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東方藍蓮花  作者: 空椿
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藍色と僧侶 冗談は敵だ

 時刻は昼。命蓮寺には元気に掃除をしている少女くらいしか姿が見えない。実際は中にちゃんと人がいるのだが、広すぎてよくわからない。

 そんな事はひとまず置いておき、小傘を加えた三人は命蓮寺に入る。掃除をしていた少女がこちらに気付く。

 ……なんだか、妙に目を輝かせている。


「こんにちは」


 藍色が言うと、少女は飛びっきりの笑顔で返事をした。


「こんにちはっ!」


「こんにちは〜」


「はい、こんにちは」


 明るい挨拶を済ませ、命蓮寺に堂々と無断進入した。


「ちょ、いいの?」


 小傘が藍色を止めるが、藍色ではなくルーミアが言った。


「藍色はこんな奴よ。その内慣れるわ」


「そ、そう……」


 とりあえず入ろう。







「あれ? ここさっき通った……」


 藍色が廊下を歩きながら言った。


「いや、通ってないわよ。周りの景色が一緒だからわからないだけ」


「っていうか出口がど」

「知らない」


 しっかり迷ってしまっているらしい。


「やれやれ、広すぎる家も考え物ね」


「ルーミアさん、ここ家じゃないよ」


「寺」


「分かってるわよ……」


 しかし、いくら歩いても景色が変わらない。何故こんな広い寺にしたのか……?


「どうする?」


 この状況を打開する策はあるのだろうか?


「誰かに出会う確率を上げればいい」


 あった。


「さっすがぁ! それじゃあ早く」


「分かってるから」


 はしゃぐ小傘を落ち着かせ、能力を発動する。


「出来た」


「「おお〜」」


 と、いうわけで。後は待機だ。歩かなくても向こうから来るだろう。パンと蜂蜜を仲良く食べ、待っていると……


「だっ誰ですか!?」


 虎柄の、何だか神々しい雰囲気の人物が。意外と背が高いが、左手にはその背丈より長い槍が……


「唐傘です」


 と、小傘が言ったので……


「宵闇です」


 ルーミアが面白がって便乗。


「藍色です」


 藍色まで便乗。本名だけど。


「いや、本名を聞いてるんですが……」


「あ、じゃあ小傘です」


「ルーミアよ」


「藍色」


 ちゃんと言ったのだが、虎柄さんは藍色を見つめる。


「名前を聞いてると言ってるのですが……」

「藍色」


「いやだか」

「藍色」


「すみません、藍色っていう名前なんです」


 どうやら、藍色を名前だと思ってなかったようだ……


「し、失礼しました。私は毘沙門天の代理で、寅丸星と申し」


「そう」


 やはり切る。知りたい事が知れればいいらしい。


「悪いけど、迷っちゃったからどこかに案内してくれない?」


 ルーミアが言う。毘沙門天の代理を雑用に使うと申すとな。


「いやはや、入ってみたは良いものの、広すぎてちょっと……」


 小傘が言った。代理とはいえ毘沙門天の目の前で堂々と不法侵入を白状するとな。


「盗人猛々しいと言うべ」

「いいから早くして」


 おい藍色!?


「……怒りますよ?」


「怒れるなら」


 と、藍色。


「……へ? あれ……」


 椛や永琳にやった覚えがある使い方だ。


「ん? 何をしたの?」


 小傘が藍色に聞いてきた。


「怒れる確率を下げただけ」


「へぇ〜」


 と、小傘が安心していると……


 ダン、と強い音がした。星が槍の柄で床を叩いたらしい。


「別に感情は関係ありません。あなた達が悪い行いをしたと見なし、罰を受けるべきと割り切ってしまえば、感情など無しに攻撃出来ますよ」


「つまり何、『こっちが礼儀正しくしてりゃつけあがりやがって』って感じ?」


 ルーミアが呟く。そして、多分違う。


「命蓮寺への無断進入、情報詐称、軽度の暴言、能力による妨害行動。これだけあれば十分ですよ、お三方」


「え? まさかキレちゃった?」


「そうかもしれませんね。最初から礼儀正しくしてれば、変わったでしょうが」


 ひょいと懐から何かを出す。宝塔だとかなんとか言うそうだが?


「藍色、結構冗談通じない相手だったみたいね」


「うん」


 じゃあどうするのさ?


「覚悟ォ!」

「逃げろぉ」


 藍色は逃走した! よく分かってない小傘はルーミアが抱いて走る。


「もう! カタが付いたらちゃんと謝罪しなさいよ!?」


「するもん」


「ちょい、ご主人様。もんとか言ってられない」


「そうね」


 後ろから弾幕が飛んできた。のんびり話しているが、これでも切羽詰まっている。


「今度こそどうするのよ」


「ん〜」





「撃退する?」


「冗談は抜きにして」


「うん」


 冗談かよ。


「やっぱり撃退する」


 おい!?


「仕方ないわね〜」


 ルーミアが急停止。小傘は藍色に向かって投げた。


「きゃぁあ〜っ!?」


「げっと」


 しっかり受け止めた藍色。だが、小傘の方が背が高いのでちょっと可笑しい図だ。

 あと、何があっても唐傘を離さないのは流石と言うべきか。


「アンタには恨みも何も無いけどね、悪いけど気絶しておいてもらうよ!」


 ルーミアは星に向かって走る。大して星は槍を突き出した。

 その槍の刃に手を添え、軽くずらして懐まで進入した


「あっ!」


「はい、残念」


 ルーミアが長い膝を星に叩き込んだ。

 息を全て吐き出した星は、廊下の奥に飛ばされていった。


「い、一撃でスペルブレイクした……」


 トコトコと戻ってきた藍色に抱えられたままの小傘が言う。


「さて、気分を変えて行きましょう。どうする?」


 何事を無かったかのようにルーミアが振り返る。運動にもならないと目が言っている。


「……引き返す」


「ルーミアさん、落ち込んでる?」


「これだけ振り回されたら落ち込むわよ」


 そりゃあね……


「ま、私は賛成するわよ。あの虎、結構頑丈だったし……」


「それなら異論無し!」


 ルーミアの意見に一発で流された小傘だった。


「はいはーい、急ぐわよ〜」


 小傘を軽く抱え、軽やかに走り出すルーミア。小傘の数倍速い。

 藍色は何故かルーミアの真後ろを常にキープしている。能力だろうか?


「えっと、今気付いたけど何でこの抱きかた?」


 所謂お姫様抱っこと言う奴だ。


「何気に楽だからね。スピード上げるわよ」


「ちょ、何故?」


「追い付いてきたから」


 小傘がルーミアの肩から後ろを見ると、藍色の頭と先程の虎が見える。あ、スペカ構えてる。


「光符「正義の威光」!」


「あ、本気モードだあれ」


 小傘の声に藍色が反応。


「じゃ、振り切ろう」


「はいはい」


 ルーミアが、先程より強く足を踏み込む。瞬間、景色は霞になり、先程自分達を通り過ぎた弾幕が戻ってくる。


「う、うええぇぇぇ!?」


「黙ってなさい。舌を噛み千切るわよ」


 怖いので黙った。その途端にルーミアがノンストップで角を曲がった。小傘の首がガクンとなる。


「今ポキッて……」


 藍色が小傘から聞こえた音に心配する。無事だった。


「ま、これでしばらくは追いつけないでしょ」


 スピードを緩め、角を数回曲がった辺りで歩きになった。既に星は見えない……


「もう下ろして……」


「あら、傘を床に当てながら進む趣味は無くってよ」


「私、前にもこんな事があったような……」


 ある。藍色は体が小さいので、道中は唐傘を抱くように持っていたのだが、十中八九それだろう。


「で、あの虎はどう説得するのよ」


「ん〜……」


 藍色が考えるが、小傘の方が先に考えついた。


「命蓮寺の他の人物に説得して貰えばいいんじゃなぁい?」


「おお」


 藍色が感嘆の声を上げた。


「じゃ、藍色」


「うん」


 何をするかは既に分かっている二人。小傘はまだ分かってないが、じきにわかる。


「一分以内」


「また一分以内!?」


 ルーミアが藍色を掴む。その瞬間、


「にゃあぁぁぁぁ…………」

「ひゃああぁぁっ!?」


 いつかの犬神を彷彿とさせる飛ばされ方を披露する藍色。小傘も悲鳴を上げていた。







 パチン。乾いた音が鳴った。


「あ……これは……」


 尼のように見えなくもない少女が、将棋の駒を睨む。正面に居るのは……

 にゅ、入道だ……


「なんだ一輪、将棋結構弱いんだね」


 隣から顔を出した別の少女。セーラー服を着ている。一輪と呼ばれた尼は言い返す。


「違うわよ。雲山が強過ぎるだけだって」


 この入道は雲山と言うらしい。


「ふーん」


 セーラー少女はあまり興味がなさげだ。将棋はやらないのだろう。


「でも、入道を従えてる筈なのに入道に負けるのもどうかな?」


「う、うるさい!」


 一輪がセーラー少女の胸元を掴んで揺らす。


「ちょ、い、いちりっ」


「大体何でいつもいつも横からちょっかい出してくるのよ! 自分はやりもしないのに!」


「やめ、落ち、落ちる」


「ちょっとは物事に真剣に」


「ひゃぁぁああ!」


 ダイナミック失礼しま〜す。

 小傘の叫び声のような挨拶と共に三人が飛んできて、騒いでた二人にぶつかった。セーラー少女は今度こそ意識が落ちた。


「……痛い」


 藍色はまた頭を打っていた。


「次からは五分にして頂戴……」


「うん」


 場がまとまるまで二十五分かかった。







「私は雲居一輪です。こちらは入道の雲山」


「村紗水蜜だよ、気軽にキャプテンと呼んでくれたまえ」


 尼とセーラーがそれぞれ挨拶。ちなみに、将棋の駒は紛失した。


「じゃあキャプテン」


「ごめん、やっぱ村紗って呼んで」


 藍色は素直に言ったが、村紗は冗談だったらしい。


「私はルーミア。こっちが多々良小傘でこっちが藍色」


「どーも」


「こんにちは」


 一輪はニコリと笑い、質問する。


「それで、命蓮寺に何のよ」


「観光」


 観光だったのか。


「そしたら紆余曲折を経て星さんを怒らせてしまってね、説得を頼みたいのだけど」


「ちょい質問。何で星を怒らせて無事なのさ」


 村紗が疑問を飛ばしてきた。


「撃退したからだけど?」


「一撃でスペルブレイクしてたよね〜」


 ルーミアが答え、小傘が思い出す。何だか一輪が目を見開いている。


「聖さん以外にそんな事出来る人なんて居たんですね……」


「聖?」


「命蓮寺で一番偉い人です」


 何度か名前が出た人だ。藍色も一度見ている。


「一番偉い……ねぇ。それならあの虎黙らせられるかしら」


 ふざけた事を言うルーミア。ちったぁ自重しなさい。


「ちょ、立場的にナンバーツーの人に何て事を……」


 流石に村紗が引く。まだ藍色に毒されてないというか、比較的常識的な小傘も白い目をしている。


「強者こそ正義」


「その通りよ」


 この二人は……


「と、とりあえず呼んで下さい」

 小傘が二人を押しのけて頼む。藍色はマイペース過ぎるし、ルーミアは常識がずれている。


「はい、少々お待ち」


「もう居ますよ〜」


「え!?」


 なんと、藍色達の真後ろに既にいた。藍色は無反応、ルーミアはニコニコしており、小傘は体を弾かせるかのように飛び上がった。


「聖! いつから居たの!?」


「今入ってきた所ですよ」


「そう」


 聖は藍色を見つめ、お久しぶりですと言ったが……


「うん」


 しか言わない。


「あなたの事は前々から紫さんから聞い」


「そう」


「以前お目にかかった時も一際目を」


「そう」


「えっと……」


 話題を強制終了される為、話が続かない。困るぜ……


「それで、頼み事があ」


「全面的にこっちが悪いとは思ってるけど、星を落ち着かせてほしい」


 これでも長文を話せる藍色。ただし態度は変動しない。


「……多分、星は納得しませんよ?」


「え〜……」


 え〜じゃないよ小傘。


「そうですね、弾幕決闘で見逃す事を賭けて、勝利すれば良いんじゃないですか?」


「なーる」


 と、空気を読んでか否か。廊下から駆け足の音


「聖様! 失礼します!」


 キュッと廊下を鳴らして怒り心頭の毘沙門天代理が登場。手にはスペルカードを数枚持ち、準備は万端だ。


「よし」


「それじゃあ」


 藍色とルーミアが小傘の背を叩く。


「「ごー」」


「え!? また!?」


 出会った時にそんな事があったような?


「貴方が相手ですか。容赦はしませんよ」


「あ、これマズいんじゃないかな……」


 頑張れ、小傘。









 ちなみに……


「藍色知らない?」


「随分前に出てったわよ」


 藍色を探して幻想郷一周の旅。紫は紅魔館に居た……


 小傘、災難。

 さ~て、どうしようかな……



 あ、やべ。後書きに書く話題がない。

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