 今度は真後ろだ。今度は見る余裕も無かった。


「へへ、賢者の驚き二つ頂きました〜」


 上機嫌な小傘が遠くに確認出来た。


「や、やってくれんじゃないの……」


 口が裂けても舌噛んだなんて言えない紫。


「いいわ、あなたをちゃんと強敵と認めてあげようじゃないの」


「ん? 良いの?」


「このままコケにされたままは好かないからね……」


 扇を開く。目の中にあった余裕の色はなりを潜めた。


「耐えてみなさいよ。妖怪の賢者の名にかけて、あなたを必ず地に叩き落としてあげるから」


「そっちこそ、あんまり驚きすぎて舌噛んでも知らないよ?」


 ……それがな、もう噛んでるんだ。







「小傘はどう?」


「良い勝負」


「そう。フランはちょっとびっくりな出来事が発生したわよ」


「後で聞く」


 傍観者の二人は、その場に座って身内の行動を見逃さないようにしている。そこに……


「見ない顔ね、あんた誰?」


 参加者が。カッターシャツにサスペンダーで吊ったもんぺと、なかなかどうして見かけない格好だ。


「藍色」


「ああ、最近噂の」


 藍色も有名になったもんだね。


「あなたは?」


「藤原妹紅」


「ふぅん」


 曰わく、竹林で案内人をやっているそうな。


「なんでこっちを見な」


「身内を見てるから」


 案内人だろうがお構い無しでした。


「身内?」


「唐傘と吸血鬼」


「……凄いメン」


「それほどでもない」


 宴会の時の方が凄いだろうよ。


「それにしても、スペルカードルールは一体どうしたのよ? 流血試合になってるし……」


「そ〜いう戦いなのよ。戦って傷つけて、倒した方が勝ちの正真正銘の死合い」


 会話に参加しなかったルーミアが声を出す。視線はフランから外さない。


「リグルとミスティアからよく聞くわよ。あなたも似たような事してるじゃない?」


「あれは……ね」


 反論は出来ないみたいだ。


「ま、痛い思いをしたくないなら大人しく見てなさい。何か学べる所でもあるでしょ」


「そーする」


 適当な場所に座り、藍色をチラチラ見ながら光弾を見つめていた。







「禁弾「カタディオプトリック」!」


 小さくパチパチと音が鳴る。しかし、発動してみるとあまり変化は無いように見える。

 以前に紫に似た物を攻略させられたのか、慣れた感じで回避を繰り返す藍。


「これは良し、かな?」


 少々修正は必要かもね。解除した。その瞬間……


「んぁ?」


 視界が反転し、空に落ちて行く自分。


「やあぁっ!」


 狐の掛け声が耳を通り、次に響いたのは痛みだった。


「うっ!」


 地面に突き落とされたのを理解したフランはすぐさま立ち上がり、目の前に来ていた爪を寸前で回避した。


「わっ! とっ! ひゃあ!?」


 回避した先に更に反対の手が迫り、爆転して回避をすると駄目押しのように追い詰めてくる。地面に次々と穴があく。


「シャァッ!」


 体勢を変え、振り上げるように出された爪が、フランの額をかすって帽子を吹き飛ばす。


「あっ!?」


 つい目で帽子を追う。


「余所見とは余裕だな!?」


 遂に藍の爪がフランを捉えた。小さな腹に腕が貫通し、血を撒き散らす。


「ゴブッ……う……」


 こみ上げてくる血が発言を邪魔する。腕はすぐに引き抜かれた。


「吸血鬼という種族の力に振り回され、余裕を振りまきながら戦った結果だ。呪うなら自分を呪え」


 藍が右手にスペルカードを握り、フランの首を掴む。


「悪いが、もし死んでしまっても紫様なら生き返らせられるのでな。少し寝ていてくれ」


 なに、すぐまた目覚めるさ。と口だけを動かす。


「幻神「飯綱権現降臨」」


 かなりの至近距離から発動し、容赦なくフランを弾き飛ばした。





「ちょっと九尾〜」


「なんだ宵闇の、次はお前か?」


 ルーミアが声をかける。


「決着したかは相手を確認してからにしなさいよ」


「必要ない。吹き飛んださ」


「そ〜ぉ……」


 ニヤニヤニヤニヤ。ルーミアは笑みを崩さない。


「じゃあ、混ざっていいかしら?」


「混ざるも何も、既に吸血鬼は潰した」


「それはオーケーととっていいのね?」


 スッと立ち上がり、笑みを消す。


「捕まえる為、なんて可愛らしい理由に包んでるけど、やりすぎと考えないのは月の魔力かしら?」


「正当防衛という理由に包んだ実験もどうだかな」


「さあねえ?」


 ルーミアは藍の隣を通り過ぎる。


「少なくとも、倒すで止めるのと殺すで止めるのは違うわね〜」


 ルーミアが息を吹き、残った土煙を飛ばす。


「ま、何でもいいかしらね。妖怪は所詮月には勝てないのよ」


 フランを優しく立たせ、耳打ちする。血は止まっていた。


「……さ、私達も好きにするから、藍色を捕まえるという名目の下に暴れなさい」


 フランから手を離すルーミア。フランが倒れる事は無かった。


「ほら、まだやる?」


「……うん」


 これは驚いた。まだ動けるのか。


「禁忌「フォーオブアカインド」」


 またもフラン達が藍に襲いかかるが、動きは鈍い。


「続きはまた今度にしましょうか」


「分かった」


 フランが白紙のスペルカードを出した。


「む?」


「大罪「ラストジョーカー」」


 フッと藍が暗くなる。上に何か?


「なあっ!?」


 回避。真上から落ちてきたのは『五人目』のフラン。


「…………アハハ」


 しかも、かなり危険な目をしている。


「暴れないで、倒すだけだよ」


 周りのフランが言い聞かせる。


「さて、私も混ざるわね? 見てたら我慢出来なくなっちゃった」


 ルーミアも何故か十字架の短剣を両手に構えている。


「は、謀ったのか!?」


「ちょっとだけよ」


 六つの暴力が一斉に襲いかかった。







「どおりゃあああっ!」


「きゃっ!?」


 上空から雨のように弾幕を撒き散らし、紫の弾幕が迫ればすぐにどこかに移動される。

 たまにとんでもない速度で移動される為、紫は先程から驚かされてばかりである。


「はああっ!」


「ひゃああ!?」


 紫は紫で密度の濃すぎる弾幕で確実に小傘の精神力を削いでいる。

 段々と回避が危なっかしくなってきたので、ちゃんと効いているみたいだ。


「いい加減に当たって倒れてくれないかしら!?」


「嫌だ! 当たったら痛いじゃない!」


「私はさっきから痛いわよ!」


 主に舌がな。


「しっかし、なんでそうも避けられるの? 驚きすぎて寿命が無いも同然なのに無くなりそうよ」


「考えるのは得意でしょ〜」


「だったら考えさせなさいよあなたは……」


「お断りだ〜っ!」


「んぐっ!?」


 確実に紫の舌にダメージを与える小傘。


「ああ驚いた…………驚いた?」


 驚いたと言えば……ねぇ。


「あなた、能力使ってる?」


「ぎっくぅ〜」


 ビンゴだ。

 小傘の能力は『人間を驚かせる程度の能力』。だが、藍色の能力の加護を受けて実質人間の枠には収まっていない。

 それは言いかえれば、『相手を強制的に驚かせる程度の能力』で、更に……


「つまり、あなたは『私を驚かせるような行動』をしているってわけね……」


「ば、バレるの早くないかな……?」


 瞬間、紫が狂ったように笑う。笑う笑う、そして、


「冗談じゃないわよ!」


 泣きながら怒った。


「つまりそれは、かなり曖昧な『相手を超える能力』と変わらないじゃないの!」


 勝てるか!


「あは、ははははは〜」


「んもう! 戦い損よ!」


 そんな紫への対応は……


「ごめんなさ~い」


 テヘペロ。


「ああああああっ!」


 ついにキレた。紫は辺り構わず弾幕を撒き散らし、小傘どころか遠くの藍色や藍まで攻撃した。


「ちょちょちょちょ! ご主人様ぁぁぁ!」


 小傘が泣きながら助けを求めたのを確認し、藍色は立ち上がって宣言した。


「否定証明「絶対確率」」


 更に、手には何故か以前の式が。紫が気付いた!


「そ、それは……」


 藍色が軽く振りかぶる。思わず展開させていた弾幕が消える。


「嫌~~っ!」





 スパーン。









「もう元気だよ!」


「はいはい良かったわね~…………ハァ」

 数分後、そこには藍色にこき使われる紫の姿が!


「紫様、気を確かに……」


「もう疲れたわよ……心身共に……」


「へ〜ぇ、あの八雲紫をねぇ……」


 妹紅が面白がっている。屈辱だろうなぁ。


「さて、そろそろ夜を消さないとね」


 藍色がフランを小傘の隣に移動させ、唐傘を開かせる。


「お疲れ様」


「はいはい」


 ルーミアに周りの夜が集まり、段々と日差しが戻ってきた。既に夕日だが……


「じゃ、妹紅さん。またね」


「んぁ、もう行っちゃうんだ」


「ご主人様は筋金入りの旅人だから、あまり長いところにいるとソワソワしちゃうの」


 だから紫に足止めされた時はいつにも増してイライラしていた。仕方ないか。


「そう。じゃあ、また今度会いましょ」


「うん」


 結局、紫の式を放置して藍色達は去った。


「ちょ、この式……」


「それ、橙なら剥がせると藍色さんは呟いて」


「藍! 橙を呼びなさい! 早く!」


「はははははい!」





「面白い奴だったなぁ」


 楽しみが増えた妹紅だった。







「ああ、藍色、小傘は戻さなくていいの?」


「そういえば。やらないの?」


「……………………う」


「え?」


「……うぇぇ……」


「「「あ…………」」」







 一方のこちら……


「天狗は頭が固いですね」


「仕方ないさ、あいつらは」


「…………人里に行く」


「「え?」」


 天子一行友達百人の旅。一行は妖怪の山を下山していた。

 詳しい描写は気が引けましたが、フランは藍をこれでもかと言うくらいにボコボコにしました。フランちゃんヤメテ。


 小傘をまさかのチートにした魔改造厨の、天か色か最近決めたくなった空椿です。長い? スマン。




 天子一行ネタは無事に役目を終えたので、次回からは幻想郷一周の旅に戻ります。お疲れ様でした。



 いやいや、もうちょっとだけ続くんじゃよ。




 さてさて、次はどこに行こうかな……


 空椿でしたノシ。

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