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TSFマジック-鬼龍娘の僕、きょうも街を守ります-  作者: 東山ルイ
第一章 寂しいヒトが一番偉いんだ
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幼なじみは悪魔崇拝者

(そうか、そうか。これが僕に科せられた堕落ってわけね)


 今まで男子として、別に不都合ない日々を過ごしてきた。これまで起きた問題は、だいたい自分という人間の責任であり、そこに性別は絡んでこなかった。


 それが今となれば、TS化を恨む元少年だ。あぁ、腹部がチクチクと痛い。ナプキンかタンポンがないと、パンツも履けないし履きたくない。

 仕方ないので、母親の生理用ナプキンを拝借し、付け方をAIに聞いて装着した。


 時刻はまだ朝の6時30分にもなっていなかった。学校開始が9時、準備等は30分もあればできる。自由時間が2時間くらいできてしまった。神奈は母親が寝ているのを確認した上で『散歩してくる』とメッセージを送っておき、深夜徘徊ならぬ早朝徘徊を始める。もうヘーラーといっしょにいたくない。それだけが、今の神奈を動かす。


「さ、寒い……」


 外はひんやりと冷たかった。それでも、身体を震わせながら神奈は見慣れた街を歩く。なんら変哲のない街をこんな早朝から出歩くのも、ある種の脳体操や運動になるかもしれない。もっとも、今にでも凍え死にそうだが。


「こ、ココア買おう」


 スマホだけ持って出歩いているわけだが、携帯電話には交通機関用のICカードの残高が少しばかり入っている。これで温かいココアでも買って、目を覚ましながら暖を取ろう。


 自販機まで歩き、無慈悲に冷たい風を浴びた。もうすでに眠たくなっているので、危険な水準と言えよう。ココアをタッチ決済で購入し、手に持って温かさを感じる。


「……これ、ブラックコーヒーだ」


 どうも寒さのあまり間違えたらしい。神奈はブラックコーヒーを飲めないので、これでは時間制限の短いカイロと変わりない。吐き出す息すら冷たい始末だが、神奈はこの1日ほどで何十回目か分からない溜め息をつく。


 そうやって神奈が項垂れていると、


「神奈、よね? 貴方」


 怪訝そうな声が背後から聴こえた。どうも後ろから話しかけられると、耳と脳がゾワゾワするような感覚に苛まれてしまう。

 いや、そんなことはどうだって良い。今の蒼月神奈を見て、しっかり神奈であると認識できた者がいたのだ。しかも神奈は、その声の主を良く知っている。


「そ、そうだけど……。うぅ、寒い」


 相手が女子だから緊張しているのもあるが、寒さのほうが勝る。それに、彼女は昔良く遊んだいわゆる幼なじみだ。


「なんでアンタがブラックコーヒーなんか持ってるのよ。飲めないって言ってたじゃない。間違えたの?」

「うん、間違えたよ。コーヒーとココアを取り間違えたり、急に学校へ行かなくなったりね」

「その通りね。今、お金持ってないの?」神奈は、21円しか入っていないスマホICカードを見せる。「分かったわよ。私がココア()()()()()()

「あ、ありがとう。瑠流」


 茶髪のショートヘアで、いつでも元気いっぱいで、校則違反なんて気にせずに丁寧な化粧をしている森音(もりね)瑠流(るる)は、財布を取り出す素振りも、ましてやスマートフォンを出そうともしなかった。


 震えながら神奈は疑問に思い、彼女にどうやって買おうとしているのか訊こうとするが、


「よいしょっと」


 森音は自販機に手を当て、そのまま目を瞑った。その数秒後には、大量の飲み物が落ちてくる。


「は?」

「はい、ココア」


 呆気にとられる神奈のことなんて気にする素振りもなく、森音瑠流はコンポタージュを飲む。


「え、いや。だから、瑠流。今なにしたの?」

「電子回路をいじくっただけよ。私が触れた無機物……要するに意思のないものは、すべて自在に操れるの」

「へぇ?」

「説明不足?」

「いや、それは分かったんだけども……なんの力? 超能力ってヤツ?」

「なにとぼけてるのよ」


 森音はくりくりした目で、神奈を覗き込むように目線を合わせた。


「さっきアンタが自分の部屋から突き落とそうとした女、天使でしょ? 学校来なくなったと思ったら、天使なんかと契約しちゃって。絶対〝悪魔〟と契約したほうが良かったのに」


 幼なじみは、傍から聞けば荒唐無稽なことをいい始めた。


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