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Psycer Brain ─ 神に抗え。その力で運命を変えろ─  作者: n217 (嘯江 新)


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第四話「観察者」

教室は、いつも通りだった。


朝のざわめき。


机を引く音。


誰かの笑い声。


その中で、一之瀬ソウヤは静かに席についていた。


窓の外を見ている。


特に何を考えているわけでもない。


ただ――


(……なんか、残ってるな)


昨日の違和感。


消えきらない感覚だけが、頭の奥に残っていた。


「ソウヤ」


結衣が隣に座る。


「今日さ――」


いつも通り、話しかけてくる。


ソウヤも普通に返す。


何もおかしくない。


会話も自然。


――表面上は。




その様子を、少し離れた席から見ている人物がいた。



逢坂柚季おおさかゆずき。結衣にとって一番の親友。


短いボブヘアでありツンデレキャラである。



腕を組み、無言で二人を見ている。


(……普通)


第一印象はそれだった。


会話も、動きも、自然。


どこにも違和感はない。


だが。


(さっき)


柚季の視線が、ソウヤに固定される。


ほんの数分前。


ソウヤは、机に手を置いたまま――


一瞬だけ、動きを止めていた。


完全に。


呼吸も、視線も、何もかも。


(止まった)


錯覚じゃない。


確信がある。


(何あれ)


理解できない。


でも。


(気持ち悪い)


その感覚だけははっきりしていた。


「なあ」


後ろから声。


タジだった。


「また観察してんの?」


軽い口調。


柚季は視線を外さない。


「別に」


「いや絶対ロックオンしてるだろ」


「してない」


即答。


タジは苦笑する。


「はいはい」


軽く流す。


でも、その視線は同じ方向を見ていた。


――ソウヤ。


「……見たか?」


タジが小さく言う。


柚季の眉がわずかに動く。


「何のこと」


「さっきの」


「...止まったやつ」


柚季は黙る。


数秒。


それから、小さく答える。


「……見た」


短い肯定。


それだけで十分だった。


タジは少しだけ笑う。


「やっぱな」


「何、あれ」


柚季が聞く。


ストレートな疑問。


タジは肩をすくめる。


「分からん」


「は?」


「いやマジで」


軽く言う。


でも、目は真面目だった。


「たださ」


少しだけ声を落とす。


「普通じゃないのは確定」


その言葉。


柚季はもう一度ソウヤを見る。


今は普通だ。


結衣と話している。


笑ってもいる。


でも。


(さっきのは、何)


違和感は消えない。






昼休み。




屋上。


風が吹く。


ソウヤは一人で立っていた。


フェンスの前。


空を見ている。


(……まただ)


頭の奥に、あの感覚。


薄く、重なる。


(来るな)


そう思った瞬間。


ソウヤの動きが止まる。


完全に静止。


時間が切り取られたように。




その様子を、扉の陰から見ている人物がいた。


柚季。


(また……)


さっきと同じ。


今度は、はっきり見えた。


動いていない。


完全に。


(……何してるの)


次の瞬間。


――見つけた。


“声”ではない。


でも。


意味だけが、空気に混じった気がした。


柚季の背筋に、冷たいものが走る。


(……今の、何)


本能的な違和感。


危険に近い感覚。


ソウヤが動き出す。


何事もなかったように。


そのギャップが、逆に不自然だった。


柚季は扉から離れる。




でも。




足は止まらなかった。


「……ちょっとアンタ。」


声をかける。


ソウヤが振り向く。


初めて、目が合う。


数秒の沈黙。


柚季ははっきり言った。


「あんた、さっき何してたの?」


ソウヤは眉をひそめる。


「……何が」


「とぼけないで」


一歩、距離を詰める。


「さっき、止まってた」


その言葉。


ソウヤの中で、何かが引っかかる。


「……知らねえよ」


本音だった。


でも。


その“知らない”が、逆に不気味だった。


柚季はじっと見る。


そして、静かに言った。




「……あんた、普通じゃないわよ」




断定だった。

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