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東方藍蓮花  作者: 空椿
105/114

藍色、恩義を染める

 咲夜と言う人物は忠誠心に溢れる。主の願いとあらば、例え火の中水の中。望まれるのなら死地に行く事すら戸惑う事は無い。

 出掛けると言うならその隣に立ち、日の光が当たらぬよう傘を差す。一暴れすると言うならその後ろに控え、無粋な輩を白刃をもって屠る。

 そこに、一切の心の乱れは無い。ただ主の最良の為、我が身の全てを主に捧げるのみ。あの日、あの人に仕えるようになった時から、咲夜と言う人物はずっとそうあってきた。


「咲夜」


「何でしょうか」


 本人は、死ぬまで変わらないつもりだった。


「浮かない顔をしてるのね」


「……そうですか?」


「……気付いてないのね」


 知らぬ存ぜぬは本人ばかり。咲夜と言う人物は本人が思った以上に、変わってきていた。







 彼女の主、レミリア=スカーレットは咲夜の事を既に把握していた。

 魔理沙が門を盛大に破壊しながら慌ただしくやってきて、軽く問答をしてからと言うものの、咲夜の表情は曇るばかりである。


「見てるこっちが気が滅入りそうよ」


「同感ね」


 その表情の意味も、原因も分かっている。

 レミリアは、魔理沙の件……つまり藍色の件にははっきりと「干渉しない」と伝えている事、咲夜もそれに同調した事。


「私はあの白黒には反対なのよね」


「別に貴女はそれで良いじゃない。貴女は」


 レミリアは藍色には静かに眠って貰いたいと思っている。別にそれは友情などから来る物ではなく、単純に彼女が眠い時に寝れない事の辛さが分かるから、と言うだけである。

 幻想郷に来てから昼型の生活になったレミリアだが、来た当初は時差ボケに悩まされていた。それを直す為に夜更かし……いや、朝更かしをしていたが、これがかなり堪えたのを強く記憶している。

 それからと言うものの、自身の睡眠を妨げられる事は嫌ってきたレミリア。その考えが藍色に及んだだけである。望んで起きているならまだしも、魔理沙の持ってきた話は単なる我が儘で寝かせない事と同じ。レミリアはそれを嫌がった。


「……昔は私の為に命を捨てる子だったわね」


「あの頃は命が軽かったわね。鳴りを潜めてくれて助かったけど」


 レミリアはやはり、魔理沙の申し出を断る。自分の考えは魔理沙と噛み合わないし、曲げるつもりも毛頭無い。ただ黙ってここで事の成り行きを見守るだけだ。そう突き放した。

 すると魔理沙は、今度は咲夜に来いと伝えた。何かと異変解決で競いあった中だ、知り合いと言う事で動いてくれないかと期待したのだろうか。それとも、近くに居たから矛先が向いたのか。

 とうの咲夜はそれに『いいえ』と即答。お嬢様が行かないのであれば、私が行く理由も無い。と付け加えるのを忘れず、言い切ったならば騒ぐ魔法使いを時を止めて門まで運んでしまう。やがて諦めて飛んでいった魔理沙をレミリアは知らない。


「あの子は固すぎるのよ。私に自分の全部を押し付けてくる位ね」


「固くしたのは貴女よ?」


「あら、そうかしら?」


 咲夜の現状が分かっていないのは、この館にいる面子では咲夜ただ一人。妖精メイドにすら見抜かれる、普段からしてみれば考えられない言う体たらくで、そんな妖精達に気付かない時点で重症であろう。

 そんな咲夜をどうしてやるのがベストなのか。主とその親友は普段のように並び立ち、菓子や茶をたしなみながら話し合うのであった。

 ……ちなみに、咲夜本人は人里に買い出しに向かっている。ここに現れる理由は無い。


「代わりに貴女が柔軟になるって言うのはどうかしら」


「どうすれば柔軟になるの?」


「咲夜の望んでいるであろう事を成し遂げる為に行動するとか」


「それは厳しいわ」


 決してレミリアが堅物と言う訳ではなく。


「咲夜の望む事って言うのは、つまり私。私に従う事があの子の本望なのよ?」


「そうね。でも今回に限っては、心の奥底は貴女と違う意見なのよ?」


「なら、あの子の意見に合わせろと? 無理よ。一度も本心を話してないから、確りと目的の方向に進めるかどうか、不確定要素が大きいわ」


 まぁ、命令すれば咲夜はそれを一文字も余すこと無く喋るだろうが。

 しかし。


「私は咲夜の口から全部を聞きたいのよ」


 子供の我が儘と同レベルの発言であると思いつつ、それでもレミリアはそれを言った。


「何をどうして、どうしたいのか。私は咲夜に我が儘を言ってほしい」


「中々どうして。それが上手く行くと思うなら、貴女はまだ子供よ」


「それで結構。じゃ、作戦会議よ」


「は?」


 間の抜けたような疑問の声がパチュリーから上がる。


「咲夜に我が儘を言わせる作戦よ」


「……ああ、やっぱり貴女はどこかずれてるのね」


 溜め息の絶えない大図書館であった。







 紅魔館だけではなく、人里でも咲夜の振る舞いは異常に見えていた。

 例えば、普段からしてみれば考えられない程おどおどとしていたり、意味無く周りを見渡したりしている。そんな咲夜を訝しげに見ている人里の人間はかなり多く、それに咲夜が気付いていない。

 もう周りからしてみれば、どこか様子がおかしいのは明白なのだ。これでは妖精にすら察されかねない。


 しかし、何を悩んでいるのかは分からない。多くの人間は咲夜とその周辺には接点が無いので、その心中を察する事は出来ないのだ。

 また、咲夜本人が悩んでいる事を自覚していない故、結局は迷宮入りとなってしまっている。


「さて、と」


 そんな渦中の人物は呑気に買い物である。ちなみに、今日は何を作る予定なのか?

 手に持つ籠にある材料に野菜類が多目に入っているものの、きのこや豆腐、肉類も散見出来る事から、今日の料理は鍋である可能性が高い。

 何故だかいつもよりチラチラ見てくる八百屋の親父さんを何事かと気にしつつも、購入した物を籠に投入していく。


「こんな所かしら」


 やがて必要な物は揃ったので、そろそろ帰路に……と思った咲夜だが、ふと見掛けた人影に見覚えがあり、世間話のつもりで話し掛ける。


「慧音さん?」


「ん? おお、咲夜じゃないか。今日は妙に豪華じゃないか」


「えぇ、まぁ。お嬢様が「今日は少し多目に食べたい」と仰られましたので、鍋ならご満足頂けるかと」


「うむ。それなら大丈夫だろうな」


 ははは、と笑ってみせる慧音に、此方も笑顔を見せて他愛もない話を始める。

 慧音の方は最近開店した駄菓子屋をいたく気に入ったようで、週に二回ほど通っているらしい。砂糖菓子と言うらしいそれは咲夜には馴染みが無かったが、慧音にお裾分けしてもらったそれは実にカラフルで、更に不思議な味わいをしていた。

 レミリアも気に入るかもしれない、と頭の中で立てている買い物の予定に砂糖菓子をプラスする。


 どうなやら慧音以外にも、一部妖怪や珍しい人物が顔を出しているらしく、咲夜にとっての知り合いも時々見掛けるとか。


「え、チルノも居たのですか?」


「ああ。いつもの面子でお金を出しあって、分けて食べているのを見掛けたよ」


「へぇ……」


 どうやら、開店してすぐだと言うのに好評のようだ。天狗の新聞辺りで広告でも出したのだろうか? 聞いてみると。


「そうだな、私が宣伝したよ」


「……貴女が直々に?」


「真新しい物を人里に取り入れたくてな。紫もこんな変化程度ならむしろ歓迎してくれるんじゃないかな」


 最近は娯楽もやや飽きがきているのか、活気が減ってきているのをどうにか出来ないかと考えていた所に現れた甘味は、活気を取り戻すのに一躍買ってくれるんじゃないかと考えた。

 実際自分も好みな味であったし、丁度良いと言う考えも後押しして広めたそうだ。


「意外ね。結構しっかり考えてたなんて」


「どういう意味だそれは」


 ニコリと……しかし愛想の無さげな笑みが張り付く。顔に影が射しているようにも見えなくはない。


「いや、人里を守る立場とは知ってるけど、人里全体に何かを働き掛ける事はしてない風に思ってたから……」


「……ん? ああ、確かにした覚えは無いな」


 どうも考え無し、と言うレッテルを貼られたかと思ったらしい。危うく頭突きの対象になる所であった。


「急にそんな事始めるなんて、どうしたのかしら」


「なに、私も少しは変わってみようかなと思っただけだよ」


「変わる、ねぇ」


 咲夜から見て慧音は、特に何かが変わったようには見えないのだが。


「何か心境の変化でもあったの?」


「変化……か」


 顎に手を当て、何かを思案する慧音は暫く百面相のように表情を変え、やがて何か納得したような笑みで咲夜に返事を返す。


「里の皆がな、皆何かを始めるんだ」


「……へ?」


 何だかちょっと論点がずれている気もする返事ではあるが。


「あそこに居る彼は魚釣りをし始めたし、アイツは真面目に勉学を始めた。私の不人気な授業もよく聞いてくれるよ」


「……えっ? それがどうしたのよ」


「まぁ聞け」


 手で制す。


「中々無茶な事をし始める奴も居たよ。妖怪と友達になってやろうとか、魔法の森で一山当てるとか。流石にコイツらは皆で止めたがなぁ」


「ちょっと、突拍子も無いって程じゃ無いわよ」


「そうだな。普通の考えならまず不可能であると分かる事だ」


 それを語る慧音の顔は呆れているより、笑っている。


「だが私は、これは良い変化だと思っている」


 ……どういう事だ。と、これでもかとひきつった咲夜の顔が語っている。確かにそのまま受け取ると訳がわからないのだが……


「形や手段はどうあれ、皆はそれが『可能である』と口々に言うんだ。確かに難しいし、上手く行く保証は無いが…………挑戦すると言う気持ちが、皆に芽生え始めている事が素直に嬉しい」


「……何で、そんなに一斉に?」


「アイツだよ。厄介事と頭痛の種が服を着て歩いているような、あの妖怪さ」


 それを言った慧音はニヤリと笑う。

 直接名前を出された訳ではない……が、咲夜はすぐに一人、思い当たる人物が居た。

 それは紅魔館に、大き過ぎる影響を与えた存在だ。忘れたりする事は無い。


「あの妖怪の存在が、『不可能は無い』と言い切っているからな」


 そう言えば、彼女は常日頃言っていた。『0%は無い』と。周りの反応を問うてみても、結構ムキになりつつもそれを言うそうな。

 実際、確率を操る彼女に確実の二文字は存在しなかった。本人の天運の悪さも相まって以外とよく失敗やハズレを引き当てていたし……


「文々。新聞はよくあの妖怪の事を取り上げていてな。里ではそれなりに読まれる新聞だから、すぐに広まったよ。同時に皆、大なり小なり惹かれたんだ」


 どれだけ慣れや安心があろうが、失敗する事もある。弘法も筆の誤りと言う言葉もあるし、物事に確実など無い。

 そして、逆に到底不可能と思える事が、彼女が与えた影響で『出来ない事は無い』と言う気持ちに置き換わる。

 次第に皆は、挑戦する心を思い出した。何でもやってみよう、駄目で元々だ。そうやって今まで諦めた事や、やらなかった事を始めるようになっていった。


「ならば、私もそれを受け入れて行くべきだろうと思う。あの妖怪が与えてくれた機会を、大きく活かせるように計らうのが、里の守護者たる私の役目だと思うんだ」


 そう咲夜に言って見せた顔は実に晴れ晴れとしていて。

 咲夜は何と言うか……


「妬けるわね」


 ただ、羨ましかった。そうやって、自分自身の意思で何かを始めてみると言う事に。

 レミリア=スカーレットの従者としては失格なのかもしれない。あの人の前に私の意思は必要無く、ただ主の言葉を叶える為の存在であれば良かったのだから。


「なら、お前も何かを始めてみればどうだ」


「……私が?」


「よぉく考えろ。きっと、何かやるべき事が見付かるだろう」


 咲夜の肩に手を置いて、ではな。と言って慧音は去る。


「……やるべき事ねぇ」


 そんな事急に言われてもなぁ。と言う気分の咲夜。周りから見れば『絶対あるだろう』と言われる程落ち着きの無い咲夜だが、本人は皆が思っている以上に鈍感であった。

 これがレミリアの事なら誰よりも勘が良いのだが……

 一先ず、今すべき事と言えば。


「……取り敢えず、帰りましょう」


 帰って鍋の仕度をする、これだけだろう。







 普段通り時を止めて紅魔館まで戻ってきた咲夜は、門の前で踊るような動きをしている門番を発見する。

 『型』と呼ばれる行動とは本人から聞いたが、武術に関するたしなみに縁がない咲夜にはその重要性があまり分からなかった。いつ如何なる状況も、時を止めてしまえば大丈夫なのだし。


「あ、お帰りなさい」


 声をかける前に声が届く。周囲の『気』に敏感な美鈴だから、こんな事も朝飯前なのだろう。

 事実として、彼女も門番としてずっと立ったままと言う訳ではなく、時々こうやって型をしたり自主トレに励んだり、挙げ句ポカポカ陽気につられて寝ている時すらある。

 ……そんな事をしても侵入者や来客にしっかり応対するからこそ、門番らしかぬ自由が許されているのだろうが。


「ただいま。今日の晩は鍋にするから、貴女も食べに戻ってらっしゃい」


「良いんですか?」


「皆で食べた方が美味しくなる料理だから、ね」


 小さくウインクなどしてみる。珍しい行動に小さく笑われたが、まぁ、良い。


「じゃあ、私は」


「ああ、その前に咲夜さん」


 ……はて?


「ん、何かしら」


「一つ二つ、言っていこうかと……私の余計なお節介ですけど」


 ……そう言って型を取り止め、此方に向き直る。常に笑顔を絶やさない門番で、今回もそう……なのに、雰囲気だけは普段より真剣だ。


「貴女のお節介が役に立たなかった事は無いのだけどね」


「それは実に有り難いですねー」


「流石『気を使う程度の能力』かしら?」


「あの、その『気を使う』では無いんですけど」


 呆れの目線が帰ってくるが、咲夜は構わずクスクスと笑っていた。


「で、何かしら?」


「ああ、そうですね。何と言うか……」


 言葉に多少つまったか、十を数える手前位でやっと言葉を繕う。


「『らしくない』ですね」


「…………『らしくない』?」


 そうやって選んだ言葉は、咲夜にはちょっと不快感のある物だった。


「いや、咲夜を悪く言っているつもりは無いんですよ? ただ、何と無くいつもと違うと言う意味でですね」


「……そうかしら?」


「私の主観ですけどね」


「ふーん」


 そんなつもりは無い。分かってはいるが、それでもやっぱり機嫌は落ち込んでしまう。これでも色々考えたのだろうが……


「それで、一体私の何がらしくないのかしら?」


「んー、凄く個人的な目線ですけど言いますね」


 そう言った美鈴の眼は、何故かいつもより鋭く見えた。狐のように細められた門番のこの眼差しを、隣に並び立つ事の多い咲夜はよく知っている。

 本来実力者とは言えないこの門番が自分より強い相手と戦う時や、絶対に失敗出来ない時等に、相手や周囲の一挙一動を完璧に見切るつもりの時に決まってする目だ。

 特に苦手な弾幕ごっこで勝利を掴もうとした時や、最近では暇になったレミリアの死合いの申込みの時によくなる。変な所だとチルノに対してお姉さん肌を見せたいのかは知らないが、彼女との様々な勝負でもよくなる。ともかく、美鈴にとって真剣勝負のような時にする。


 ……と言う事は分かるのだが、はて。何をそれほど真剣になる必要があるのか? 何かあっただろうか。

 咲夜はやはり自分に鈍感だった。


「咲夜さんって、かなり完璧主義者に見えるんですよ」


「はぁ」


「やる事は全部やって、やりたい事も早々に終わらせるし、気遣いとかも私以上に上手いじゃないですか」


「お嬢様の従者としては当然の事だもの」


「でもですよ?」


 肯定から一転、否定の意見を美鈴は続ける。


「今は違うように見えてるんですよ。何か大事な物を取り残してるように」


「……大事な物? 何かしら」


「さあ、そこまでは計れません」


 どうせ、計っても言わないつもりだろう。咲夜にしてみれば決まって一部を、美鈴にしてみれば大事な部分を意図的にぼかしている。その一点は自分で気付くべきだ、と暗に美鈴は言う。


「咲夜さんの事ですから大方、お嬢様を優先しすぎて自分を殺しているせいだと思うんですよ」


「「当たり前だ」」


「……って言うと思いましたよ。もう」


 ズバリと言い当てられて、少し赤面してしまう。


「別にお嬢様の為、とかそれを否定する気は毛頭無いんですよ。咲夜さんの気遣いは確かに役に立っているんですし」


 美鈴は、既に咲夜の心中を理解している。家族も同然だし、気に関しては特に優れている美鈴に、この程度の事を察する事は造作もない。


「でもずっと気を張り続けて、自分を省みていない。それじゃあ駄目ですよ」


 咲夜の身体をくるりと半回転させ、背中をぽんぽん叩く。


「忘れないで下さいね。貴女はお嬢様のメイドと言う前に、一人の人間なのだ……と言う事を」


 咲夜の返事は、敢えて待たず。その背中を軽く押して、自分は背を向けて型の続きに戻った。


「美鈴」


「はいはーい?」


 お互いが背を向けていると言うのに、二人は相手の顔が容易に想像できた。


「生意気」


 咲夜は呆れたような笑顔で、


「ありがとう御座いますー」


 美鈴は歯を見せて笑っていた。







 変わるのは難しい。

 何か切欠が無いと変わろうと言う気も起こらないし、そもそも切欠すら何処にあるのか分からない。

 人は変化を嫌う。現状維持を至上とし、変わらぬ日常に満足している。その癖、特別な出来事や変化を求める矛盾した生き物でもある。


 私はどうだったのだろう。少なくとも、お嬢様さえ良ければ私も良かった。お嬢様が喜ぶのであれば他に何も要らなかった。

 変化など考えもしなかった。何処かの白黒魔法使いが騒ぎを起こしていったり、異変を解決してみたり。切欠になる物は何度もあったのに、それを深く考えもしなかった。お嬢様、お嬢様と尻尾を振っていれれば幸せだった。


 私は死ぬまで人間だ、とまで言ったのに。あの時蓬莱人といざこざを起こした時、お嬢様に確かに、そう言ったのに。

 心の何処かは既に人間として枯れていたのだろう。


「咲夜!」


 気付かされた。思い出させられた。痛感した。

 私は今までただの『犬』だった事に。


「あー、えっと……その……ね? 貴女の主からの命令……を……」


「貴女、こう言う時だけ堂々と出来ないのね」


「うううううるさいわねパチェ! 私だって、その、色々考えてねぇ!?」


「はいはい。自分のプライドを大事にし過ぎたツケだと思いなさい」


 もう違えない。私は人として生き返る。

 気付かせてくれた人里の面々に。

 犬だった私を殺してくれた真の友に。


「主からの命令よ? 我が儘を言いなさいって」


「ちょ、ちょっと!」


「貴女だけに任せると日が暮れるもの」


 きっと、これからゆっくりと変わり行く私を受け入れてくれるであろう、家族達に。


「……ふふっ」


「あーっ!? 笑ったわね! 笑ったわね咲夜! よりにもよって私をぉ!」


「はい、すみません」


 …………そして。


「では、生涯ただ一つの我が儘を」


 切欠をくれた、脳裏に浮かぶ藍染の妖怪に。


「なら、それに従いましょう。私達は貴女を尊重するから」


 自分勝手な恩返し。

 しっかり受けて頂きます。







「悪魔は契約を違えない。藍色の件は干渉しない、そう言った私はそれを守る」


 その夜、紅魔館は静かになる。


「……でも、家族の為の『お手伝い』をしている時に向こうが干渉してきたなら?」


「そう、レミィ。貴女は悪魔らしくひねくれなさい」


「ああ、楽しみよ。魔理沙はどんな顔をするかしら」


 全ては家族の為に。


「ええ、多分……」




「『レミリア!? 何でお前がここに居るんだ!』かと」


「……咲夜、似てない」


「あら、失礼」


 そして、家族は友の為に。


 恩義の主従組……ですかね。

 あ、空椿です。


 多分、高速だと咲夜がナイフばら蒔きの広範囲ショットをします。前方にやや多目で、中心から離れる程に密度が下がる感じの撒き方をします。

 低速はレミリアで、敵をやや追尾するコウモリ弾幕を放ちます。威力は高いですがコウモリの速度はやや控え目。ボス戦なら力を発揮できると思います。


 今回着いてくるパチュリーは咲夜の後方を着いてくる感じなので画面には出ません。代わりに賢者の石を咲夜の周辺に浮かべておき、一定範囲内に敵が入ると自動迎撃する感じです。ステージボスとかに密着するとレミリアと合わせて鬼に金棒かと。




 まぁ、例によって本編に何の関係もありませんが。

 こんな妄想位は許されても良い筈……




 最近更新出来てなかったりと色々ご迷惑をおかけします。

 雨が多くてネガディブーな感じになってたりもしますが、蝸牛のスピードでも完結まで行きたいと思います。

 ……これ、いつも言ってるな私。

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