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TSFマジック-鬼龍娘の僕、きょうも街を守ります-  作者: 東山ルイ
第二章 悟るくらいなら死んじまえ
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女子になった故変わるもの

「はぁーあ」


 だんだん溜め息にも慣れてしまった。良いことなのか悪いのか。それは分からないが、溜め息だけで気持ちを抑えられるのならもはや安いのかもしれない。


「神奈さん、いい加減今の自分と向き合ってみたらどうですか? とても可愛らしいのに顰め面していたら━━わっ、ライターで髪炙ろうとしないで!!」

「なら舌を炙りましょうか? くだらないこと言えないように」

「神奈さんったらツンデレさんですね。そういうところも愛らしい━━すみません。もうお腹蹴らないでください」


 天使ヘーラーは、正座から土下座した。もう何度見たか分からない、見事な土下座であった。


 蒼月神奈は、男らしさに憧れている。それは、当時流行っていた女アイドルから名前をつけられたことへのコンプレックスから来ている。だから彼女は彼に戻りたい。それが今や叶うことない夢だと分かっていても。


「それじゃ、僕は瑠流と会ってきますんで大人しくしていてくださいね」

「あの悪魔崇拝者と!? いけません、神奈さん! そのような行いをしていては、天国へ行けませんよ!?」

「声が大きいです。近所迷惑でしょうが」神奈は眉間にシワを寄せる。「だいたい、死んだあとのこと考えているほど暇じゃないんですよ。そういうのはしわくちゃのおじいちゃん……はぁ、おばあさんになってから考えれば良い」


 そう言い、神奈は森音瑠流と会うために外へ出てしまうのだった。


 *


「神奈、来てくれてありがとう。なにか飲む?」

「また自販機をいじくるの? それって犯罪じゃん?」

「タダで飲めるなら良いでしょ。ほら、行くわよ」


 どことなく派手な印象━━ギャルっぽいウェーブのかかった茶髪を顔半分が隠れるようにまとめていて、これから走るというのに濃い目のアイメイクも忘れていない。そんな森音瑠流は、結構な暴論を振りかざして自販機に触れた。


 そうすれば、飲み物が怒涛の勢いで流れ出てくる。どう考えてもこんなにいらないのに。

 森音は神奈に幼なじみが愛飲している〝チルト〟という炭酸飲料を渡してきた。


「さてと、早速だけどタイム計ってもらうわよ」


 森音は上着を脱ぎ、早速ストレッチし始めた。さすが、来年には全国大会候補と言われているだけあって、腹筋が割れているし身体も非常に引き締まっている。


(……昔だったら目に焼き付けていたんだろなぁ)


 真冬のピークが過ぎ去ったとはいえ、まだまだ寒い。それなのに、美人さんの幼なじみは気合いを入れるためか、わざわざ本番用の陸上ユニフォームを着ている。

 間違いなく、少し前の神奈だったら睨むくらい彼女の身体を目に焼き付けていただろう。ところが、性別が入れ替わったからか今の神奈にそういう感情はほとんどない。スケベな目から、彫刻品を見るような目に変わった感じだった。


「さて、まずは坂道ダッシュから━━」


 森音が坂を駆け上がろうとしたとき、彼女は怪訝そうな顔で近くに座っていた幼い少女に目を向ける。


 褐色肌、黒で統一された服装、どこかヒトを小馬鹿にするような笑み、金髪のロングヘア、碧い目、白人のように掘りの深い顔。そんな幼女が、なにやら愉快でたまらないかのように神奈たちへ近づいてきた。


「なんの用かしら? ナヘマーちゃん」

「んー? あたしがいたらまずい?」

「悪魔は人間の行動に一切関与しないんじゃないの?」

「まぁ良いじゃん☆」ナヘマーという幼女は神奈に向き直す。「やぁ、蒼月神奈。金平糖レベルの脳しか持ってない天使様はいないの?」

 神奈は冷静に答える。「だとしたら、なにか良いことあるの? それとも困るとか?」

「いーや? ただまぁ、アイツの相手疲れるっしょ。あたしらが君のこと癒やしてあげないとね☆」


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