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第2話 勇者、俺の娘に嘘を暴露される

「ふ、ふざけるなっ!!」


と、グロリアスは眉間に皺を寄せて俺に剣幕で怒鳴り散らす。

勝手に物事が進行している事が気に入らなかったのだろう。


「俺はガルトを追放したんだ!」

『じゃから、わしもこのパーティーから去る事にしたのじゃ。わし、おかしな事を言っておるか?』

「お、お前は……い、いや、あなたは俺の従魔でしょ? だ、だから、契約解除は出来ませんよ……」

『は? わしはお主ではなく、孫のマレンと契約をしておるはずじゃぞ?』


爺さんの言い分とグロリアスの言い分が齟齬(そご)し、どっちが正当な言い分なのか、パーティーの仲間は誰一人分からなかった。

仲間が困惑していると、爺さんは孫のマレンに仲間達の目の前で【テイマー】スキルの【召還(サモン)】を発動させ、目の前で証拠を見せてあげなさいと促す。

マレンは「うん」と頷き、小声で何かを呟く。


「……【召還(サモン)】……ライム……召還!」


と、呟いた瞬間に地面に魔法陣が展開され、白色の輝きが強く放たれると、魔法陣の中心からポヨンと目視出来ないスピードで上空へと跳ね上がり、あっという間に姿が見えなくなったと思いきや、10秒程で晴天の空から尋常じゃない速度で何かが落下し、その物体はマレンの頭の上に直撃した。

直撃した衝撃でマレン中心に衝撃波が周囲の物を吹き飛ばす。

仲間達は何とかその衝撃波を耐え凌ぐも、草花は飛び散り、木々も揺れ動き、マレンの周囲は砂埃で舞っていた。

マレンの頭の上でポヨンポヨンと音を立ててゼリー状の物体が跳び跳ねていた。


「……じいじ……ライム……召還した……」

『ほれ、これが証拠じゃよ?』


更に困惑する仲間達。


『つまりじゃのぉ、【テイマー】スキルを習得しているのはそやつではなく、孫のマレンなのじゃよ』


度々、爺さんの口から爆弾発言が投下された。

その衝撃すぎる発言に仲間達はざわつく。


「どういう事? グロリアスは【テイマー】スキルを習得してないの?」

「で、でも、今まで目の前で従魔を召還したり、契約だってしてたわよね? あれはどう説明するの?」


爺さんの発言にも真実味があり、かといって今まで自身の目で見てきた物も事実。

どちらかが嘘を付いているとしか考えられない。


『お主らは神獣であるこのわしの発言を信じられぬと?』

「そ、そういう訳では……」

『なら、お主らの主人であるその者にマレンと同じ事をこの場でして貰うのはどうじゃ?』


爺さんの突拍子もない発言にグロリアスの顔が青ざめ、尋常じゃない汗が滝のように額から流れてくる。


「……確かに一理はある」

「ねぇ、グロリアス。私達の前でいつも通りに【テイマー】スキルを披露して(笑)」

「楽勝でしょ(笑)」


グロリアスを信頼している仲間達は楽勝に【テイマー】スキルを披露出来ると信じていた。

場の空気が最高峰に盛り上がっている中、だった一人だけ窮地に追い込まれている者がいた。


(……ど、どうするんだ、この状況!? 俺に【テイマー】スキルが使える訳がねえだろうか!?)


この状況を回避出来るフラグなど存在しない。

滝のように汗を流し、無言を続けるしかなかった。


「どうしたの? 調子が悪いの?」

「顔色が悪いけど、大丈夫?」


グロリアスの青ざめた顔色を見て心配するエリシスとノルエ。


『いつまで沈黙を続けるつもりじゃ』

「……」

『出来んのか?』

「……」


グロリアスはひたすら沈黙を続けた。

埒が明かないと判断した爺さんは王手をかけ、この状況に終止符を打った。


『出来る訳があるまい。ずっと嘘をついておったからのお』

「嘘?」

『今までお主らが見てきたモノは全てマレンの力じゃよ。自分がスキルを扱っているように偽装しておったのじゃ』

「偽装って私達を騙してたって事?」

「そんな訳がないわ。グロリアスが私達を騙すなんで……」

『じゃあ、何故あやつはスキルを発動させん? 体調が悪いからか? 都合のいい話じゃの』


爺さんの発言にさすがに疑惑を感じ始めた仲間達。

グロリアスと仲間達の信頼関係に皹が入った。

疑惑の目がグロリアスに矛先が向くと、グロリアスは誰とも視線を合わせようとせず、話を誤魔化そうとした。


「今は体調が優れないだけだ!」


すると、そこへマレンがグロリアスの側へと歩いてくる。


「あの子、何しに来たの?」

「ここに来ても、あの子は人と会話が出来なかったわよね?」


マレンはグロリアスの前で足を止めた。

幼女のマレンは身長がまた低い為、顔を上に向けてグロリアスの顔を見つめた。

そんなマレンをグロリアスはジロッと睨み付ける。


「あ? 何だ、獣人の小娘?」

「……」

「喋れねえ奴はでしゃばるんじゃねえよ!」

「……嫌い……」

「あん?」


マレンの口元がゆっくりと開き、小声で何かを呟く。


「……私……あなたが……嫌い……」

「な、何だと!?」


マレンの口からグロリアスに向けて言葉を発した。

この場にいた誰もがその事に驚愕した。

マレンは俺と爺さん以外に喋った事がなかったからだ。


一年前のマレンは身も心もボロボロで、言葉を発する事が困難だった。

その理由は、マレンの目の前で両親が魔獣によって殺害され、そのショックでトラウマとなり、失声症という精神の病となったからだ。


「お、お前、喋れたのか!?」

「……父……じいじのおかげ……」


マレンが喋った事でグロリアスの顔が青ざめ、更に額から尋常じゃない汗が滝のように流れていく。


「……あなたに……協力しないと……父に危害を加えると……言われた……」


マレンの口から衝撃的な発言が出た。


「これって脅迫だよね?」

「グロリアス、これはどういう事? ちゃんと説明をして!」


仲間の問いに答えられる訳がないグロリアスはただひたすら沈黙を続けた。


(ま、不味い! これはかなり不味いぞ! 今まで俺が築き上げてきたものが水の泡になる! 断じて……断じて、そんな事は許さねえぞ!!)


憎悪に満ちた視線でマレンを睨み付ける。

そんな視線も動揺しないかのようにマレンも再び口を開く。


「……私……父を守る為に……あなたの言う事を……聞いた……」

「このガキ……それ以上、何も言うなっ!!」

「……私……もう……あなたの言いなりに……ならない……」


小声ではあるが怒りの感情が声に籠っており、静けさの中に怒涛が漂っていた。

グロリアスに睨み付けながらビシッと指をさす。


「……父……追放された……もう……あなたの嘘に……付き合う気は……ない……」

「なっ!?」

「……あなたの為に……もうスキルは……使わない!」

「こ、このクソガキかっ!!」


マレンの発言に逆上したグロリアスは、幼いマレンの身体を容赦なく蹴り飛ばした。

「きゃあ!」と悲鳴を上げ、強く蹴り飛ばされたマレンは地面に倒れ込む。

地面に倒れ込んだマレンをグロリアスは勇者とは思えない冷たい視線で見下ろし、一秒という音速で右手に聖剣を召還し、その鋭い剣先をマレンに向ける。


「……黙れ、クソガキ!」

「……嫌だ……何度でも言う……もう二度と……あなたの為に……スキルは使わない!」

「黙れと言ってるだろうかっ!!」


声を露にし殺意に満ちた視線で睨み付けるグロリアスは聖剣を振り翳し、今にもその刃をマレンに振り下ろそうとしていた。


「クソガキイイイ―――――!!!!!!!!」

「っ!?」


聖剣が振り下ろされた瞬間、斬られると思ったマレンは目を瞑った。

目を閉じている為、視界は真っ暗だった。

視界以外の五感ははっきりとしており、斬られたはずなのに痛みの痛覚が全く感じられない。

不思議に感じたマレンはゆっくりと瞼を開ける事にした。

若干眩しかったものの、徐々に眩しさに慣れてくると目の前の視界が徐々にはっきりと見えるようになってきた。

マレンの視界に映ったものは背を向け、聖剣を頭で受け止めていた俺の姿だった。


「父!?」


聖剣を頭で受け止めて平然としている俺を見て驚愕するグロリアス。


「な、何だと!? そ、そんなバカなっ!?」


すると、パキッという鈍い音が聞こえた。

それは聖剣の刃にひびが入った音だった。

どんどん刃に亀裂が入り、あっという間に聖剣は木っ端微塵に粉砕した。


「なっ!? 聖剣が砕けた!?」


粉砕した聖剣の欠片が宙に舞っていく。

その欠片を見て、グロリアスの顔は青ざめていた。

そんなグロリアスに目掛けて俺は一言放つ。


「……俺の娘に手を出すな!」





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― 新着の感想 ―
[一言] 聖剣のエピソードがあるからだろうが、孫が蹴られる前に父か神獣が割って入って欲しかった。子供に暴力を振るうシーンであるのと父と神獣はそんなに鈍いのと思ってしまう。それともさすが勇者なのか。あと…
[一言] 勇者が持つ聖剣を頭で受けても、斬られないし、逆に聖剣を壊す事が出来る。 防御力だけじゃなくて、スキルの面でも守備重視なんだな。 都合が悪くなると、逆ギレする勇者には、徹底的な制裁をしない…
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