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東方藍蓮花  作者: 空椿
36/114

藍色と天界 傲慢は敵だ

「天界?」


「はい、天界です。行ってみます?」


「行く」


 はい行き先決定。面白みも何もあった物ではないが、未開の地はやはり興味がわくらしい。

 この状況になるのにはあまり難しい事は無かった。たまたま偶然地上に来ていた竜宮の使いが藍色を見つけ、話しかけてきただけだ。


「では、ひたすら上空に向かって下さい。大地が見えればそれが天界となります」


「分かったわ。ご丁寧にどうも」


「あ、先に申し上げておきますが、」


 さあ行こうという時に止めてきた竜宮の使い。


「総領娘様はかなり傲慢なお方ですが、どうか嫌わないであげて下さい」


「うん」


 総領娘様が誰かは知らないが、一応了承した。


「闇夜「ダークネスレイヴン」」


 黒鳥を出し、三人仲良く一匹に乗って飛び去った。





「ああ、助かりました。もう少しで地震を起こされる所でしたよ……」


 そんなに切羽詰まってたの!?







 さて、天界についた辺りにまで飛ばします。会話なんて無かったので。


「あら、桃が沢山あるわね」


「食べていいかな?」


「知らない」


 空飛ぶ大地に降り立ち、適当な方向に進む三人。黒鳥は目立つので消した。


「天界の桃って、味はイマイチってよく聞くけど」


「美味しいけど」


 手が早い藍色。ちなみに、天界の桃の味はイマイチとの噂だが、噂の本元は全て天人である。天界の食べ物は桃ぐらいしか無いので、多分単に食べ飽きただけではなかろうか?

 実際三人共口にしてみたが、桃の中ではかなり甘く美味しい。


「贅沢ねぇ、これを美味しくないなんて」


「食べ飽きたなら別のを食べればいいのに」


 その別の食べ物が無いのだが。


「ま、適当に見学していきましょうか」


「沢山持ち帰るよ」


「はいはぁ〜い」


 ルーミアから土産袋を受け取り、桃をひたすら詰め込む小傘。別に持ち運ぶ分にはあまり問題は無いのだが……


「入れすぎないでよね。かさばると持ちにくいのよ」


「了解〜」


 尚もヒョイヒョイと桃を取る小傘に少々呆れながらも周りの観察を欠かさないルーミア。


「人は少ないのね」


「みたい」


 まだ誰にも遭遇してないので、一カ所に集まっているか数が少ないかのどちらかだと推測。

 更に数十分歩いてみると……


「あ、成る程ね」


 大量の人間が酒を飲み、踊り、笑っていた。宴会じゃないか!

 あ、萃香が紛れ込んでる。


「臭い」


 案の定藍色はアウト。小傘の後ろに隠れる。


「私が話聞いてくるから、二人は風上にでも行きなさい」


「うん」


 ルーミアに任せ、二人は別の場所に移動。ルーミアは宴会場に足を進めた。


「ちょっと」


 声をかけてみると、緩みきった顔をする男性が振り向く。


「なんだい? ……まさか、死神か?」


「いや、ち」


 一斉に立ち上がる人々。手には何故か武器が。


「何度来ても無駄だ! 無駄に怪我をする前に帰れ!」

「そうだそうだ!」


「ちょっと、違うってば」


「騙そうとしても聞かんぞ? 死神は色んな手段を使ってくるからなぁ」

「そうだそうだ!」


「だ〜か〜ら〜……」


「さあ、怪我をする前に帰るがいい!」

「そうだそうだ!」


「ちょっとそこ、うるさい」


 さっきから「そうだそうだ!」しか言ってないじゃないか。


「あとね、勝手に話を拡大させてるけど、私そもそも死神じゃないからね? 地上から遊びに来た観光客よ」


「そんな話、信じると思うか?」

「そ」

「いいからお前は黙れ」


 ルーミアがキレるぞ。


「大体、私が死神だって証拠が無いじゃない」


「逆にお前が死神ではないという証拠も無い」

「」

「満月符「フルムーンライトレイ」」


 キレた! そうだそうだは吹き飛んだ。


「……ちっとも人の話を聞こうとしない姿勢がよ〜く分かったわよ……」


 ルーミアの両手に光が集まる。ためてやがる!


「頭に来たわ。ちょっと一回吹き飛びなさい!」


 両手からそれぞれ巨大な光線が放たれ、宴会場のド真ん中と右側を根こそぎ破壊した。


「なっ!? 何だその力は!」

「強い!」

「今までの死神と」

「だから死神じゃないって言ってるでしょうがぁ!」


 数分お待ち下さい。







「何か言うことは?」


「「「「「申し訳ありませんでした」」」」」

「そう」

「消し飛」

「スミマセン」

「よろしい」

「私かんけ」

「消し」

「ごめんなさい」

「よろしい」


 結局、全員を満身創痍にさせるまで暴れたルーミア。萃香も巻き添えである。


「さて、今度こそ質問するけど……答えなきゃ消し飛ばすからね」


「は、はい!」


 凄い怯えようだ。


「じゃ、ここって天界で合ってる?」

「はい! 間違いありません!」


 となると、こいつらは天人であってるだろう。先の発言もあるし。


「竜宮の使いが言ってた総領娘様って誰の事?」

「はい! 比那名居天子の事です! 竜宮の使いくらいしか言いません!」


 竜宮の使いがわざわざ「嫌わないで」と言っていたのだから、多分曲者なのだろうな。


「その比那名居天子ってのは今どこに居るの?」

「はい! 天界のどこかには間違いなく居ますが、場所までは特定出来ません!」


 天界全体を行動範囲としているのか。


「それじゃあ、私は一体何?」

「はい! 宵闇の妖怪、ルーミア様です! 決して死神ではありません!」


 丁重に「オネガイ」した甲斐があったらしい。良かった良かった。だが様ってなんだ?


「よろしい。それじゃ、私はもう行くから」


 ヒョイと背を向け、歩く。が、途中で止まる。


「ああそうだ」

「はい! 何でしょうか!?」


 さっきから思ってたが、返事がなかなか早いなこいつ。


「私、これから時々来るけど……」


 口元を緩ませ、鋭い犬歯をチラリと見せながら言う。


「私のお願い、聞いてくれたら嬉しいかも、なんて……」





 ルーミア、天人を服従させるの巻でした。







「ルーミアさん何やってるの……」


「ちょっと質問しに行ってただけよ」


 段々と幽香に感覚が似てきたルーミア。第二のUSCの称号を得るのも遠くないかもしれない。


「ともかく、竜宮が言ってた総領娘様ってのが誰だか分かったわよ」


「誰?」


「名前は比那名居天子。天界のどこかには居るみたい」


「もしかして、会いに行くの?」


「うん」


 能力を使う。手が早いというかなんというか。


「一時間以内に出会う」


「以内、ね」


 つまり、今すぐ出会う可能性も無くはない。それはそれで楽しいので良し。


「今日も歩くの?」


「待機」


「は〜い」


 見晴らしのいい所を探して休憩する事に決まった。







「ここがいい」


「異論は無いわ」


「高〜い」


 断崖絶壁のような場所で、下を見ると雲が少ない為か幻想郷が一望出来る。

 あんなに大きな紅魔館が豆粒よりも小さく見え、博麗神社に至っては目視がかなり難しい。妖怪の目でこれなら、常人にそれが見えるわけがない。


「じゃあおやつにでも……」


 以前咲夜から貰った洋菓子を三人で仲良く食べる。そろそろ食べないと味が変わりそうだし。


「美味しい」


 詳しい感想を述べる物は居なかった。


「う?」


「どうしたの? ご主人様」


「……今地上に光線が……?」


 多分マスパじゃないか?


「ま、別に気にする程じゃないでしょ」


「うん」


 洋菓子がすぐに無くなったので、煎餅を漁る。霊夢は今何をしているのだろうか。


「……む」


 非常に行動が早い藍色。能力を使用すると、目の前に持っている煎餅二個分位の穴があいた。こことは違う景色が見えている。

 ……天井か?


「藍色? 何して……ああ」


 ルーミアと小傘も覗いてみる。


「霊夢」


 藍色が声をかけてみると、少ししてからパタパタと音がした。


「藍色? 一体どこよ」


「ここ」


「だからここってどこ……あ、居た」


 霊夢の顔が穴の端から出てきた。


「……なんか時空が歪んだ感じがするわ」


「かもしれない」


 穴は藍色の真横に縦に開いているのだが、霊夢からしてみれば机の真ん中辺りに開いている。しかも横に。


「これって通れたりする?」


 藍色が穴に指を入れてみた。霊夢の鼻先に当たる。


「あによ」


「広げれば通れる」


 手を戻す。


「まあ良いけど、そこどこなのよ」


「天界」


「天界って……あの不良天人の所?」


「不良天人が誰の事を指してるかは分からないけど、多分想像の通りよ」


 霊夢がふ〜んと言う。


「そういえば藍色、アンタ紫に探されてない?」


「うん」


 カクカクシカジカ。


「……了解。最近紫達が頻繁に来るから、しばらくこっちには来ないようにしなさい」


「うん」


 最後に桃を2つほど渡し、穴を閉じる藍色。閉じて良かった。


「霊夢、暇してたみたいだね」


「うん」


「その能力、何にでも使えるわね……」


 そうだね。


「使えるならむしろ好都合」


「そりゃあそうだけどね」


 ま、かなり今更だから別に構わんよな!





 と話していると、小傘が手に持っている煎餅が第三者の手に取られた。


「あれ?」


 更に頭上で煎餅が割れる音がした。


「……結構美味しいわね」


「う?」


 藍色が振り向くと、青のロングヘアに桃のついた帽子。エプロンのような物がついたこれまたロングなスカート。さっき遠目に見た天人達とはまた違ったオーラを持つ少女が居た。右手には半分欠けた煎餅が。


「アンタ、藍色?」


 左手の指は藍色を指差す。


「うん」


「ふ〜ん」


 藍色の服や顔を隈無く見つめてくる。


「あなたは?」


「私?」


「うん」


「天子よ。比那名居天子」


 よし、しっかり来てくれたようだ。


「竜宮の使いから聞いたわよ〜? あなた、藍色に興味あったんだって?」


 あれ、そんな事話してたのか?


「まあね。でもちょっとだけ」


「あれ? でもあの竜宮さんが、早く来ないかワクワクソワソワしてたって……」


 そんな事も話してたのか?


「過大評価。別に来ないなら来ないで構わなかったから」


「そう。じゃあ帰りましょうか」


「うん」


「え」


 急に支度を始める三人。


「ちょ、もう帰るの?」


「ある程度見回ったから」


「ここから地上見たら面白そうな場所があったかし、次はそこに行こうって話になってたんだ」


 括弧に入った嘘が最後につくだろう。


「も、もう少しゆっくりしていけば?」


「理由が無いわよ。顔見知りも居ないし」


「桃もあるわよ? ほら!」


「沢山取ったよ」


 段々焦りの色が見えてきた。


「じゃあ、えっと……じゃあ……」


「しつこいわね、一体何よ」


 まだるっこしいので本題を切り出す。


「……………………もうちょっと、居てくれてもいいじゃないの」





「落第点よ。あなた、友達作り下手でしょ」


 図星なのか、肩を盛大に跳ねさせる天子。なんか泣きそうになってる。


「……ま、行き先を決めるのは私じゃないから。どうする?」


 ルーミアが小傘を見る。


「え? 私も決めないけど……」


 ルーミアと小傘は藍色を見つめ、天子が泣きそうで、どこか懇願するような目を向ける。


「……ん〜」





「お話、する?」


 天子の仏頂面にやっと花が咲いた。







「で、それからまた移動した」


「や、八雲紫から逃走って……」


「無茶苦茶するでしょ? 私もう慣れちゃった」


「慣れれるんだそもそも」


「小傘も最初は振り回されてたわよ」


「あなたは友達作りに慣れてないの?」


「うっ……」


 話してみると、結構可愛い子だった。意地っ張りで自己中心的な感じだが、詰めが甘い。追い詰めてみると割と素直に対応してくれる。

 ただ元々評判が良くなく、自己中心的な所ばかりが表に出てしまい、人との接し方にかなり難があるようで、現在友人と言えるのは竜宮の使いの永江衣玖だけらしい。

 あと辛うじて萃香が友人の線にギリギリ、辛うじて、微妙に、ほんの少しグレイズしていた。微妙すぎ。


「だって、どーしても素直に話せなくて……」


「気軽に話せる相手が周りに少ないのも問題だけどね」


「そうよ! それが全部悪いのよ!」


「天子も問題あるよ?」


「……あう〜」


 すぐこれだ。これが改善されなければ友達は増えないだろうな。


「友達作りたいなら、まずその性格を改善しないとね」


「……出来るかなぁ?」


「出来るじゃなくてやるの!」


 よく聞く言葉だが、結構無茶苦茶だぜ? それ。


「……小傘、無理矢理」


「う……」


 残ってた煎餅をかじり、ゆったりと喋る藍色。


「友達欲しいなら、状況を変えるのが先。部屋に閉じこもってるならそこから出て、旅をし続けているならあえて一カ所に止まったり」


「あなた旅してるのに友」


「あれは知り合い」


 天人だろうが関係は無いのだった。


「あなたは、天界から出てみたら?」


「天界からぁ? でも、地上の人間って……ねぇ?」


 天人は地上の人間を見下す傾向にあるらしいが、いかに不良天人でもそれは変わらないようだ。


「なんで私がわざわざ地上なんかに」


「自由落下」


 藍色が足元をポンと叩く。四人の足元にワームホールのように穴が開いた。


「う、うぇぇ!?」


「あら」


「あちゃー」


 というわけで、地上に向けて落下中。藍色の粋な計らいにより、あまりスピードが上がらない為か、少々フワフワしている感じがする。


「い、いきなりな」


「天界という部屋に閉じこもったままで発展は望めない」


 藍色がルーミアを見る。確認したルーミアが軽く頷いた。


「妖怪でも何でもいいから、まずは話しかけてみて」


 突然の黒い影が藍色と、少々離れた場所に居た小傘をさらう。


「え!? ちょっと!?」


 見れば、巨大な黒鳥に藍色一行が乗っている。


「目指せ友達百人。あと九十五人だから」


 黒鳥は大きく羽ばたき、天子の前から消えてしまった。


「……って! 一体何をどうしろってのよおおぉぉ!」


 藍色の無理矢理の犠牲者が、また増えた。







 ちなみに……


「…………あ、今日は来てないのね」


「張り込みはお断りよ?」


 藍色を探して幻想郷一周の旅。紫は永遠亭に、


「藍色? 最近来ないけど」


「そうか。悪かった、押しかけてしまって」


「別にい〜けどね」


 藍は博麗神社に来ていた……


 親方! 空から女の子が!





 はい、ごめんなさい。空椿です。


 天子さん、大空にダイブしました。藍色の無茶ぶりに巻き込まれたが故にこんな事に…………で、更に友達百人という更なる無茶ぶりに困る事になりました。

 藍色の考えでルーミアと小傘を含め、衣玖と辛うじてグレイズしている萃香を合計して九十五人、天子は地上で集めなければなりません。


 常識がちょっと欠けた天子を支える為、衣玖と萃香が後に続きます。ここに第二の一行が誕生しました。

 呼び方は『天人一行』か『天子一行』のどちらかでしょうね。これから藍色一行とたまに出会います。ほんのたまに。



 季節キャラですが、無理に出す必要は無いとの意見が。確かにそうですが、後々出したいのもまた確かです。彼女達の意見、まだまだ募集しますね。不知火さんありがとう御座います。

 場合によっては彼女達の該当する季節意外の時の居場所を考えるべきかと。秋姉妹はちゃんとありますが……


 んでは書いてきます。藍色一行の現在地、藍と紫の行き先、天子達の動きを全て考える必要が出ましたが頑張ります。ああ、自分の首を絞めてる……





 五秒で受け止めろ!

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