藍色と無名 鈴蘭は敵だ
無名の丘、鈴蘭畑、毒人形の住処。呼ばれ方は様々だが、結局名前が無いから仕方ない。
大体無名の丘と呼ばれるが、無名のくせに無名の丘という名前がある。ああゴチャゴチャしてきた、話を変えよう。
無名の丘は太陽の畑から割と近いので、その日の夜に寄ることにした藍色一行。メディスンも帰るつもりなので、どうせなので一緒に歩く。
「いや〜、昼は久々に笑ったわね」
「ほんと! 漫画を見てもあんなに面白いのは無かったよ!」
「漫画って……あの図書館何でもあるね」
「魔法の本、漫画、小説、図鑑、他多数」
「人形の本は?」
「ある」
雛人形や魔法によって動く魔導人形等、そんな感じの本も大体揃っている。
フランは全部読破したし、半分は丸暗記したが、その暗記の内に人形の本がいくつかある。
「外の世界にはからくり人形っていうのがあるらしいよ?」
「からくり人形?」
からくりとは、糸、ぜんまい、水力などを応用し、人形や道具を動かす仕掛けの総称。からくり人形は、それらを上手く組み合わせて作った人形の事だ。
「普段は何も出来ないんだけど、仕掛けを作動させると色んな事をするんだよ!」
特に凄い物になれば、矢を射て遠く離れた場所の的に的確に当てたり、なんと楽器を演奏する物もあるそうな。
「そ、そんな人形も居るんだ」
「うん!」
ただし、非常にデリケートな物でもあり、歯車の一部が壊れたら途端に動かなくなったり、作業工程で少しミスをするとかなり初期からやり直す必要が出たりする。
それを完璧にやり遂げてしまう素晴らしい人間が外の世界には居るようだが、年々減っていく一方だそうだ。悲しいな。
「で、ここが鈴蘭畑?」
歩いていたら到着したらしい。一面に鈴蘭の咲いた小さな丘だ。元々小さいメディスンにとってはかなり広いが。
「そう。ここが私の住処よ」
「寂しい所」
鈴蘭しかないので、藍色の言うとおり寂しい。今は夜だが、残念ながら月は雲に隠れている。
「せっかくの月が見えないね」
小傘が一言。
「残念ね、鈴蘭と丘と月が揃えば綺麗だと思うのだけど」
ルーミアが言葉を重ねる。
「ちょっと、何するつもり?」
メディスンが声をかけるが誰も答えず、フランは藍色を見る。
「どうするの?」
「お願い」
「よぉ〜っし!」
藍色が言うと、フランが右手を突き出して何かを握る。おいまさか!?
「霊夢〜」
「何よ」
「ちょっとあれ見てみろよ」
「あれ?」
博麗神社。魔理沙が指をさしたのは、本来月のある場所。
「別に何も無……い?」
雲が光を遮っていたはずだが、見る見るうちに雲が薄くなっていく。出来た隙間から月光が漏れ出してきた。
「……は?」
面食らってる内に雲が消え去って見事な上弦の月が現れた。って待て待て待て。
「異変……なのか?」
「知らないわよ」
でも、何もしないのはちょっと何か言われそうだな……
「調査だけはしようかしら……」
「お供するぜ〜」
藍色達のしでかした事がこんな人達の所に回ってきていた。
無論、他の人達も気付いていたが……
「丁度良いわ、月見でもしましょうか」
「神奈子〜、月が出たよ〜?」
「おお、そろそろ満月か。仕事の準備をしないとな」
「あらあら、綺麗になったわね〜」
「お? ぬえ、ちょっとあれを見てみなさい」
「……ありゃあ、誰の仕業かねぇ?」
「外の世界に何か影響が出て無いかしら?」
気にした人物は居なかった。
全員分かった人は凄いと思うよ?
こちら無名の丘。メディスンが口を魚のようにパクパクしている。
「フラン凄い!」
「えへへ〜」
「もうすぐ満月か……」
「そうみたい」
藍色一行はやはりブレない。
「なななななな、何しでかしてるのよ!? 博麗が退治しにくるわよ!?」
「安心なさい、誰かが迷惑したような事じゃ無いから。精々面食らう程度よ」
「だからってねぇ! 何で雲を消しちゃう必要があるのよ! 移動させれば良いだけじゃない!」
メディスンが叫ぶが……
「月が見たかった」
「そうじゃな」
「見たかった」
結局藍色の一言に貫き通された。藍色には何を言っても無駄っぽい。
「いやだか……もういい」
「そう? じゃあ、月見しよっか」
「は〜い!」
四人は鈴蘭畑に座り、爛々と輝く月を見る。メディスンも諦めて座る。
「あんた達、本当に自由ね……」
「考えが独特なだけ」
「それを意地でも実現させてしまうから自由って言われるのよ?」
「う?」
藍色には何を言っても無駄だろうな……
「……あら?」
ルーミアが何かに気付き、立ち上がって歩く。行き先は鈴蘭畑の中心。
「ルーミア?」
「…………ちょっと来なさい」
手招きしてきたので、全員立ち上がってルーミアの所に。ルーミアが見ているのは足元だ。
「何?」
「これ、どうかしら?」
指された方向は真下で、そこには男性。うつ伏せにぶっ倒れている。
「ま、まさか死んでる?」
小傘が顔を青ざめながら言う。
「生きてるよ」
藍色が遠慮も無く男性を仰向けにする。呻き声が聞こえたが無視。
口から血が溢れ、腹には大穴が空いている。大方、野生の妖怪に抉られたのだろう。
「でも助からない」
「えぇ……?」
見ていたメディスンもちょっと微妙な感じだ。
「能力使う?」
「助ける義理は無い」
「むしろ襲う側の私達が助けるのもねぇ……」
「……そっか」
藍色が残酷な事を言う。やがて、放置された男性は息絶えてしまった。悲しむ者は居ない。
「……ねぇ藍色」
「どうぞ」
ルーミアの質問に素早く答え、フランと小傘を連れて遠くに言ってしまった。メディスンもわけが分からず、藍色についていく事に。
「…………さて、と」
ルーミアはもう動かない男性の手を掴み、持ち上げる。手の甲にキスをし、微笑む。
「居合わせてしまった私を呪っていいわよ? その憎しみがまた私を強くするから」
死した者の屍を口に運ぶ。
「いただきます」
「霊符「夢想封印」!」
「あら?」
死体を掴み、地面を蹴る。さっきまで居た場所は複数の大きな光弾によって炸裂した。
「ちょっと、何よ?」
「何よじゃないわよ! あんたまた人を!?」
「待った待った。この人間に致命傷を与えたのは私じゃないわよ。見殺しにはしたけど」
話ながら死体をモリモリ食べるな。説得力が皆無だよ。
ちなみに、血は既に抜けきってしまったらしく、ルーミアが血まみれになる事はなかった。
「そんな事されながら言われても、信じられるワケ無いでしょうがぁ!」
針のような物を大量に投げつけてきた霊夢。
「危ないじゃない」
あろう事か、手に持ったままの死体を盾にした。
「こんのっ!」
それが霊夢の神経を逆撫でしてしまったらしく、弾幕の密度が増えてしまった。
「もう、妖怪が人間を食べるのは周知の事実でしょ?」
「博麗の巫女の目の前で食べる妖怪が居るかぁ!」
「仕方のない子ね〜」
ルーミアが真っ白のスペルカードを出す。バチバチと音を鳴らし、十字架の絵を出現させた。
「十字架「与奪の十文字」」
宣言した瞬間、ルーミアの右手にナイフと同じような大きさの十字剣が。
「何のつもりよ」
「無力化」
死体を足元に起き、右手を大きく振るう。一つだったナイフが何十にも増え、軌道をランダムに変えながら霊夢に向かう。
「うっわ!?」
ほぼ天性の勘だけで回避した。しかし、追撃を忘れてはいけない。
「って! えぇ!?」
霊夢は既に、何百もの十字架に全方位を包囲されていた。
「避けた物にいつまでも意識を集中させちゃ、すぐに逃げ道を防がれるわよ」
「夢符「封魔陣」!」
「残念」
発動する一瞬前に、十字架達が霊夢の意識を刈り取った。服は全身を切り裂かれ、肌も血を流す。
「あ、落ちたら余計に怪我するわね」
墜落してきた霊夢を受け止め、頬を叩く。
「起きなさい、霊夢」
「う、う〜……」
霊夢はすぐに目を開けるが、開けた瞬間心の奥までえぐり取ってしまいそうな紅い瞳が映った。
「っ!?」
「ほら、落ち着いて?」
その一言で、思考が凍りつく。意識を朧気にされる。
「私の言葉をよ~く聞いて?」
「……うん」
ルーミアがニヤリと笑った。
「ったく、物凄いスピードで置いていきやがって……」
魔理沙がのんびり移動していると、前方から霊夢が来た。ボロボロだが……
「霊夢!? 一体どうしたんだよ?」
「ボーっとしてたら木に当たってあちこち切っちゃったのよ。手当てすれば問題無いわ」
「ほ、本当なのか?」
「ええ。あ、この先だけど結局何も無かったわよ? だから早く帰りましょう?」
「……そう言うなら、帰るぜ」
霊夢の様子がおかしいのはよく分かったが、怪我の手当てを優先させる為に帰る事に決めた魔理沙だった。
「……何があったんだ?」
「ルーミアさん、なんだか嬉しい事でもあった?」
「三つ程ね〜」
この一件の全てを知るのは、ルーミアと鈴蘭だけである。
ちなみに……
「……覚悟は出来た?」
「あ、あや〜〜〜〜っ!?」
藍色を探して幻想郷一周の旅。紫は天狗の集落に、
「……不思議な状況だな」
「え? 至って普通の光景よ〜?」
「一緒に剣の修行をする事に何か問題でも?」
「…………いや」
藍は白玉楼に来ていた……
R-15入れますね! サラッとグロいからね! 遂にグロのダークサイドに堕ち始めた空椿です。
結局、藍色達も妖怪なんです。小傘は人間味溢れてますが。
特にルーミアは一行の中では最も妖怪らしい妖怪です。偶には……うん。
続けて賽銭貰いました。jokerさんありがとう。積極的な人は大好きだよ! 限度はありますが。
皆もどんどん入れちゃっていいのよ?(チラチラッ)
そういえば、小説見てると恋愛描写ありますよね。うちも入れるべきでしょうか……?
霖之助しか男居ないけど………… 百合? 今考えてる。
さて、そろそろ小傘を……
では、失礼しますノシ