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Psycer Brain ─ 神に抗え。その力で運命を変えろ─  作者: n217 (嘯江 新)


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111/182

第111話「覇者の使徒」

東京湾――


海上には、静寂が広がっていた。

間宮トオルの亡骸は波に揺られ、ゆっくりとGENESISの残骸の中へ沈んでいく。

誰も言葉を発しない。

Az最高峰の研究者は、最後まで自らの研究に殉じ、その生涯を終えた。

オールドマンだけが、その亡骸を一瞥した。

「……よく働いてくれました。」

「君の研究は、無駄ではありません。」

その言葉に、グランの拳が震える。

「人を道具としてしか見ないか。」

オールドマンは穏やかに答えた。

「違います。」

「道具には価値があります。」

「価値のない者は、研究にも使えません。」

その一言で、空気が凍りついた。

イレイダが刀を抜く。

「……胸糞悪ぃ野郎だ。」

ネリクマの表情も消えている。

燕はセツナを支えながらオールドマンを睨んだ。

結衣も静かに拳を握る。

誰もが、この男だけは止めなければならないと理解していた。


その時。


デウスが一歩前へ出た。

コツ……

静かな足音。

それだけで周囲の空気が変わる。

オールドマンは小さく笑う。

「ようやくですか。」

「覇者の使徒。」

デウスは答えない。

ただ真っ直ぐ歩く。

その後ろにはアメス。

さらに異空間の裂け目が静かに開く。

ズゥゥゥ……

空間が裂け、七つの光が降り注ぐ。

まるで天から舞い降りるように。


ゼゥテル。

シェフィル。

ネフィ。

マオン。

マコン。

ゲヴォン。

ペルム。


覇者の集い七人が、デウスの背後へ静かに並んだ。

誰一人として殺気を放たない。

しかし、その場に立つだけで東京湾全体が震える。

イレイダが思わず息を呑む。

「……これが。」

フランもハルシオン艦橋から見つめる。

「覇者の集い。」

ベルトが苦笑する。

「一人でも化け物なのに……。」

「七人揃うと笑えないな。」

オールドマンは七人を見渡した。

「全員来ましたか。」

「光栄です。」

ゼゥテルが静かに口を開く。

「光栄ではない。」

「貴様を止めに来た。」

「止める?」

オールドマンは笑う。

「世界はようやく動き始めたのですよ。」

「今さら止められると思いますか。」

アメスが一歩前へ出る。

その柔らかな笑顔は変わらない。

「私は争いを望みません。」

「ですが。」

右手を胸の前で組む。

「世界を壊す者には。」

「審判を下します。」


その瞬間。


空気が変わった。

周囲十メートル。

見えない圧力が広がる。

マランが顔をしかめる。

「これが……。」

デウスが小さく呟く。

「能力を抑えている状態で、この圧か。」

一方。

ソウヤの身体では、依然としてレイが主導権を握っていた。

一仁と向かい合う。

一仁は肩を回しながら笑う。

「よそ見してんじゃねぇ。」

「俺はまだ終わってねぇぞ。」

レイは静かに構える。

(ソウヤ)

『レイ。』

(レイ)

『何だ。』

『オールドマン……。』

『気になる。』

レイは短く答えた。

『俺もだ。』

『だが、一仁を放置すれば全員が危険になる。』

ソウヤは頷く。

『分かった。』

二人の意識は完全に重なっていた。

レイが地面を蹴る。

一仁も同時に動く。

ドォォォォォン!!

拳と崩壊が激突し、東京湾の海面が大きく割れた。

その激震の中。

オールドマンは戦いを見ることもなく、デウスだけを見ていた。

「あなたは変わりませんね。」

デウスも静かに返す。

「貴様もな。」

「数百年経とうと。」

「その思想だけは。」

オールドマンは微笑む。

「世界は完成されるべきです。」

「能力者も。」

「人類も。」

「選別されなければならない。」

その言葉を聞いた瞬間。

グランの赤い瞳が鋭く光る。

「選別だと?」

「誰が決める。」

オールドマンは迷いなく答えた。

「私です。」


ドン――。


その一言だけで、場の空気がさらに重くなる。


しかし次の瞬間。


アメスの瞳が変わった。

穏やかな金色から、燃えるような紅へ。

デウスが横目で見る。

「……アメス。」

アメスは静かに笑った。

「申し訳ありません。」

「少しだけ。」

「腹が立ちました。」

その笑顔とは裏腹に。

周囲十メートルの空間が震え始める。


The Last Judgementer(最終審判)


まだ能力は発動していない。

だが、その場にいる全員が悟った。

もしアメスが「審判」を下せば、この戦場は一瞬で決着がつく可能性があることを。

デウスは静かに右手を上げた。

「まだ裁くな。」

アメスは深呼吸し、紅く染まった瞳をゆっくり閉じる。

「……承知しました。」

しかし、その視線は一度もオールドマンから外れなかった。

一方、オールドマンもまた初めて表情を消す。

「なるほど。」

「あなたが……。」

「最終審判ですか。」


東京湾。

二人の間に、誰も踏み込めない緊張が張り詰める。


そして、その静寂を破るように――


崩壊したGENESISの地下深くから、新たな振動が響き始めた。

誰もまだ知らない。


GENESISが遺したものは、オールドマンだけではないことを。


第111話 完

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