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東方藍蓮花  作者: 空椿
20/114

藍色と唐傘 忘れ癖は敵だ

 太陽の畑。

 幽香の家に、藍色と金色と黒色が追加されている。

 藍色の服は新しく咲夜がプレゼント。以前の藍色のワンピースに小さなリボンが追加され、可愛らしさがアップした。

 小さなポケットもついており、スペルカードが丁度収まる大きさだ。利便性もややアップしたらしい。

 素材については咲夜が唇に人差し指を当て、以降無口を貫いたので聞けなかった。


 幽香とは、あれ以来関係は良好。一緒に向日葵に水をやったりするようになった。

 残念ながら、ルーミアは太陽がさんさんと輝く場所には流石に行きたくないらしく、ひきこもり気味だ。


 そんな日々が少し続いたが、ある夜に藍色が旅を続けたいと言った。


「どうしても?」


「うん」


「まだ行った事が無い場所があるって私が言ったら、どうしてもって……」


「ふ〜ん……」


 ちなみに、行き先は既に決まっているらしい。


「ま、束縛する理由なんて無いし……好きにしてらっしゃい」


「そうする」


「たまには寄ってね」


「うん」


「また戦っていいかしら?」


「考えとく」


 ルーミアは全く構わないようで、藍色のやる気もあるのですぐさま出発した。

 幽香はお土産に蜂蜜といくつかのパンをくれ、ルーミアが袋に入れて持っている。


「どこかで焼ければもっと美味しいでしょうね」


「うん」


 お土産といえば、永琳の薬は今どうなっているのだろうか? やはり置き忘れ癖は治さなければいけないだろうと藍色は決意する。

 過去の忘れ物は数知れず。今頃どこで何を……





「あ」


 なんと、霖之助から貰った刀を忘れていた藍色。まだ持っていたっけ……

 何か能力を使っているようだが、うなだれた所を見ると残念な結果になったのだろう。


「また無くしたの?」


「うん」


「もはや筋金入りね」


 無くしてしまったなら仕方無い。上手く扱ってくれるいい人に使って貰えるのを願うばかりだ。

 妖夢なんかが適当だと思われる。が、既に武器は足りている。

 椛は……武器の形が違う。却下だ。

 ……妖精? 何をふざけた事を。


 そんな考えを巡らせつつも、のんびりと歩く。刀についてはもうどうでもいいらしい。結局、実戦で使う事は無かった。勿体無い……


「お?」


 整備された道に出た二人。左手側には人里が見え、右手側には寺が見える。命蓮寺だ。


「意外と早く着いたわね」


 今までが迷い過ぎだったのかもしれない。


「じゃ、早速行きましょう」


「うん」


 大して反応もせず、命蓮寺に向けて足を進める二人。と、そこへ……


「ばあっ!」


 ベロンと垂れた舌のついた唐傘。よくみると少女が持っている。


「う?」


 藍色は首を傾げた。


「おどろけ〜!」


「あら、可愛い子」


 ルーミアは笑顔を浮かべた。やがて少女は驚かそうとするのをやめた。


「また失敗か〜……」


 くるりと背を向け、二人から離れる少女。藍色が呼び止めた。


「ねぇ」


「なーに?」


「どこかで会わなかったっけ」


 お前は何を言っているんだ。と、ルーミアは言いたげだが、自分と会う前に会ってた可能性を考え、言うのをやめた。


「そんなハズは無いけど……」


「そう」


 藍色は気にした様子も無く、少女の隣を通り過ぎて命蓮寺に足を進める藍色。後ろからルーミアもついていく。


「……ちょっと待って」


 今度は少女が呼び止めた。振り向いた藍色の顔を、まるで本物と紛い物を見分ける鑑定士のように見つめる。

 十五分たっぷり見続け、やがて、その目に段々と確信の色が見えてきた。


「う?」


 その目が何となく気になったのか、軽く首を傾げた藍色。それがきっかけなのだろうか、少女が大きく飛び退き、藍色を指差した。


「あ〜〜〜〜〜っ!?」


 どうやら、何かを思い出したらしい。のだが、今の状態では話にならないので……

 落ち着くまでしばらくお待ち下さい。







 ゆっくりしていってね!!!







 少女の名前は多々良小傘。唐傘の付喪神で、忘れ傘。持ち主に忘れられた挙げ句に幻想入り。そこで付喪神となり、以降人を驚かそうとしながら生活している。

 が、結果は芳しくない。驚かせ方に問題があるのか、頑張っても人々には「可愛い」としか言われない。

 人の驚きが無いと、腹が満たされないとの事。結果、常にひもじい思いをしている。

 で、藍色との関係だが、なんと小傘は藍色が元の持ち主だと主張する。藍色も心当たりがあり、それが見事に一致した。


 そういえば、香霖堂で刀を貰った後の思い出話のような物の中に唐傘があったような……


 つまりなんだ、藍色の忘れ癖がこんな所に転じてきたらしい。

 藍色は小傘に真剣に謝ったが、小傘は既に気にしていないようで、割とあっさり許してくれた。その代わりに……


「もう忘れないでよね?」


 と言い、半ば無理矢理同行してきた。元々は藍色の持ち物だったのだから、致し方無いというか、当然というか、責任持って連れていくべきというか…………

 だが、藍色の事をご主人様と呼ぶのはどうだろう。ちなみに、ルーミアはさん付けだ。


 そんな小傘だが、既にルーミアと仲良くなっていた。早いな。

 そして、やたらと藍色に絡む。久しぶりに主人に出会ったのが相当嬉しかったらしい。藍色も適度に付き合う。すると……


「……あは、あはははは……」


 ぐう、とお腹が鳴った小傘。そういえば、主食の驚きが全く無いんだったな……


「お腹空いたの?」


「ハイ……」


 ルーミアがピンと来た。


「藍色、能力」


「あ」


「うん?」


 一人ハテナな小傘に何かをした藍色。命蓮寺に向かうのをやめ、近くの草むらに身を潜める。


「え、ちょっ」


「しー」


「ま、大人しくね」


 空腹に耐えながら、二人の言葉に従う小傘。やがて命蓮寺に向かう団体客が歩いてきた。かなりの大物だ。


「お、多い……」


 怖じ気づいている小傘の背中に手を当て、藍色が言った。


「れっつごー」


「えぇ!? 無理だよぅ……」


「演出はしてあげるから」


 ルーミアが後押しをする。藍色もなんだか自信満々だ。


「……わかりましたょ〜」


 かなり渋々とした表情だ。それを確認したルーミアは薄く闇を振りまく。 途端に、周囲の光が減り、やや暗くなる。

 藍色も小さく両手を合わせる…………もう一度やった。失敗したな?

 風が吹き、草木を揺らす。人間達からしてみればかなり気味が悪い。


「よし、行きなさい」

「ごー」


 と、小傘を促す二人。だが……


「ただハードル上げただけじゃない……?」

 そうかもしれない。


「問題無い」


「アイツラの背後から歩いてくるだけでいいから」


「……はぁい」


 本当に渋々していたが、いざやってみると……


「ばぁ」


「「「「ぎゃあああああっ!?」」」」


 皆、仲間を押しのけながら命蓮寺に逃げていった。小傘のほうがビックリしていた。


「どう? 上手くいったでしょ」


「確かにビックリするほど上手くいったよ。お腹が一杯で動きづらいレベルだけど」


 それは良かった。


「なんであんなに驚いたのかな?」


「藍色の能力でちょいちょいっとね」


「相手を驚かせる事に成功する確率を上げた」


 いやぁ、成功して良かった。


「能力なんてあったっけ?」


「言った覚えは無い」


 あの時はただの唐傘だったからね。


 例によってルーミアによる能力説明。


「いいな〜、私の能力なんて……」


 人間を驚かす程度の能力。だが、肝心の人間が全然驚いてくれない為形骸化している。つまり、実質能力無し。


「そりゃあ災難ねぇ……」


「ねぇルーミアさん、ご主人様の能力で相手に能力を開花させる事って出来るのかな?」

「え? う〜ん……」


「やった事無い」


 藍色から返答が来た。


「やってみる?」


 恐らく成功しない……と藍色は言うが、小傘はうんと言った。


 実際にやってみると……


「むぅ」


 予想通り失敗したらしい。

 曰わく、地の確率があまりにも低すぎて引き上げきれないそうな。そんなに貴重だったのか……


「どの位低いのよ」


「ヨクト以下」


「は?」

「うん?」


「ゼロが最初に二十四個くるの」


「…………はぁ」


 謎知識を披露してくれた藍色。で、一体どれくらいになるのか?


「私の力量だと、約二%くらい」


 よくわからないが、藍色にしてみれば大きな差らしい。

 ま、結局失敗したのは変わらない。次の挑戦は数日しないといけないだろう。


「つまり、希望ありって事?」


「うん」


 それを聞くと、小傘は目を輝かせた。能力持ちは憧れるのか?


「ま、藍色に運が無いから実際は一%以下でしょうね」


「それでもいいよ!」


「そう」


 さて、話も済んだ所で……


「行くとしますか、命蓮寺」


「うん」


「は〜い!」



 拝啓、幻想郷の皆様。

 忘れ傘が持ち主を見つけたようです……







 と、締めたものの、まだ終わらない。

 場所を移して、八雲の家である。


「ねぇ藍」


「何ですか?」


 紫は、藍を前に座らせて話し出す。


「最近、霊夢が呆けすぎじゃないかしら」


「まあ、普段は異変なんて無いですしね」


「そこで、異変を起こして渇を入れてやろうと思うのよ」


「さらりと幻想郷を危機にさらさないで下さい」


 藍のツッコミに、笑顔で対応する。


「問題無いわ。誰かが死んでしまったりする異変にするつもりじゃないもの」


「……それならいいでしょう。で、その内容とは?」


「藍色にやってもらうわ。まだ幻想郷では知名度は低めだし、異変を起こす事で幻想郷に広く知られるでしょう」


「ふむ」


 紫は指を折りながら言う。


「藍色が広く知られるきっかけになる、平和ボケした霊夢に渇を入れられる、宴会が出来る。一石三鳥じゃない」


「それはいいんですけど、紫様?」


「何よ」


 藍は溜め息混じりに言った。


「その藍色さんを、アナタは見つけられるんですか?」







「あ」


「私は手伝いませんよ」


「え」


 九尾の狐は主人を放置して去った。


「橙〜、買い物に行こう」


「はい!」







「……どうしましょ」


 賢者の考え事など藍色が知るはずも無かった。


 ……

…………

 ………………

 小傘ファンの皆さん、すみません。妄想が爆発しました。

 と言いつつも、実は霖之助の辺りで考えてたネタです。二次創作だと思って勘弁してください。


 ちなみに、空椿的考えの妖怪は、人間を驚かしたり食べたりする事によって妖怪としての格が上がって行くので、小傘もそのうち…………ちょ、包丁投げるとか洒落にならんぞ!



 さて、今回より小傘が藍色一行に追加されます。

 自分的には藍色がマイペースな一行のリーダー、EXなルーミアが難しい事を纏めて解決するお姉さん、小傘は皆を笑顔に誘うムードメーカーな感じです。こんな子が欲しかったのさ……


 さてさて、小傘を加えてこれから各地を巡ります。次は目の前の命蓮寺だ!

 その次はどこに行こうかな! 決まってないぜ!


 と、先の見えない状態ですが、出来ればまだまだ付き合ってやって下さい……

 え? 意見場所? まるで以前の博麗神社の賽銭箱のようです。霊夢の気持ちが分かるぜ……


 ではノシ

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