第97話「門の軋み」
GENESIS地下最深部
ソウヤたちは崩壊した通路を駆け抜けていた。
施設全体が悲鳴を上げるように軋み、天井からは絶え間なく瓦礫が降り注ぐ。
「タジ!」
ソウヤが叫ぶ。
「あとどれくらいだ!」
タジは脳へ直接接続した端末から流れ込む情報を必死に整理する。
「あと二百メートル……!」
「でも、その先のデータが消えてる!」
「消えてる?」
「違う……読めないんだ!」
Invaderでも侵入できない領域。
それは初めてだった。
タジの額から汗が流れる。
「何かがシステムそのものを書き換えてる……!」
千太の表情も険しい。
「未来もそこだけ見えない。」
「黒い霧みたいに……全部途切れてる。」
マダラが前へ出る。
「なら進むしかない。」
誰も異論はなかった。
東京湾。
イーゼルが前方で砲撃を続ける。
「右舷、敵高速機接近!」
ベルソルトが即座に指示を飛ばす。
「迎撃砲一斉射!」
ズドドドドドドッ!!
高速機が次々と爆散する。
だが、その残骸を突き抜けるように新たなAz兵器が現れた。
ベルトがレーダーを見る。
「まだこんな数が……!」
フランは静かだった。
「数は問題じゃない。」
「問題は時間だ。」
その言葉に艦橋の空気が張り詰める。
グランと間宮
間宮は血を吐きながら笑っていた。
「あなたも感じていますよね。」
「……。」
「世界の境界が軋んでいる。」
グランは答えない。
代わりに拳を握る。
「興味はない。」
「私は目の前の敵を倒す。」
ドォォォン!!
拳が炸裂する。
間宮は障壁を展開するが、砕け散る。
海面へ叩き付けられながらも笑みは消えない。
「だからこそ面白い。」
「あなたは最後まで変わらない。」
第七収容区画
燕はセツナの肩を支えていた。
「歩けますか?」
「……うん。」
まだ完全には回復していない。
だが、その瞳には確かな意志が戻っていた。
柚季が笑う。
「これでやっと本当に助けられたね。」
セツナは燕を見つめる。
「ごめんね。」
燕は首を振った。
「帰ったらいっぱい説教します。」
「……ふふ。」
姉妹がようやく笑い合う。
その空気を壊すように施設全体が激しく揺れた。
ゴゴゴゴゴゴ……
フランから通信が入る。
『地下構造が限界だ。』
『急げ。』
イレイダが刀を握る。
「出口まで私が道を作る!」
名取家地下祭壇
巨大な石板に刻まれた文字が、さらに光を放つ。
夢幻が低く呟く。
「封印が弱まっています。」
刹那は刀を構えたまま祭壇を見据える。
「惣一様。」
惣一は静かに石板へ手を置く。
「まだ開かせない。」
iddhi-vidha-ñāṇa (神足通)
空間そのものへ力を流し込む。
石板の輝きが一瞬だけ弱まった。
しかし。
ピシッ……
一本の亀裂。
惣一の表情が初めて僅かに変わる。
「……早い。」
異空間
七人は依然として円卓の前にいた。
静寂。
その沈黙を破ったのは、破壊の神格者・ペルムだった。
「現世は面白くなってきた。」
誰も返事をしない。
再生の神格者・ゲヴォンが静かに目を閉じる。
「まだ早い。」
全界の支配者・ゼゥテルが僅かに笑う。
「だが門は開き始めた。」
黄泉の統治者・ネフィ。
顕世の統治者・シェフィル。
博愛の慈愛者・マコン。
生命の神治者・マオン。
七人全員が同じ方向を見つめていた。
その先には現世。
そして。
デウス。
ゲヴォンが小さく呟く。
「使徒はまだ耐えている。」
ペルムが立ち上がる。
「ならば、迎えに行くか?」
「まだだ。」
ゼゥテルの一言で空気が止まる。
「彼ら自身が門を開く。」
「我らはその時に行けばよい。」
再びの静寂
だが異空間の空は、ゆっくりと音を立て始めていた。
ゴォォォ……
見えない天井に、巨大な光の亀裂。
七人は誰一人驚かない。
その亀裂を見上げるだけだった。
そして誰ともなく呟く。
「もう間もなくだ。」
現世では誰も知らない。
この音が――
歴代最強の能力者集団『覇者の集い』が現世へ降り立つ前兆であることを。
第97話 完




