第二話 後悔先に立たず
あの後俺は彼女を家に上げた。外での立ち話もなんだからという事と、ご近所さんの視線が痛いと言う事でだ。
まあ、本当のところ、後者の理由の方が大きいのだが。
この時は、まだ彼女の本性が分からなかったから、こんな事をしたのだろう。
とにかく、この間違った判断によって、俺は後で後悔する羽目になるのだった。
彼女を居間に通し、コップを二つ、テーブルに並べる。
「リクエストは?」
「ジュース」
ったく。こいつには遠慮の『エ』の字もないのか。
そんな事を考えながらも、俺は冷蔵庫からオレンジジュースを取り出す。そして、それをコップにトポトポと注いだ。
「それでさ、あんた一体何者なの?」
彼女の前にコップを置きながら、俺は聞く。
「だからあ、あんたの妹だって言ってるでしょ!」
さっきまでとはうってかわり、大きな態度だ。
そっちがそう来るならこっちも、と俺は立ち上がる。
「だからね、もっと詳しく説明してって言ってんの!」
「それで?」
「はあ?」
何を要求してるんだ、こいつは。
「それで? 何か言う事ないの?」
彼女は怪しい笑みを浮かべる。
「『お願いします。工美様』と言えばいいのよ」
くそっ。こいつ何考えてるんだ。
「嫌だね」
「ふうん。じゃあ聞かなくていいのね。惜しいわね。この話を聞かないなんて」
ううっ。言いたくない。けど、聞きたい。言いたくはないけど聞きたい。
結局、勝負は、好奇心の勝利に終わった。
俺は感情を込めずに言った。
「お願いします。工美様」
「駄目よ、そんなんじゃ。もっと感情込めて。あ、どうせだったら土下座付きの方がいいわね」
カチンときた。でも、俺は、どうしても聞きたいという気持ちに勝てなかった。どうせ俺は好奇心旺盛のガキさ。
床に平伏し、言葉に抑揚をつける。
「お願いします。工美様」
その肩は、怒りで震えていただろう。
プライドがズタズタに傷つけられた。こう見えても俺はプライドが高い人間なんだぞ。
それなのに、彼女は愉快そうに笑う。
「うふふ。一度年上の人にこういう事されてみたかったのよね。ああ、いい気持ち」
一瞬、台所から包丁を持ってくる事を本気で考えた。
カナリムカツク。
この時の俺には、『怒り』という感情しかなかった。
こいつを家に上げた事の後悔。
こいつに負けた悔しさ。
そういった全ての感情が、怒りへと変わる。
もしこの時、母が買い物から帰って来なかったら、俺は犯罪者となっていたかもしれない。
『とんでもないものを拾ってしまった』
怒りでオーバーヒートした頭で辛うじて考えられたのは、それだけだった。
すみませんっ。今回、コメディーではなく、シリアスになってしまいました。
この小説はノリで作ってしまったので、私自身も、ストーリーがどうなるか分かりません(汗
こんな駄目なorangeですが、宜しくお願いします。
また、感想、評価、いつでもお待ちしております。