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東方藍蓮花  作者: 空椿
29/114

藍色と庭師 剣術は敵だ

「…………え?」


 そりゃあ言いたくもなる。自分の斬撃が白玉楼の門にまで届き、粉々にしたのだから。

 藍色はやはり変わらぬ表情。位置は少し横にずれていて、ちゃんと回避をしていたらしい。


「こ、これ……私がやっちゃったんですか?」


「うん」


 しれっとしている。


「行くよ」


 藍色が崩れた階段を蹴り、妖夢に接近する。


「わっ!」


 放たれた右拳を屈んで回避し、ジャンプするように藍色の腹に右手の柄で打撃を加えた。


「うっ」


 その藍色は上空に投げ飛ばされ、妖夢も勢い余って空に舞う。


「え、え、えぇ!?」


「すぐ慣れる」


 痛みが無いかのように、藍色が上空から声をかける。その右足は空に向いている。

 縦に体を回しながら妖夢に踵落としを加える。妖夢は刀を交差させて防御するが、居場所を再び階段に戻された。

 しかし、体勢を変えて階段に着地。瓦礫が衝撃で宙を舞う。


「……あれ? 痛くない」


 非常に高い自身のスペックに頭がついて行ってないみたいだ。ま、藍色の説明が無いから仕方がないが。


「変符」


 ハッと顔を上げると、藍色がスペルカードを宣言していた。何故か、体の感覚が鋭敏になっていく。


「「命中率と回避率」」


 瞬間に爆発した花火。しかし、被弾する音は聞こえなかった。


「ハァッ!」


 その代わり、聞こえたのは風を切る音。


「獄界剣「二百由旬の一閃」!」


 藍色が宣言が終わる前に能力を使って自身の位置を変える。

 次に見えた物は、真っ二つに分断された自身の弾幕。妖夢の姿は一瞬たりとも見えなかった。

 その妖夢は自身の力を理解した模様。でもやっぱり自分が一番驚きを示している。


「これ、私がやったんですよね?」


「うん」


 せっかく放った弾幕だが、無意味と判断したのか解除してしまった。そのまま落ちるのは嫌なので、能力で階段の上まで戻る。


「身体能力、思考回路の双方の強化をした」


 あまり時間が経ったわけではないが、やっとと言えそうな頃に藍色の説明。藍色のタイミングは中々掴めない。


「伸び悩むなら、伸びきった状態を体験すればいい。経験は力になるから」


 ゴムもそのままだと短いが、ずっと伸ばしていると戻した時に少々伸びる。大体そんな感じだろう。ただし伸ばしすぎは注意、切れるから。


「早く。夜は短い」


「あ、はい!」


 宙に浮いた状態で構える妖夢。藍色もやっと構えた。妖夢がやる気になったからだろうか。


「行くよ」







「あ〜……」


 やっちゃったな、とルーミアは思っていた。多分あれで妖夢に変化は出るだろうが、藍色も怪我するだろうし、白玉楼も壊れ


「うわぁっ!」


 ドカ~ン。妖夢は白玉楼に突っ込んだ。


「……ルーミアさん?」


「うん、幽々子を起こしに行きましょうか……」


 二人は隠れながら白玉楼に入っていく。





「幽々子~」


「はぁ~い」


「あ、起きてたんだ」


 幽々子がのんびりとやってきた。右側の部屋からは幾度も音が響いてくる。


「この騒ぎは何なの~?」


「藍色の藍色による妖夢の為の荒療治、かしら」


「よく分からな」


 衝撃。ルーミアと幽々子の間を藍色の物体が横切る。壁を突き破って。


「いいから、避難す」


 爆音。またもルーミアと幽々子の間を白い物体が横切る。


「わ、分かったわ~」

「肯定証明「偶然確率」」


「ちょ! ご主人様、それ」


 轟音。白玉楼全体が揺れる。


「さ、西行妖は大丈夫かしら」


「私が何とかするわよ! 急ぎなさい!」


「ルルルルルーミアさん! ゆ、ゆ、揺れ、揺れる!」


「飛びなさいよ!」


 声を荒げるルーミアだが、本人は至って冷静である。この騒ぎでは叫ばないと声が届かない為だ。事実、声を大きくするような事をしない幽々子の声はあまり聞こえない。

 とにかく、幽々子を引っ張りながら白玉楼を飛び出す三人。少しすると崩れてしまった。


「あ、あぁ〜……」


「諦めなさい」


「西行妖ってあれ?」


 小傘が見つけたのは、大きいが枯れている桜の木。周りと比べると異質だから言ってみたらしい。


「そうよ? よく分かったわね」


「勘だよ」


 三人共、西行妖の前に立つ。小傘はルーミアの真後ろにいるが。


「派手だね」


「賑やかね」


「幽々子、賑やかは違うわよ」


 崩れた白玉楼を更に破壊しながら戦う妖夢と藍色。妖夢はテンションが高すぎて白玉楼の惨状に気付かず、藍色は別に何でもいい。


「賑やかと聞いて!」


 帰れ騒霊。だがしかし、演奏せずにはいられない!


「姉さん! 始めるわよ〜!」


「別に構わないけど……」


「じゃ、いっきま〜す」


 プリズムリバー三姉妹は白玉楼跡地を飛び回りながら演奏を始めた。極稀に飛んでくる弾幕や斬撃を回避している辺り、一応注意は払っているようだ。


「……ところで幽々子」


「なぁに?」


「あなた、剣は持ってきたかしら?」


 十字架「磔の十文字」を発動し、飛んできた弾幕を斬る。


「忘れたわ〜」


 あちゃあ。


「ルーミアさん、あれじゃない?」


 あ、あった。瓦礫の中に柄が埋まっている。


「そうね」


 ルーミアが藍色に向けて声をかける。


「藍色! そこに埋もれてる剣だけど!」


 声に反応した藍色が妖夢を蹴り飛ばして剣の柄を掴む。


「こっちに投げ」


 妖夢の刀と、藍色の持つ剣が火花を散らす。


「…………使えって言ってないのにね」


 小傘が呟く。幽々子も同意。


「ま、いいでしょ……」







「剣伎「桜花閃々」!」


「む」


 金属音が鳴り響き、騒霊の音楽に音を追加する。刃の衝突の度に衝撃波が発生し、瓦礫を撒き散らす。

 様々な剣術を、能力としてもスペルカードとしても習得していた妖夢は、剣術初心者の藍色相手には十分過ぎる力を発揮していた。

 一方で藍色は、何度も戦闘をして得た経験と勘で無理矢理にでもそれを返す。新調した服は傷一つ無い。


 派手な音を散らして衝突し、鍔迫り合いを繰り広げる。三つの刃が交差する。


「楽しい?」


「はい!」


 軽い会話を、間に交わす。


「この感覚を覚えるの。この楽しみをまた経験する為に、周りの力を貪欲に集めてでも」


 藍色が小さく呟いた言葉に、妖夢も返事をする。


「……分かりました」


「良し」


 藍色が妖夢の両腕に膝蹴りを加え、弾き飛ばす。


「わっ!?」


 次に、宙を舞った一つのカードを手にとる。宣言は早かった。


「否定証明「絶対確率」」


 剣を腰の辺りに構え、姿勢を落として動きを止める。抜刀術のスタイルだ。


「させません!」


 妖夢も負けじと宣言した。


「人鬼「未来永劫斬」!」


 藍色が動き、妖夢と激突する。しかし、藍色が吹き飛ばされた。


「みゃっ」


「はああああっ!」


 妖夢が渾身の力で刀を振り下ろす。風を巻き込み、嵐が藍色に迫る。


「ハズレ」


 藍色の弱めの蹴りが妖夢の後頭部に当たる。どれだけ弱くても攻撃を繰り出せば相手の場所に強制転移するのが特徴のスペルカードだ。藍色が行動を攻撃と判断していれば、それこそデコピンでも反応する為、回避に使えるのも大きな特徴。


「やっ!」


「うにゅっ」


 問題点は、移動する場所が相手の周辺だという事だ。相手によっては致命的な問題になる。

 妖夢が胴を回して繰り出してきた斬撃を剣で受け、距離を取る。地面に落ちる前に一枚のカードを宣言した。


「肯定証明「偶然確率」」


 藍色が大地に足をついた瞬間地割れが発生し、嵐が空を覆う。

 何だか桜の周辺に半透明の黒い膜のような物が覆っているのを横目に、剣を高々と振り上げる。


「やっ」


 振り下ろした瞬間に景色は変化し、次に金属音を響かせる。風雨どころか大地をも敵に回されても敵の攻撃を受けるのは流石と言える。

 そんな妖夢が急に此方に目を向け、宣言した。


「空観剣「六根清浄斬」!」


 危機を察知した藍色は、両手で剣を支え防御に徹した瞬間である。

 耳の機能が麻痺してしまう程の金属音が響き、双方が別々の方向に飛ばされる。藍色は空に、妖夢は地面に。

 藍色はなんとか着地するが……


「みっ……みぃ〜…………」


 三半規管と両腕がイカレたらしく、フラフラになってしまう。剣はなんとか持っているが、腕は痺れて動かし辛そうだ。


「奥義!」


 目視不可能な速度で接近し、二本の刀を振りかぶる妖夢が、目の前に映った。


「「西行春風斬」!」


「うぁっ」


 キン、と高い音が響き、時が止まった。

 目を見開く幽々子や、顔が真っ青の小傘がちょっと見える。

 妖夢はゆっくりと、二本の刀を鞘に戻す。短い方が先に収まった。


「雨を斬れる様になるには三十年は掛かると言う。微塵になった雨は霧になるでしょう」


 まるで自分に言い聞かせるように、紡ぐ。


「空気を斬れる様になるには五十年は掛かると言う。あれほど舞っていた塵が、透明になりました」



 せっかくの体験を忘れぬよう。


「時を斬れる様になるには二百年は掛かると言う。止まった世界は、とても幻想的」


 カチリと、背中の鞘に刀が収まった。


「……今だけなら、何でも切れそうです」


 それが合図のように、残っていた壁、岩、瓦礫が、全て切断された。

 見ていた幽々子は呆け、ルーミアはある一点を見つめる。階段跡地だ。小傘は……


「妖夢〜、後ろ後ろ!」


 妖夢が後ろを振り向く。


「痛い」


 両手をヒラヒラさせる、傷の無い藍色が居た。


「……どうして?」


「全部受け流した」


 さらりと言う藍色。それがどれだけ難しいか分かってるのか?


「手の感覚が無くなった」


 どうにか剣を拾い、杖にする藍色。妖夢はかなり乾いた笑みを漏らした。


「まだ、斬れない物がありましたか……」


「そうみたい」


 藍色が能力を使う。藍色の手の痺れは治り、妖夢の服と傷は癒え、身体能力も正常になった。白玉楼は……


「……う」


「う?」





「う〜……」


 パタパタとルーミア達の方に駆けていく藍色。ちなみに小傘に抱きついた。


「し、失敗したの……?」


 小傘は顔が蒼白になる。幽々子を見てみると……


「見ちゃ駄目よ」


 ルーミアが止めた。何故かは分からない。


「怖いから」


 小傘は見ようとするのを止めた。

 プリズムリバーが余計な曲を演奏しはじめたので、一応黙らせた。





「あ、ああぁぁぁっ!? 何よこれえぇぇ!?」


 と、この場に今来たであろう声が響きわたる。その場の全員の目がそちらに向いた。

 その人物とは? 次章、明らかに!









 と、紫を忘れていたな。

 ちなみに……


「あ、ああぁぁぁっ!? 何よこれえぇぇ!?」







 あ。





 あ、藍色を探して幻想郷一周の旅。紫は白玉楼跡地に来ていた……


 まだ捕まらないと散々言ってたはずなのに、紫は来ちゃいました! どうなる!?



 ま、いいか。

 今回の経験は妖夢に強烈な向上心を与えたでしょう。幽々子と一緒に高め合うのも良いでしょうね。


 白玉楼はかろうじて全壊で済みました。解体作業お疲れ様です。

 肯定証明「偶然確率」は広範囲瞬間破壊スペルなので、建築物の破壊に向いています。アウチ。



 さて、やっぱり意見場所は近いうちにリニューアルします。考える時間短いとか言わないで、せっかちなんだ。



 意見場所をリニューアルさせても宜しくです。え? 読者に頼りすぎ? 返す言葉も御座いません。





 ま、マイペースに行きましょうかノシ。

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