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TSFマジック-鬼龍娘の僕、きょうも街を守ります-  作者: 東山ルイ
第二章 悟るくらいなら死んじまえ
22/22

〝この街はまるで サンタフェあたりのゴースト・タウン〟

「クソッ!! 弾丸が効かねぇぞ!?」


 普通の人間がくらっていれは、今頃ミンチになっているほどの銃弾をくらう。しかし、蒼月神奈はこれくらいではやられない。硬すぎる神奈の皮膚は、音速以上で繰り出される鉛玉を全く通さない。こうなるとむしろ、フレンドリー・ファイアを心配してしまう始末だった。


「……うるさいなぁ」


 そんな中、神奈は大雨の雫ほど放たれる銃弾のやかましさに、少しずつ苛立ってきていた。彼女は拳を握りしめ、あえてワープせずにホストのような長い金髪の青年に近づいていく。


「こ、コイツ、動きやがる!?」

「そもそも弾をくらってねぇみてぇだぞ!?」


 一歩ずつ、少しずつ、服がボロ布に成り果てたのも気にせず、


「うるせぇんだよ!!」


 蒼月神奈は怒鳴り、ついに敵は銃を降ろす。ようやく銃弾では始末できないと理解したらしい。

 夜のように静まり返る、文字通り時間が止まったふ頭にて、神奈は指をバキッと鳴らした。


「さすがだな……。これは、堕落した人間そのものだ」


 ホスト風の青年は驚嘆したように呟く。

 そして、

 神奈は唸り声を上げながら、その青年の元へと一気に走り出す。


「……!!」


 その姿、まさしく獣。見た目がどれほど可愛らしいものであっても、並みの人間では恐怖のあまり足がすくんで動けなくなる。これが蒼月神奈、いや、ヘーラーの考え与えた力の真髄だ。


 *


「はぁ、はぁ……」


 蒼月神奈はワープでどこへでも姿を出せるが、森音瑠流はそんな能力を持っていない。そのため、彼女は結構な長さの距離を走る羽目になった。オーバーワークだが、今はそれを気にしている暇もない。


「やっぱり、ふ頭そのものが……!!」


 ナヘマーというお付きの悪魔が情報を割ってくれた。それによれば、今地元のふ頭で魔力の増幅を発見したとのことだった。〝悪魔対策任務部隊〟という悪魔崇拝者を密かに監視し、時には武力行使を行う組織からの通達なので間違いはない。


「けどナヘマーちゃん。なんでその特殊部隊は、魔術犯罪が行われてることを看破してるのよ? 分かってるのなら対処すべきでしょ」

「こんなサンタフェあたりのゴースト・タウンに人員割り振れるほど、悪魔対策にヒトはいないんだよ。それに、命にすら値札がついてるんだから」

「嫌な時代ね……」


 森音は意思のこもっていない電子ロックを解除するため、回路に触れた。なんら躊躇することなく、彼女は不法侵入をこなす。


 その最中、


「よう。後輩ちゃん」


 どこかで聞いた声が背後より聴こえる。おそらく敵ではないと、森音はすぐに振り向いた。


「光野先輩」

「蒼月神奈の友だちだよな。ちょうど良い。おれもアイツに用があってさ」

「含みのある言い方ですね」

「含みとかおれにぁ似合わないんで、先に説明しておこうか。アイツを悪魔対策に引き入れてぇんだ。おれは」

「悪魔対策……特殊部隊のことですか?」

「そー。よし、行こうか」


 神奈がさらなる面倒事に巻き込まれかねない、と内心思いながらも、ロックが解除されたのでふたりはふ頭の中を走っていく。


「……変な匂い」


 ヒトの気配を感じたところで、光野は森音を静止する。


「ちょっとここから動かないでくれ。なんか、嫌な予感がするんだ」

「は、はい」


 嫌な予感? 妙な匂い……たとえるのなら腐敗したゴミのような匂い。あまり良い気分にはなれない香りから、光野はなにかを導いたのか。


「あっちゃー……」


 姿が見えないように天空へ浮いていたナヘマーは、思わず呆然とした声を漏らした。

 それはつまり、


「え」

「……ッ」


 大量の赤い液体にまみれた幼なじみが、気だるそうにこちらを伺ってきた。

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