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東方藍蓮花  作者: 空椿
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藍色と大戦 満月は敵だ

 オンバシラをバットのように振り回す神奈子。狙いは同じく空中にいるルーミアだ。地面では諏訪子が鉄の輪を握りしめて藍色を狙う。

 ルーミアは回避を続け、何かを思案したまま攻撃に移らず、藍色は諏訪子の攻撃を回避しつつカウンターを狙う。

 一見守矢が優勢に見えるが、何度も攻撃を空振りしている為スタミナを減らされている。


「あ、当たらないねぇ……」


 一度攻撃を止め、体制を立て直す神奈子。だが、それがちょっと問題だった。

 回避に思考を回す必要が無くなった為、思考の速度が急上昇。


「ちょ、神奈子!」


 それに気付いた諏訪子が鉄の輪を投げ、ルーミアの思考中断を強制させた。ルーミアは何も喋らない。


「おぉ、がら空き」


「あっ!?」


 そんな諏訪子の脇腹に潜り込んだ藍色。目には一切容赦が無かった。ズン、と音がする。


「ぎゃんっ!?」


 悲鳴を上げ、上空に舞い上げられた諏訪子だが、大量の鉄の輪を振り撒いて反撃する。


「むぅ」


 鉄の輪を叩き落とし、ルーミアを一瞬見る。やはり思考を巡らせているが、ルーミアの向こうに何か見える。


「ルーミ」


「神祭「エクスパンデッド・オンバシラ」!」


 ルーミアごと藍色を狙ったのだろう。大量のオンバシラは二人共の直撃ルートを通っていた。無論回避する。


「諏訪子!」


「あいよっ! 土着神「ケロちゃん風雨に負けず」!」


 かなり上空の諏訪子がスペルを宣言、弾雨が二人に降り注ぐ。ルーミアも思考を停止させてしまった。


「「風神様の神徳」!」


 諏訪子と対照になる位置に移動した神奈子も宣言。最早回避は不可能だ。


「ちょ、ふざけんじゃないわよ!」


 ルーミアが二人に向けてそれぞれ手を向ける。藍色も札をポケットから出す。


「月符「ムーンライトレイ」!」


 目視不能な光が二人を同時に撃ち落とす。藍色が続けて宣言する。


「否定証明「絶対確率」」


 次の瞬間、神奈子の背中が蹴り飛ばされた。


「がはぁっ!」


 更に諏訪子の脇腹も追撃のように攻撃され、二人が空中で激突した。


「ぐあっ」

「きゃん!?」


 諏訪子が一瞬だけ下を見つめると、ルーミアが両手を此方に向けていた。


「私からのお土産よ」


 またも光線が空を貫き通し、神が二人空に舞い上げられた。


「飛んだね」


「そ〜ね」


 空を見上げる二人。一瞬キラリと何かが光った。


「おっと?」


 藍色を掴み、飛び退くルーミア。巨大なオンバシラが先程居た所を貫き、参道を粉々にした。


「危ないわねぇ」


 藍色を抱えつつ呑気に言うルーミアだが、空から流星の如き速度で飛んできた諏訪子に藍色をひったくられる。


「みぎゃっ」


「あっ!?」


 諏訪子は藍色を大地に叩きつけ、ルーミアにつかみかかる。


「御柱「メテオリックオンバシラ」ァ!」

 山に響き渡る咆哮と共に、一際巨大なオンバシラが藍色を地面に沈めた。悲鳴すら轟音に消える。


「このっ!」


 神速の拳が諏訪子を参道に沈め、追撃の踵落としで地面に埋める。


「うがぁ!?」


「月符「ムーンライトレイ」!」


 更に光線を叩きつけ、大地を蹴り飛ばして上空に移動した。


「動揺したかい? 悪いけど、隙ありだ」


「くっ!?」


 ルーミアの少し上に、オンバシラを振りかぶる神奈子が。


「隙なんて潰せるけどね」


 その更に上空、足を振り上げる藍色が居た。


「へ?」


「やっ」


 やはり気の抜ける声と共に繰り出された強烈な一撃。参道に落ちるまで一秒も無かった。

「あぁ、助かったわ」


「そう」


 その言葉を残し、既に崩れた参道に降り立つ藍色。手にはカードが一枚。


「肯定証明「偶然確率」」


 粉々の参道が更に崩壊し、突然の嵐に巻き上げられる。埋まっていた二柱があぶり出される。


「どおおりゃああっ!」


 否、飛び出す。服をボロボロにした諏訪子が藍色を殴り飛ばす。


「むぎゅうっ」


 諏訪子は更に藍色につかみかかり、宣言した。


「「幻想郷空中神戦」!」


 瞬間、遥か上空に二人の姿が消えた。


「ちょ、えぇ?」


 予想外の光景に少々取り乱すルーミア。


「さぁて、此方も戦争と行こうか」


 下を見ると、砲台のようなオンバシラを装着した神奈子が待ち構えていた。


「準備は良いわよね? 駄目でも待ってやらないけど」


 少し溜め息を吐き、真っ白なカードを出すルーミア。


「そうね、いい加減本気で始めましょうか」


 少しの妖力がカードに吸収され、色をつけた。真っ黒の背景に、銀の十字架だ。


「十字架「磔の十文字」」


 ルーミアの目の前に銀の十字架を模した剣が現れ、それを握る。


「藍色と練っていた案が今やっと纏まったからね、慣れるのに付き合ってもらうわよ」


 十字の剣を軽く振り、使い心地を確認するルーミア。思案していたのはこれらしい。


「ハッ! 上等だァ!」


「そのようね」


 銀の剣と極太の光線が煌めいた。







「はあああっ!」

「にゅっ」


 一方、雲の漂う大空で落ちながら戦う二人。


 否定証明「絶対確率」で居場所関係なしに攻撃する藍色と、それに確実にカウンターを加える諏訪子。血を吐きながら殴り合う二人はどう見ても五分五分だ。


「痛い」


「こっちの台詞だ、よっ!」


「みっ」


 藍色の側頭部に入った右肘が原因で、視界が目眩によりフラッシュする。

 が、何度も続けて使っているスペルカードのおかげで攻撃は問題無く当たり、諏訪子の口元から血が流れる。

 それを利用し、諏訪子が藍色の顔に血を吹き、目を赤に染めた。


「みゃぁ」


「隙ありだよ」


 怯んだ藍色のがら空きの腹に、諏訪子は十分に振りかぶった足を突き刺す。藍色は重力の力を借りて大地に向けて消える。


「久し振りだね、ワクワクするよ!」


 大きく重い鉄の輪を生み出し、それを足場にして蹴り飛ばす。一つの流星が誕生した。


「ああ、最高だ!」


 祟り神は、邪気の籠もった笑みを浮かべた。





「むう」


 徐々に強くなる空気の抵抗に耐えながら、藍色はポケットから符を出す。


「「変符「命中率と回避率」」」


 空に巨大な花火が現れ、遥か上空の諏訪子と地上の神奈子を同時に攻撃する。普段より弾幕の射程が長いらしい。

 ルーミアはどうせ見切るだろうし、遠慮する事は無い。


「もう一回」


 ただ、連続使用は流石にルーミアも困るぞ藍色よ。


「もう……一回」


 連続使用は疲労も倍になるのだが、知ったことかと連発する藍色。既に藍色を目視する事が出来ない。

 と、ここで……


「う、ぁ」


 空気の抵抗によって、遂に藍色の肋骨が限界に達したらしい。ミシリと聞きたくない音が聞こえる。


「だっしゅ……つ?」


 その言葉で良いのかは不明だが、別のスペルカードを出す。が……

 宣言が少し遅かった。


 響き渡る轟音と、土に染まる視界。口にこみ上げる鉄と、度重なる激痛。地面に到達してしまったらしい。

 無論だが、藍色の悲鳴は消えた。


「み……ぃ……」

 痛みを堪え、瓦礫を押しのける。上を見上げると、少し範囲の狭くなった空。どうやら穴の中らしい。

 空の中心には、急激に大きくなる影――――


「どっっせええぇぇぇ!」


 ――諏訪子。あの上空から無茶ぶりともとれる特攻をしかけてきた。藍色のいる穴に強烈な蹴りが突っ込んで行き、

 守矢神社ごと、吹き飛ばした。


「「えええぇぇぇ!?」」


 勿論、神社の近くで事の成り行きを見守る早苗と小傘も。


「「「「うわあああ!」」」」


 未だに観戦を続けていた観客達も。


「あ、あら?」

「ちょ、やり過ぎだ!」


 少し離れて鍔迫り合いを続けていた二人も。皆巻き込んだ。





「ハッ! これっだけやれば、効いたでしょ……」


 自身も体のほぼ全てを折り、血が三度噴き出す。無理矢理骨を矯正し、宙に浮かんで負担を減らす。

 穴から出てよ〜く見ると底が見えるか見えないかの大穴だった。魔理沙がマスタースパークでも使ったようだ。

 次に周りを見る。あ、ボロボロだこりゃ。隕石が激突したみたいだ。


「あ、神社も……」


 以前の地震で崩れた博麗神社よりボロ……いや、よしておこう。

 参道に足の踏み場と言える場所は見えず、遠くの空にはピチュってない観客の生き残りがいる。と言っても、既に数は両手に入る。


「ちょ〜っとやりすぎたかな……?」


 凄くやりすぎだ。

 別の場所には神奈子が見える。結界を張ったらしい。その丁度後ろにルーミアがちゃっかり居る。

 あ、剣を振りかぶって……


「神奈子! 後ろ!」


「チィッ!」


 叫んだ諏訪子は痛みに苦しむが、声はしっかり届いたらしい。オンバシラがしっかりとガード……


「防御? 馬鹿みたい」


 オンバシラごと両断された。神奈子の顔が苦痛に歪む。


「面倒だから、手加減止めるわね」


 面倒という理由で止めるのか!?


「丁度藍色もいるみたいだし、このまま勝ちに行っちゃおうかしら」


「ふっ……ざけるなぁ!」


 神奈子がオンバシラを射出する。ルーミアはそれを……


「あら、私のどこがふざけているの?」


 片手で止め、神奈子の何倍も速い速度で投げ返した。反応すら出来ずに神奈子は吹き飛ぶ。


「っがぁ!?」


 吹き飛んだ神奈子を助けようとする諏訪子の両手がルーミアに掴まれ、神奈子に向けて投げ飛ばされた。血が飛んだ軌道を縫う。


 神奈子は飛んできた諏訪子を受けとめるが、諏訪子は短い悲鳴を上げる。ダメージだけなら諏訪子の方がかなり上だ。


「ふ、ふざ……けん…………な」


 藍色だけなら対処は少なからず可能かもしれなかったが、あの宵闇の妖怪が規格外だ。強すぎる。


「あら、まだ睨み返せるのね? 可愛い」


 ルーミアはクスリと笑い、両手を十字に広げる。


「神様を十字架に磔にするのも悪くないかしら」


 右手に持つ剣の切っ先から、闇が漏れ出す。徐々に範囲を広げ、一気に妖怪の山を包み込んだ。


「……常夜異変って所かしら?」


 闇の中の妖怪の山は、満月の夜になっていた。

 そう、満月だ。


「藍色、目は覚めた?」


「最初から」


 妖怪の時間を、強制したのだ。動けなかった筈の藍色を復活させてしまう。藍の瞳がいつもより輝いている。


「ハ……ハハハ…………」


 神奈子は乾いた笑い声を上げる。諏訪子は動かない。


「じゃ、行ってらっしゃい」


「そうする」


 ゆっくりと降りてきた藍色は神奈子の目の前に立つ。藍色の瞳が異様に尾を引く。


「痛くはしないから」


 そう言い、右の拳を振りかぶり、

 藍色の軌跡を残して、

 神の意識を刈り取った。







「終わったよ」


「そうね」


 満月の中、藍の瞳を輝かせる藍色がルーミアに言う。


「じゃ、運ぼうかしら。どうせ見物してた賢者が全部直してるわよ」


「小傘、大丈夫かな」


「生きてるわよ。防御はしてたみたいだし」


 二人で二柱を抱え、神社に向かう。ルーミアの推測通り、神社も参道も崩れた山肌も直っていた。

 神社の縁側に行き倒れのように倒れる賢者を放置し、待っていた早苗と小傘の前に降り立つ。


「は、早く永遠亭に!」


 早苗が慌てているが、藍色は歪み無い。治すと一言言い、能力を使う。


「終わり」


 傷は全員治り、顔色も戻る。


 が、諏訪子の服と藍色の服は失敗したらしく……


「あっ! ああぁぁっ!?」


 やっと気付いた小傘が慌てて唐傘を開いて隠す。


「あら、そういえばボロボロねぇ」


「だっ男子禁制!」


 特に紳士とか言う変態は。





「あ、この夜どうにかしなきゃ」


 ルーミアが剣を消し、両手を広げる。夜が凝縮されて行き、全てルーミアの中に収まった。


「じゃ、観客の対処は任せたわよ、風祝」


「え?」


 観客は、結局射命丸とにとりしか生き残っていなかった。


※死んでません。







 弾幕戦より肉弾戦の方が上手く書けると常々思う空椿です。


 反省点としては、神奈子を上手く動かせなかった事と、ルーミアの強さを自重しなかった事が上げられます。

 次からは気をつけましょう。


 あと、結局生き残りは二人です。外来人もピチュりました。ナモナモ。強い人はただ逃げただけですが。



 ちなみに、藍色の強さは確かに大妖怪や神々に匹敵しますが、必ずしも勝るわけではありません。

 ただ、能力が優秀故に強敵にも有利になるのです。が、藍色は殴り合いだとあまり使いません。

 純粋に楽しむ為に、能力を使って白けるような事は出来る限りしません。が、本人の機嫌が悪い時や一般的な弾幕決闘の場合はその限りではありません。


 満月時の藍色ですが…………秘密です。そこ、○ルガ○ルガとか言うな! 



 さて、藍色はまた移動します。紫はまた逃げられます。 紫が藍色に追い付いた時、何が起こるかはまだ決めてません。



 ま、のんびり行きましょうノシ




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