天使か悪魔か
ちょい文字少なめです。すみません
「……見ていたの? あの光景」
「見てたわよ。なんなら、ここらに住んでるヒトみんな聞こえたんじゃない?」
「うわぁ……」
「だから天使と契約しちゃダメなのよ。どうせオツム弱いんでしょ。あの天使」
「うん、まぁ……」
「その点悪魔は良いわ。こちらへは一切関与してこないしね」
そういえば、ヘーラーは悪魔崇拝者を倒せとかなんとか抜かしていたが、この場合神奈が取るべき行動とはなんなのだろう。
「ねぇ、瑠流。悪魔と天使の違いってなに?」
「マニュアル、スマホに送ろうかしら? 最初接触されたときだいたい説明されたけど、それ以外で分かんないことはこれ見ろと言われたわ」
森音瑠流はスマホの画面を見せてくる。
「ハイテクだなぁ。最近の悪魔は」
「天使が遅れすぎてるだけよ。今や21世紀。こっちの都合を考えてくれるのなら、それくらいの手助けがあったって良いじゃない」
スマホに情報が送られてくる。相当長めのPDFだった。まるで説明書みたい、いや説明書なのか。ともかく、神奈はさらっと目を通す。
「悪魔と契約、なんて言うくらいだから魂やら大事なヒトやら差し出すものじゃないの? これ見る限り、そんなこと一言も書いていないけど」
「連中からすれば、混乱を生めればそれで良いんでしょうね。アンタが学校来ないうちに、悪魔と契約した子も少なからずいるわ」
「なんで分かるのさ」
「契約者は契約者同士にしか見えない数字が、頭上に乗ってるのよ。それらは魔力の量を示してて、多ければ多いほど契約の際の術式をたくさん使える感じね」
「なるほど。ちなみに、僕の頭上にはなんか数字乗っている?」
「変な数字なら見えるわよ。数字というか、暗号みたいな文字が。そっちはなにか見えないの?」
「見えるといえば見えるけど……」
「けど?」
「すごくぼやけて見える。意図的に数字が分かんないように細工されているみたいな感じ」
「だから天使と悪魔は相容れないのね。まぁ良いわ。きょう、学校来るの?」
「行くつもりだよ。もう天使の相手したくないもん」
「良かったわ。んじゃ、いっしょに登校しましょうよ」
「良いよ。また連絡しよう。なんとなく、悪魔側が示した契約条件を読んでみたい」
「分かったわ。んじゃ、私は一旦帰るわね。ふぁーぁ。眠い……」
眠たげにまぶたをところどころで落としながら会話していたので、森音は眠たいのだろう。
……いや、よくよく考えたら眠たいのに早朝徘徊する意味ってなんだ?
「あっ、もう家の中入っちゃった」
女子陸上部で大活躍中の森音が、眠たげに散歩する意味とは? トレーニングしていたようにも見えないし、ただ寝付けないから街を歩いていただけにも見える。
「まぁ良いや。瑠流に限って、悪魔の力かなんかに支配されることもないでしょ」
森音瑠流は社長令嬢で、割と高級住宅街である近所でも広い家に住んでいるし、家前には高級外車が2台停まっている。そんな彼女が、そして神奈も良く知る気丈な森音瑠流が、なにかに支配されている姿は、どうしても想像できない。




