表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

第4話:第0(ゼロ)ルート突入。全フラグ崩壊で、ヒロインが覚醒しました

──この世界には存在しないはずの「第0(ゼロ)ルート」。


それは、プレイヤー誰一人として到達できなかった、裏ルート中の裏ルート。


しかもそれに突入するには、“通常攻略対象キャラ”ではなく、“異物”同士が出会い、結ばれることが条件──。


 


つまり、私とリリィ。


悪役令嬢とヒロイン、ゲームの筋書きから最も逸れた2人が、互いに恋をすること。


それが、起動条件だった。


 



 


「記録更新。第0ルート、正式起動。

フラグ管理の上書きを開始します──」


 


それは、空から降るような声だった。

空間がぐらりと揺れ、学園の建物が一瞬だけノイズを帯びる。


私たちは中庭にいて、周囲の空気が不自然に“固まった”ことを肌で感じていた。


 


「……まさか、ほんとうに起動しちゃうなんて」


ユウナは焦りの色を浮かべていた。

あの完璧に見えた転生者でさえ、動揺している。


 


「クラリーチェ様、大丈夫ですか?」


「リリィ……あんた、本当に何者なの?」


 


そう問いかけると、彼女はふわりと微笑んだ。


「“私”が誰なのか──今までは、自分でも曖昧でした。

でもあなたと過ごすうちに、ようやく思い出したんです」


 


そして、彼女の背後に広がる魔力が、空を割った。


純白の翼のように展開する光の帯。

その中に浮かぶ、無数の魔法式と文字列。


 


「私は、“この世界を維持するための概念”だったんです。

でも、あなたと出会ったせいで──ただのヒロインとして生きたくなってしまった」


 


「それってつまり……」


「ええ。私はこの“ゲーム世界”そのもの──

正確に言えば、この世界のバグ修復と収束のために生まれた擬似人格」


 


──なんてこと。


つまりリリィは、ただの転生者でも、ただのヒロインでもなかった。


この世界が“ゲーム”である限り、彼女はそれを保ち、守る側。

でも私と出会ったことで、運命を壊す側へと転じた。


 


「……ふふ、皮肉ですよね。

貴女のことを“愛してしまった”せいで、私は世界の敵になったんですから」


 


そう言って笑う彼女に、私は──


「バカ……そんなの、敵になってくれてありがとう、って言うしかないじゃない」


 


その瞬間、空に“選択肢”が浮かぶ。


【彼女を拒む】

【彼女とともに世界に抗う】


 


迷わず、私は後者を選んだ。


 


「クラリーチェ様、ありがとう」


「礼なんかいい。私があなたを愛してるから、それだけで十分よ」


 


次の瞬間。


私の手とリリィの手が触れ合い、光が爆発する。


 


「全フラグ、破壊確認。

クラリーチェ=アーデルハイト、リリィ=ホワイトフィールド、

第0ルート《相互選択による自由進行型》へ移行──」


 


そうして私たちは、乙女ゲームのすべてのルールから解き放たれた。


もう王子も、イベントも、エンディングさえも関係ない。


 


私たちが創る物語が、“この世界”そのものになる。


 


──これは、恋から始まり、世界を変える革命の物語。


そしてその中心にいるのは、悪役令嬢とヒロインだけだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ