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六章 「決意の朝」 -1-

 翌朝、僕らは車に荷物を詰め込み、八田の家を出た。

 もちろん主無き加藤の荷物も共に。

 見送りは当然のように無く、まるで逃げるように出ていった。

 僕は車を運転しながら、思う。

 果たしてこのままでいいのか?

 だが、戻っても良いのだろうか?

 決断するには程遠く、けれど僕の心は何かを掴もうと必死にあがいていた。

 そして、僕は車を止める。

 怪訝そうに僕を見つめる神谷さん。

 そして、僕は神谷さんを見つめ、聞いてみる。

「神谷さんはあの八田の兄さんの事をどう思う?」

 その質問に神谷さんは驚き、そして顔を赤らめる。

「えっと、その、顔は好みかな。でも、あんまりよく話してないし、好きとか嫌いとかは決められないっていうか。そ、それよりも何でそんな事聞くの?もしかして八田のお兄さんに私の事聞かれたの?何か言ってた?」

 違う、違うよ。

 神谷さん。

「そうじゃないんだ。そう言う事じゃなくて。何かあの八田の兄さん、怪しくないかって、聞いてるんだ」

「もしかしてあの時言ってた。加藤君と八田のお兄さんの関係・・・本当だったの?」

 あの時言ってた?

 もしかして神谷さんは加藤と八田の兄と何かあった事を知っているのか?

「男の人同士の恋愛って本当にあるって事?」

 神谷さん。

「違う・・・」

「そう言えば昨日、名取君達、帰りすごく遅かったよね。八田君の事もあるし、少し不謹慎かなっても思うけど。吊り橋効果って言うんだっけ、こういうの。名取君が悩んじゃうのも分かるけど、精神が不安定になっているから、つい勢いで・・・」

「違うって言ってるだろ!!」

 一喝。

 車内は重苦しい空気と共に静まり返る。

 僕は深く深呼吸を一つして話を続ける。

「ごめん。神谷さん。ここ数日の加藤の事とか、八田の事とかで不安なのは分かる。けど、だからってそういうどうでもいいような話題に逃げないでくれ。頼む。ちゃんと話を聞いて欲しい」

 逃げないでくれ?

 どの口がそんな事を言うのか?

 逃げ続けた結果、今の状況なのに。

 けれど。

 だからこそ今ここで踏み留まらなければならないんじゃないのか?

 少しでもいい。

 勇気の出る言葉が欲しかった。

「・・・うん」

 怒鳴ったのが効きすぎたのか。

 神谷さんは僕を恐怖の目で見ていた。

 きっと僕の事が狂人に見えている事だろう。

「昨日、僕は八田の兄さんを殴った」

「え?!・・・どうして?」

「あいつは実の弟が死んでも涙さえ見せなかった」

「けど、悲しくても泣けない人なんてたくさんいる。だからって・・・」

「もちろんだ。そんな事だけで僕は八田の兄を疑ったりはしていない。よく考えてくれ、神谷さん。最初に加藤が襲われた現場で、八田の兄は何であんなに冷静でいれたのか。五年前に父親が同じように殺されたから?違うな。それならば逆にフラッシュバックして、取り乱したりはしないか?それに八田の態度も気になる。まるであいつに対して怯えている様だった。例えば、例えば八田が自分の兄が加藤を殺した現場を見ていて、口封じに殺されたとしたら・・・」

「そんな事!」

「あり得ないとは言い切れない。よく思い出してくれ。加藤が死んだあの現場に、何で一人残ったのか?普通思わないか、自分もカラスに襲われるんじゃないかと」

「確か銃を持っていってたから・・・」

「それは桐嶋さんがずっと持っていた。あの時、八田の兄は手ぶらだ。あいつはカラスが怖くないんだ。何故か?それはカラスが自分に襲ってこない事を知っているからだ。昨日の朝、警察の人にカラスにつけられた傷を見せられた。けれど、今思えば、あの男は八田の兄と非常に仲がよさそうにしていた。もしあいつが黒だとしたら、あの男は本当は警察じゃないかもしれない可能性だってある」

「グルだったって事?」

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