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AとB 〜裏社会と始まり編〜  作者: 牡蠣原 蒼(かきはら あおい)
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第二章 個性が強いので。

そこからというものの、アシュリーが「飯作るの面倒くさい」と言い出したので、バードは、2人がよく行く料理店「割烹亭 北野」にフリットの歓迎も兼ねて行くことにした。

「それじゃあ、今後の発展を願って…乾杯!」とバードが音頭を取るとみんなが一斉に「「乾杯!」」と言った。アシュリーは「ジントニックソーダ」、バードは「ジャポニーズ・リカー」という大将おすすめのお酒を呑んだ。フリットは最初「僕なんかがお酒なんて…」と謙遜していたが、心が折れたのか「じゃあ、一杯だけ…」ということで「センチュリー・クラフトビール」を飲むと一気にエンジンがかかり、一気に酒が進んだ。基本的に全員お酒には強いため、酔っ払うことなんてのはない。だが…

「ねぇバードぉ、なーんでいっつも構ってくれないのぉ?もっと色々遊びたぁい」と完全にアシュリーが酔っ払った。

「はっはっは、珍しいねアシュリーちゃんが酔っちゃうなんて、普段はバードくんが先にノックダウンするんだけどね?」と大将の「北野智弘」が言う。

「大将!何回も言うけど、うちは酔ってない!絶対に酔わない!顔見たらわかるでしょ〜?も〜、頭おかしくなったのはどっちかなぁ〜」とバードにベタベタくっつきながらアシュリーが構ってきた。

「智弘、コイツに催眠薬でもぶち込んだか?」とバードが言う。

「そんなことしねぇよ、はっはっは。ところでフリット君だっけ?」

「あ、はいフリットです。」

「うちの料理どうだった?」

「めっちゃおいしかったです!毎日行きたくなるような味で、とてもよかったです!」

「そう、ならよかった。バード君はね、人脈が広くてね、人柄がいいから、いろんな人に憎まれながらも、愛されてるんだよ。フリット君、絶対彼について行きなよ?」と北野が言うと、一気に気が引き締まったのか「はい!」と威勢のいい返事を返した「智弘、コイツもう家に返すわ。タクシー呼んで」

「はいはい、ならここの店番頼む。あと家の鍵貸してくれ」

「わかった。ちょっとフリット喋っているから」

「うい」

と反応すると、北野は店から出た。

「なあフリット、お前は新しいビジネス、どんなことしたいか?」

「新しいビジネスですか?そうですね…バードさんがしたいと思ったものならなんでもいいです!」

「違う。そう言うことじゃねえんだよ。俺が聞いてるのはフリットの[希望]の話、『俺についていく』とか『ずっと慕う』とかそういうことを抜きにしてって意味だ」

「[希望]ですか…確かに僕は今まで自分のことしか考えてこなかったから、今何かを誰かのためにしたいってわけじゃないんですよね…あっ!」

「お?何か閃いたか?」

「ウェリンストン通りに住み着いているホームレスたちをみんな幸せにしたいです」

「ほう、じゃあそれを"具体的"に教えてくれるか?」

「具体的に、ですか………わかんないです。突発的に出たものなので」とフリットが返すと、バードは次のように話し出した。

「やっぱりな。人間っていうもんはな、いいアイデアを思い浮かぶその時、突発的に「表面の発明」をひらめくことができる。だけどな、それを噛み砕いて効果的なものとして表す、つまり"具体的"にするって事は簡単じゃねえ。新しいビジネスを立ち上げるときに、その具体的な例が一番必要なんだ。ただ夢語っても叶わねえだろ?ならその夢を達成するために何をすればいいのか、具体的に考えればいいんだよ」

「なるほど…つまり僕はウェリンストン通りの人たちを救うためにはどうしたらいいか、具体的に考えなきゃいけないってことですね?」とフリットが返す。

「ああ、そう言うことだ。その考える案を、そうだな…1週間後に俺に提出してこい。宿題だ。自分の希望を思うがままに紙に書き殴れ。いいな?」

「はい!」とフリットが異性のいい返事をしたところで北野が帰ってきた。

「なんか熱い話でもしてたの?おじさんも混ぜてよ〜」

「智弘、お前はこの店切り盛りするので精一杯だろ。首突っ込んでくるな」

「はいはいわかったよ。それにしてもアシュリーちゃんは本当にバード君のことが好きだね〜。さっきタクシーまで送った時、『ウチは絶対にバードの子を産むの!』って言って泣いちゃって、頑張って慰めたけど、メソメソしながら帰って行ったよ。よかったね、バード君にあんないい奥さんができて。おじさん感激」と北野が話した。「智弘の話はいっつも俺に対する羨望にしか聞こえねえんだよ。なんなんだよそれ」「じゃあアシュリーちゃんがバードに対して好きって言ったら?」

「それは……まぁ……ぅれしぃょ…」と顔を赤めらせて、弱々しい返事が帰ってきた。「はい。もう酒が入ってるね。フリット君、君がこの中で一番お酒が強いわwあ、もうこんな時間。フリット君ごめんね、ちょっとこの人家に返してくんない?」と北野が言うと、

「わかりました。すぐに返します。今日は美味しい料理ありがとうございました!またきます!」とフリットは深く一礼をして店を去った。

「バード、お前よかったな。こんな未来手に入れれて。さて、明日の仕込みでもやるか!」と意味深げに独り言を言った。

フリットはバードを担いで家に帰り、そのままバードをリビングのソファに寝かせた。

「バードさん、本当にありがとうございます。自分も精進しますので、見ててください」とフリットが独り言を言うと、フリットの後ろで「コトン」と何か軽いものが落ちた音がした。なんだろうと思い、音のした方へ行くとそこには一枚の小さな額に入った写真があった。そこには赤い髪をした小さな男の子と茶色の長い髪の毛の女の子、その後ろにミント色の髪の毛をした男の子が笑顔で写真に写っていた。

「これは?赤い髪は多分バードさんだし、この特徴的なミント色の髪は多分...北野さんだな。じゃあこの茶色の長い髪の人は?アシュリーさんではなさそうだけど...」と、いろいろ考えたが、「まぁ、いっか。あんま深掘りしすぎないようにしよう」と思い、写真を元あったところに戻した。フリットも今日は色々あったり、お酒が回っているのでとてつもない眠気が襲ってきた。フリットはそそくさと部屋に戻り、久しぶりのベッドで寝た。

〜翌朝〜

「起きてー、朝ごはんができたよ〜」とアシュリーが朝の訪れを告げる。その声で一番最初に起きてきたのはフリットだった。

「おはようございます!アシュリーさんお体大丈夫でしたか?」

「ああ、心配させちゃったね。大丈夫、でも久しぶりに酔っちゃったから自分でもびっくり。何にも覚えてないけど、北野さんが送ってくれたことだけは覚えているんだよね」

「そうなんですね。飲み過ぎには気をつけてくださいね…あ、朝食作ってくれてありがとうござ…」とフリットが言いかけてフライパンを見た時、その中には炭を焼いているかのごとく黒い物体があった。

「…………」フリットがあんぐり口を開けて絶句してしまった。

「ごめんね〜、自分料理が苦手なの。火力調整が難しくてこれ…」とアシュリーが言った。そう、第一章で言いかけていたことは「料理が絶望的に苦手」なことだ。と、

「いや、大丈夫ですよ」とフリットがその真っ黒焦げに焦げたベーコンを食べた。

「え⁉︎だ、大丈夫⁉︎」とアシュリーが心配していうが

「いあ、へんへんはいひょうふでしゅよ(いや、全然大丈夫ですよ)」とフリットがバリバリと音を立てて食べていた。「ごくん」と飲み込んで、

「でも今度から僕が料理しましょうか。僕は全然美味しく食べれますけど、多分バードさんこれ食えないっす」とフリットが言うと、アシュリーの目から涙が出た。

「え⁉︎アシュリーさんどうしました⁉︎なんか僕嫌なこと言いましたか?」

「いや違うの。自分の料理をなんの一つも文句言わずに食べてくれたのはフリット君が初めてで、ちょっと嬉しかっただけよ」

「そ、そうなんすね…それは苦労したと思います」とフリットが言う。

「でも、明日からアシュリーさんはゆっくり起きてもらって大丈夫ですよ。料理ぐらい僕がします」

「ごめんね…ありがとう」とアシュリーが感謝した。と同時に二日酔いのバードが部屋から出てきた。

「ゔぃ…おはよ…」とカスカスの声でバードが言うと、フリットが吹き出した。

「ブフッ、バードさんwww寝癖やばいですってwあと声wwww」とフリットの浅いツボに入った。

「そんなおかしいか…?」とバードは顔を困らせて言った。

「まぁ、ちょっと今日はフリットの用事があるからな。フリット、今日の午後から街に出るぞ」

「え、僕の用事ですか?何かありましたっけ」とフリットが言うとバードはいろんな質問をフリットに問いかけた。

「お前、服は?」

「この一着だけです」

「髪はいつから直していない?」

「だいたい1年前くらい前から」

「そんなんで新事業で働けると思うか?」

「あ、なるほど…スゥー…確かに無理ですね」

「だろ?だからお前の身だしなみを整えるために街に出るんだ。ちょうど知り合いがいるからそこでやってもらおう」とバードが提案した。もちろんフリットは

「はい!是非」と威勢のいい返事をした。

ーー

ーーー

ーーーー

バードの愛車「日産スカイラインGT-R R34 v-spec Ⅱ Nür」で街に出かけ、バードは駐車場に車を停めた。

「私、服とか見てくるねー」と言ってアシュリーは街のデパートに向かった。

「じゃあ、行くか。まずは髪を整えよう」とバードが言ってついたのは、いかにもお洒落な美容院「salon de Ragalt」という店だった。店に入ると店の奥側から1人の男が小走りでやってきた。

「あら!いやはやこれは、誰かと思えばバードさんじゃないですか!お久しぶりでございます!」

「おう久しぶりだなラガルト。元気にしてたか?」

「おかげさまで。最後にバードさんが来てくれて、その時にバードさんがチョイっと店の雰囲気を変えただけでお店は大繁盛、定期的に予約の電話が鳴って嬉しい限りでございます!それはそうと、今日はどんな要件で?まさか借金の取り立て⁉︎」と良く喋るラガルトの話を遮ってバードが話し始めた。

「そんなんじゃねえよ"今日は"な。今日はな、ちょっとこいつの紹介と、こいつの身だしなみを整えて欲しくて」とバードが言うと、後ろから少し恥ずかしそうにフリットが出てきた。

「は、初めまして。バードさんの新事業を手伝うことになりました。フリット・ヤヌスと言います。今後ともよろしくお願いします…」と挨拶をするや否や

「どうも!バードさんの新しいお仲間さんだね?私はラガルト・アストン。君と同じバードさんに拾ってもらった元ホームレスだよ。よろしくね」と返してきた。

(なんでこんなにもバードさんの身の回りの人って個性的な人がいるんだろう…)とフリットは思った。

「でも…新しい事業を始めるにはちょっぴり身だしなみがso bad!でもご安心を。私ラガルトは真心込めてcut&setいたします!ささ、こちらへ」とラガルトが強引にフリットを引っ張って洗面台に引き摺り込んだ。その様子を黙って見ていたバードは、

(ラガルトは最初はキャラが強くて、接しにくいが、あいつ実は気配り上手なんだよな)とか思いながらフリットの散髪を待っていた。しかし、この後フリットが自分の壮絶な過去を知ることになるとはこの時は思ってもなかった。

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