第十四話 母さんと彼女2
俺は頭を抱え込んだ。
本棚からは本がこぼれ落ち、勉強机に乗せてあった筆記用具は床に、無様に転がっている。床には本、文房具のみならず、紙くずや食べかすなど、色々な物が散乱していた。それに、六年前のクッキーの箱は原型をとどめず、平たく潰れている。
「お前らなあ。どうやったらこんなに汚く出来るんだよ!」
目の前には、子供みたいに小さくなってる二人。
「お兄ちゃん。ごめんなさい」
「ごめんね。お母さん、はしゃぎすぎちゃったみたい」
お? あのお二人さんにしちゃあ、すんなり謝るじゃないか。
「だから、部屋掃除だけは勘弁して」
……わざわざ目配せまでしてハモんなくて良し!
「冗談じゃない。母さんと工美が汚したんだろ? それを何で俺が片付けなきゃならないんだよ!」
俺は腕組をして、タンタンタン、と足でリズムを刻む。
「あ。お兄ちゃんも踊りたいんだね」
彼女の目は、やっぱりねと言っていた。
「何でそうなるんだよ! 俺は怒ってるの」
タンタンタンタン。さっきよりも強く、床を叩く。
「分かったわ。掃除すればいいんでしょ」
母さんが諦めたように言った。
「ほら、工美も手伝うのよ」
彼女の顔がみるみるうちに曇っていく。
「えーっ。何でよ。あたしは『掃除します』なんて一言も言ってないよ。だからお母さん一人で片付けてよ」
訳の分からない理屈をこねている。
そこは母だ。何かビシッと言ってくれるに違いない。俺は密かに期待した。が――次の瞬間、母の口から出てきた言葉に俺は、言葉を失った。
「そうね。工美はまだ降参してないもんね。私一人で片付けるわ」
えーーーーーっ!! マジッスカ。
ちょっと、母さんってば。溜め息つきながら片付けるんだったら、彼女を説得しようよ。
彼女もさ、『勝った!』みたいな満足げな笑み浮かべてるんだったら、手伝おうよ。
どういう力関係が出来上がってるんだろうか。
これから聞かなくてはならない事が、また一つ増えた。
短い……。頑張ってこれかよ!って感じですが。
今年もorangeをどうぞよろしくお願いします。
m(__)m