藍色と寅丸 傍観は敵だ
「宝塔「レイディアントトレジャーガン」!」
「大輪「ハロウフォゴットンワールド」!」
室内で弾幕がはじける。が、弾幕の濃さに圧倒的に差があるのだが……
「ふぁいと〜」
「ほら、右側開いてるわよ」
平常運行の二人は能力で弾幕を退けながら小傘に指示を出し、
「村紗、避難しましょう」
「当たり前よ! シニタクナーイ」
先程の二人は部屋の外に脱出し、
「あらあら」
こちらの僧侶は弾幕を叩き落としながら見学している。パネェ……
「無理、無理! 助けてぇぇ!」
悲鳴を上げ、危なっかしくて仕方がないが、しっかりと避けられている。空腹状態だと既に落ちていただろうな……
一方の寅丸は慣れているようで、小傘の弾幕を余裕を持って避けている。どれくらいの余裕かと言うと、合間合間に藍色とルーミアを睨むくらいだ。
危なっかしいとはいえ、小傘はちゃんと避けられているので、結局お互いのスペルはブレイクした。
「もう音を上げてるの? 早いですね」
「最初から上げてるよ!」
小傘も二人を見つめる。出会った時と変わらない雰囲気の目が返ってきた。
「ま、別に構いませんが」
通常弾幕を爆発させる星。小傘も応戦するが、やはり濃さに差がある。
「か、勘弁してよぉぉ!」
涙を浮かべながら弾幕を避け、自身も弾幕を打ち返す小傘は、何だか哀れにも見える。
「別に、私は降参して貰っても構いませんが?」
寅丸が言ったので、小傘は直ちに降参しようとする。が、その前に自身の主人を一瞬だけ見る。
藍色の雰囲気は変わりなく、『降参したいならどうぞ』と言った感じだ。
そんな姿を見て、小傘は判断に困らされる。
一瞬悩むが、目の前を弾幕が通り過ぎた事で意識を切り替える。
「で、降参するんですか?」
「こ、降参……」
あ、虎の気が緩んだ。ちょろい。
「しないよ! 傘符「パラソルスターメモリーズ」!」
「え、えぇ!?」
藍色がかけた、『相手を驚かせる事に成功する確率』を上げた時の効力はまだ効いていたらしい。
小傘の非常に分かりやすく簡単なフェイントにあっさりひっかかり、かなり驚く星。小傘は笑顔になった。
「お? 毘沙門天代理の驚き頂きました〜」
「このっ!」
場の雰囲気が小傘の方に味方した。が、以前小傘の方が不利ではある。
しかし、先の行動で小傘は妙案を思い付いたようだ。
「たあぁ!」
一度力をため、唐傘を薙いだと同時に大量の弾幕をバラまく。星の視界が弾幕に覆われるが、隙間を見つけて回避、反撃をした。
が、小傘が居ない。
「あ、あれ……」
「ばあっ!」
真上からいきなり唐傘の目が出現。同時に弾幕が放たれた。
「わあっ!?」
後ろに飛び退き、弾幕を何とか回避するが、
「じゃんじゃじゃーん!」
今度は真横から登場。また弾幕を放って引っ込んだ。
「い、いい加減に」
「驚け〜!」
「うっひゃぁ!?」
突然出て来て弾幕を放ち、その弾幕に紛れて隠れているらしい。次の突撃までに力をため、驚かすと同時に爆発させる。その繰り返しだ。
そんな、生き生きとした様子の小傘を見つめる主人と親友。
「久しぶりに相手を驚かせられて嬉しいのかしら」
「相手は妖怪だけどね」
腹は膨れてるのだろうか?
「あなたの考えがこんな所に巡ってくるとはねぇ。能力の上位互換というか、強化かしら?」
「別にいいけど」
ともかく、小傘が自由にやれてるならいいだろう。
「で、あれは勝てるの?」
「集中力を削れてるから勝機はある。経験に差があるけど」
「あ〜……」
心配してる二人だが、更に肝を冷やす事になった。
「ああもう! 「コンプリートクラリフィケイション」!」
「うぇぁ!?」
痺れを切らし、スペルカードを宣言する星。小傘は溜まらず離れる。
「人を馬鹿にして、やる気があるなら正面から来なさい!」
「正面から行ったら数秒ももたないよ!」
ルーミアと藍色が頷いてるのを小傘は知らない。
「星、スペルカード使用数は互角ですよ」
「はい!」
励ましてくれた主人の為に張り切る星。冷静さを取り戻し、狙いが正確になる。が、残念ながら小傘を仕留める事は出来なかった。
密度が薄くなり、余裕が出来た小傘は星に声をかける。
「ねぇねぇ!」
「何ですか?」
「さっきスペカ一枚使ってなかった?」
!
「ああっそういえば!」
うっかりしていたらしい寅丸星。その隙を小傘がしっかりとついた。
「傘符「一本足ピッチャー返し」ィ!」
カキ〜ン。といった感じの音ではなく、ピチューンである。
「星、弾幕勝負以前に使ってたなら使った事になりませんよ?」
「え、ええぇぇ!?」
星は涙目になりながら小傘を睨む。
「騙したなぁ!?」
「だって、普通に戦ったら絶対に負けるじゃない……」
その小傘は現在、藍色に膝枕をしてもらい、ルーミアに団扇を扇いでもらっている。
無理をし過ぎた為か、戦闘終了後にオーバーヒートしてしまい、この有り様である。
ちなみに、星はもれなく聖の説教を頂いた。何事にも冷静に〜とか、相手には常に優しく〜とか。
「小傘」
「なに、ご主人様」
今更だが、呼び方だけ丁寧ななんちゃって敬語の小傘。呼び方以外は普通なのにね。
「さっき沢山星を驚かせてたけど、何か変化はあった?」
「そうね、私も気になるわ」
ルーミアも興味があるらしい。小傘は弾幕勝負をゆっくり思い出す。
その間に頭より大きな手が伸びてきて、氷の入った袋を藍色に渡す。
「どうも」
雲山だ。藍色が一輪に頼んでいたらしい。
そんな一輪も巻き添えを貰った村紗を手当てしている。被害は甚大だ。
「えっと」
小傘が二人に声を向ける。考えが纏まったらしい。
「少し力が沸いてきた、かな」
「へぇ」
聞いた途端にルーミアが頭を回し始めた。藍色は小傘の額に氷嚢を乗せる。
「あ、気持ちいい……」
そりゃ良かった。
ルーミアはすぐに考えを叩き出したらしく、小傘と藍色を見る。
「人を驚かせる事で空腹を満たす事が出来るけど、妖怪相手だと妖怪としての格が上がるんじゃない? ほ〜んの少し妖力が増えてるし……」
「成る程、じゃあ神様脅かしたら何が増えるのかな?」
「多分、死の危険が……」
ですよね〜
「ま、弱い神様相手にやればわかるでしょ。守矢の神を相手にする必要は無いし……」
「そうだよね……」
驚け〜の話は終了したが、今度は小傘が質問した。
「で、何で私にやらせたの?」
「ああ、それね。藍色は根本的に弾幕勝負は合ってないの。隙間を作ってやる理由が分からないってね」
「つまり、それを言える実力があるってわけだね」
小傘はあの密度でも十分全力だ。
「私はとある事情によってスペカが不安定でね。問題が大ありなのよ」
つまり、消去法で小傘になったらしい。
「じゃあ、どんな勝負が得意なの?」
二人はそれぞれ答えた。
「肉弾戦」
「サバイバル」
「う、うぁ〜……」
この時、小傘はある事を決めた。
「二人に変わって弾幕勝負をやろう……」
小傘の未来が決まってしまった。
「それじゃあ、そこのお三方」
突然聖が三人に声をかけた。
「無断進入は頂けないので……」
しばらく、説教が続いた。
「みぃ……」
小傘に膝枕を続けていた為、足が痺れた藍色。
「すー……すー……」
途中で眠ってしまった小傘。
「もう全てが念仏に聞こえるわよ……」
耳を塞いでも頭に聖の声が反響するルーミア。
三人はもう限界だが、飽きずに話を続ける聖。モウヤメテ……
「あら、まだ一割も終わってませんよ?」
「うぇ……」
ルーミアは藍色に目配せをしたが、藍色は首を横に振った。 能力を使ったが、失敗したらしい。
そんな藍色にルーミアは声を出さず、口だけを動かす。
この際、この状況を脱する事が出来るなら何でもいいから手当たり次第にやれ。と。
やや脅しに近い雰囲気なので、藍色も少々焦った様子で能力を使用。
こんな時、運が無いのが凄く残念だ。
「……あ」
何かにヒットしたらしい。
「十秒以内に守矢神社」
早すぎ!
ルーミアが素早く藍色と小傘を抱いた瞬間、三人はテレポートしてしまった。
「…………はい?」
目の前で逃げられた聖は、何が何だか分かっていなかった。
「今日も日が沈んでいくねぇ」
いつの間にか夕方になっていたらしい。
もう天辺しか見えない太陽を見つめ、諏訪子はのんびりとしている。
神奈子は今はこの場には居らず、早苗は今日も妖怪退治に勤しんでいる。
退屈を持て余す諏訪子は、コロンと寝転がり天井を見上げる。
「明日も変わらないんだろうな〜」
独り言を呟き、遅めの昼寝をしようと思った瞬間である。
天井に様々な色が追加され、それが段々と天井の茶を染めながら大きくなっ……
「みゃぁっ」
「きゃあ!」
「わぷっ」
「あうぁ!?」
どうも、明日は退屈しなさそうだ。
ちなみに……
「こんにちは」
「こんにちはっ!」
「全身藍色の子を見なかったかしら?」
「お昼に入って行きました! まだ出て来てないです」
「そう、じゃあ上がらせてもらうわね」
「は〜い!」
藍色を探して幻想郷一周の旅。紫は命蓮寺に来ていた……
寅丸は優秀ですが、どこかが堅苦しくて、たまにうっかりしてしまうのが好みの空椿です。
まず最初に。
寅丸星様、並びにファンの皆様、すみません。
謝ってばっかりですね、ハイ。仕方ないよね……
まあ切りかえて行きましょう。、
守矢神社です。今度は守矢の三人ととんでもない事になりそうです。
まあ、頑張りますよ。
しつこいようですが、意見場所は開いてます。
最近霊夢と変わらない感じになってきましたが、とにかく開いてます。
大分言い忘れてましたが、意見場所への返信はありません。後書きに書きます。
長々続けても仕方がないので、これで失礼しますノシ