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Psycer Brain ─ 神に抗え。その力で運命を変えろ。─  作者: n217 (嘯江 新«ウソブエ シン»)


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58/159

第58話「覚醒」

東京都・新都心


暴風が吹き荒れる。


倒壊したビルからコンクリート片が降り注ぎ、避難を終えた街は静まり返っていた。


戦場の中央。


ソウヤ――いや、人格転移《Transmigratio》によって現れた"レイ"は、静かにラルゴを見据えていた。


一切の無駄がない構え。


呼吸すら乱れていない。


ラルゴはゆっくりと拳を握る。


「……お前。」


「さっきまでとは、違う。」


レイは短く答える。


「そう見えるか。」


その一言だけで、場の空気が張り詰める。




屋上


グランは腕を組む。


「人格転移……。」


マランは目を細める。


「人格が変わっただけじゃない。」


「戦い方そのものが変わってる。」


グランも同意する。


「あの歩幅、重心、呼吸。」


「まるで何百、何千もの実戦を経験した者の動きだ。」


マランは黙ってレイを見つめ続けた。




再戦


ラルゴは地面を蹴る。


ドゴォォォン!!


地面が砕ける。


巨体とは思えない速度。


一瞬でレイの目の前まで迫る。


右ストレート。


空気が裂ける。


しかし──


レイは紙一重で躱した。


髪がわずかに揺れるだけ。


「……!」


ラルゴは目を見開く。


レイは攻撃を返さない。


ただ観察している。


左拳。


膝蹴り。


肘。


頭突き。


怒涛の連撃。


ドドドドドドッ!!


だが、一発も当たらない。


レイは最小限の動きだけで全てを回避していく。


イレイダが思わず呟く。


「……すげぇ。」


「あいつ、一歩も無駄に動いてねぇ。」


惣一も驚きを隠せない。


「完全に攻撃を読んでいる……。」




見切り


ラルゴが距離を取る。


「……何故、当たらない。」


レイは静かに答える。


「違う。」


「見えているだけだ。」


「お前は攻撃する前に、必ず左肩へ力が入る。」


「重心も僅かに前へ移動する。」


「だから分かる。」


ラルゴの表情が初めて変わる。


「……見抜いたのか。」


レイは何も答えない。




反撃


レイは一歩踏み込む。


静かだった。


速くも見えない。


しかし、


次の瞬間にはラルゴの懐へ入り込んでいた。


「!」


掌を胸へ添える。


「そこだ。」


ドンッ!!


衝撃は一点だけ。


爆発は起きない。


しかし。


ラルゴの体内へ衝撃が浸透する。


「がっ……!」


巨体が数十メートル吹き飛び、ビルへ激突。


ズガァァァン!!


外壁が崩れ落ちる。


タジが震える。


「外傷じゃない……!」


「衝撃を内部だけに通した!?」


イレイダは静かに笑う。


「面白ぇ技を使うじゃねぇか。」




限界


ラルゴは立ち上がる。


しかし足が震えていた。


能力の反動。


筋肉疲労が一気に押し寄せる。


腕が上がらない。


呼吸が乱れる。


レイは構えを解いた。


「終わりだ。」


「……!」


ラルゴは最後の力を振り絞り拳を振るう。


その瞬間。


レイは身体を半歩だけずらす。


空振り。


そして──


首筋へ軽く手刀を落とした。


トン。


たったそれだけ。


ラルゴの意識が途切れる。


巨体がゆっくり前へ倒れた。


ズゥゥン……。


東京の街が静まり返る。




屋上


マランは静かに息を吐いた。


「ラルゴが……負けた。」


グランも驚きを隠さない。


「能力ではない。」


「あの人格そのものが危険だ。」


マランはレイを見つめる。


(お前は……一体何者なんだ。)


その胸に初めて"興味"が芽生え始めていた。




エピローグ


レイは静かに空を見上げる。


「……。」


誰にも聞こえないほど小さな声で呟く。


「まだ……。」


「遠い。」


その意味を知る者は、この場には誰もいなかった。


人格転移が解ける。


ソウヤは膝をつく。


「はぁ……はぁ……。」


記憶は曖昧だ。


「俺……勝ったのか?」


結衣が駆け寄る。


「ソウヤ!」


イレイダは木刀を肩に担ぎながら笑う。


「よくやった。」


「しかし、これは終わりではない。」




その視線の先には、すでに姿を消したグランとマランがいた。




マスタークラウンとの戦いは、さらに激しさを増していく――。




第58話 完

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