物語の展開、エンディングについて ~作者の書きたいものと、読者の求めるもの~
出版社が求める(募集する)作品とは、オリジナリティがあるものだと言われてきました。
しかしSNSが発達した昨今──とくにネット小説──では、「読者が好むものを書く」という風潮があまりに強くなりすぎています。
それでも本当の読書家や物語を楽しみたい人というのは、いままで読んだことのない、想像もしなかった物語や、リアリティのある作品を求めるはずです。
──物語の結末はハッピーエンドか、それともバッドエンドか──
ある種の物語はどちらともつかずに終わるものや、曖昧なまま読者の想像に任せるタイプなど、結末にもさまざまな種類があります。
(最近の映画の中には、起承転結といった構想を取らない作品も増えているらしいです)
SNS隆盛の昨今では、小説、ドラマ、マンガ、アニメ、映画──こうした物語作品に対して気軽に多くの人に発信でき、交流もできるようになり、そうした人々のあいだで意見が交換されることも多くなりました。
このエンディングは嫌いだとか、好みが分かれる場合もあるでしょう。
(SNSで気軽に意見を発信できる環境になり「こうした展開は嫌いだ」と、作者に直接言うような読者もいるようですが……)
作者は読者の予想をはずそうと、あるいは期待を裏切ろうとするものです。
なぜならだれもが予想できる展開とは、単純なものだと思われてしまうから。
作者も読者も物語に奇抜さ、斬新さを求めるのはある種あらがいがたいものがあるでしょう。
しかし──何度も言いますが、リアリティのない展開は極端な話、すべてコメディーとなります(どんなに悲恋や悲哀の話にしようとしても、リアルさがなければ水泡に帰すことも)。
物語の展開も結末も、作者の意志(あるいは物語の要請=深層心理の表象化など)によって決定します。
読者の顔色をうかがって物語の結末を曖昧な地点に導くか。それとも作者の描きたいものを書き出すか──その気持ちしだい。
だからこそ最初に「結末はこう!」と決めておくことは重要かもしれません。
自分の書く物語に自信があるのなら、堂々とやり抜くことです。最初はだれからも受け入れられず、読まれず、評価されなくても。確固たる信念をもって書きつづけましょう。
シリアスで、ダークで、雰囲気重視で、描写が多い(格式張って読みづらい)物語であっても、わかってくれる読者は(少ないかもしれませんが)「なろう」にもいます。あきらめずに書きつづけましょう。
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物語は人によって好みが変わります。
勧善懲悪を好む人。
笑える、楽しい話が好きとか。
いままでにない物語が見たいとか。
作者の考え出す物語が、果たしてどれだけの読者に響くか?
(投稿作品は)多くの人に向けて書く作品。
それは確かにそうです。
しかし、作者の書きたい物語が、ある種の特殊性(独創性)を持っていると思いながら書かれた作品もあるのです。
読者はそれを理解すべきでしょう。
万人に、すべての人に向けられて書かれた作品だけではない。ということです。
「なんだこの作品。読みづらい文章、地味な展開、特徴のないキャラクター……つまらねえなぁ」
などと思うのは勝手です。ただ、それはその人に「合わなかった」だけかもしれません。
ある作者の言葉にこんなものがあります。
「この本を退屈だとか、ばかばかしいとか、軽蔑すべきものだと思われたむきもあったようだが、わたしはこれに対して不平をいう筋合いはない。わたし自身、その人たちの作品、あるいはその人たちが明らかに好んでいると思われる作品に対して同じ意見を抱いているからである」
この言葉はトールキンが『指輪物語』について言われたものに対して残した言葉です。
万人に受け入れられる作品など幻想です。
そんなものは存在しません。
わたしはコメディー色の強いファンタジー作品でも楽しんで読めるほうですが、それでも中には否定的に感じる作品もあります。それはコメディーだからと、明らかにおかしな展開になっている作品に出会ったときです。
そうしたとき、このトールキンの言葉を思い出します。
ゲーム系のファンタジーでもいいでしょう。
しかし本来のファンタジー物語とは、シリアスな物語であると理解してください。
わたしはいち読者として、そしていち作者としてこう表明したいです。
「ファンタジーにとって重要なことは、それは幻想的でありながら、『現実の物語』であると思わせる、そうした強いイメージが必要」であると。
❇「物語の要請=深層心理の具象化」
これは難しい表現かな。
物語には共通するイメージがあります。それらは物語が生み出された時代背景(環境)などの影響を受けて生まれますが、いちばん影響を受けるのは「人間の心」なのです。
意識的にしろ無意識的にしろ、物語の中には書き手にも読み手にも共通する、なんらかの精神的な法則(集合的無意識)にのっとったものが表れるものです。
物語の共通性は世界各国にある神話や伝承といったものの類似性から読み取れます。