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Psycer Brain ─ 神に抗え。その力で運命を変えろ─  作者: n217 (嘯江 新)


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第90話「オールドマン④」

ドゴォォォォォン――――ッ!!


GENESIS全体を揺るがす轟音。

天井を支えていた鉄骨が悲鳴を上げ、大量のコンクリート片が降り注ぐ。

「きゃっ!」

結衣が咄嗟に避難していた能力者たちを庇う。

燕もセツナを抱き寄せ、落下する瓦礫から守った。

イレイダは崩れ落ちる天井を見上げ、小さく舌打ちする。

「……外も派手にやってるな。」

オールドマンだけは微動だにしない。

まるで、この崩壊すら計算の内だと言わんばかりだった。

「施設の限界です。」

「あなた方が暴れすぎました。」

イレイダは鼻で笑う。

「違うな。」

刀を肩へ担ぐ。

「お前らが好き勝手しすぎたツケだ。」

オールドマンは否定もしない。

肯定もしない。

ただ静かに右手を上げた。

その瞬間。

ガコン――。

通路奥の巨大隔壁がゆっくり開き始める。

全員がそちらを見る。

燕が息を呑んだ。

「まだ……?」

さらに防衛兵器が現れるのか。

そう思った次の瞬間。

中から姿を現したのは兵器ではなかった。

巨大な円柱状のカプセル。

その数は十。

二十。

いや、それ以上。

無数に並んでいる。

内部には人影。

能力者たちだった。

結衣の表情が変わる。

「まだ……こんなに……。」

ネリクマも黙ってカプセルを見つめる。

「閉じ込められてる。」

オールドマンが振り返る。

「能力とは、人類の進化。」

「そして進化には犠牲が必要です。」

「ふざけるな!」

燕が叫ぶ。

「姉さんだけじゃなかった……!」

「こんなにたくさん……!」

オールドマンは静かに答える。

「彼らは選ばれた存在です。」

「能力の可能性を最大限まで引き出す。」

「そのための礎。」

結衣が涙を浮かべる。

「そんなの……。」

「誰も望んでない……!」

その言葉を聞いたオールドマンは、ほんのわずかに視線を動かした。

「望む必要はありません。」

「結果だけが重要です。」

イレイダの殺気が一段階増した。

「……もういい。」

刀を握る音が響く。

「お前とは一生分かり合えねぇ。」

一歩踏み込む。

床が砕ける。

「だから。」

イレイダの姿が消えた。

超加速。

オールドマンの懐へ一瞬で入り込む。

「叩き斬る!」

ズバァァァン!!

横薙ぎ。

オールドマンは紙一重で避ける。

その瞬間。

イレイダの左拳。

ドゴォッ!!

腹部へ直撃――

したはずだった。

しかし。

「……!」

拳が止まる。

まるで見えない壁に阻まれたように。

イレイダが目を見開く。

「何……?」

オールドマンは拳を受け止めてもいない。

触れてすらいない。

それなのに。

攻撃だけが届かなかった。

「解析完了。」

静かな声。

次の瞬間。

ドンッ!!

衝撃。

イレイダの身体が真横へ吹き飛ぶ。

壁を三枚突き破り、ようやく止まる。

「イレイダッ!!」

アリスが叫ぶ。

柚季も青ざめる。

「今度も見えなかった……!」

イレイダは壁にもたれながら立ち上がる。

口元の血を拭う。

「……厄介だ。」

その瞳から闘志は消えていない。

むしろ強くなっている。

「面白ぇ。」

「本当に強ぇ奴だ。」

オールドマンは初めて僅かに目を細めた。

「あなたも。」

「十分、異常ですよ。」

「普通の能力者なら二度目で戦闘不能です。」

イレイダは笑う。

「私は普通じゃねぇ。」

「知ってる。」

そのやり取りを見ながら、燕はセツナの身体を支えていた。

セツナの呼吸はまだ乱れている。

「姉さん。」

「大丈夫?」

セツナは小さく頷く。

「……ごめん。」

「燕...また、心配かけたね。」

燕は首を振る。

「もう謝らないで。」

「帰ってからいっぱい話しましょう。」

セツナは涙ぐみながら微笑んだ。

「……うん。」

その穏やかな光景を見つめるオールドマン。

「興味深い。」

「制御装置を破壊しただけで、ここまで人格が戻るとは。」

燕が睨む。

「二度と姉さんに触らせません。」

「そうですか。」

オールドマンは淡々と答える。

「では。」

「もう一人、実験対象を増やしましょう。」

その瞬間。

彼の視線がゆっくりと結衣へ向く。

結衣は思わず身体を震わせた。

「……私?」

「Healer。」

「希少な能力です。」

「研究価値があります。」

燕が結衣の前へ立つ。

「結衣さんには指一本触れさせません!」

柚季も飛び出す。

「私たち全員いるんだから!」

アリスが右目に手を添える。

ネリクマも静かに前へ出る。

イレイダは刀を構え直した。

「だったら。」

「全員まとめて相手してやる。」

その瞬間。

オールドマンの口元が、初めてわずかに笑った。

「……ええ。」

「それを待っていました。」


次の瞬間。


GENESIS最深部から、今までとは明らかに異なる重低音が響き渡る。

ゴォォォォォォォン――。

空気が震える。

床が揺れる。

デウスがいる中央制御区画でさえ感じるほどの、異様な気配。

オールドマンはその方向を見て、小さく呟いた。

「予定より……少し早いですね。」

その一言に、イレイダは鋭く反応した。

「……何が始まる。」

オールドマンは答えない。


ただ静かに、GENESISのさらに奥を見つめていた。


第90話

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