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TSFマジック-鬼龍娘の僕、きょうも街を守ります-  作者: 東山ルイ
第一章 寂しいヒトが一番偉いんだ
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失禁と生理という厄介事

「……うん。ごめんなさい、父さん」


 父は誠実な人間でくだらない嘘をつかない。であれば、ヘーラーの仕掛けた魔法? が効いているのだろう。


「分かったのなら良い。さて、神奈。オマエ教室へ戻るらしいな」

「うん。母さんから聞いたの?」

「父さんは不登校とか経験していないから分からんけど、きっとオマエなりに思うことがあったんだろ? いつか話してくれ。あとこれ、お小遣いな」


 父は10000円札を神奈へ渡した。


「え、ありがとう」

「もう一度やり直すのには、相応の勇気が必要だからな。さて、父さんはもう仕事行ってくる

 ぞ」

「うん。頑張ってね」

「あぁ、神奈も」


 父が去っていき、財布の中に10000円札をしまうと、神奈はヘーラーのほうに向き直した。そして、彼女へ言う。


「……なんの魔法を使ったんですか?」

「魔法ではないですよ。〝天使の片鱗〟です~」

「良いから答えろよ。もう一度殴られてぇか?」


 だんだん気性が荒くなってきたのを自覚し始めているが、こうなったのもそれなりの理由がある。もっとも、ほとんどすべてヘーラーの所為だが。


「は、はいぃ……」ヘーラーはベッドの上で、もぞもぞと身体を震わせる。「天使の片鱗とは、その名の通り天使が地上で使える力です。魔法とはまた違う理論で動いていますが、貴方たち人間の考える魔術と天使の力は似ています。たとえば━━「僕は父さんと母さんになんの魔法を使ったのか、って聞いているんです。アンタの冗長なお言葉には全く興味がありません。……って言っても無駄ですよね。今から質問します。はいかいいえで答えてください」

「え、あ、はい」

「1問目、父と母に貴方が僕の姉であるという洗脳をしましたか?」

「せ、洗脳とは言葉が悪い━━「良いから答えろ」

「は、はい」

「2問目、僕には悪魔崇拝者という存在を打ち倒す義務があるようですけど、それらは可視化できるんですか?」

「は、はい。できます」

「……。3問目、もしかして失禁しましたか?」

「はいぃ……」

「質問は以上です。シーツについた小便、魔法だか天使の片鱗だかできれいにしておいてください」


 そんな強い圧を出したつもりもないのに、ヘーラーは失禁したようだった。むあぁ……と尿の匂いが部屋に広がる。そのうち出せる酸素がなくなるのではないか、と思うくらい溜め息混じりだったが、またもや神奈は息を吐き出した。これで済むのなら、もはや安いくらいだからだ。


「猫や犬でも決められた場所でおしっこくらいできるのに……、ヘーラーさんっておいくつですか?」

「人間換算で27歳です……」シーツに手を触れ、尿だけを取り除いていく。「で、でも。天使は数千年生きられるので、私なんて赤子のようなものですよ?」

「それ、自分で言っていて恥ずかしくないんですか?」

「すみませんでした」


 さすがに大人しくなったヘーラー。これだけ言っても喧しかったら、正直もうお手上げなので、ようやくちょうど良い態度になった。


「さてと。僕はトイレ行って歯磨きしてくるんで、大人しくしていてくださいよ?」

「は、はい」


 なぜこんなヤツの面倒を見なくてはならないのか。寝起きの苛立ちはだんだん収まってきたが、今度はこれからの生活への不安が生じる始末だった。


(嘆いても仕方ないのは、もう認めるけどさ……)


 今の神奈は女性だし、普段から座って小便するため、習慣に従ってトイレを済ませる。

 トイレをし終わって、便器の中が真っ赤に染まっているのを見てしまった。


 これが、生理というものか? なるほど。女の人は大変だ。

 そう思い、神奈は乾いた小さな笑い声を上げるのだった。


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