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Psycer Brain ─ 神に抗え。その力で運命を変えろ。─  作者: n217 (嘯江 新«ウソブエ シン»)


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第六話「覚醒」

放課後。屋上。


風が強い。


フェンスの向こう、夕焼けが滲んでいる。


「……だから言ってるでしょ」


柚季の声。


腕を組んだまま、ソウヤを睨む。


「今のあんた、普通じゃない」


「だから知らねえって言ってんだろ」


苛立ちが混じる。


理解できないものを押し付けられる感覚。


そのとき。


「ソウヤ!」


結衣が扉を開けて入ってくる。


息を切らしている。


「大丈夫!?」


「……なんで来た」


「顔やばいからに決まってるでしょ」


距離を詰めてくる。


その瞬間。


――ズレた。


世界の“ピント”が、外れる。


「……っ」


ソウヤの視界が歪む。


音が遠のく。


風の音だけが、異様に大きくなる。


ドクン。


心臓の音。


ドクン。


もう一度。


その音に合わせて、


視界の色が、わずかに変わる。


赤と青。


世界が二層に分かれる。


「ソウヤ?」


結衣の声が、遅れて聞こえる。


遠い。


まるで、水の中から聞いているみたいに。


(……なんだ、これ)


思考がまとまらない。


でも。


“もう一つの思考”が、混ざる。


――遅い。


(……は?)


自分の声じゃない。


でも、確かに“内側”から聞こえる。


その瞬間。


ソウヤの体が、微かに傾く。


バランスが崩れる。


結衣が手を伸ばす。


「危な――」


触れる、その直前。


バチンッ。


空気が弾けた。


見えない衝撃が、周囲に広がる。


結衣の体が弾き飛ばされる。


「っ――!?」


フェンスに叩きつけられる寸前、


ふわっと止まる。


(……今の)


結衣の能力が無意識に発動している。


でも。


それどころじゃない。


「……何、これ」


柚季の声が低くなる。


目が鋭く細まる。


ソウヤの周囲。


空間が歪んでいる。


陽炎のように揺れる。


でも、それは熱じゃない。


“圧”だ。


ドクン。


また心臓。


その音と同時に、


ソウヤの瞳の色が、わずかに変わる。


片方が深く沈むように暗くなる。


(……やめろ)


ソウヤの意思。


でも。


――遅いって言ってる。


別の“何か”。


冷静で、無機質な判断。


次の瞬間。


ソウヤの体が、消えた。


「……っ!?」


柚季の目が見開かれる。


一瞬。


本当に、消えた。


次のフレーム。


柚季の目の前に、ソウヤがいる。


「――ッ!」


反応が遅れる。


速すぎる。


認識が追いつかない。


空気が裂ける音。


ソウヤの腕が振り抜かれる。


だが。


直前で止まる。


数センチ手前。


まるで“見えない壁”に阻まれたように。


ギィィィ……ッ


空間が軋む。


見えない何かが押し合っている。


柚季の額に汗が滲む。


(……やばい)


直感。


これは受けたら終わる。


「ソウヤ!!」


結衣の叫び。


その声。


一瞬だけ。


ほんの一瞬だけ。


ソウヤの目が揺れる。


(……やめろ)


自分の声。


押し返す。


バチンッ!!


衝撃が爆ぜる。


ソウヤの体が弾かれる。


後方へ吹き飛ぶ。


床を転がり、止まる。


静寂。


風の音だけが戻る。


「……はぁ……っ」


ソウヤは荒く息をする。


視界が戻る。


色も、音も、元に戻る。


「……今の、なんだよ」


手を見る。


震えている。


結衣が駆け寄る。


「大丈夫!?」


「……ああ」


でも、声に力がない。


柚季は動かない。


ただ、じっと見ている。


そして、静かに言った。


「……やっぱり」


一拍。


「あんた、危険だわ」


ソウヤは何も言えない。


ただ一つ、分かる。


さっきのは――


(……俺じゃない)


でも、確実に“自分の中”から出た。


夕焼けが、ゆっくり沈んでいく。


その光の中で。


ソウヤの影が、わずかに“二重に揺れた”。

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