ファンタジー小説に必要な内容と文章
リアリティのある物語を書くためのちょっとしたヒントを。まあ、どう使うかは作者しだい。
雰囲気重視の幻想的な物語に必要なイメージ。
それを書き出す文章と内容について、いくつかの方法を考えてみます。
ぶっちゃけ文章については、作者の語彙力と筆力がものを言うわけですが……
ファンタジー小説を書く場合、その多くは「三人称書き」であると説明しました。
それは客観的な視点から世界を描写するのに適しているからです。そしてその世界の歴史などを書くにも、主人公の知識や理解力に狭められてしまう「一人称書き」よりも自由度は高いからでしょう。
たとえば主人公の周辺についての場面を描写したあとで、別の──敵側の行動や、別の場所にいる仲間の行動について描写したりもできます。
ファンタジーの世界を緻密に描くなら、三人称書きのほうが利便性は高いと言えます。
一人称書きの場合、主人公の心の動きや考えなどを書くのに適していますが、それだと主人公の知性や性格が文章の中心になるので、かなりクセのある(偏った)内容になることもあるでしょう。
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物語の内容に重みを持たせるような──含蓄のある内容にしたい場合、わたしなら神話や伝承のイメージを利用したりします。
神話や伝承は以前に説明したとおり、一定の共通性があるものが多いです。だからそれと類似した新たな内容の、物語内の「お話(民間伝承など)」を作って話を膨らませたりすると、その中で世界観を感じられると思います。
現実世界に共通する、各国の祭事や儀礼、宗教や民話など。そうしたものについて類似したものを物語の中に盛り込むことで、ファンタジー世界の中の人々の生活感を感じさせることもできるはず。
また、自然風景なども木の種類を書いたり、岩石の名前を出したりする作品も多いです。それは現実世界との共通性、想像しやすさなどを喚起する狙いがあるのでしょう。
(「大理石」や「花崗岩」など、ファンタジー小説にはこうした単語がたびたび登場します)
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あとは象徴や心理的なものを含んだ表現や展開を見せる、ということでしょうか。
これは作者の筆力と、読者の理解力がないと効果がありませんが。
たとえばありていに言えば、大切な仲間を失ったあとに夕日が沈む場面を描く。そこにうまく文章による表現を組み込めば、主人公たちの心境を表現し、沈む太陽と迫る夜に、仲間が死んで苦悩する主人公の心理的印象を読み手に感じさせることができます。
こうした風景の描写と、登場人物の心理を組み合わせるようにして読ませたり。
それを読み解くのも読書の楽しみではないでしょうか。
「行間を読む」といった言葉もあります。
それのさらに高度なものが、象徴的な表現であったり、物語の影に隠された「主題」であったり。
たとえば戦場に向かう主人公が戦いの前に鳥の死骸を見つけたりすれば、それは不幸の前兆を予感させたりできるでしょう。
文章に「隠された意味」を盛り込むのは、作者と読者の思考や想像力が「かみ合う」必要があるので、読者を選ぶことになりますが、こうした文章を差し込むことで、奥行きのある文章が成立すると考えます。
一見すると不要とも思える文章には、こうした作者の意図が隠されていることもあります。
ファンタジー特有の文章は重々しく、主人公の行動を書き出すだけの文章ではなく、幻想的な物語作品にふさわしい雰囲気ある文章が必要でしょう。
象徴に関して言えば「塔」はタロットカードでは不吉な予兆などを意味し、場面をそうした場所にすれば隠された意味を持たせることもできます。
暗示的な表現は、作品に表面的な物語以上の隠された意味を示したり、複雑な物語の(副次的な)効果を生み、読み手の想像力に訴える「印象」を表現できると考えます。
象徴とか照応といったものを理解していると、書き手としても、またひと味違った作品の書き方や読み方ができるかと思います。
次話では小説の書き方についてお話します。