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東方藍蓮花  作者: 空椿
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藍色と花畑 孤独は敵だ

 幻想郷でも指折りの危険地帯がある。一面を黄色に染めるひまわりの畑、太陽の畑である。

 ここには風見幽香と呼ばれる女性がいる。四季のフラワーマスターと呼ばれているのだが、隠れた異名は……

 『アルティメットサディスティッククリーチャー』。略称は『USC』、ほぼ同じ意味で『究極加虐生物』。

 そう呼ばれる通り、彼女はよく他人を虐めるのである。幻想郷屈指の実力者な一面が手伝い、幻想郷の大半の人妖達は彼女を恐れる。

 加えて、極めて戦闘狂な一面もあり、幻想郷の強者ですら恐れずに向かっていく。幻想郷でトップの実力者の八雲紫ですら、彼女に進んで会いに行こうとは思わない。

 そして、彼女は花を愛する。彼女の目の前で花を傷つければ、命を諦める他無い。


 と、こう書いてしまえばただの悪い奴に感じるが、そうではない。

 彼女は実際は極めて優しい性格をしている。妖精達の為に花畑を作ってやったり、母の贈り物を探していた少女に進んでひまわりを切って渡し、人里まで送った事もあるのだ。


 それでも、サディスティックな一面の方の話だけが独り歩きしてしまい、結果誰も彼女に近寄ろうとしない。

 故に、彼女はいつも一人である。そして、いつしか彼女は自ら他人を避けるようになった。しかし……





 ごくごく最近の出来事。

 最速を謳う鴉天狗の振り撒く号外が、偶然にも風に吹かれて太陽の畑に飛んだのである。鴉天狗も太陽の畑には行かないので、本当に偶然だったのだろう。

 飛んできた号外を手にとり、字面を読んだ幽香は興味を引かれた。


 『藍色』


 自分の知らない妖怪、というのはよくある事だ。最近は幻想入りする奴も多いし、藍色という妖怪もその一人なだけだ。


 『疑問』


 字面には悪魔の妹と交戦し、大怪我を負って永遠亭に運び込まれたと書いてあった。

 だが、悪魔の妹相手に生き延びるとは相当な物だ。不思議と沸いた感情があった。


 『興味』


 一体、どんな奴なのか。どれくらい強いのか。何もかもが気になって、

 気がついたら彼女は、いつもいる太陽の畑を抜け出し、永遠亭に向かって飛んでいた。





 永遠亭に到着した幽香は、すぐに藍色という妖怪を探す。広くもなんともない部屋で宴会が始まっていたのには少々眉を潜めたが、見たことの無い藍色を見つけたのですぐに向かう。

 どうも自己紹介攻めにあっているらしい。普段外出しない姫海棠はたてや、稗田阿求なんてのもいる。幽香は静かに藍色の隣に座り、紹介攻めに参加した。


「風見幽香よ。ご贔屓に」

「しないよ」


 しないのか、とは思いつつも、小さな関係を持つ事に成功した。しかし……


「「「「幽香!?」」」」


 私がいるのがそんなに意外なのか? そう感じつつも藍色を見る幽香。藍色は状況を理解しているようには見えない。


「幽香……あんた、何でこんな所にいるのよ」


 ここで、知り合いの霊夢が問いかけてきたが、幽香は迷わず答えた。


「好奇心よ。悪魔の妹を相手に右腕一本と右足の損傷だけで済んだ? 普通瞬殺されるじゃない。つまり、強いって事に繋がるじゃない」


 ちょっと戦闘狂な部分が顔を出してしまった。周りの空気が冷えるのを感じてしまう。

 またやらかしてしまったか……と考えていると、


「運が良かった可能性は?」


 冷えた空気を物ともせず、素直に質問してきた藍色。こんな私にも話しかけてくるのか? と思う幽香。


 興味は強くなり、藍色との話が進む。部屋を移動したり、悪魔の妹本人に出会ったりしたが、常に意識は藍色にあった。話の途中に出た疑問も、最後はどうでもよくなってしまった。

 紅魔館の当主にすら態度を変えず、自分を壊しかけた悪魔にまた遊ぼうと言い、突然やってきた八雲をあしらった。


 最終的には幽香すらあしらい、なんだか背の高くなった宵闇の妖怪を連れて行ってしまった。

 流石に追いかけるような真似をするタイプではないので、幽香は太陽の畑に帰った。


 この日、幽香は久しく忘れていた思いを、誰にも聞かれない場所で静かに口にした。


「また会いたい」





 しかし、そんな事が叶う筈も無いと自己完結。実際、何日待ってもなかなか来ない。そりゃあ、来てくれなんて言った覚えは無い。

 何故期待してしまったのか? そもそも、何故来てほしいなんて思ったのだろうか。

本当に来てほしいなら本人に言えばいいのに。

 ああ、こんなのは私らしくない。もういい、どうせいつもの日々に戻るだけだ。

 そんな事を考え、ひまわり畑の奥に進む幽香。そして、気付いた。


「……藍色?」


 ひまわり畑の中ではよく目立つ、藍色と黒色を見つけた。


「う?」


 どうやら、藍色はひまわりに紛れて寝転がっていたらしい。


「あ、風見幽香」


 こっちの黒色はルーミアだ。以前見かけた時は気のせいと思ってたが、どうやら違うらしい。


「ここで何をしているの?」


 いつものパターン。大体の奴はここで怖がって去っていく。


「私は藍色についてきただけよ。藍色に聞いて」


「そう。で? どうなのよ」


 藍色に目を向け、問う。返事はなんとも予想外な物だった。


「お昼寝してた」


「昼寝……ですって?」


「うん」


 呆れた……

 幻想郷の危険地帯No.1を争うような場所で昼寝か。


「藍色、昼寝なんてしてないでしょ。確かに寝っ転がってはいるけど、睡眠はとってないじゃない」


「昼に寝転がるから昼寝」


 ふむ、面白い考えだ。


「そういう物なのかしら?」


「私はそう」


 幽香の質問に独自の考えから出された答えを返す藍色。


「……ふぅん」

 もう少し話してみたいかもしれない。幽香はある事を考え出し、実行に移す。


「ついて来なさい。お茶を用意させてもらうわ」


「貰えるなら遠慮なく頂くわ」


「頂きます」


 結構あっさり来てくれた。







「美味しい」


「そう?」


「人間以外で美味しいと感じたのも久し振りね〜」


「さらりと怖い事を言うな」


「あいたっ」


 ルーミアを叩く藍色。幽香はちょっと笑みがこぼれた。


「確率を操る、ねぇ。それは概念的な事も操れるの?」


「そう」


 一度カップの紅茶を口に含み、少ししてから説明を始めた。


「普通炎は熱い。けど、私が炎が冷たくなる確率を上げれば、私が対象とした炎は概念をねじ曲げられて冷たくなり、周りを凍らせるようになる」


「他には?」


「金属は硬いけど、同じく能力を使えば金属の分子や原子の法則は変わり、鉄という素材を保ったまま粘土のように軟らかくなる」


 過去に法則や理論を形作ってきた偉人達全員を鼻で笑う事の出来る能力だ。


「ちょっと混ざらせてもらうわね」


「どうぞ」


 今度はルーミアが話し出した。


「藍色の能力だけど、身体能力や目に見えない力でも関係なしなのよ。これは実体験なんだけど、私の強さという物を能力を使って上げて貰ったのよ」


 どこにしまっていたのか、以前のお札リボンの残骸をテーブルに置く。既に効力は無い。


「身体能力については、私の体全体の細胞の変化はゼロのまま、生み出される力が飛躍的に上昇した。妖力についてはそのまま量が倍以上になったし、それを完璧に制御可能ときたわよ」


「八雲の能力といい勝負じゃない」


「そうでもないわよ。藍色の能力は所詮確率なんだから、失敗もするし…………って藍色、どうしたの?」


 藍色がジト目をルーミアに向けているので、ルーミアが聞いた。幽香もちょっと気になったようで、黙って藍色を見つめる。


「ルーミアの方が喋ってる……」


「ぷっ」


「ちょ、笑わなくてもいいじゃないの! そこの花妖怪……」


「ご、ごめんなさ……くっくっ」


 笑いを堪える幽香だが……


「私の能力なのにね」


「あはっあははははっ!」


「もう! 藍色!?」


 堪えきれなかったらしい。結局盛大に笑ってしまった。それにつられてルーミアが頬を緩め、表情の出にくい藍色も雰囲気が和らいだ。

 やがて、落ち着いた幽香がのんびり話し出した。


「不思議ね。戦い以外でこんなに楽しんだ事なんて無いのに」


「そう」


「そうよ。そもそも、あなたみたいにフレンドリーに話しかけてきた妖怪がいないもの」


「妖精は話にならないものね」


 そもそも、まともな話になる妖精なんて居るのか?

 リリー……無理。春ですよーしか言わない、春しか出て来ない、思考回路も春。

 チルノ……無理。話は出来るが理解してくれない、あたい最強説依存、マルキュウ。

 大妖精……あ、居た。ただし、必ずチルノが参加して台無し、妖精にしては珍しく臆病者、すぐ逃げる。

 ……やはり、妖精相手に話は難しいかもしれない。


「友達少ないの?」


「胸が痛くなる言葉ね……」


 藍色も、少しは遠慮したらいいのだが……


「少ないというか、居ないわね」


「私は友達じゃないの?」


「え?」


「え?」


 藍色の予想の斜め上を行く質問に、思わず幽香は聞き返した。が、更に疑問を被せられてしまった。


「私達、友達になってたっけ……」


 幽香はルーミアに補足を求めるが、


「そんな感じの会話は今の所……」


 予想通りの答えだった。


「仲良く話せたら友達じゃないの?」


「藍色、それだけじゃただの知り合いよ」


「ふぅん」


 なんだか、藍色独自の考えがあったらしい。


「じゃあ、今から友達になる」


「……まあ、それなら友達になれる、のかしら?」


 やはりルーミアは微妙らしい。


「駄目?」


「……ん〜」


 見つめてくる藍色に困った顔を返す幽香。何かを閃いた。


「別に構わないのだけれど、条件があるわ」


「条件?」


 藍色の強さを見る事が出来るかもしれない、そして実に自分らしい一言だ。


「私と、一度戦って頂戴」


 藍色は、何の迷いも無く受けた。

 太陽の畑より、風見幽香の登場です。

 自分の中では幽香は、優しいのに周りが怖がってしまって中々距離が縮まらない。そんな悲しい人になってます。

 自分の戦闘狂な一面が悪い方向に向いてしまっている……みたいな?


 さて、次は幽香と交戦します。弾幕戦闘というより殴り合いですが。

 次で藍色のスペカが増える予定です。名前がどうなるかはお楽しみに。



 意見場所、流石にやるの早すぎたかと思う日々。中々人数が増えない…………ま、長いこと続けてたらたまるでしょう。遠慮しないで気軽に書いて下さいね~


 では!

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