第六話 作戦実行
すみません。
一週間以上間が開いてしまいました。
だんだん、更新が遅れてきています。。。
「ね、ねえ」
台所に立っていた母に、ためらいがちに声をかける。
「何?」
振り向きもせずに、母は答えた。
「さっきの女の子の事なんだけど、家でしばらく預かる事になったから」
「ふうん、そうなの」
しばらく、沈黙が続いた。
トントン、と包丁がまな板を叩く音だけが聞こえる。
――作戦成功、と思っていいのか?
先ほど、彼女が考えた作戦は、
『お母さんが料理に集中している時に、言っちゃえ!』
という、単純な作戦だった。
本当にこれでいいのだろうか。
本当に母に伝わっているのだろうか。
多少の不安を抱えつつも、俺は自分の部屋へと戻った。
「言ってきたよ。ちゃんと聞いてたかは分からないけど」
部屋で待機していた彼女に、結果を報告する。
「ありがとう。でもこれであたしがこの家に居てもおかしくないよね」
「多分ね」
俺は、言葉を濁した。
日本人は『曖昧』が好きなんだなあ。そして俺は日本人なんだなあ。
なんて本気で考えてしまった。
「ご飯よ降りてらっしゃい」
母の声が俺の部屋に届いたのは、七時を少し超えた時だった。
「はーい」
母に聞こえるような大きな声で返事をした。
勉強机の上を片付け、パチンと電気スタンドのスイッチを切る。
よし、これでオッケー、と立ち上がり、後ろを向いた時。
彼女が俺のベッドで眠っているのが目に入った。
「おい、お前。人のベッドで勝手に寝るな」
そう言って叩き起こそうと、俺は彼女に近づいた。
長めのまつげ。ぷっくらと膨らんだ唇。雪を連想させる、白い肌。
細くて、すぐに折れてしまいそうな手足。
そして、ほどよい大きさのバスト。
かわいい。
不覚にもそう思ってしまった俺が居た。
義理だとはいえ、兄妹なのだ。こんな感情を持ってはいけない。
――頭では分かっている。けれど、男である俺には制御しがたい欲求が襲ってきた。
こいつの唇を奪ってしまいたい。いや、唇じゃなくて、ほっぺでもいい。
俺は、感情にまかせ、彼女の頬に近づいた。
その時だった。
「ふああ。よく寝た。あれ? 何でお兄ちゃんの顔がこんなに近くにあるの?」
ドキッ。慌てて上体を起こす。心臓が飛び出しそうだ。どうしよう。どう言い訳しよう。
重い沈黙。数秒間が、永遠に感じられた。
「……ご飯だよ」
上手く誤魔化せたか自信は無い。彼女に背を向け、足早に部屋を出た。
「待って。さっきの質問に答えてもらってないよ」
彼女に追いつかれまいと、俺は必死に階段を駆け下りた。
さっきの事は早く忘れてしまおう、と思えば思うほど、変な感情が入り込む。
未来から来た自分の妹を好きになるなんて、笑い話ではすまない。そんな事は分かっている。でも、彼女の寝顔を見たときに感じたあのドキドキは、なかなか消えてくれなかった。
ああ。一体何がしたいんだろう、俺は。
俺は、大きな溜め息を一つついた。
読んで下さって有り難うございました。
私もなるべく、早く更新できるように、努めたいと思います。