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東方藍蓮花  作者: 空椿
31/114

藍色と破壊 遊戯は敵だ

 レミリア・スカーレットは焦っていた。

 最近幻想郷全体で密かな有名人となっている藍色と出会ってから、妹の外への興味が妙に高まってしまったのだ。

 そういえば以前脱走してしまい、その藍色に怪我を負わせてしまったのは記憶に新しい。

 その時に何か思う所があったのだろうか、そんな日の後、フランは何度も外出したいとレミリアに言ってきた。が、紅魔館の主として許可は出来なかった。


 その結果が今の状態である。バラバラに粉砕された地下室の壁、滅茶苦茶になった魔術式。パチュリーが頭痛を起こし、咲夜が今も掃除を続けている。

 しかし、今が夜で良かった。万が一昼だった場合はどうなるか分からなかった。


「それでも、状況は笑えないわね」


 笑うしかない、という場合は笑えるかもしれないが、生憎とレミリアはこんな状況で笑みを浮かべる人ではない。


「また面倒を起こしてなければいいんだけど……」


 まだ起こしてはいないが、起こすだろうな。







「あ、藍色だ!」


「フラン」


 フランが藍色に飛び付く。勢い余って藍色と一緒に吹き飛び、それを小傘が受け止め、結局仲良くルーミアに止められた。が、結局倒れた。


「何してるの?」


「お出かけしてるの」


「話すのは良いけど、小傘が潰れてるわよ」

 おっとっと。藍色達は慌てて立ち上がる。小傘はフラフラになっていた。


「藍色は何してるの?」


「散歩」


 なんとまあ大規模な散歩だろうか。いっそ旅と言ったほうがしっくりくる。


「じゃあ、ついてっていい?」


「うん」


 と、行っても行き先は…………





「……フラン!?」


 紅魔館だが。


「あ」


 フランはルーミアの後ろに隠れる。体隠して羽隠さず。


「どこに行ってたのよ!? 心配したんだから!」


「近くの森で出会ったんだよ」


 レミリアの質問に小傘が答えた。ルーミアはフランを撫でている。


「ま、まあいいわ。とにかく入って」


 お言葉に甘えて上がらせて頂いた。







「フラン」


「なぁに?」


「痛いの」


 フランは、藍色をギュッとしている。抱き枕じゃないぞ。

 力も強烈な為、藍色はちょっと苦しそうだ。


「フラン、藍色が痛がってるわよ?」


「えぇ〜……」


「離してあげて。藍色の腕があらぬ方向に曲がりそうよ」


 ルーミアのお願いを聞き、藍色から離れるフラン。直前のレミリアの声には反抗したのにね。


「私お人形さんじゃないよ」


「妖怪でしょ?」


「いやいや……」


 一般常識がどこかしら抜け落ちてるらしく、話が通じない時があるフラン。基本的には常識的であるのだが……


「レミリア、フランって……」


「常識的な非常識とか考えてるなら、外れてはないわよ」


「非常識って何よ、お姉様」


 小傘の質問に答えたレミリアを見つめるフラン。


「最近はパチェの所でお勉強してるもん」


「知識と常識は違うわよ」


 ルーミアが言う。


「む〜」


 困った物だ……


「まあいいわ。いつまでもしまらない話するより、お茶会の方が有意義じゃないかしら」


「そうだね」


 この一言のおかげでグダグダな会話は終了し、やっと場が和んだ。


「ねぇ、このお茶は?」


「藍色さんが淹れました」


「へぇ、あなたお茶も淹れられたのね」


「美味しそう!」


「あ、それゆっくり飲まないと……」


 スカーレット姉妹、硬直。せっかく和んだ空気がまたグダグダになりそうだ……


「……どう?」


 藍色が感想を求める。数分後に復帰した姉妹が答える。


「禁忌「フォービドゥンティー」……?」


「フラン、わざわざスペルにしなくていいわよ。でも意外と合ってるわ」


 藍色の茶はどこに出しても似た返事を貰えるが、まさか禁忌にされるとは思わなかった。


「咲夜も飲んでみなさいよ」


「え? あ、はい」


 咲夜はレミリアの飲みかけをゆっくり飲む。


「どう?」


「……癖になりそうですね」


 酒や煙草と似たような物扱いなのかもしれない。


「あら、あなたもそう思う?」


 ルーミアがニヤニヤ笑いながら言う。そんなルーミアも、非常にスローペースでお茶を口に運んでいる。


「藍色! おかわり頂戴!」


「うん」


 フランの要望に応え、お茶を淹れる為に部屋を出る藍色。咲夜もついていった。

 部屋には姉妹と、ルーミアと小傘が残る。


「咲夜も行っちゃった」


「興味があるとか?」


「さぁね」


 以降は会話も無かったが、藍色が戻ってきた瞬間に話題の花が咲いた。


「藍色の血って美味しいのかしら」


 どこかしらズレた話題だが。

 レミリア、お前は何を言っているんだ。


「なんでそう思うの?」


 小傘が聞くが、レミリアは何となくと答えた。藍色の様子は変わらない。


「確かに興味は出るけど」


 ルーミアが藍色を見る。元人喰い妖怪だからそういった物に惹かれるそうな。


「私は……」


 小傘は首を横に振る。


「……あげないよ」


 藍色が一言。


「ですよね」


 咲夜は最初から分かっていたようだ。


「良いじゃない、ちょっとくらい」


「どうせ少量だけよ」


「ヤダ」


 レミリアが藍色に近付く。ルーミアもやや乗り気の為、何だか不穏な空気になってきた。


「ちょっとでいいから」


 レミリアが頼む。こんなに怖い頼み事はあまり無いだろう。


「絶対ヤダ」


 あ、逃げた。


「ちょっと、待ちなさいよ〜」


 レミリアが笑いながら追いかける。二人は部屋を出て廊下を走り出した。


「ルーミアさんは行かないの?」


「藍色が嫌って言ったからね」


 フランが部屋から顔を出す。そのまま見ていると、何度か藍色とレミリアが通り過ぎる。

 能力さえ成功すれば逃げ切れる藍色と、最速との声も多い天狗に匹敵する吸血鬼のレミリア。

 こんな二人が走り回れば、一分で紅魔館を一周してしまうだろうな。


「みゃ〜……」


「は、速いじゃない!」


 ……二人が楽しそうに見えてしまったのだが、間違ってるだろうか。


「……ん〜」


 フランが何だかウズウズしているが、部屋の隅から動く様子は無い。


「咲夜! お願いだから手伝って!」


「はい」


 瞬間、藍色は捕まった。時間には勝てないか。


「う」


「それじゃあ……」


 レミリアの小さな口が開き、藍色の首筋を狙う。


「だ、駄目!」


 のだが、噛みついたのは藍色ではなく、小傘の腕だった。


「「「あ」」」


 皆の声が揃った直後。


「いったあああぁぁぁぁい!」


「わ、ちょ、暴れないでよ!」


 小傘が大暴れしたせいで牙が乱暴に抜かれ、咲夜も少し後ずさる。その間に藍色がルーミアの所に逃げていた。


「きゃあっ!? 小傘、血! 血!」


「うわああぁん!」


「あ、美味しい」


「ああもう! 走り回らないで頂戴! 周りが血だらけになるじゃない!」


「うぁ」


「咲夜! 構わないから手当て〜ッ!」


 それはもう大惨事だ。しかし……


「もっと」


 誰かの凍るような一言が場を止めた。


「……フラン?」


 レミリアがフランを見る。小さい手の平には先程飛び散った血が。

 それを舌で舐めとり、満面の笑顔を向けてきた。


「地雷、踏んだ?」


 小傘が真っ青な顔を藍色に向ける。


「うん」


 軌道修正は出来なさそうだ。フランが小傘の腕を掴む。


「痛っ!?」


「もっとちょーだい」


 顔は可愛いし、目は輝いているが、言ってる事は一歩間違えると危険な一言だ。小傘は選択肢を間違えた時点で死ぬと感じた。


「え、えっと……」





「ちょっとだけなら……」


「小傘、それアウト」


 ルーミアの声は既に遅く、フランが喜び勇んで小傘に噛みつき……


「駄目」


 いや、そのまま食べそうになっていたので藍色が止めた。


「なんで止めるの?」


「吸血行動と捕食行動は違う」


「ふ〜ん」


 フランが藍色を見つめる。


「じゃあ藍色はいい?」


 じゃあって何だろう。


「駄目」


「え〜」


「駄目」


 藍色がフランから距離を取る。フランは逆に距離を詰める。


「欲しいの」


「あげない」


 二人の現在地は部屋から廊下に移り、皆が心配そうに二人を見つめる。


「お腹空いたの」


「ご飯食べなさい」


「うん、今から食べる」


 ロクな会話が出来ない。最終的に藍色が取った行動は……


「…………無理」


 逃げた。


「あ! 待ってよ〜!」


 追った。





「レミリア、紅魔館の大破は覚悟しときなさい」


「そうね、暇そうな外来人とかにも手伝わせるわよ」


 その瞬間、幻想郷の外来人達が悪寒を感じたそうな。


「あまり外来人達に迷惑かけないようにね」

 その外来人を捕食していたお前が言うな。


「……で、小傘。落ち着いた?」


「ハイ……」







「何だか目的が変わってる気がする」


「アハハハハハ!」


 当初の目的はどこに捨ててきたのか、大量の弾幕をバラまくフラン。もしかしたら真の目的はこっちかもしれない。


「勘弁して」


 藍色が廊下を曲がり、先にあった階段を駆け上がる。飛べるフランが羨ましい……


「む」


 一際強く段を蹴ると、次に触れたのは外の冷たい空気だった。屋上に出たらしい。

 満月というわけではないが、見事な月夜である。少し見とれる。


「ジャーン!」


 しかし、フランが飛び出してきた為に月見は終了である。藍色はそれを確認すると……


「否定証明「絶対確率」」


 フランに殴りかかった。暴力で解決するのかよ。


「ギャッ!?」


 フランが上空に舞い上げられる。藍色が更に膝蹴りを加えて夜空の景色にフランを追加する。

 しかし休ませる暇も与えず、藍色が右足を高々と振り上げ、一気に振り下ろす。


 悲鳴すら遅れる速度でフランは地面に急降下。屋上に激突した。

 当然の如く屋上は粉砕され、貫通したフランは更に下の階に落ちていった。

 藍色も重力に従って落ちて行く。途中の階でルーミアやレミリアが見えた。


「お?」


 到着したのは図書館。だが、更に下に穴が空いている。


「ちょっと、一体何が起きてるのよ」


 パチュリーが遠くから藍色に聞くが……


「行き過ぎたお遊戯」


 意味が分からなかった。藍色はそのまま穴に落ちて行く。


「何なのよ……」


 なんとも言えないパチュリーだった。







「地下室?」


 狭いとも広いとも言えない、必要最低限の家具しかない部屋だ。ベッドくらいしか見当たらない。瓦礫に埋まってるだけかもしれないが。


「何ここ」


 藍色が周りを見渡すと、ちょうど右斜め後ろにフランが居た。


「私、前はここに居たの」


「ふぅん」


 先程の狂気は攻撃のショックでなりを潜めたようで、今は落ち着いて話してくれる。


「今は紅魔館の中なら自由に歩けるけど、異変の時に霊夢と魔理沙が来てくれるまでずっとここで過ごしてた」


「そう」


 フランは、悲しみの色が濃くなった瞳を向けてきた。藍色はブレない。


「あなたの狂気が原因?」


「うん」


 藍色がフランをじっと見つめる。フランも見つめ返す。


「この部屋から出たら少しは落ち着いたよ。でも、今も何かの拍子に」


「二回は見てるから分かる」


 おそらく二回目は今日だろう。


「で、あなたはその狂気をどうするの?」


「…………う〜ん」


 フランが考えるが、何とも言えない返事が返ってきた。上手く言葉に表す事が出来なかったらしい。


「分かんない」


「そう」


 藍色も少々困る。が……


「じゃあ、狂気と付き合うといい」


「何それ、どういう意味?」


 今度はフランが困る返事を返してきた。


「狂気を制御すればいいの」


「簡単に言うじゃない。無理だよ」


「出来る」


 藍色が妙に自信たっぷりに言う。まさか……ね。


「だから、狂気に慣れるの」


「……出来るの?」


「出来る」


 フランの羽が揺らぐ。


「本当?」


「約束する」


「じゃあ……」





 アソンデクレル?


 うん。










「あ〜、もう」


 レミリアや小傘と一緒にお茶を飲むルーミア。咲夜の淹れたお茶は美味しいが、意識が藍色にしか向かない為、味わう余裕が無い。


「あの子って変な所で暴れたがりだからねぇ……」


「ご主人様が?」


「ほら、妖夢の時とか守矢の時とか。最初が乗り気じゃなかろうが、最後は結局楽しんでるのよ」


「へぇ、あんなにおとなしそうな奴がね」


「あと、本来戦わないでいい状況を戦闘に発展させたりね」


 確かに今までの戦闘を振り返ってみると、嫌々だったりした時もあるが大体は楽しんでいる。


「だから心配なのよ。あの妹さんと一緒だと……」


 一瞬、館が揺れた。


「……ご主人様が暴れそうって事?」


「……もう暴れてたけどね」


「咲夜……パチェを連れて館から出ましょ」


「はい」


 館と共に死ぬつもりは毛頭無いレミリア。館が壊れる前に脱出しようという考えだ。

 ルーミアと小傘ものんびりお茶を飲み続けるわけにはいかないので、レミリア達と共に脱出した。

 地下の図書館は…………後日掘り返そう。





 嫌がるパチュリーを無理矢理引きずり出し、門番を叩き起こす。


「う、うわあああっ!?」


 勢揃いの人物に驚いている美鈴。特に小傘が顔を覗いていたのにビックリである。


「えへへ、驚き一つ頂きました〜……あ、フランだ」


 門番は無視して館を見ると、何故か館のあちこちからフランが壁を破りながら出て来た。その数四人。

 更に一人の背中に藍色が瞬間移動、思いっきり蹴り飛ばす。

 それを確認した三人が藍色に連携攻撃を繰り出し、館の屋上に突き落とした。


「……ああ咲夜、美鈴。あのカラスを捕獲しなさい」


 館が壊れるのは良いだろう。一歩譲って。しかし新聞にされるのは屈辱だ。発見した射命丸を捕獲した。


「な、何事ですか!?」


「没収ね〜」


 小傘がカメラを奪い、ルーミアに渡した。


「返して下さいよ!」


「やだ」


 悪戯っぽく舌を出し、片目を閉じて片足を上げてみせる。唐傘が唐傘妖怪の真似とは……


「記事にしたらもれなく私のスペルの実験台よ」


 文は黙った。流石にこの宵闇の危険度は知っていたようだ。

 しばらく会話を続けていると、藍色がカードを出した。さて、何を使うのか……





「肯定証明「偶然確率」」


 あ。


 藍色が崩れかけた屋上を強く強く踏みしめた瞬間、紅魔館の外壁は粉々に砕け、直後の大嵐で砂塵となった。

 それは砂嵐となり、フラン達の視界を覆った。


「あら、目眩ましね」


 ルーミアが一言話し、小傘が確認する。


「視界が悪い状態でも攻撃を当てられるからやったの?」


「そうそう。あの絶対確率とやらがね」


「それ、詳しく聞かせて貰えませんか?」


 美鈴が興味を示した。


「後でね」


 答えはくれなかったが。







「「禁弾「スターボウブレイク」」」

「「禁弾「カタディオプトリック」」」


「みゃ?」


 視界が不明瞭なら、弾幕をバラまくだけだ。下手な鉄砲も数打ちゃ当たる。

 分かるだろうが、この弾幕は破壊力満載である。下手に貰うと危険だ。


「む」


 藍色が右手を真上に向ける。砂塵をかき分けて弾幕が飛んできて、藍色の手の中で爆発。

 空中に居た藍色は地面に落ちた。その途中何度も弾幕が掠り、二発は被弾した。


「「変符「命中率と回避率」」」


 弾幕には弾幕で応戦。追尾も出来るので被弾しないわけでは無いだろう。


「きゃあ!」


 当たった。しかし、この視界では何がどうなったのかも分からない。これではろくな攻撃も防御もお互い出来ないだろう。

 何より……


「萎える」


 やる気が出ない。藍色は能力を使用する事にした。

 両手をパンと合わせた瞬間、旋風が砂を全て取り払った。


「あ、ご主人様だ!」


「ミ〜ッケ……」


 小傘とフラン、両方の声が聞こえた。

 よく見ると、フラン達は燃え盛る剣が…………レーヴァテインじゃないですか……


「え〜……」


 あれに対抗出来る武器が無い。流石に素手であれに突っ込む程藍色は馬鹿ではない。

 代わりにフランが突っ込んできたが。


「わ」


「アハハハハ!」


 地面が抉れ、溶ける。あんな物にはグレイズもごめん被りたいが、生憎あれの総数は四つだ。回避した方向にまたフランが居た。


「燃エロォ!」


「うぁ」


 宙に蹴りを放ちフランの背中に転移、吹き飛ばしながら更に回避……


「ハァ!」


「にゃ」


 …………失敗。藍色の左の脇腹を焼きつつ抉ったレーヴァテイン。藍色は無理に大地を蹴って距離をとった。


「壊レロォ!」


 しかし、尚も迫る剣、体を捻って回避した。


 ハズなのに。

 胸を通る紅蓮、込み上げる鉄。一瞬エラーで埋め尽くされた脳内。


「あ、あれ……」


 理解不能。ちゃんと避けたハズだ。


「藍色ノ真似ヲシタノヨ。上手ニ出来タヨネ?」


「……真似?」


 命中率や回避率のような概念的な物だろうか? 能力が大きく関わっているのかもしれない。

 考えるが、頭が回らない。強烈な熱と痛みが思考を阻害する。


 脱出。落ち着け。ペースを乱されるな。


「キャハハハハ!」


 裂傷、熱傷、激痛。


「かふっ」


 まずかった。数秒で此処まで被害をもたらす物なのか。この吸血鬼の危険度を見誤ったか?


「痛イ? 痛イ? ネェ、痛イ?」


 この四人の少女は、相手にするのはまずかったかもしれない。完全に判断ミスだ。戦うべきでは無かった。


「む……」


 遅かった後悔と、急速に動く展開。止まる事の無い炎の剣に、回避が出来ずに体に傷を作る。


「ト、ド、メ」


 この上ない笑顔が目の前を染め上げる。ふざけるな。


「嫌、だ」


 壊れてやるものか。誰が他人の思い通りになるものか。


「無理、アナタガ生キ残レル確率ハ無イヨ」


「ゲームハ終ワリヨ」


「モウこんてぃにゅーハ出来ナイカラ」


「……そう」


 鉄の味が邪魔をする。いらないから、口から全て吐き出す。


「コンティニュー、するから」


 私の行く先を邪魔するな。自分が決めた道を外れる気は無い。


「私の前で確率を決めるな」





 尚も止めるなら、藍に染まれ。





「零%なんて、信じない」










 肯定証明「偶然確率」。宣言も無しに放たれ、大嵐が地面を抉る。

 四人の吸血鬼は散り散りになり、局地的な嵐を見つめる。


「マダヤルノ?」


 楽しいからいいか、と言う表情だ。何故か悲しみが色濃いが……


「……まだ、やる」


 耳元に声、可愛らしい顔が痛みと驚愕と歓喜に包まれる。首があらぬ方向に曲がり、体は塵になって消えた。


「壊れたくはないから」


 いつか見た藍色の瞳。夜に光り軌跡を残す藍。


「……綺麗」


 フランが見とれる。


「ソレ、欲シイ。宝物」

「変符」


 藍色がフランの胸倉を掴み、密着状態で発動した。


「「命中率と回避率」」


 目の前で高密度の弾幕が炸裂し、また一人消滅した。


「ア、アアァァ!?」


 フランが右手に何かを握る。潰される前に潰す。接近して腹に膝蹴り、浮いたフランに更に蹴り上げを繰り出した。

 悲鳴を上げる間もなく、最後に振り上げられた右足に細い首は刈り取られた。


「……む」


 直後に貫かれた右肩。レーヴァテインだ。


「壊レロ、壊レロ……お願い、壊レて」


 懇願と共に、狂気が薄れる。小さな涙が見えた。


「…………もう分かった?」


 意味が分からない藍色の質問。紅い瞳が揺らぐ。


「自分の狂気が、分かった?」


「え……?…………あ」


 レーヴァテインを離し、自分の両手を見つめる。自分を支配していた狂気が、自分の奥に消えていく。


「分かればいい」


 藍色がレーヴァテインを抜き去り、フランに寄りかかる。


「理解出来れば、自分で何とか出来るから」


 藍色が輝く瞳を閉じる。


「最初の目的はそうだったの? あなたは、助けを求めたの?」


 答えは、聞かなかった。


「それが真の答えじゃなくても、これは私のお節介」


 それより、今は疲れた。


「あなたが救われたなら、それが正しかった。それでいい」


「……藍色?」


「何?」


 小さな口を開くフラン。


「あ、ありがとう……」


 それは、真の目的が合っていた事を告げた。


「……そう」


 いつも通りの返事を返して、フランの体から滑り落ちて倒れる。


「あっ!?」


 フランが慌てて抱き上げると、藍色の無表情が目に入った。


「だ、大丈夫!?」


「痛い、熱い、だるい、動けない、失敗した」


 せっかくの緊張感を自分色に染め上げる返事を返す。失敗したって、能力を使ったのか?


「え、あ、お姉様ぁ!」


 よく分からないが危険と判断したのか、外野を呼ぶ。レミリアやルーミアはすぐに反応し、藍色を背負う。


「やっと終わったのね? 冷や冷やさせられたわよ」


「フラン、大丈夫!?」


「ああもう、何もかもが滅茶苦茶だわ」


「いいから、いいから藍色を!」





「うるさい〜……」


「はいはい、じゃあもっと口うるさい医者の所に行きましょう」


 結局、また永遠亭にお世話になった。









「……また?」


「うん」


 またです。







 ちなみに……


「…………何があったのかしら」


 藍色を探して幻想郷一周の旅。紫は粉砕された紅魔館に来ていた……

 一日一回更新が板についてきたなぁと油断した結果がコレな空椿です。


 藍色大暴走。ちょっとやりすぎて厨二病状態! 更に粉砕玉砕急展開です。なんという事だ。


 さて、賽銭箱にコメントが届いておりました。風心剣さんありがとう。


 フランとはもちっと絡みます。更にもしかするともしかするかもしれません。お楽しみに。



 賽銭箱のお賽銭が少ない間は出来るだけ意見を取り入れようと思います。次はあの子だ。

 まあ、藍色には永遠亭で大人しくしといて貰いますが。


 さて、では失礼しますノシ

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