表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

LOG_006 ─ Forbidden Syntax

王都までの道のりは、馬車で三日。


街道を越え、丘を越え、平野の果てにそびえる白い塔――それが王都魔導院だった。


かつて王が初めて魔法を制度化し、“知”として管理することを選んだ場所。

それはまるで、魔法の聖域であると同時に、牢獄のようにも見えた。


到着してすぐ、俺は“研究棟”と呼ばれる区画へ案内された。

魔導院内部でも限られた魔術研究員しか立ち入れない機密領域だ。


そこには、書庫があった。

だが、ただの書庫ではない。


「ここは“沈黙の書架”と呼ばれています」


案内役の若い魔導士は、少しだけ声を潜めてそう言った。


「……一定以上の魔導資格者しか入室が許されません。閲覧には全て記録が残ります」


冷たい空気の中、並ぶ書物の背表紙。

そのひとつを手に取った瞬間、俺は息を呑んだ。


そこには、見覚えのある記述があった。


@invoke

glyph {

element = "aether";

sequence = ["bind", "pulse", "expand"];

origin = "core.node.001";

}


ArcScriptに、あまりにも酷似した構文。

否、それ以上に洗練され、機能化されていた。


「これは……」


「“封印魔法文書群”です」


後ろから声がした。

銀髪の監察官だった。


「この記述体系は、約二百年前に“禁術”として封じられた魔導言語。

名は“コア・スクリプト”。あなたのArcScriptは、非常によく似ています」


俺は震える指で、文書を読み進める。

論理展開、引数指定、ブロック構造――

それはまるで、俺が作りたかったArcScriptの“完成形”だった。


「……なぜ、封印されたんですか」


監察官の瞳が一瞬、揺れた。


「この魔法は、“理解できる者”と“理解できない者”の格差を生み出す」

「その格差が、国家と社会を壊す火種になると判断されました」


「だから、封じた」


俺はノートを閉じた。


ArcScriptの存在は、前例がなかったわけじゃない。

むしろ、かつて世界を変える寸前まで行った言語だった。


「同じ過ちを繰り返すかもしれない。

あるいは、今度こそ受け入れられるかもしれない。

それを決めるのは……あなたです」


監察官の言葉に、俺は深くうなずいた。


その夜、宿舎で俺は一人ノートに向かった。

灯りも落とし、ただ羽ペンの音だけが部屋に響く。


『書くこと』が、俺にとって“思考”であり、“実験”であり、“対話”であることを、この場所でようやく自覚した気がする。


知識は、封印されるものではない。

けれど、扱う者に資格がなければ、それはただの兵器になる。


ならば俺は、ArcScriptをただの言語ではなく、“思想”として構築しよう。

誰かが誤って使っても暴走しないように。

誰かが理解を深められるように。


そのために必要なのは、関数。

“手続き”そのものを定義できる仕組み。


関数内関数。

引数の継承。

ラムダ処理。


──ArcScript 1.1。

構文の試作は深夜まで続いた。


/**

LOG_006:


Reference match detected: CoreScript lineage.


ArcScript upgraded to support lambda injection.



A language reborn—or repeated?

*/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ