第十一話 絶叫
更新が遅れてしまい、すみませんでした。
「腹減った……」
俺は、床に突っ伏していた。
「おなか減ったよお!」
彼女は、叫んでいた。
こうなるのも、無理は無い。
なぜならば、俺たちは、昨夜の夕食を抜かれたばかりか、今日の朝食にもありつけなかったのだから。
「腹減った……」
もう一度呟いてみる。
「ねー、お兄ちゃん。なんか食べ物持ってないの?」
彼女が俺に言った。
ん? 待てよ。確か、この辺に隠し持っていたおやつがあるはず。
そう思い、机の下をゴソゴソやっていると、案の定、クッキーが一箱あった。
「あった!」
俺は思わず叫んでしまう。
「え? どれどれ?」
彼女が寄ってくる。
「ねえ、どうしてお兄ちゃんが、こんな物持ってるの?」
「どうして持ってるのかって? それはだなあ」
……あれ? 何で俺、クッキーなんて持ってるんだっけ?
「えーと……。忘れた!」
「もう。お兄ちゃんの忘れんぼ。まあ、それは置いといて、早く食べよっ!」
「うん」
そう言って、箱に手をかける。その時、ふと目に入ったのは、賞味期限だった。
『2000・5・26』
確かにそう書いてある。
「……工美。今年って何年だっけ」
俺は恐る恐る聞いた。
「えっとぉ。2006年だよ」
彼女はカレンダーを見ながら、答える。
「このクッキー、やるよ」
「え? 本当にいいの?!」
彼女が、目をキラキラさせながら、言った。
「ほらよ」
俺は、彼女の眩しさに目を細めながら、箱を投げる。
パシッ。
「ナイスキャッチ」
俺が言ってやると、彼女は照れくさそうに、頭を掻いた。
「いっただっきまーす!」
そう言って、彼女も箱に手をかけるが、その手は一瞬にして凍りついた。
彼女の視線から見て、恐らく賞味期限を見ているのだろう。
「2000年って、六年前じゃん……」
彼女は溜め息混じりにそう言った。
「お前なら食えるんじゃね?」
軽はずみに、そう言ったのが間違っていた。
「はぁ? 今、何つった?」
――彼女が豹変した。
さっきまでのお前はどこに行ったんだよ! そう突っ込みを入れたくなるくらい。
「なんで、あたしが食えると思うの? だって、六年前のだよ。六年前!」
彼女、何であんなにむきになってるんだろ。俺には、全然分からない。
「あー。なんかイライラするなあ、もうっ」
彼女がいきなり俺の上に乗っかった。
――しかもそれは、彼女が湿布を貼ってくれた場所な訳で。
だから当然、
「ギャー!」
痛い訳で。
「何すんだよ!」
俺が怒ると、彼女は、
「うるさいっ」
と、怒鳴り返してきた。
「ビタミン足りてませんねえ」
俺は、大きな溜め息をついた。
「家庭科で、習わなかったか?」
「……じゃあ、ビタミンちょうだい」
彼女の声量が急に落ちた。
「はあ? それがあったら、苦労しねーんだよ」
「それじゃあ、しょうがないね」
彼女は深呼吸をした。一体何を始めるつもりだ? こいつは。
「いざ勝負っ!」
はあ?! どうしてそうなるんだよ!
そう言い返そうとしたが、無理だった。
「ウギャーッ!」
背中に走る激痛。
「お兄ちゃんのバカァ!」
彼女の叫び声。
ちらりと彼女の顔を見ると、涙が頬を伝っていた。
女ってよく分からん。
俺は痛みに絶叫しながらも、そう思った。
「はあ、はあ」
彼女は数分で、もう息が上がっている。
「疲れたんだったら、そろそろ終わりにしてくれ……」
俺は、背中を擦りながら言った。
「くう。もっとおなか減ったよお」
「バカ。だからあの時、やめときゃよかったのに」
その時、ドタドタと階段を上がってくる音がした。
――母さんだ。
乱暴にドアが開く。
この時俺は直感した。
『ああ。昼食にもありつけないんだなあ』
と。
前回、変な方に逸れてしまったのは、なんとか修正できたので、よかったです。
これからは、きちんとコメディーになるように、努力します。