登場人物の性格(行動原理)を決める
ハイファンタジーに登場するキャラクターに「派手さ」はいらないと思います。
まるでマンガにでも登場するような過剰に誇張されたキャラは、厳しい世界観であることの多いハイファンタジーにふさわしくわりません。
そもそも本格的な異世界ファンタジーとは、コメディーな内容ではありません。
(4部の「記号とイメージ」でも書いた内容に重複するものもあります)
主人公とその仲間。あるいは世界に生きる人々の行動・生活(信仰するものや教育水準)など。
登場人物は重要です。世界観と同じくらい重要です。
最近はキャラクターの魅力だけで売っている作品が多い感じですが、ハイファンタジーでも魅力あるキャラクターは大切でしょう。
ただしハイファンタジー世界における魅力ある個性とは、やはりリアリティも必要です。
(昨今のネット小説を見ると、その多くはマンガから出てきたような性格で、とてもリアルな人間ではないように思う=極端に誇張された人格)
ハイファンタジーで現代的な言葉づかいをするキャラが出ると、それだけで違和感を覚える読者もいるかもしれません。
しかし何よりも、そうした「個性」以上に大切なのは、登場人物の「行動原理」ではないでしょうか。
行動原理があやふやで、数話後にはいままでの話と矛盾するような言動をするキャラがあまりにも目をつきます。
例をあげます。
戦い慣れた人物がいます。
それに対して剣をにぎったことすらないような小娘が剣を振って、その戦い慣れた者に刃が当たるでしょうか?
──なぜかネット小説では当たります──
考えてみてください。
不意打ちでもなく、堂々と剣を構えた相手の攻撃を受けて傷を負う「手練れの戦士」などいるでしょうか?
ありえません(断言)。
中にはほんの少しの手傷を負っただけで膝を折り、うめいてしまうような戦士が登場したのを見ました。
……いやいや、それでは戦士ではなく素人です。ただの一般人です。傷を負う覚悟もない通りすがりの人です。
そんなリアリティのない話は、展開の都合上そうなったとしか説明がつきません。
❇「ベルセルク」でガッツが、蘇った少女の刃にかかって傷を負う、という場面があります。そこは動揺したガッツの心理を表すものであって、なにも不自然なことはありません。
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ハイファンタジーの主人公の多くは、いわゆる「成長物語の主人公」です。
ハードボイルドな冒険物や、ダークファンタジーといった作風の物語の主人公ははじめから強く、冷徹な戦士など。そうしたタイプの人物である場合が多いでしょう。
行動原理の重要性は、その主人公が一貫した物語の牽引役として、道しるべになるからこそ大切なのです。
場当たりで考えられた主人公とは、魅力のある主人公にはなりえません。
チート能力持ちの主人公がいままで気軽に仲間を助けていたのに、どういうわけか目の前で仲間が敵にさらわれるのを見逃したり。
容赦なく敵を殺していた主人公が(どういうわけか)敵を生かして解放したところ、恨みに思った敵が仲間を傷つけ、やっぱり復讐に燃えてその敵を殺したり……
そうなると「話の都合でころころ行動原理が変わる」、あるいは「情緒不安定な主人公」という受け取りをされるでしょう。
ハイファンタジーに登場する人物は、生きた(リアルな)人物でなくてはなりません。でないとやはり、物語がチープに感じられてしまうでしょう。
あるラノベを読んだときのことを思い出します。それは普通の、どこにでもいるような学生を主人公にしたお話だったはずなのですが、最後の場面で敵の親玉(?)か何かを相手にしたとき急に。「人類は負けない! わたしが死んでも必ずだれかがおまえを倒す!」みたいなことを言い出して、正直「え?」ってなりました。
そんなことを言うキャラクターではなかったはず……(もちろん友人の影響を受けてとか、理由を付けることはできますが、いささか苦しい説明になってしまう)
そのキャラクターにふさわしい一貫した言動は大切です。