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小説の書き方を学ぶには

「小説の書き方がわからない」なんていう意見を目にします。

いままでプロットや世界観などについて説明しましたが、今回は「小説を書くのに必要なもの」についてお話します。


後半はやや堅い、古典作品についての内容になっております。

 美大や音大などの専門分野の先生たちが、よく口にする言葉があります。



「本物の、価値ある作品を見て、目を肥やしましょう」



 といった言葉です。


 哲学や文学の分野では「古典を読め」と言われます。そこにはずっと昔から残された「価値あるもの」があるからです。


 小説も同じではないでしょうか。

 自分は「ファンタジーが好きならマイクル・ムアコックの『エルリック・サーガ』くらい読んでおけ」と言われたくちです。


 わたしはそれ以降、海外作品や文学小説などに目を通すようになりました。


 なぜなら書きたいものとは、いままでその人が読んできた作品の、印象的な物語や文章が色濃く継承されるはず(それが「良いもの」ならなおのこと、いい影響を与えられるはずです)。

 作者が見てきたもの、感じてきたもの。

 それらが物語として形作られていくわけです。




 つまり小説を書くために必要なものは、「()()()()」であり、「()()()()()」であり、そして何よりも「()()()()()()()()」ではないでしょうか。


 プロの作家もアイデアを「考え抜く」必要がある、と口にする人が多いことから見ても、発想アイデアだけではないということがわかるでしょう。

(アイデアは物語の中のスパイスのようなもので、それ単品ですべてうまくいくものではありません)




 いま「小説家になろう」に投稿されている多くの作品は、オリジナリティのある作品でしょうか?

 何かを真似ているうちは、その人の内から表れる言葉も、精神も、何かの影でしかなくなってしまう。

(中には独創的な作品を忌避きひするような人もいますが、それは見慣れない外国人を嫌がるような、子供じみた精神性の現れかもしれません)


 オリジナリティのある作品を書くには、さまざまなことを知り、思考力と想像力を使って書き上げるしかありません。


 知識がなければその作品に書かれる内容は薄いものになるでしょう。

 ものを考える源泉となるものは知識の総量です。

 物語を書くには偏った知識や想像力ではなく、いろいろな視点から物を見て、判断する思考力が必要になります。

 主人公以外の登場人物も、おのれの意志をもって生きているはず。

 世界は善と悪の単純な物差しで測れるようなものではありません。

 多角的な視点(客観的視野)を持てないと、主人公を中心にした物語が、やや()()()な、主人公を()()()()()()()()物語になりがちです。


 世界観を構築するには、作者が自らの世界観(全体的な考え方の基礎)をもっていなければ、きっと何かの模倣でしか物語を作ることはできないでしょう。




 コメディ作品やギャグマンガばかり見ている人と。

 多くの文学作品や新聞、(多様な)雑誌。異なる内容の物語を読んできた人では、作者になったとき書かれる内容に、明らかな違いが生まれます。

 書きたいものにも違いが出るでしょう。


 そうなったとき、その「作者となって書きたい」気持ちこそ一番重要な起点(物事のはじまり)であり、モチベーションの発生するところではないでしょうか。


 作者がこだわりたい部分にこそ個性が宿り、ほかに変えようのない魅力ある作品になる可能性がある。わたしはそう考えます。



 良い作品を多く読み、さまざまな事柄を知り、人間の機微について、あるいは世界の情勢について過去から現在に至るまで、いろいろなことを考えられる人の書く作品は、きっと個性的であるはずです。



 * * * * *



 古典を踏襲する理由は、それこそ文化が連綿とつづく人類の知性や歴史そのものを映し出すものだからでしょう。どんなものでもあまりに常軌をいっしたものは忌避されがちです。何かしらの共通理解のあるものだからこそ、読むのに(受け入れるのに)苦労がなかったりします。ある種の文学は堅苦しい内容であったりして、慣れていない読者にとっては読みづらいと感じる作品もあるでしょう。

 読書にもその文体、文章形式に慣れることは必要です。

 平易な言葉で書かれたファンタジー小説もあれば──堅い、難解な言葉を多用するファンタジー小説もあります。


 古典を読み、物語の文法や作法、展開などについて理解を増やすことは作者であっても、読者であっても大切なことでしょう。

 なんでも新しいものだけがいいもののように感じる人もいるかもしれませんが、多くの「良い作品」とは、過去にあるものから学んで書かれたものだと考えて間違いありません。


 たとえば戦記物を書きたい人は、カエサルの『ガリア戦記』などを読んでおくのがいいでしょう。ギリシャの古典にはほかにもホメロスの『イリアス』や『オデュッセイア』など、一度は目を通しておくべき、と言われる作品は(文学作品だけでなく哲学の分野でも)多いです。

 これら古典は読み物としておもしろいかではなく、大仰おおぎょうに言えば、歴史──人間の精神史の根幹を知る意味でも必要なものだと理解しています。

 こうしたものを踏まえて書かれたものは、作品に厚みを与えることができるかもしれません。


 読むほうとしても、古典的なファンタジー作品の中から、こうしたギリシャ神話や文化などを踏まえて書かれた作品や、聖書から取られた内容を思わせる作品なども多く、読者の知識(共通理解)をくすぐるような作品も多いです。

 読者も作者も、共通する理解力の引き出しが合えば、きっとその作品は楽しく読めるものになるのではないでしょうか。

戦記物、歴史物の小説を書く場合、たとえ架空の世界であっても、やはり歴史的な共通性をもって書かれた文章のほうが、リアリティが増すのは間違いないでしょう。

ただそれは、まったく同じ内容を書けばいいものではなく、リアリティとオリジナリティという二つのものを兼ね備えた物語を書き出すことが大切だということです。

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